「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」レビュー

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映画
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評価 64点 全140分

あらすじ 新しい技術の開発によって生活にも少しずつ変化が現れ、人々は前を向いて歩み始めた。引用- Wikipedia

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「愛してる」の解釈

本作品はヴァイオレット・エヴァーガーデンの劇場映画作品。
監督はTVアニメと同じく石立太一、制作は京都アニメーション。
ネタバレを含むレビューになりますので、ネタバレが嫌いな方は
鑑賞後ご覧ください。

未来


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』本編冒頭シーン10分特別公開より
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

映画が始まると「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の本来の
時系列からだいぶ未来から始まる。
技術が発展し、「手紙」というものも以前のようには使われなくなり、
当然、「自動手記人形」も廃れてしまった時代。そんな時代から始まる。

「手紙」はこの作品のテーマの1つだ。
そんなテーマとなっている手紙が廃れてしまった時代で、
ある人物が亡くなった祖母に贈られた「手紙」を
見つけるところから物語が始まる。

それは紛れもなく「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が
代筆したものであり、この作品を見た多くの人の記憶に残ってる手紙だ。
時が過ぎ、時代が変わり、手紙という文化は廃れつつあっても
手紙という「形」は残る。電話とは違い、思いが形に残る。
送った人も送られた人も亡くなっても残る手紙。

未来を描くことで、そんな「残る手紙」の良さも伝えつつ、
18歳のときにヴァイオレット・エヴァーガーデンが
C.H郵便社をやめていた事実を視聴者に提示することで
「どうして彼女がC.H郵便社」をやめてしまったのかという
先の展開を気にならせる。

もうこの冒頭のシーンで涙腺が弱い人は少しやばいかもしれない(笑)

時の流れと変化


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

未来を見せた後に今の時系列へと移り変わる。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は評判の自動手記人形として
人気であり、大きな仕事も任されている。

時間がなれたことを感じさせ、
それぞれのキャラも少しずつ変化しており、
ヴァイオレット・エヴァーガーデンが代筆した人たちのその後も
ちらりと描かれたりすることでより時間の経過を感じさせる。

だが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは変わっていない。
彼女が自動手記人形として仕事をする中で感情を取り戻し、
「少佐」への思いは断ち切れないままだ。TVシリーズの段階では
ある程度、心の整理はつけたかのように見えたものの、
時間の経過と「仕事への慣れ」が少佐への思いを蘇らせる。

繰り返す日々の中、時間が流れる中で決別しきれない、
諦めきれない思いが彼女の中でどんどんと大きくなり、
「宛先」のない少佐への手紙を綴る日々だ。
どんなに願っても叶わぬ願いに彼女は感情の行き場を無くしている。

少佐の代わりに少佐の母の墓参りを毎月行い、
少佐の「影」に、少佐という存在を少しでも忘れないように。
彼女にとって「愛してる」をくれた少佐は絶対的な存在であり、
それが生きがいでもあった。

断片的にヴァイオレットと少佐の過去が描かれるものの、
やや総集編のような形になっており、新規シーンは少ない。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品を
見たことがない方でも、この過去のシーンでなんとなく
事情がわかるようになっており、新規の方でも見やすいストーリー構成に
なってる反面で作品を見ていたファンだとすでに見たシーンばかりであり
ややテンポが崩れてしまっているのは気になるところだ。

死と約束


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

そんな行き場のない想いを抱える中で彼女はとある依頼を受ける。
「死を目前にした少年が家族へ送る手紙」だ。
ヴァイオレットにとって死は受け入れたくないものだ。
だからこそ、彼女は誰かの「最後」の手紙は感情を揺さぶられる。

言葉での表現、何を伝えていいか迷う少年に彼女は自分の経験を
織り交ぜながら少年の手紙を綴る。
ただ言葉通りに文字にすれば良いわけではない。
「思い」を伝えることが重要な手紙だからこそ、
感情取り戻した彼女だからこそ少年に寄り添い手紙を綴ることができる。

自動手記人形として成長しきったヴァイオレット・エヴァーガーデンは
もはや貫禄すら感じられるほどだ。
この作品は「兄と弟」というテーマを内包している。

入院している少年は幼い弟を怒鳴ったり怒ったり、辛く当たっている。
その姿はヴァイオレットにとっては「大佐」と「少佐」だ。
自分にもきつい態度で接してきていた大佐と、優しくしてくれた少佐。
兄弟の態度の違い、兄の弟に対する態度の意味。

