「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -」レビュー

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映画
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評価 81点 全90分

あらすじ 白椿が咲き乱れ、良家の娘のみが通学を許される名門女学園に通う大貴族ヨーク家の跡取り娘イザベラ・ヨークは、父親と交わしたある契約が原因で学園生活が苦痛でしかなかった。引用- Wikipedia

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この儚くも耽美的な世界

本作品はヴァイオレットエヴァーガーデンの劇場映画作品。
監督はTVシリーズとは違い藤田春香、制作は京都アニメーション。

静かな始まり


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

映画冒頭、静かな始まりだ。自動手記人形であるヴァイオレットが
名門女学園のとある娘に「専属教育係」として派遣される。
手紙の代筆業である自動手記人形という職業が普段やってる仕事とは違い、
「外伝」らしい特殊なエピソードの始まりを感じさせる。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品らしい淡々とした静かな始まり、
作画の圧倒的なクォリティは劇場版でも変わらず、
むしろTVアニメシリーズでは異質とも感じていたクォリティの高さが、
ようやく収まる場所に収まったような感覚だ。

淡々と粛々に「教育係」として無作法でがさつで周囲とも馴染めない
「イザベラ」という少女の教育係を務める。
彼女の過去が断片的に語られつつ、物語はゆっくりと進んでいく。

本当に静かな序盤だ。イザベラが歩くときのヒールの音がこだまするほどに、
登場人物たちの細かい足音が妙に耳に残る。それほど「静か」だ。
静かな中で語られるイザベラの過去と描写されるキャラクター描写、
それと同時にヴァイオレットの過去も断片的に明かされる。

本作品はTVアニメを見ている前提の作品ではあるものの、
全く見ていなくても、それほど問題ないのではないかと感じられる。

耽美的


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

話が進んでくると徐々にイザベラはヴァイオレットに心をひらいていく。
ヴァイオレットはそんなイザベラの「普通の少女」な態度に戸惑いつつ、
自身に求められる「普通の少女」の友達としての役目を全うしようとする。
友達というものがなにか互いに具体的にはわからない。
そんな中で描かれる二人の交流が儚く、可愛らしい。

どこか耽美的とも言える世界観だ。百合とはまた違う。
女性同士の世界観が築かれ、踏み入ることを躊躇するかのような世界観。
静かに描かれるその世界観をこっそりと覗き見るような背徳さすら感じさせる。
物語は平坦で起伏がなく淡々としている。
しかし、その耽美的な世界を覗き見るような背徳感が不思議な面白さを醸し出す。

手紙を綴る仕事ではなく、教育係として、イザベラの友達として
TVアニメシリーズでは見れなかった「ヴァイオレット」の表情や態度が見れる。
あくびをしたり、ツインテールにされたり、オフロに入ったり。
戦争孤児としてヴァイオレットも経験していなかった学生生活を
どこか楽しんでいるような雰囲気すらある。

イザベラに語る自身の過去と経験はTVシリーズの出来事だ。
恋文のこと、天文学のこと、TVシリーズを見ているとヴァイオレットと
記憶を共有し、それをヴァイオレットが思い出として話す姿に
なぜか涙腺を刺激されてしまう。

舞踏会


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

約束は三ヶ月だ。一人の少女を淑女に育てる三ヶ月の仕事。
彼女は間違いなくヴァイオレットの教育のおかげで淑女になり成長した。
静かに描かれる物語の中でそれをしっかりと感じさせ、
イザベラとヴァイオレットのダンスは本当に楽しそうで美しい。

そんな彼女が最後に「手紙」を求める。
誰にも語れなかった自身の貧しい過去、だが、楽しかった過去。
唯一の家族だった「義理の妹」との暮らし。
彼女が令嬢になった理由は現実的ではあるものの悲しい現実だ。

彼女は「妹」が幸せになるために自信を差し出した。
別れる辛さより、妹の幸せを願った彼女の唯一の望み。
「友達」になったヴァイオレットにだからこそ話すことができる過去だ。
与えたものと与えられたもの、立場は違えど立場が違うからこそ分かる。

彼女は友達に「愛」を綴った手紙を託す。
外伝ではあるものの、この作品は紛れもなく愛を綴っている。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品なんだと実感させられる。
文字すら読めない義理の妹に届く短い手紙。

そして時間は流れる。

配達人


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

TVシリーズでは「配達人」という仕事には焦点があたっていなかった。
ヴァイオレットが自動手記人形であり手紙を綴ることの方に重きをおいており、
TVシリーズの中で「配達人」の物語は描かれなかった。
しかし、今作ではそんな配達人である彼に焦点が当たる。
手紙は綴るだけでは意味がない、届いて初めて意味がある。

