劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-

評価/★★☆☆☆(29点)

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男は度胸、女は愛嬌、オカマは最強

本作品はTIGER&BUNNYの劇場版。
前作は総集編+新規ストーリーだったが、今作は完ぺきに新規ストーリーのみの劇場版だ
TVアニメシリーズから監督は変更されている。
なお、本レビューにはネタバレが多く含まれます。

基本的なストーリーは最終話からの続き。
能力減退を理由に一時は引退した虎徹だったが1分間限定で能力を使えるHEROとして
バーナビーとともに二部リーグで活躍していた。
そんな中、二人のスポンサー企業のオーナーがカリスマ実業家に変わり一部リーグに戻ることに。
しかし、一部リーグに戻るのは「バーナビー」のみでバーナビーの相棒は
新たなヒーロー「ゴールデンライアン」が務めることに・・・というところからストーリーが始まる

冒頭から肩透かしを食らう。
SDキャラによるキャラ紹介が流れ、毎週違うキャラ紹介が行われるらしい
この部分は特に新鮮さはなく、確かにSDキャラクターは可愛いが必要性はあまり感じない。
ファンのリピート効果をより強めるためなのかもしれないが、リピート効果は弱そうだ。

更にそんなSDキャラによるヒーロー紹介が終わりようやく本編が始まるかと思えば
「5分間のアニメダイジェスト映像」が流れる。
この作品は新規向けではなくあくまでTVアニメを見ていることが前提の作品であり、
見に来ている人の多くはTVアニメを見ているはずだ。
そのためダイジェストの必要性を一切感じなく、特に面白みを感じない。

SDキャラの映像、ダイジェスト映像と映画開始から10分近く本編が始まらない。
ダイジェスト映像が終わり、ようやく本編が始まるか!!!
・・・と思いきや、いきなりOPが流れる(苦笑)
長い映画の予告CM、マナー映像を我慢して見終わった後に更に我慢しなければならず、
映画が始まっているはずなのになかなか本編にいかないというのは
これまで色々なアニメ映画で見てきた私にとって初めての経験だ。
正直、この時点でこの作品に対する期待感が一気に下がってしまった。

そしてようやく本編が始まる。
見だして感じるのは明らかに「CGの質」が上がったことだろう。
TVアニメの時点からヒーローのCGの質は高かったが、
よりレベルの高いモデリングとCGになっており、背景との違和感がよりなくなった。
そのおかげか「アクションシーン」の動きが明らかに違う。

TVアニメでは確かにCGの質はよかったがアクションシーンの動きの部分や
戦闘シーンの面白さは正直物足りない部分があった。
だが、本作品ではそんな反省を活かすかのように質の上がったCGを最大限に動かしまくる。
特に「折紙サイクロン」の忍者アクションのレベルはかなり高く、
巨大な手裏剣に乗って飛行したり、背後から奇襲をかけたりと
「見切れる」だけだった彼がアクションシーンで見応えのある動きを見せていたのは驚いた

しかし、その反面でCG以外での部分に違和感も感じる。
特にキャラクターデザインが若干変わったことによる違和感がかなり感じられる
バーナビー、ファイアーエンブレム、ロックバイソン、ブルーローズの
キャラクターデザインはTVアニメ版から大きくは変わっておらずそこまで違和感はないが、
虎徹・折紙サイクロン・スカイハイ・ドラゴンキッドのキャラクターデザインの変化は
好みが分かれる点だろう。

虎徹はTVアニメ版に比べ若干顔が長くなり、、
折紙サイクロンは無駄に髪が伸びている一方で、ドラゴンキッドはベリーショートに。
スカイハイは変更点を言葉で説明しにくいがどこか違和感のある感じになっている。
特に虎徹のキャラデザは私個人としてはなれるまで時間がかかった
その一方で「成長した」と受け止めれば虎徹の娘である楓のキャラデザは可愛らしかった

更にストーリーでも違和感を感じる。
序盤は1部リーグに行く「バーナビー」と別れ、自分は2部リーグで活躍するという展開になるのだが、
あっさりと2部リーグが新オーナーに潰されてしまう。
能力減退してもヒーローで居ることにこだわった虎徹がヒーローでいられなくなるという
重要な展開なはずなのにあっさりとしており、あっさりとタクシーの運転手なんかしている。

ヒーローで居られなくなる葛藤や
1部リーグで新たな相棒とうまくやっているバーナビーを見つめるような描写もあるのだが、
描写が尽く浅く、虎徹の「哀愁」が漂う前に場面が展開してしまい
本来なら場面が展開してしまう前にもっとキャラクターの心理や変化を描かなければならないのに
あっさりと展開が変わってしまう。
本来なら「ヒーローでなくなった虎徹」というのはもっと大事なシーンのはずなのだが、もう一歩足りない。

キャラクター描写は他のキャラクターも同様に浅い。
特に劇場版で出たキャラクターの描写の浅さはストーリーの微妙さにも直結している
その代表的なキャラクターとも言えるのが「ライアン」だろう。
ライアンは予告編などを見た方なら御存知の通り、バーナビーの新しい相棒であるヒーローだ。
別の地域で活躍していた彼は新オーナーにスカウトされバーナビーの相棒になる。
・・・以上、彼の設定はそれだけだ(苦笑)
今回映画の中で起こる事件の黒幕や敵でもなんでもなく、ただスカウトされただけ。

