アニメコラム

「君の名は」の功罪、青春SFアニメ映画のブームとその陰り【アニメコラム】

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年末の空気感がただよい始め、今年も終わりだなと感じる今日このごろ。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
私はちょっと仕事が多忙でアニメレビューが滞っており、
「1クールのアニメを早くレビューしろ」などとお怒りのお言葉をいただきつつつ、
そんな意見はガン無視して長文のアニメコラムを手がけようと
キーボードを多々抱き始めております(笑)

長編オリジナル映画作品の需要


先日、とあるツイートが話題になりました。
そのツイートを簡単に要約すると

「アイの歌声を聴かせてのような作品がヒットしないと、
今後の日本アニメ界において長編オリジナル映画作品の需要が疑問視され、
「アニメ映画」というものがヒットTVアニメの続編しか作られなくなってしまう。」

というものでした。
アイの歌声を聴かせてに関しては先日、私もレビューを投稿いたしましたので
評価の方はそちらを見ていただくとして、
この作品は私はPVの段階ではまるでピンときていませんでした。

監督がイヴの時間などでおなじみの「吉浦監督」だから見に行ったという
動機が非常に多く、PVの段階では「あーまたこの手の感じか」と
やや食傷気味ですらありました。

話題になったツイートいわく、この手の作品がヒットしないと
今後オリジナル映画が作られなくなるとのことでしたが、
むしろ、逆とまではいかないのですがちょっと違うのでは?と
感じる部分があり、今回キーボードを叩き出しました。

みなさんもココ数年感じていませんか?
あまりにも「青春SF恋愛アニメ映画」が多いことに。

君の名は


2016年新海誠監督が手掛ける君の名はが爆発的な大ヒットを叩き出しました。
それまで新海誠監督は宮崎駿監督や細田守監督に比べれば
一般的な知名度は低く、アニメが好きなオタクにそこそこ知名度があるくらいの
監督でした。

しかし、君の名はが400億円を超える興行収入を叩き出したことで
アニメ映画界隈の空気感、流れが変わりました。
男女の青春恋愛もの、そこにさらにSF的要素をたし壮大な物語にする。
この構図、スペクタルともいえるアニメ映画の要素が
ヒットの要員であると業界全体は見出したのでしょう。

似たジャンルとしては細田守監督作品も同じように
時をかける少女やサマーウォーズなどを手掛けており、
こういったジャンルに対する一般層の基盤ができてはいましたが、
細田守監督よりも知名度の低かった新海誠監督が彼の作品を超える
大ヒットを叩き出したことで様々な
「アニメ監督」にもスポットライトがあたるようになりました。

青春SF恋愛アニメ映画というジャンル、
そこに「君の名は」のような高クォリティの背景、
そしてオタク界隈では知名度のある監督を起用し映画を作らせる。

この流れが「君の名は」をきっかけに生まれました。
簡単に言えば青春SF恋愛アニメ映画ブームが2016年に起きたわけです。

食い飽きる

今年、2021年の末までに私が見た限りのアニメ映画作品で
5から6作品ほど君の名はに多かれ少なかれ影響をうける部分を感じ、
業界側が第二の新海誠、いわゆる「ポスト宮崎駿」を探し求め
様々なアニメ映画作品が作られました。

こういったブーム、はやりというのはアニメ映画に関わらず
TVアニメでもよく起こります。
魔法少女まどかマギカが流行ればデスゲーム的な少女が残酷な目にあう
魔法少女もののような多く作られ、
ラブライブが流行れば大量のアイドルアニメが作られてきました。

私の感覚ではこういうブームは5年でそのブームの佳境を迎え
のちの5年で衰退していく。そんな感覚があります。
かつては日常アニメブームといわんばかりに
様々な日常アニメが作られましたが、
今や純粋な日常アニメはほとんどありません。

視聴者側もバカでは有りません。
「あー、この作品はあの作品が流行ったから生まれたんだな」と
感じたことはないでしょうか?
そういう作品の中でも面白い作品は当然あるものの、
そういう作品が作られれば作られるほど「食傷気味」になります。