ヴァイオレットの友達の妹「テイラー」は
少し大きくなりヴァイオレットのもとを尋ねる。
彼女からもらった手紙を頼りに、彼女を頼り、彼女もまた
「大事な友だちの妹」だからこそ願いを叶えてあげたいと願う。

「私の友人の、大切な妹さんなのです」

TVシリーズの中で積み重ねてきた成長と変化、感情を取り戻した彼女が
友達を得たからこその感情に涙を誘われてしまう。
自信に姉の手紙を届けてくれた「配達人」に憧れ、彼女は配達人見習いとして
「配達人」であるベネディクトのもとで働く。

ベネディクトはこの仕事に何処か虚しさを感じていた。
周りが変わっても自身の日々は何も変わらない、同じことの繰り返しの日々に
「退屈」だと思っていた。
そんな自身の仕事を「凄い」と憧れてくれる少女の存在は彼にとって貴重だ。

「郵便配達人が運ぶのは幸せだから」

みつあみ


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ヴァイオレットとテイラーの関係性はまるで本当の姉妹のようだ。
姉の代わりにベッドをともにし、姉の代わりに髪を結い、
姉の代わりに文字を教える。
自信が友達として「イザベラ」と過ごした日々をリフレインするかのように、
友達の代わりに姉の代わりをする二人の関係性が微笑ましい。

ヴァイオレットがストレートに感情を表現する姿に涙腺を刺激されてしまう。
彼女との日々の中で「嬉しい」という感情の言葉を口にする。
ヴァイオレット自ら「手紙を書きませんか」と彼女にすすめる。
彼女もまた自身の感情から、離れ離れの姉妹の気持ちを
つなげたいと思ったからこその言葉だ。

手紙は代筆ではない。テイラーとヴァイオレットが一緒になってタイプを打つ。
自動手記人形ではなく「ヴァイオレット」と「テイラー」が綴る
友達と姉への手紙だ。
返事が来なくなってしまった友達からの手紙、ヴァイオレット自身も
「友達」が心配だからこそ、彼女の妹とともに手紙を綴った。

その事実に、それを託された「配達人」は配達人としての仕事をする。
手紙は届いて初めて意味がある

「届かなくていい手紙なんてねぇからな」

届いた手紙


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

妹のために名を捨て、自身を捨て嫁いでいったイザベラ。
そんな彼女に届く「妹」からの手紙。
もう使われるはずのなかった捨てたはずの名前が宛名として使われた短く拙い手紙、短くても伝わる「愛」に彼女は自分自身を取り戻す。

友達が協力して綴られた妹からの手紙。途絶えてしまった交流がまた繋がる。
まだ会うときではない、1人前になったときに、
姉にもらった幸せに妹は甘えたままではなく「自立」したときに
初めて自分で配達人として姉に渡して、再会すればいい。
姉にもらった幸せのおかげで自分は自立し幸せになったと。

再会してハッピーエンドではない。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品らしい
どこか儚さを残すハッピーエンドに幸せな「後日談」を想像できる
余韻を感じさせてくれた。

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総評:二人の姉妹の未来を想像させる物語


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

全体的に見て素晴らしい作品だ。
90分という尺の中で二人の姉妹の物語を描き、そこに寄り添う
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という少女の成長を感じさせ、
静かに粛々と淡々と進む物語なのに、そんな物語の中で描かれる
「愛」の描写に思わず涙腺を刺激されてしまう。

TVアニメシリーズと同様に高いクォリティで描かれた作画、
そんな作画で描かれる世界観は美しく、物語を後押ししており、
TVアニメシリーズとは違い「押し付けがましくない」控えめな演出が
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品の本当の良さを
逆に際立たせていたような感覚になる作品だ。

いい意味で演出が控えめだったことで押し付けがましさがなくなっている。
平坦なストーリーは起伏は薄いものの、それなのに泣けてしまう
キャラクター描写とストーリーの純粋な良さが引き立っている。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品の良さを
この外伝を見てしっかりと感じることができる。
TVアニメの続きであることは否めないが、この作品単体としての完成度も高く
TVアニメを見ていればより楽しめる。

1本の映画として非常に完成度の高い作品だった。
「いい映画を見た」という感覚にさせてくれる。そんな作品だ。

個人的な感想:TVアニメよりも


画像引用元:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -予告編より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

演出のくどさが減った分、ダイレクトにこの作品の世界観と
ストーリーとキャラクターが突き刺さり3回位大号泣してしまった(笑)

劇場版はまたTVアニメの監督に戻っているため、
演出がまた違うのでどういう印象を受けるかわからないが、
今から見るのが楽しみだ。

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