本来なら「虎徹」が相棒でなくなった「バーナビー」が虎徹に対する思いや懐かしさを感じたり、
「ライアン」とうまくいかないような描写があったり、
実は彼が敵!で黒幕!という展開があれば王道の中の敵キャラクターとして理解できるのだが、
ナルシストな性格で視聴率や金にこだわる彼だが虎徹と同じようにバーナビーの最初は少し反発しつつも
意外にうまくやっている、だが意外にうまくやっているからこそ微妙だ。

彼は最初から最後まで無難にバーナビーの相棒を務め、
あっさりと別の所にスカウトされ旅立っていく。
ある意味でこのあっさりとひょうひょうとした感じが彼の魅力とも言えるのだが、
もう一歩踏み込んだキャラ描写が欲しかったと言わざるを得ない。

そして敵、今回の敵は大規模なテロを行う犯罪者たちだ。
「女神伝説」という作中の架空の話のなぞり、街で事件を起こしていき、
ファイアーエンブレムを昏睡状態にするなど厄介なNEXT能力まで持っている
本来なら「彼らの目的」や「敵キャラの描写」が重要なのだが、
本作品のキャラ描写は尽く浅く、敵キャラももちろん浅い。

ただ凄い音を発生する能力を持つ敵、ただ分身する能力持つ敵、ただ眠らせる能力を持つ敵。
それだけだ、表面上の薄いキャラ設定と敵という立ち位置なだけのキャラクターだ
彼らがなぜ大規模なテロ行動を起こしたのかという理由も物語後半でわかるのだが
大規模な犯罪を行った割には「たった一人を目立ったところで殺すため」という
なんとも犯罪行為の大きさに見合わない理由だ。

TVアニメでは敵キャラも魅力的だっただけにこれだけ浅いのは残念だ
それぞれのヒーローと対戦させるためだけに数を用意してしまった結果、
敵一人ひとりのキャラ描写が薄くなってしまった印象だ

更に黒幕。
黒幕も何の意外性の欠片もないキャラクターで掘り下げもほとんどされていない
映画で出てきたキャラクターを恨んで、
映画で出てきた敵キャラ4人が恨んだ敵を殺すためだけに大規模すぎるテロを起こす。
ヒーローたちや「ウロボロス」には何の関係もない蚊帳の外な感じが強く、
これが映画ではなくTVアニメでの何話かなら納得できたのだが、
映画という媒体でやるにしてはあまりにも浅い敵だ。

その反面で過剰なまでのキャラクター描写があったのが「ファイアーエンブレム」だ。
彼は今回敵により昏睡状態にされる、昏睡状態の最中でトラウマを呼び覚まされるという感じなのだが、
明るい彼の意外な「重く暗い過去」はどう受け止めていいかわからない。
このトラウマの原因の人物が今回の敵に居るならばまだ納得できるのだが、特にそういったことはない。
中盤からファイアーエンブレムのトラウマシーンが何度も挟まれるのだが、
それがストーリーの面白さや深いキャラクター描写に繋がっているとはいえない。

欠点ばかり述べたが面白いポイントもある。
キャラクター描写においては「楓」がお父さんに説教したり、
ブルーローズの恋心だったり、折紙サイクロンの成長だったり、ロックバイソンの迷走だったり(笑)
所々キャラクター描写でも光っているポイントはあった。

更にテレビアニメに比べ質の上がったCGや戦闘シーンや
終盤の「1分間だけのタイガー&バニー」の描写は素晴らしかった。
最後の巨大な敵を前に全ての集結し、能力発動までの時間を稼ぎ、
正確に測ったわけではないが、1分の尺で能力発動シーンを
劇場スクリーンを思う存分活かした迫力のあるシーンに仕上げたことは評価したい。

全体的にキャラクターの使い方が悪い。
虎徹という主人公のキャラクター描写ももう一歩足らず、新キャラクターの描写も浅い。
そんな浅いキャラクター描写しかしないままで違和感のあるキャラクターの使い方をしているせいで
本来なら楽しめるはずの王道のストーリーがグダグダにしてしまっており、
無駄に長いファイアーエンブレムのトラウマ描写がある一方で虎徹の葛藤があっさりだったり、
ストーリー構成もキャラクターの使い方の悪さに引っ張られてしまっている。

本来はもっと描かなければならないはずのキャラクターの描写がなく、
別に必要性のないシーンやキャラクター描写に尺を取られてしまっており、
結果として何がしたかったのかわからなくなってしまっている。
ストーリー的には一行で言うなら
「何やかんやあったけどタイガー&バニーのコンビは一部リーグに復活したよ!」
というだけだ。

色々とやりたかったことはわかる・・・わかるのだが
そこに至るまでのストーリー展開とそこに至るまでのキャラクターの描写が浅く
映画を見ている最中は騙されるのだが、思い返すと欠点が蘇ってくるような作品だ

個人的にだが前作では「劇中CM」があり私は好きだったのだが、今作ではCMはなかったのが残念だ
更に相変わらずの「斉藤さん」なのだが、斉藤さんの音量はもう少し小さくても良かったのでは・・・
聞き取れてしまっては意味が無い(笑)
更に言えば能力をつかわずに闘う虎徹が「スパイダーマン」にしか見えなかった。
本編の前にアメイジングスパイダーマン2の予告が流れて酷似したシーンが多かったため
余計にそう感じただけかもしれないが・・・

やはり前作から「監督」が変わったことは大きい。
前作でも新規ストーリー部分は敵との追いかけっこのみだったが、
総集編のおまけだからということで納得できた。
しかし、今作のキャラクターの使い方の悪さは納得できるレベルではない。
次回作や2期があるなら監督の変更を強く願いたい所だ。