いくら大好物のものでも食べ続ければ飽きます。
そして大抵は火付け役となった作品を超えずに終わり、
予算もどんどん削られ、ひどい作品も生まれだします。

シンプルにいえばそのジャンルや要素に見る側も飽き始めてしまいます。
「アイの歌声をきかせて」は見れば面白い作品ではあるものの、
PV段階では「君の名」はフォローな作品にしか見えず、
初週の興行収入の伸びの悪さにつながったのだと思います。

一言で言えば「君の名は」ブームが終わったとも言えるのかもしれません。
君の名はからちょうど5年。
青春SF恋愛アニメ映画のブームに陰りが見え始めてもおかしく有りません。

作り手側も、お金を出す大人も、見る側も
このジャンルに飽き始めてしまった。
そういう印象を受けます。

フランケンシュタイン映画


こういったブームの中でも面白い作品は生まれます。
しかし、それと同時に要素だけ似た、
上辺だけをすくったかのような作品も生まれます。
名作が生まれると同様にとんでもない作品も生まれます。

今回の記事ではこの5年の青春SF恋愛アニメ映画ブームの中で
生まれた、君の名はの影響を受けたと少なからず感じる作品である
作品を振り返りつつ、そのブームの中で生まれた怪物こと、
「フランケンシュタイン」作品をご紹介していきたいと思います。

いきなり「フランケンシュタイン」という言葉を出して
「?」マークが浮かんだ方も多いと思います。
この記事を書くきっかけになったツイートを見て私は思わず
「フランケンシュタイン映画」という言葉が浮かんでしまったのです。

フランケンシュタインはだれもが知るあの怪物です。
本来、人間が人間を作るということはできません(生殖行為をのぞく)
それは神の所業であり、神に背く行為です。

しかし、フランケンシュタインという作品でフランケンシュタインという
青年は理想の人間の設計図をもとに人間の墓を暴き、
死体と死体をつなぎ合わせて理想の人間を作ろうとしました。
結果として生まれたのは容貌が見にくい人間とは言えない怪物でした。

ブームの影響で生まれた作品はこの「フランケンシュタイン」的な要素があります。
まるでブームのもととなった作品を真似し、その作品の要素を組み合わせて
自分の作品を作ろうとする行為。
成功すれば理想の人間になるものの、
失敗すればフランケンシュタインのような怪物が生まれる。

どうでしょうか。ある種の怖いもの見たさで皆さんも
「フランケンシュタイン映画」見てみたくなりませんか?笑

打ち上げ花火、下から見るか、上から見るか


アニメ制作会社のシャフトが手掛けたこの作品、
みなさん、内容を覚えてますでしょうか?
私はなんどかこの作品を見ているはずなのですが、
毎回毎回「どんな内容だっけ?」となるほど人に説明しにくい作品です。

菅田将暉さんや広瀬すずさんなどの芸能人声優を起用したものの、
シャフトと新房昭之監督特有の癖のありすぎる演出の数々と、
混乱しやすいストーリー展開は一般受けはおろか
オタク受けもしませんでした。

プロデューサーは君の名はと同じ古澤佳寛氏と川村元気氏ではあるものの、
同じようなヒットとはいかず、16億という微妙な興行収入で終わりました。

この作品は君の名はの上映の翌年の上映であり、
君の名はの影響を受けたといえるような作品ではなく、
あくまでプロデューサーが同じだけの作品ではあるものの、
君の名はと似たような要素を含む数々の映画作品の始まりとも言える作品でした。

HELLO WORLD


ソードアート・オンラインの監督が手掛けたこの作品。
ヒロインに「浜辺美波」さんを起用した本作品ですが、
この作品はSF要素が非常に強い作品でした。

デジタル世界の中の存在である主人公の前に
10年後の現実世界の主人公が現れ、ヒロインの運命をかえる物語。
このざっくりとしたあらすじだけ見ればシンプルに面白い作品なのですが、
世界観の構造が非常に複雑で、かなり見る人を選ぶ作品になってしましいました。

