「HELLO WORLD」レビュー

スポンサーリンク
映画
スポンサーリンク

評価 ★★★☆☆(59点) 全97分

あらすじ いつも自分の決断に自信が持てず、主体性がないことがコンプレックスの堅書直実は、2027年の京都に住む凡庸な高校生であったが、ある日不思議な三本足のカラスを追いかけた先で、10年後の2037年から来た未来の自分自身だと名乗る青年、「先生」(カタガキナオミ)と遭遇する引用- Wikipedia

スポンサーリンク

公式ネタバレはやめたほうがいい

本作品は劇場アニメオリジナル作品。
監督は伊藤智彦、制作はグラフィニカ。脚本は野崎まど
なお、盛大にネタバレを含みます。

セルルックCG


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

この作品は3DCGで作られている作品だが、いわゆるセルルックCGで作られている。
CGと言われなければわからないほどにアニメ調で描かれた作画は美麗であり、
「ぬるぬる」っとCG特有のなめらかな動きを見せてくれる。

やや普通のアニメと比べて「動きすぎている」違和感は少し感じるものの、
この作品の舞台が「デジタル空間」であることを考慮すればその違和感も
演出のうちなのかもしれない。

背景の作画もこだわって描かれているものの、
「君の名は」の大ヒット以降、アニメ映画は必然的に背景の作画のレベルが
高くなっていっており、これが「普通」になってしまっていることに驚いてしまう。
本来なら評価すべき背景作画描写だが、最近の他のアニメ映画では普通レベルであり
今年の天気の子ではそんな普通レベルを圧倒するような背景を見せられてるだけに
やや物足りなさすら感じてしまう。

キャラクターデザインを「けいおん!」でおなじみの堀口悠紀子さんが
手掛けていることもあり、ヒロインは非情に可愛らしい。
彼女のキャラクターデザインが合ったからこそ、この作品のある種の芯ともいうべき
「一行 瑠璃」という女の子魅力がより深まっている。

10年後の自分とともに


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

序盤は非情に淡々としている。
本が好きで臆病かつ優柔不断で控えめな性格の主人公の日常が描かれる、
やや盛り上がりに欠ける始まりは映画の始まりとしてはやや地味ではある。
そんな中で主人公の前に「10年後の自分」が現れる。

10年後の自分は主人公がいる世界が「仮想世界」であり、
過去の京都を量子コンピューターで再現した世界で
主人公たちも「データ」だという真実を告げられる。かなり衝撃の事実だ。
自分自身の存在がデータであるという事実を告げられ、
10年後の自分と主人公が何をするのか。

淡々とした始まりからの急展開で物語の期待感を強く感じさせてくれる

口説け


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

しかし、やや拍子抜けの展開になる。
10年後の自分が主人公に何をさせに来たのかと思えば
「一行 瑠璃と付き合う」ことだ。
同級生であり、まだろくに話したこともない彼女と恋人同士になる運命であり、
更に彼女は初デートの日に落雷で亡くなる未来を10年後の自分から告げられる。

彼の目的は「デジタル世界でだけでも彼女の笑顔が見たい」という
ものすごく身勝手な理由であり、主人公はそれに巻き込まれていく。
未来の展開を全て知る彼の言われた通りの行動する中で、
「一行 瑠璃」と徐々に仲良くなっていく。

ストーリー展開としては非常に丁寧なのだが、やや冗長なシーンが多く、
「仮想世界」や「10年後の自分」が出てきた割には
ストーリーがこじんまりしてしまっている。

TVアニメならば1話1話としての盛り上がりやオチをつけられたかもしれないが、
映画という1本に続くストーリーの中の展開としては
日常描写が長く、やや盛り上がりに欠ける展開だ。

一行 瑠璃


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

そんな日常描写の中で少しずつヒロインである「一行 瑠璃」の
魅力が垣間見えてくる。彼女は「ツンツン」なクール系キャラだ。
無口でどこか強情、最初は主人公にビンタを噛ましてくるくらいのヒロインだ。
しかし、そんなヒロインが主人公と徐々に関わっていく中で態度を軟化させ、
少しずつ「可愛らしさ」が見えてくる。

主人公はヒロインとの出来事を10年後の自分から事細かく告げられている。
だが、そんな10年後の自分が体験したこととは別の出来事や、
10年後の自分がやらなかったことをやることで、
主人公なりにヒロインとの仲を深め、それが恋愛感情につながる。

