「バズ・ライトイヤー」レビュー

4.0
映画
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評価 ★★★★☆(65点) 全105分

あらすじ スターコマンドのスペースレンジャーであるバズ・ライトイヤーと、彼の指揮官であり親友であるアリーシャ・ホーソーンは、新隊員のフェザリンガムスタンとともに、居住可能な惑星であるT’KaniPrimeを探索する引用- Wikipedia

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アンディ、これ理解できる?

本作品はトイ・ストーリー作品に出てくるバズ・ライトイヤーの
スピンオフ作品。
監督はアンガス・マクレーン、制作はピクサー

アンディ

この作品のコンセプトとしては、トイ・ストーリーに出てくるおもちゃたちの
持ち主である「アンディ」が子供の頃に見た映画ということになっている。
アンディはこの映画を見たからこそバズ・ライトイヤーのおもちゃを欲しがり、
その結果、トイ・ストーリーの騒動が巻き起こるきっかけにもなっている。

そのコンセプト自体はいいものの、
作品の是非はともかく「この作品を子供が楽しめるだろうか?」という
疑問は浮かぶ。この作品、設定がかなり難解だ。

トイ・ストーリーの世界でこの作品がアニメとして放送されたのか、
実写映画として放送されたのかは定かではないが、
おそらくは実写映画だったのでは?と勘ぐるほど、ガチなSF映画だ。
作品で例えるなら「インターステラー」あたりがわかりやすい。

あそこまではガチではないものの、それに近いものがあり、
終盤になると「もう一人のバズライトイヤー」でも出てくるため
SF映画などを見慣れた大人ならばすんなり状況を理解しやすいが、
子供だと設定が理解しづらい部分があるのでは?と感じてしまう。
ピクサーというよりは「マーベル」作品のような印象すら受けてしまう。

その部分の問題点はあるものの、
この作品は「バズ・ライトイヤー」の、
スペースレンジャーである彼の物語をまっすぐに描いている作品だ

スペースレンジャー

トイ・ストーリーでは漠然とザーグという悪い敵と、
スペースレンジャーである正義の味方のバズが戦っているという
印象を受けるものだった。
トイ・ストーリー2では「ザーグ」の衝撃の正体も明らかになったのは
トイ・ストーリーファンならば記憶に残っているはずだ(笑)

そんなトイ・ストーリーにおける設定を、
このバズ・ライトイヤーというスピンオフで作品で
どこまで活かしてくれるのか、それが見どころの1つでもある。
冒頭からそんな活かし方を見せてくれる、「航海日誌」だ。

トイ・ストーリー1のときに自身をおもちゃだと認識していなかったバズは
本船と連絡が取れず、航海日誌としてよく独り言を言っていたのは
トイ・ストーリーを見た方ならば記憶に残ってるはずだ。
そんな設定をこの作品では活かす。

スペースレンジャーであるバズは居住可能な惑星を探しており、
そんな中でとある惑星に降り立つものの、
そこには凶悪な生物が住み着いている。
そんな惑星を調査する中で彼は「航海日誌」をつけている。

仲間たちはそんな姿を見てどこか茶化すものの、
航海日誌をつける行為はバズにとって精神統一の方法の1つでもある。
自身の心を落ち着かせるために、要所要所で航海日誌を取る姿は
あのバズそのものだ。

アンディがこの映画を見てバズが欲しくなったように、
あの頃、子供の頃にトイ・ストーリーを見てバズを買った
私達にとってはバズがスペースレンジャーとして活躍してるだけで
ニヤニヤしてしまう。
この作品はきちんとトイ・ストーリーのバズの設定を映画に生かしている。
その活かし方の1つ1つが出てくるたびに自然と笑みがこぼれてしまう。

そんなバズは優秀なスペースレンジャーだ。
彼の指揮官であり親友でもあるアリーシャとともに
いくつもの困難を乗り越えてきている。
だが、その優秀さや性格ゆえに彼は「新人」を嫌っている。
自分が完璧なスペースレンジャーであるという自負ゆえに新人が苦手だ。

だが、誰にも頼らなかった彼は頼らなかったゆえに、
自分でなんでもこなそうとしたがゆえにミスをしてしまう。

ウラシマ効果

完璧主義であるバズは任務の遂行に失敗してしまう。
仲間をあのときに頼れば、新人を信頼していれば、
もしかしたら無事に惑星を脱出できたかもしれない。
しかし、それは結果論にすぎない。
それでも完璧主義であるバズ・ライトイヤーはなんとか任務をこなそうとする。