君の名はは男女の入れ替わりと叙述トリックと過去改変が
物語の要素でも有りました。
この作品は男女の入れ替わりはないものの、その分、
SF的設定の要素を強めた作品になっており、
かなり難解な作品になってしまいした。

ヒロイン自体は非常に可愛らしいものの、
キャラクターデザイン的にも一般層に受ける感じではなく、
作品全体として「オタク」っぽさは否めません。

興行収入は6億円ほどと、振るわずに終わってしまいました。
作品自体は好みは強烈に分かれる部分はありますが、
思わず「お!?」となるラスト含めて
オタクにならば勧めたくなる作品です。

あした世界が終わるとしても

この作品はこのキービジュアルではまるで予想できないほど
ゴリゴリのSF要素のある作品です。
命がつながった並行世界の人間がいる世界、
どちらかの命が途切れれば、つながった命も途切れる。

二ノ国の設定をもろパクリしたかのようなこの作品は
本当にひどい作品でした。
「君の名は」の影響で主題歌や挿入歌を流しながらダイジェストで
日常シーンを一気に描くという手法が流行ったのですが、
この作品も類にもれず。

バカの1つ覚えのような日常描写を2回もやったり、
あいみょんを流せばいいと思っていたりと、
色々な作品の影響を受けたのがまるわかりな内容は
パッチワーク、つなぎ合わせただけのような
「フランケンシュタイン」みを感じてしまう作品でした。

フルCGのクォリティはそこそこ高く一部キャラのキャラデザは悪くないものの
ありとあらゆる点が評価に値せず、
「君の名は」ブームが生み出したフランケンシュタインの
1匹目といえる作品です(苦笑)

ちなみに興行収入は出てすらいません。

ぼくらの七日間戦争


同タイトルの小説、ならびに実写映画を原作としている本作品。
ですが、そんな原作のゲの字もないようなオリジナル要素の数々は
名前を借りた別物でした。

原作が大人たちからの支配や強制に対する子どもたちの戦争でしたが、
今作はただの家出。ただのワガママだ。
これで彼らが小学生ならまだしも高校生という家出をするには
少しおとなになりすぎているメインキャラクターたちが幼稚すぎる作品です。

もう露骨に企画段階で
「そこの君、君の名はみたいな作品を作ってくれ」
と偉い大人から言われたのかな?と思うほど意識して作られており、
特にRADWIMPSみたいな曲が流れる中でのダイジェストな
日常描写模様など逆に意識しすぎて笑ってしまうほどでした。

メインキャラたちが犯す犯罪行為の数々、
残ったデジタルタトゥーとツッコミどころもあまりにも多く、
同性愛や不法滞在者など現代的な要素は入れているものの、
入れているだけです。

メインキャラたちの家での理由も浅ければ作品も浅い。
「君の名は」を意識した作り上げたことが丸わかりの本作品は
フランケンシュタインの2匹目といえるでしょう。

君は彼方


そしてラストを飾る最後のフランケンシュタイン映画。
この作品は知名度はおそらく無いでしょう。
私は当時、この作品を見たあとの感想がこれでした

「青春SFアニメ映画のフランケンシュタイン」

まさに、この作品こそがこの記事で1番紹介したかった作品と言えます。
君の名はだけでなく、ありとあらゆる作品から引っ張ってきた要素が
丸わかりの既視感まみれのシーンの数々は
逆に大爆笑してしまいます。

「打ち上げ花火」をどこから見るかという話になるんじゃないかという始まり、
ペンギンハイウェイのようにペンギンが空を飛んでたり、
新海誠監督作品のような高クォリティの背景だったり、空の描写だったり、
キャラデザも内容もシーンも「どこかでみたことがある…」と
記憶の糸を手繰ればあっさりといろいろな作品が飛び出てくるような作品です。