非常に丁寧な青春映画ストーリーを見ているかのような恋愛描写は微笑ましく、
話が進めば進むほどにじみ出てくる「一行 瑠璃」の可愛さがたまらない。
クラスメイトに言われるがままにコスプレをした姿などたまらないものがある。

そんな彼女に主人公が「告白」する。ベタベタな告白だ。
そんな告白に対して彼女は少しの無言の後に答えを出してくれる

「交際は一人ではなし得ません、二人でやってみましょう」

実に彼女らしいこのセリフ、この1行のセリフに彼女の魅力がぐっと詰まっており、
このセリフを言った後に赤面してしまう描写など本当に可愛らしい。
冗談ではなく、この作品の7割は彼女の可愛さでできていると言っても良い。
それほど、このヒロインが魅力的だ。

神の手


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

主人公は10年後の自分から力をもらっている、それが神の手だ。
これは主人公のいる世界に干渉する機械であり右手に備わっている。
彼が世界に干渉することで「想像したものを具現化」する力であり、
仮想空間だからこその力ともいえる。

ただ、この神の手の練習シーンが長い。
主人公が苦労して力を使いこなすための修行シーンとも言えるのだが、
バトル漫画でもないのにそんな修行シーンが必要とは思えない。
その分、ダイジェストになっていた日常描写の部分や、
掘り下げきれていないアイドル的存在のキャラの描写などもっとできたはずだ。

神の手を使って具現化するという行為自体は面白く、
具現化したものを使ってプログラム相手に戦うシーンも面白いのだが、
「神の手」もまたプログラムなのだから練習するシーンは要らなかったのでは?
と感じてしまう点だ。わざわざ尺を削って入れる必要がない。

運命の日


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

そんな中で運命の日が訪れる。
記録されたデータ通りに「一行 瑠璃」を抹消しようとする世界のプログラムと、
その記録のデータを改ざんしようとする主人公の戦いだ。
神の手を駆使し、主人公はヒロインを守ることに成功する。

しかし、ここで裏切りにあう。
この作品は「どんでん返し」がある意味、作品のやりたいことの1つなのだろう。
10年後の主人公が助かったヒロインのデータを現実世界に持ち帰ってしまう。
彼の目的は現実世界で実は死んでおらず脳死状態のヒロインのあの日のデータを
手に入れることで現実世界の彼女の脳を修復しようとしている。

信じていたはずの未来の自分に裏切られ、好きになったヒロインも奪われる。
しかも主人公の世界はヒロインのデータが居なくなったことによりおかしくなり、
現実世界では「リカバリー」、つまりリセットされようとしている。

この中盤にどんでん返しは素晴らしい。
ストーリー的にも先が読めず、一体どうなるのか。
一時はハッピーエンドに見えたシーンからのバッドエンド状態は
物語の期待感を嫌がおうにも高めてくれる。

10年後の主人公


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

彼もかなり苦労をしていた。落雷の事故で脳死状態のヒロインを救うために、
勉強をし、量子コンピューターの権威のもとで働き、地位を高めていき、
何度も仮想空間への侵入を試みる実験を繰り返す中で、彼自身の肉体もボロボロだ。
しかし、彼はそれを無し得た。

ある意味で彼も主人公だ。彼目線からすればデータでしかない主人公たちを
失っても、現実のヒロインを救いたかっただけだ。
所詮彼らはデータでしかないという思いもあったのかもしれない。

しかし、うまくいかない。
ヒロインは「記憶のズレ」があり、10年後の主人公に違和感を感じる。
そして同時に、ありえないはずの減少が起こる。主人公たちの世界からの侵入だ。
本来は仮想空間でしかありえないはずの修復プログラムが現れ、
彼女のことをまた消し去ろうとしている。

ここでもさらにどんでん返しだ。10年後の主人公は気づく。
彼が現実と思ってた世界もまたデータの世界だったのだと。
ただ、この時点である程度のオチが読めてしまった人もいるだろう。

この作品の予告では
「この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る――」という
キャッチコピーが使われている。
この予告と10年後の主人公の気付きのおかげで、ラストのオチが読めてしまう。
「ああ、現実世界に戻るんだな」と。