それをヴァイオレット・エヴァーガーデンはしっている。

大佐


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ディートフリート・ブーゲンビリアはヴァイオレットが
敬愛する少佐の兄だ。自分を少佐に押し付けた重宝人でもある。
戦争が終わった後も彼は彼女に辛く当たり、
弟が死んだからこそ、より彼女への態度は厳しいものだった。

だが、そんな彼と彼女の間にしかわからないこともある。
居なくなった弟への思いだ。彼も、ヴァイオレットも
「ギルベルト少佐」への想いを捨てきれずに居る。

軍人の家系に生まれ、軍人になることしかできなかった。
兄は親にはむかい、弟はそんな兄を見て兄をかばうかのように
家をつごうとしていた。
兄弟だからこその複雑な感情と、弟に押し付けてしまったせいで
弟を亡くしたという後悔。

大佐も少佐もヴァイオレットも戦争の加害者であると同時に被害者だ。
戦争の爪痕は戦争に関わったもの全てに深く残る。
互いが少佐の話をすることで互いの傷を癒やすことしか出来ない。

生存


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

そんな中で「少佐の生存」が確認される。
ヴァイオレットにとって思い続け、願い続けた思いがかなった瞬間だ。
彼女が感情を爆発させ、期待と戸惑いと焦りと不安と希望と
自分でも整理しきれない感情を爆発させるシーンは
見てる側が胸を締め付けられてしまう。

会ったら何を話せば良いのだろう、自分はおかしくないだろうか。
生きていたことと会えることの喜びと
時間の経過により大きくなった思いが不安をかきたてる。

ただ少佐の生存に関しては納得できないという人もいるかも知れない。
TVアニメの時点で原作を改変しており、本来はもっと早く
ヴァイオレットと少佐は再会できているはずなのに
劇場版を制作するために引き伸ばしており、
その引き伸ばしに対する「理由付け」に納得できない方も居るだろう。

贖罪


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

少佐は軍人になりたくてなったわけではない。軍人の家に生まれ、
軍人になることしか出来ず、軍人になるしかなかった。
戦争をしたくてしていたわけではない。しなければならず、
そうすることしかできなかった。彼も戦争の被害者だ。

戦争が終わり、自身の体も傷つき、心も傷ついている。
自分が生きてることを知らせれば軍に戻され、
軍人としてまた誰かの命を奪わないといけないかもしれない。
だからこそ彼は転々とし、名を偽り、戦争で大人の男が居なくなった街に
「贖罪」として居座っていた。

「ヴァイオレット」に対する思いも複雑だ。
彼女を間違いなく愛していると同時に、彼女の存在は
少佐にとって「戦争の罪」そのものだ。
本来は戦争になど参加しなくてもいい幼い子を戦争の道具として使い、
結果的に少女の両腕は戦争によって失われた。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を愛していると同時に
彼にとって彼女は戦争の罪そのものだ。負い目といってもいい。
だからこそ彼はヴァイオレットに会うことが出来ない。

会えない


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

扉一枚、その一枚越しに二人は会話をする。
強引に蹴破って中にはいることもできるのにヴァイオレットは
そんなことはせず、少佐の意思で自分にあうことを望むものの、
少佐はそれを望まない。

複雑な心理描写とも言えると同時に、人によってはこの少佐の態度や
行動や台詞は「めんどくさい」と感じる部分でもある。
ヴァイオレットが長い間、募らせてきた思い会いたいという切なる願い、
感情を取り戻した彼女だからこその感情の爆発と表情に
共感をしてしまうだけに頑なに合わない少佐に苛立ちさえ感じてしまう。

はっきりいってかなりめんどくさい男になってしまっており、
好みの分かれるキャラクターに成り果ててしまい、
結局色々悩んだすえに最後はヴァイオレットからの「手紙」で
会う決心をつけるという流れ自体は良かったものの、
やや回りくどさを感じてしまう展開だ。

再会


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

本来は感動できるシーンであり、予想できる結末ではあるものの
泣けてしまうというのはこの作品のいいところではあるものの、
この作品の監督はTVアニメから変わらず「演出過剰」であり、
TVアニメ以上に、特にラストのシーンはくどさすら感じてしまう演出だ。