メインキャラクターたちのIQの低い会話、
何度も何度も同じような展開を繰り返し振り出しに何度戻るストーリー展開、
唐突に主人公の幼馴染が「霊能者」であることが発覚したり、
長い間幽体離脱すると戻れないはずだったのに戻れたり。

もう分けのわからない作品です。
演技も本当にひどく、主人公と幼馴染が唐突に叫ぶシーンの演技が
過剰すぎて「ホラー映画」でも見てるような気分になるほどです。

様々な作品の影響を受けており、
それがパロディやオマージュにすらなっていない、
「引用」しているといったほうが正しいような継ぎ接ぎでつくられた
この作品はまさに青春SFアニメ映画ブームが生み出した怪物でした。

ちなみに監督は本作品を作る上で2億円も借金している。
なお、興行収入は3000万円以下である。

君の名はの功罪


「君の名は」でオリジナルアニメ映画ブームが起こり、
様々な監督が注目され、多くのオリジナルアニメ映画作品が生まれるきっかけになりました。
特に予算面では「君の名は」がヒットしたことによる影響が大きく、
年間のアニメ映画の上映数も右肩上がりで増え続けています。

しかし、同時に「君の名は」を意識したような似たような作品も生まれ、
その中でフランケンシュタインと言えるような怪物映画が生まれ、
同じような作品に見える作品が増えたことで、
視聴者側も青春SF恋愛アニメ映画に関して「食傷気味」になっています。

「アイの歌声を聴かせて」の初週の興行収入の悪さはその影響もあると思われます。
アニメ映画業界自体も去年の「鬼滅の刃」のとんでもないヒットの影響で
TVアニメの続編映画に力を入れだしていることは間違い有りません。

「今後オリジナル映画が作られなくなる」
という不安が無いとも言えなくはないはありません。
ですが、考え方を変え君の名はブームが5年たって陰りが見え、
鬼滅の刃ブームに切り替わったと言えなくはないのではないでしょうか。

アニメ業界に流れ込んでいる「お金」は増え続けています。
君の名はが出てくるまで長年「千と千尋の神隠し」の興行収入を
打ち破るような作品は出てきませんでした。
そんな記録を君の名はが打ち破り、鬼滅の刃が更に打ち破りました。

記録は破るためにあるという言葉があります。
今後、「君の名は」や「鬼滅の刃」を超えるような
「オリジナルアニメ映画」作品が生まれるかもしれません。

悲観せず、1オタクとしてそんな作品が生まれることを
切に願っております。

オリジナルアニメ映画作品


オリジナルアニメ映画作品というのは難しいものです。
なにせ下地が有りません。
TVアニメならば、TVアニメや原作を読んだファンが存在し、
ある程度、どのくらいの興行収入になるか予測できます。

しかし、オリジナルアニメ映画の場合は監督や制作会社の知名度、
もしくは出演声優の知名度くらいしか有りません。
そのため、いわゆる芸能人声優の起用で作品の知名度を上げ、
なんとか興行収入に結びつけようとしています。

そんな知名度がない中でヒットするオリジナルアニメ映画は
本当にすごい作品ばかりです。
今年だと「映画大好きポンポさん」は最初こそ興行収入が伸びませんでしたが
色々な人の感想がネットに上がってきたことで
多くの人がこの作品を見に行きました。

興行収入が伸びてないとツイートするのは簡単ですが、
「売れてない漫画家」が売れてないとツイートして単行本を宣伝するより、
この作品面白いよ!という純粋な感想ツイートのほうが
売上に貢献できるのではと私は考えています。

みなさんも、よければ劇場に足を運んでみてください。
PVだけでは作品の面白さはわかりません。
ふらっと訪れた劇場で、直前まで見る気もなかった映画が
とんでもない名作ということもあるかもしれません。

そんなあなたの「感想」がきっかけに一人、また一人と現れ
あなたの感想が興行収入500億円を超えるきっかけになる…
かもしれませんね(笑)

長文、最後まで読んでいただきありがとうございました。

「青春SFアニメ映画」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください