「2分の1の魔法」レビュー

3.0
映画

評価 ★★★☆☆(58点) 全103分

あらすじ エルフの少年イアン・ライトフットと、その兄バーリー・ライトフット。2人の父親ウィルデン・ライトフットはイアンが生まれる前に病気で死亡した。ウィルデンは妻のローレル・ライトフットに魔法の杖と手紙を託しており、ローレルはイアンの16歳の誕生日にプレゼントとしてそれらを渡した。引用- Wikipedia


名作一歩手前の強烈な違和感

本作品はピクサーによるアニメ映画作品。
監督はダン・スキャメロン。

魔法衰退

冒頭、この作品の不思議な世界観が描かれる。
エルフやユニコーンなどのファンタジーな生物が存在する世界、
そんな世界にはかつて「魔法」があったものの、
現在は科学技術が発展し、魔法はだれも使っていない。
そんな不思議な世界観だ。

主人公は二人のエルフの少年だ。
彼らの父は生まれる前になくなり、母に育てられ
次男は16歳の誕生日を迎えている。
亡くなった父へのあこがれや幻影、見えない背中を追う彼と
魔法の全盛期の世界、冒険に憧れる兄。

二人は自分に足りない、欠けている何かを求めている。
なりたい自分になれず、やりたいことができない。
目標があるのにそれを達成できない自分を情けなく思う主人公。

一歩踏み出せない、大人になりきれない2人の兄弟に
亡くなった父から「魔法の杖」が送られる。
2人は失われた技術、もはや夢物語の中にしかでてこない魔法で
父を「生き返らせてしまう。」

半分だけ(笑)

ロードムービー

父を完全な姿として蘇らせるため
兄弟は下半身だけの父とともに旅をする。
魔法はたった1日しかもたないうえに、
その後は二度と父を復活することができない。

旅をする中で兄弟は成長をしていく。
魔法を使えなかった弟や父を助けるために
魔法を使いこなすようになり、
トラブルが起きながらも兄と協力して旅を続ける。

いわゆるロードムービー的なニュアンスはあるものの、
激しいアクションがあるわけではなく、
やや淡々としている印象だ。

ただ、ピクサーが手掛けているだけあって3DCGのクォリティは素晴らしく、
特に今作では「機械」の描写に磨きがかかっており、
シーンによってはほぼ実写の映像のように見えるシーンが有る。
そんなリアルな美術、背景描写のなかに
ファンタジーの世界に生きるはずの種族がでてくるのが愉快だ。

その中で光るのは下半身だけの父親だ。
兄と弟の本心がぶつかる中で、ときに喧嘩をすることもある。
だが、そのときに下半身だけしか無い父親が
コミカルに2人を仲裁することで物語が重くなりすぎない。
下半身だけしか無い父の表情が、視線が、
話が進めば進むほど見えてくるようだ。

兄弟

弟は兄をどこか疎ましく思っていた。
いつまで経っても冒険やファンタジーの世界に憧れ、
まともな職業についているわけでもない。
自分に自信のない自分とは違い、兄は自信家だ。
自分を信じて疑わないうえに逃げない。

旅の中で弟は思い返す。
彼には幼い頃の父との記憶が殆どない。
だが、兄がそんな彼の父親代わりだった。
兄であり、父のような存在だと旅の中で彼は自覚する。

ほとんど記憶のない父よりも父らしく、兄は弟を愛し、
弟を信じ、弟の成長を見守ってくれた。
たった3歳差の兄弟だが、その年の差が兄が兄であるがゆえに
父の居ない家庭の中で弟にとっての「父」の役目を果たしていた。

弟にとって兄は兄であり、父親のような存在だ。
旅の中で彼はそれに気づく。
自分には父が居ない、足りていないと思っていた。
だが、違った。

もう、彼には余りあるほどのものを兄からもらっていた。
それに気づいた彼の表情と兄との幼き日の思い出に
思わず涙腺を刺激されてしまう。

「お父さんは知らないけど、いつもお兄ちゃんが居てくれた」

会うべき人

兄には後悔があった。父の最期に会えなかった。
そんな逃げてしまった後悔、最後に会えなかった後悔が
ずっと彼を大人にしきれていなかった。
そんな兄に最後の一瞬を弟は譲る。

たった一瞬の再会、別れの言葉、最後のハグ。
彼の後悔という名の棘が胸から抜き去れ、彼もまた成長する。
もう2度と会うことはできない。
だが、二人はもう大丈夫だ。
自分に自信を持ち、後悔もなく、彼らは成長した。

起承転結スッキリとした物語が
気持ちよく描かれている作品だった。、

総評

全体的にみてまっすぐにまとまっている作品だ。
序盤から中盤のロードムービーはやや淡々としており
ピンとくる部分は少ないものの、
その中で描かれる兄弟の物語が終盤で伏線として生き、
二人の成長、兄弟の物語がストレートに描かれている。

ピクサーらしいコミカルな動きやキャラ描写は素晴らしく、
ファンタジーな世界の住人たちが現代的な街で生きる様子は面白く、
下半身しか無い父の動きで彼の感情や表情すら見せる描写は
さすがとしか言いようがない。

ただ、終盤の冒険模様や序盤から中盤のロードムービー部分など
やや「ありがち」かつどこかで見たことのあるようなシーンも多く、
もう一歩、作品全体を練り込みきれてないような印象も受ける。

ストーリー自体は起承転結すっきりとしており、
主人公である弟の最後の選択や
終盤の展開は思わず涙腺を刺激されるものの、
細かい部分での引っ掛かりや練り込みの甘さを感じ
名作には一歩及ばないような印象を受ける作品だった。

個人的な感想:近藤春菜

今作では近藤春菜さんが兄弟の母親役のキャラの
吹き替え声優をしているが、最初こそ違和感はなかったものの
見た目も声もそのまま近藤春菜さんであり、
中盤くらいからはもう近藤春菜さんにしかみえなかった。

更に意味不明なのは今作のエンディングが
なぜかスキマスイッチの「全力少年」であることだ。
様々なCMなどで起用されているこの曲が
なぜこの作品でエンディング曲でわざわざ起用されるのか、
エンディングが流れた瞬間に
「え?なんで全力少年!?」と違和感がすごい生まれてしまった

ストーリー自体は悪くなく、涙腺の弱い私は
終盤でホロリとさせられたものの、
その直後のスキマスイッチで我に返ってしまった。
ちょっと色々と引っかかりがある作品だった。

「2分の1の魔法」おもしろい?つまらない?

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