完全なネタバレになってしまうが、少佐がヴァイオレットから
手紙を受け取りヴァイオレットに会う決心をつける。
ただ、すでにヴァイオレットは少佐の居る島から船で出港している。

この流れ自体もベタだ。
船だけでなく電車などで似たようなシチュエーションが多くの作品で
描かれており、同じ制作会社の作品である「たまこラブストーリー」でも
似たようなシチュエーションが描かれている。

ただ、こういったシチュエーションの場合、
多くは出発前に「ぎりぎり間に合う」パターンが多い。
しかし、この作品は全然間に合っていない。
こういう王道なシーンを見せたいのは分かるのだが、
船が離れすぎている。その事が気になって素直に感動に至れない。

これだけならまだ笑うことはなかったが、ヴァイオレットが
少佐に気づき、船から飛び降りるのは流石にやりすぎだ。
それこそ出港直後くらいなら飛び降りるのもまだわかるものの、
がっつり離岸して離れてしまってかなり泳がないといけない距離で
飛び込むシーンに少し笑ってしまうほどだ。

ラストの再会シーンの泣き顔も、この作品の作画の中では
かなり崩した泣き顔であり、それほど顔が崩れるほどに
会いたかったという気持ちが表情に現れてるとも感じられるが、
それと同時にやはり「演出の過剰さ」がラストのシーンで
気になるほど冗長に感じる部分もあり、今ひとつラストで泣ききれない。

一言で言えばやはり石立太一監督の演出はくどい。
TVアニメからの欠点を映画のラストでもしっかりと感じてしまい、
その過剰な演出で思わず泣かされてしまう作品ではあるものの
そういった細かい引っ掛かりが気になってしまう作品に仕上がっている。

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総評:泣いたのではない、泣かされたのだ


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

全体的に見てヴァイオレット・エヴァーガーデンという作品の締めの
物語としてはよくまとまっておりキレイに描かれている作品だ。
戦争を経験した者たちによる傷と贖罪、愛してるからこそ会えないという
感情と複雑な思いの結末をきれいに描いている。

ただ、それと同時にストーリーが全体的に冗長だ。
未来の視点での物語、今の視点での死を前にした少年の物語と
ヴァイオレットと少佐の物語の3つが描かれており、
1つ1つで描きたいことは分かるものの台詞の間や
過去のシーンを入れることで間延びしてしまっている。

この作品を2時間20分ではなく2時間位に収めたら
ちょうどよかったかもしれない。そう感じるほど、
所々でシーンが間延びしてしまっており、
その間延びが演出によるものが多く過剰に感じてしまう。
本来は10秒でいいシーンを20秒で描いてるようなそんな感覚だ。

ストーリー自体はよく、描きたいシーンと描きたい意味もしっかりと
伝わると同時に、それを伝えようとするあまり「しつこさ」が
生まれてしまっているような作品だ。
ただ、物語の結末としてはコレ以上にない落としどころであり、
キレイすぎるくらいに物語は終わっている。

演出の強さもあり、たしかに泣いてしまう。ただ、
TVアニメと同じで泣いてしまったというより
泣かされたという感じがあり、自分の流した涙に納得できない感じが
残ってしまう作品だった。

個人的な感想:愛してるの意味


画像引用元:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝PVより
©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

コレは個人的な解釈になるものの
ヴァイオレット・エヴァーガーデンは少佐から言われた
「愛してる」の意味を求めてきた。
TVアニメで描かれた少佐の姿や言葉から、この言葉に含まれる愛は
「男女」の愛ではなく、兵器ではなく人間として、または家族としての
愛情のように感じられた。

しかし、この映画では完全に「男女」の愛だ。
この作品はラブストーリーだったのか?と最後でいきなり
ジャンルが変わってしまったようなそんな違和感も強く、
ヴァイオレットは確かにそういった恋愛的な側面もあったかもしれないが
少佐のほうもそう感じられるような描写がある。

少佐がいつヴァイオレットを「女性」として愛していたのだろうかと
そういった疑問が生まれてしまい、この辺りは個人の解釈によって
違うかもしれないが、私個人としては
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品は
ラブストーリーではなかったのに、急にラブストーリーになってしまって
その違和感を消化しきれない感じが残る作品になってしまった。

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