未開の惑星を仲間たちとともに脱出する。
仲間とそれを語らうわけでもなく、彼は自らの意思で、
「ハイパースピード」、いわゆる超光速の速度へといたれる技術の完成を目指す。
ハイパースピードに到達する技術がなければ未開の惑星から
脱出することもできない。
スペースレンジャーであるバズはみんなのためにも自らの任務を遂行しようとする。

しかし、実験はなかなか成功しない。
それどころか「超光速」に至る実験をすればするほど、
未開の惑星にいる仲間たちとの「時間の流れの差」が生まれてしまう。
実写SF映画であるインターステラーでも描かれたウラシマ効果そのものだ。
バズにとっては4分の実験だが、惑星にいる仲間たちにとっては
4年も時間が経過してしまう。

各々にかかっている重力の違いが時間の流れまで変えてしまう。
このウラシマ効果の説明は一応はあるものの、
SFの基礎知識がなければついていきづらい部分はある。
バズは結果としてかつての仲間が寿命で死ぬまで、
何度も何度も実験を繰り返してしまう。

仲間たちにとっては40年以上の月日だ。
仲間たちはすでに惑星脱出を諦め、惑星に定住しようとしている。
かつての仲間たちは結婚をし、子供を生み、家族を持って、
この惑星で人生を終わらせようとしている。

残酷な時間の流れの違いがバズと仲間たちとの認識の違いを生む。
バズにとってはたった1年やそこらの時間でしかない。
しかし、仲間にとっては何十年もの時間だ。

完璧主義であるバズにとって、スペースレンジャーであるバズにとって
「任務」を成功させることは彼のアイデンティティでもある。
トイ・ストーリーという作品はいつだってアイデンティティ、
キャラクターたちの存在意義を描いていた。
スピンオフであり、劇中作である今作もそれは変わらない。

そんな中でついに、ハイパースピードが完成する。
ようやく母星に帰れる、ようやく任務を遂行できる。
だが、そんな中で「ザーグ」が惑星を襲う。

SFオマージュ

この作品はインターステラーもそうだが、
ある種の「SF」系作品に対するオマージュが散りばめられている。
例えばバズの心のケアとして仲間から送られた「猫型ロボット」、
これはおそらくドラえもんのオマージュだろう(笑)

姿形はまるで違うものの、今作において猫型ロボットである
「ソックス」はシリアスなストーリーの中でいいコメディスパイスになっており、
見た目は猫のロボットなのに、吹き矢やライトなど便利な機能を
搭載しまくっており、ハイパースピードの技術の完成も
彼のおかげだ。ものすごく優秀なソックスがマスコットキャラとして
作品の中で機能している。

更にガンダム、正確には「ズゴック」だが、
ザーグが操るロボット兵の見た目がほぼ「ズゴック」だ(笑)
黄色い機体だけではなく、隊長機のような赤い機体もおり、
3倍早く動くのか?と期待してしまったくらいだ。

そういったある種のオマージュ的な要素も
この作品の面白みの1つにもなっているものの、
ズゴックに関してはほぼそのままなところは
やや気になるところだ。

新人

ザーグが仲間たちが住んでる惑星を襲った結果、
バズが頼れる仲間はろくに任務の経験がない3人しか居ない。
臆病な男、元犯罪者、かつての仲間の娘。
未熟で、経験もない彼らはバズにとってはお荷物だ。
しかし、たったひとりで何かをなそうとするバズは失敗ばかりしてしまう。

確かに天才はいる、優秀なものはいる。
しかし、人である以上「誰か」と協力し、信頼しなければ
何かをなすことなどできない。
バズという主人公は独りよがりだ、彼の経験が、
スペースレンジャーとい自負がそうさせている部分はあるものの、
なかなか失敗からは学ばない。

何度も繰り返すハイパースピードの実験も、
「ソックス」という仲間が居なければなしえなかったことだ。
最初から仲間とともにもっと協力していれば、
こんなに時間が経過することもなかったかもしれない。

この作品はそんなバズ・ライトイヤーという主人公が
自らのミスを認め、自らの価値観を変えていく物語だ。
独りよがりではない、仲間を信じるものになっていく、
そんな物語と言ってもいい。

ザーグ

ある意味で「改変」といえるのがザーグの存在だ。
彼は原作?というよりトイ・ストーリー2の中で、
バズ・ライトイヤーの父であることが判明する(笑)
これはスター・ウォーズのパロディでもあったが、
今作ではそこを変えてくる。

個人的にはその部分が残念ではあったものの、
今作における「ザーグ」という敵はバズ・ライトイヤーにとっての負の部分だ。
誰の声も聞かず、自らの失敗を認めず、誰の協力も得ずに、
独りよがりで何年も何年も旅路を繰り返した結果の果てに生まれた
もう一人のバズライトイヤーがザーグだ。

彼の目的はシンプルだ。
過去に戻り、バズライトイヤーが犯したミスをなかった事にする。
そうすれば全てが元通りだ、何もかもなかったことになる。
スペースレンジャーとしての経歴に傷もつかず、
かつてのスペースレンジャーであるバズライトイヤーでいられる。

しかし、彼を認めてしまうことは自らの失敗を認めないことにもなる。
この冒険の果にバズライトイヤーは多くの人に出会った。
かつての仲間の娘に、臆病な男に、元犯罪者に、そしてソックスに。
それを全て「無かった」ことにしていいのだろうか?と。

この旅路の中で、バズライトイヤーは成長している。
仲間を信じることを、自分のミスを認めることの大切さを、
彼は学び、学んだからこそ「失敗した果の自分」を否定する。
自分の間違いを認めて、人は初めて成長できる。
そんなメッセージ性すら含まれている。

アクション

今作ではコミカルなアクションシーンが非常に多い。
特にスペースレンジャーのスーツに搭載された機能は面白く、
「ペン」が収納されていたり、実はステルス機能が搭載されていたり、
敵に降伏する際の謎の機能まである(笑)

そんな機能を生かしたアクションの数々はコミカルに描かれており、
特に「ペン」に関しては終盤のシーンでは伏線にすらなっている
トイ・ストーリーの中で披露されたバズの機能はほとんどでてくるものの、
「翼」に関してはなかなか出てこない。

もしかしたら、あの機能はおもちゃにしか搭載されていない機能なのか?
ガチなSF映画になっている今作において翼は不要と判断されたのか?と
少し不安な気持ちになっていたところ、最後の最後で見せてくれる。

無限の彼方から、仲間が暮らす惑星へ。
まるで逆襲のシャアのあのシーンのオマージュすらあり、
きれいにスッキリとストーリーが終わってくれる作品だった。

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総評:ガンダム?ドラえもん?マーベル!?

全体的にみてしっかりとした王道SF作品になっている。
ウラシマ効果、未来からの来訪者、数々のSF作品のオマージュの数々を
散りばめながら、独りよがりなバズライトイヤーという男の
成長の物語が105分という尺ですっきりと描かれている。

トイ・ストーリーの中で出てきたバズライトイヤーの要素を
きちんと今作でも生かしており、それがでてくるたびに
思わずトイ・ストーリーファンならワクワクとした高揚感に繋がり、
今作の仲間たちとともにドタバタと繰り広げられるアクションは
子供でもクスクスと楽しめるものになっている。

ただ、その反面でストーリーの設定の解説は足りない印象だ。
説明したところで子供にわからないという諦めもあったのかもしれないが、
もう一人のバズの存在やウラシマ効果など、子供にとっては難解な要素も多く、
「アンディ」がこの作品を見て、バズが欲しくなるほど、
お気に入りの映画になったのか?という疑問は残ってしまう。

大人向けの映画になっている部分も大きく、
「アンディ」がお気に入りの映画という設定だと、
気になってしまう部分も多い。
子供向けなキャラやコメディ描写と大人向けのSF設定が
一緒になってしまっているために、この作品のターゲット層が
ややぼやけてしまっている部分はある。

しかしながら、名作とまではいえないものの、
トイ・ストーリーの中におけるバズライトイヤーの設定をうまく活かしつつ、
スピンオフ、劇中作として手堅く一本の作品に
まとめ上げている作品だった。

個人的な感想:ポリコレ?

上映前から色々と各国で問題になる作品だった。
特に「同性愛」描写に関しては特定の国では禁止された描写であり、
そういった部分が問題視されてしまっていたようだ。

昨今はアメリカ、特にディズニーはいわゆる「ポリコレ」描写は確かに多い。
しかし、この作品で目立つところといえば同性愛描写くらいだ。

女性同士で結婚し子供が生まれたという描写があるものの、
「超光速」で飛べる技術が発達した未来であることを考えれば、
別に性別なんて関係なく子供が生まれる技術も確立され、
同性愛というものが現代よりもフランクかつ、ナチュラルになっていても
不自然に感じる部分はまるでない。

これがバズライトイヤー自身が同性愛者だという設定だったら、
キャラ解釈を含め色々と物議を醸してもおかしくはないかもしれないが、
私個人としてはこれくらいの描写は特に気になるところではなく、
ポリコレ描写が気になるディズニー、ピクサー作品に比べれば
かなり自然に同性愛というものを描写しており、違和感すら感じなかった。

私含め、色々とポリコレ描写に敏感になりすぎるのも問題だと
痛感する作品でもあった。

「バズ・ライトイヤー」は面白い?つまらない?

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