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「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」レビュー

1.0
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評価 ★☆☆☆☆(17点) 全108分

『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』本予告【11月25日(金)公開】

あらすじ 【魔国連邦】テンペストの西に位置する【ラージャ小亜国】。かつては金の採掘で栄えていたが、今はその繁栄は見る影もなく、湖は鉱山毒に侵され、国は危機的状況に陥っていた。引用- Wikipedia

茶番大渋滞

本作は転生したらスライムだった件の劇場オリジナル作品。
監督は1期の監督である菊地康仁、制作はエイトビット

映画オリジナルキャラクター

映画冒頭から激しい戦闘シーンが描かれる。
映画オリジナルキャラクターである
ベニマルの兄貴分であるヒイロがどこかで苦戦を強いられており、
そんな彼の戦闘シーンが描かれている。

まさに一騎当千、苦戦はしつつも鬼人として、
鬼人の傭兵として「守るべき」もののために戦っている。
だが強敵が現れて負けてしまう。
ヒイロというオリジナルキャラクターを序盤できちんと
印象付ける冒頭のシーンだ。

彼はとある人物に助けられて一命をとりとめる。
ラージャ小亜国の王女に助けられた彼は、
「名付け」をされ助けられる。

この序盤の展開は映画オリジナルキャラクターの二人を掘り下げるものだ。
そんな王女である「トワ」がやや引っかかってしまう。
某演技とまではいかないものの、いかにもな芸能人声優だ。
調べると若手の女優さんのようだが、自然な声の演技とは言わず、
プロの声優さんばかりの本作品において彼女の演技だけが妙に浮いている。

転生したらスライムだった件という作品の映画化で、
原作やアニメを見ずに行く人のほうが少ないだろう。
芸能人声優の起用は「宣伝効果」を狙ってのものだ。
「◯◯が出る!」ということ自体を宣伝にして、
その芸能人のファンを呼び込むためのものだ。

しかし、そんな宣伝が「転生したらスライムだった件」という
作品に必要だろうか?
近年、アニメ映画が100億超えの大ヒット作品を多く生み出しており、
そんな映画の多くが芸能人声優を起用していない。

それにも関わらず、この作品は旧態依然とした芸能人声優による
宣伝を行っている。
彼女の演技が作品全体の違和感に繋がってしまってるのは
本当に残念でならない。

ジュラ=テンペスト連邦王国

そんな映画冒頭のシーンが終わるとジュラテンペスト連邦王国に
場面が切り替わる。
そこに住まうおなじみのキャラクターたちの日常を描きつつ、
ファンサービス的に各キャラクターを出している。
時系列的には2期のラストから繋がっており、平和なひとときだ。
そんな平和なひとときをかき乱すものが現れるところから物語が動き出す。

某有名映画レビューサイトでは
「独立した物語としてテレビシリーズ未見の人でも楽しめるように構成されている、予備知識0でも楽しめる」
と書かれていたが大嘘だ。人の感想を否定したくはないが、
この作品を原作はおろかTVシリーズも見ていないひとが見ても
楽しめるほど原作未見の人に優しい映画ではない。

リムルがなぜスライムの姿をしているのか、
この国がどうやってできたのか、各キャラクターの紹介もほぼなく、
世界観や「これまでのストーリー」が語られることもない。
制作側も「原作もしくはTVアニメ」履修済みを前提に作っている。
シリーズ未見の人が楽しめるわけがない。

ベニマル

ヒイロがリムルたちの国を襲撃するのは、
鬼人族の宿敵である「オーク」がいるからこそだ。
彼らの種族はオークが襲ったことで滅びており、
そのせいでヒイロはオークらを恨んでいる。

だが、そんな恨みもあっさりと晴れる。
ベニマルがオーク達のことを仲間と読んでいるからこそらしいのだが、
詳しい経緯も知らぬ間にそれを飲み込むのはやや違和感がある。

「転生したらスライムだった件」は様々な種族が問題を抱えている。
オーガという種族は「飢餓」に苦しんでおり、
それゆえに他の種族を襲うしか生き残るすべがなかった。
だが、リムルが現れたことでそれが解決し、
宿敵だったはずのオーガと鬼人族がこの国ではともに暮らしている。

そういう経緯があるからこその和解だ。
そういった経緯を知らずにヒイロは納得しており、
あっさりと彼らと酒を飲み交わしている。

里を失った鬼人族、しかし、
ベニマルはリムルという主をみつけ、
ヒイロはトワという主を見つけている。

だが、リムルが犠牲と後悔をえて魔王になったように、
トワもまた自らを犠牲にして国を支えている。
彼女が自らを犠牲にしているからこそ、トワの国は成り立っている。
しかし、それにも限界を迎えている。

リムル

そんな状況だからこそリムルたちの国への使者として
ヒイロは訪れている。
序盤から基本的に「ヒイロ」が主人公のように物語が展開している。
本来の主人公であるリムルが脇役に成り下がっている。