夢オチ


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

結局、この作品は壮大な夢オチだ。
そもそも「どういうことだったんだ?」と思う部分もかなり多いが、
ここからは最大のネタバレになるので注意願いたい。

主人公はヒロインが落雷に撃たれたと思っていたが、
実は落雷に撃たれたのは「主人公」だった。
仮想世界で10年後の主人公が仮想世界の主人公にやったことと同じことを、
現実世界での「ヒロイン」が行っていたというオチだ。
この作品の97分は主人公が仮想世界という夢の世界で見ている出来事でしかない。

こうなるとやや拍子抜けの部分は理解できない部分もある。
仮想世界の中での仮想世界というちょっとどうなってるんだ?と思う設定や、
仮想世界から現実世界にデータを持ってくるためには
「精神と器」を同調しなければいけないという、ちょっと理解しにくい設定、
唐突にラストで舞台が「月」になってる点などいまいちしっくりこない部分が多い。

正直、中盤の時点でラストのオチが予告のせいで読めてしまっており、
「現実世界に戻る」というオチは理解できるものの、
そこまでの過程や細かい設定をいまいち把握しきれず、飲み込みきれない。

仮想世界での主人公とヒロインが幸せそうなラストを迎えてエンドなら
スッキリできたのに、ラストのオチがあることで、
そのスッキリ感を消し去ってしっくりと来ない感じが残ってしまう作品だった

総評:理解度が重要


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

全体的に見てヒロインの可愛さが合ったからこそ見れた作品だ。
仮想世界の中での主人公とヒロインの恋愛描写は素晴らしく、
そこからのどんでん返し、更にそこからハッピーエンドに至る過程は面白く、
主人公もヒロインも新しい世界で生きていく「HelloWorld」というタイトルの回収も
素晴らしかった。

しかし、そんな素晴らしいハッピーエンドをSF的なオチのせいで
消化不良になってしまう。
物語の97分が20年後の主人公が仮想空間の中で10年過ごした夢の中の出来事であり、
主人公は仮想空間の中の仮想空間の住人だったというわかりにくい設定は
ちょっと見終わった後に「あれはどういうことだ?」と考えてしまうような作品だ。

序盤から中盤までの日常描写や神の手の練習シーンなど、
「映画」としてはやや盛り上がりが欠けるシーンも多く、
妙に回想シーンが多く同じシーンを何度も繰り替えすのも気になるところであり、
サブキャラも使い余してる感じが強い。

おそらく人によって物凄く好みが分かれる作品だ。
ある程度、最低限のSFの知識がないとついていけなくなる部分もある。
元ネタになっているであろう「マトリックス」や「インセプション」などの
映画を見てるか見てないかでも理解度が変わる作品であり、
見てると理解しやすいが見てないと理解しにくい部分もある。

そういった意味では映画好きにはウケる作品かもしれない。
作品に対する「理解度」で作品の印象も変わる、
1度だけでなく2度、3度見ていくことで面白さが深まる作品かもしれない。

個人的な感想:そのフリはいらないだろう


引用元:©2019「HELLO WORLD」製作委員会

予告やキャッチコピーで「最後にどんでん返しありますよ」と言ってしまうのは
蛇足でしかない。ラスト1秒でひっくり返るというフリをしないで、
あのオチを味わえばもう少しラストのオチが深まったかもしれないだけに
本当にもったいない。

個人的には「一行 瑠璃」というヒロインの可愛さがすべての作品だった。
最初のツンツンな感じから、コスプレ、赤面と来て、
最後には20年後バージョンだ(笑)
演じてる浜辺美波さんの演技と声も素晴らしく、そこだけは強く推したい。

ただ、本当に見る人によって好みが分かれる作品だ。
元ネタの映画や作品も色々見える作品なだけに、
映画好きほど面白いと感じる作品かもしれない。

コメント

  1. Zap0046 より:

    もちろん修行シーンは必要です。
    修行がなくて、センセイから渡されたグッドデザインをチートに使いこなしていたら、クライマックスでセンセイに「自分を消せ」と言われたときに、ためらいが生じません。

    一行さんは冒険小説が好きで、「自分も冒険小説の主人公に憧れる」と言いました。
    そのとき空に月が映っていました。
    だからこの話のゴールは、一行さんの冒険のゴールは月です。