中盤からヒイロたちの国の事情を知り、リムルたちが動き出すのだが、
このあたりも各キャラクターをファンサービス的に
ばかすこ登場させてるだけに過ぎない。

人間の姿のヴェルドラや魔王になったリムルにおどろいたり。
それがどんなキャラクターでどんな関係性なのかは
初見の人にはわからず、シリーズ視聴者にとってはすでに知っているキャラが
出てきているに過ぎない。

リムルもリムルで
大賢者が女王にかかった呪いをなんとかするわけでもなく、
「はちみつ」を食べさせて滋養強壮するだけだ(苦笑)
リムルがいなくとも栄養のあるものを食べさせるくらいはできそうなものだが、
彼を活躍させるためだけのシーンでしかなく面白みもない。

ヒイロたちの国は「鉱山」からの毒に侵されている。
その毒をリムルがなんとかしてくれるのはいいのだが、
その毒は謎の「魔法陣」によって発生させられてるものだ。
女王の呪いの原因であるティアラはなんなのか、
誰が毒を発生させる魔法陣を設置したのか。

黒幕

中盤で突然、わかりやすく黒幕が現れる。
そんなぽっとでの黒幕がヒイロたちの国に
色々仕掛けていたことがあっさりとわかる。
拍子抜けするほどあっさりと黒幕が出てくることで、
作品全体のストーリーの浅さが目立ってくる。

そんな黒幕によってリムルによって浄化された毒も、
トワの改善されていた呪いも悪化してしまう。
リムルたちは「黒幕は誰かわからない」というのだが、
見てるこっちにはあっさりとわかってしまっている。
なぜ、ここまで黒幕をあっさりと中盤で
わかりやすく描いてしまったのか謎でしかない

そんな黒幕に「ヒイロ」もあっさりと騙される。
見てる側としては黒幕で悪いやつと分かっているキャラに、
今作の主人公ともいえる存在があっさりと騙される姿は滑稽だ。

そんな黒幕はお姫様を救うために、
ヒイロにとあるアイテムを飲み込んでほしいと頼んでくる。
その名前が問題だ。

「カースオーブ」である(笑)

これで黒幕がわざわざアイテムの名前を彼に説明しなければ
違和感がないが、ヒイロにわざわざ「カースオーブというものです」と
説明してしまっている。

もう「危ないアイテムですよ」と分かってるものを
ヒイロはあっさりと騙されて飲み込んでしまう。
自分の命を救ってもらった存在を救うために
バカになってるのかもしれないが、あまりにも滑稽すぎる。

自分の命を犠牲にしてまで姫を救おうとするヒイロ、
そんな自己犠牲を否定し生きていてほしいというトワ。
この会話は本来は感動できるシーンのはずなのに、
ヒイロが黒幕からカースオーブなんて
明らかに怪しいアイテムを飲み込んでしまっているせいで台無しだ。

そんな会話の後に黒幕が真相をヒイロに明らかにしてくると
ヒイロはこんな事を言う

「騙したのか!?」

むしろ、騙されてると分かっていても頼るしかなかったくらいの
セリフやキャラクターであってほしかったと願うほど、
ヒイロというキャラクターがあまりにも滑稽だ。
バカで騙されたヒイロはカースオーブによって暴走してしまう。

バトル

終盤そんな黒幕とリムルのバトルになる。
「鉱山」という場所をいかした戦闘シーンなのだが、
敵はただただトロッコで逃げ回ってるだけだ。
魔王になったリムルならすぐに追いつけるはずなのに、
あえてランガの上に乗って追いかけている。

この鉱山のシーンのアニメーションには力が入っており、
インディージョーンズのようなシーンになっているが、
それが面白さになっていない。
たしかにアニメーションとしてはよく動いているのだが、
リムルが舐めプしているようにしかみえない。

物語の最大の黒幕である「ヴィレ」という
ディアブロと同じ悪魔が終盤でてきて彼らも戦うのだが、
このシーンも対して盛り上がらず、ディアブロの圧勝だ。

リムルの仲間たちもヒイロたちを攻めてきた他国の
適当なャラクターと戦うのだが、
大して盛り上がるような戦闘シーンでもなく、苦戦するわけでもない。
結局リムル含めてリムル陣営が強すぎる。

そんな強さに相対する敵がこの作品にはほぼ居ない。
その「圧倒感」こそが、転スラの魅力であり、
なろう系作品の面白さなのはわかるが、
それにしても敵の歯ごたえがなさすぎだ。

名前すら出てこないモブ兵士とリムルの仲間との戦いは何の盛り上がりも
見せ場にもなっていない。
TVシリーズでは歯ごたえのある敵、
魅力のある敵がいたからこそ、圧倒感のある戦闘シーンでも面白さがあった。
だが、この作品にはないからこそ圧倒感を面白さにしきれていない。

鬼人バトル

リムルがのんきに追いかけっこしてる中で、
暴走したヒイロとベニマルが戦っている。
さっさとリムルが追いかけっ子をやめてヒイロとの戦いに
参加すればすぐ終わりそうなのに、舐めプという追いかけっこを
わざわざさせることでメインの戦闘からリムルを遠ざけている。

途中で別の悪魔があらわれてランガが戦うのだが、
1分もかからず倒してしまう(苦笑)
さんざん、おいかけっこした相手もカースオーブで
パワーアップしたりするのだが、
パワーアップしたところで秒でリムルに食われて終わりだ。

ベニマルとヒイロの戦いはそれなりに盛り上がっているものの、
そんな戦いの中でリムルの舐めプバトルや他の仲間のバトルが
さしこまれることで、話の腰が折られてしまう。

茶番極まる

終盤の茶番はちょっと笑いを超えて呆れるほどだ。
暴走したヒイロが自ら命をたつ。
力の代償に身が石になってほろびてしまう。
もう明らかに死んだと思ったところ、トワが自らの力を
限界まで使い彼の体を元通りにして生き返らせる。

ここまではまだ納得できる。しかし、ここからが問題だ。
トワは限界まで力を使ったことで体が光になりばらばらになってしまう。
リムルの中の大賢者も「ヒイロ」を救う手段もなく、
そんなヒイロを救ったトワも救う手段はないと告げている。

今作の大賢者はあまりにも無能だ。
滋養強壮の蜂蜜を与えたくらいで、あとはわかりません、ありませんの連呼だ。
大賢者とはいったい…と頭を抱えてしまう。

物語の茶番感はすさまじく、つっこみどころもあるが
映画オリジナルヒロインが死亡して終わるというラストで
まとまればまだファンムービーとして飲み込めたところ、
この作品は更にやらかす。

自らの命を犠牲にしてヒイロを救ったトワ、
そんなトワを「悪魔」が救ってくれる。ご都合主義全開だ。
体がばらばらになって明らかに死んでキャラクターたちが涙を流す中で、
復活するという展開を2回も繰り返してしまう。

本当に茶番にまみれた作品だった。

総評:茶番がすぎる…

全体的に見て茶番の一言で片付く作品だ。
原作を読んでいる人、アニメを見ている人のファンムービーとしては
本来の主人公である「リムル」の活躍が意図的に削られており、
他のメインキャラクターたちもベニマル以外はほとんど出ただけで、
戦闘シーンも適当にしか描かれていない。

転生したらスライムだった件の初の映画作品なのに、
主人公もメインキャラクターもろくに活躍しないのは
他作品のファンムービー的な映画と比べても物足りない部分が多すぎる。

ストーリー的には映画オリジナルキャラクターの物語だ。
ベニマルの兄貴分であるヒイロと、そんなヒイロの主であるトワの
物語をメインに描いている。
これは過去の様々なTVアニメ映画でやった手法ではある。

本編に影響を与えないように映画オリジナルキャラの物語を中心に、
そこに主人公や他のメインキャラクターが絡む手法だ。
最近はTVアニメの続編を映画でやったり、前日譚をやったりすることが
増えたが、古き良きTVアニメの映画化のベタな手法だ。

しかし、それをうまく使いこなせていない。
特に「ヒイロ」は最初はかっこよく見えるのだが、
中盤では明らかに怪しい相手からもらったアイテムを飲み込んで暴走をする
バカっぷりを発揮し、ヒロインは明らかな芸能人声優で魅力は薄い。

それだけでなくストーリーも酷い。
黒幕が悪いことを企んでいて、そんな悪巧みを
リムルたちの活躍で阻止しました。
シンプルに言えばこんなストーリーだ。

そんなシンプルなストーリー自体は悪くないのだが、
ヒイロのバカっぷりや、ラストの死んだかと思ったら生き返った展開を
二度も見せられる茶番劇感はすさまじく、
見終わった後に乾いた笑いしか出ない作品だ。

原作やアニメを見ていることは当然であり、
それを前提としたファンムービーであることは間違いないのだが、
もう少しリムル含めて他のメインキャラクターを
しっかりと活躍させ、見せ場があってもいいのでは?と
茶番部分を除いても物足りなさが凄まじい作品だった。

個人的な感想:強すぎる

プロデューサーが本作の舞台挨拶において
「リムルが強すぎるので、起承転結を作るのに苦労した」と
述べていたらしいのだが、それをひしひしと感じてしまう作品だ。

リムルを中心に据えると、それにふさわしい敵を考えるのが難しく、
リムルを中心に据えないためにトロッコで逃げ回る敵を
追いかけっこさせたのだろう。

そういう制作側の苦悩が作品の内容にも響いてしまっている作品だった。

「転生したらスライムだった件」レビュー
評価 ★★★☆☆(51点) 全25話 あらすじ サラリーマン三上悟は通り魔に刺され死亡し、気がつくと異世界に転生していた。ただし、その姿はスライムだった!引用- Wikipedia

 

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