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「東京24区」レビュー

1.0
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評価 ★☆☆☆☆(17点) 全12話

オリジナルTVアニメ「東京24区」第1弾PV<2022年1月5日(水)放送開始>

あらすじ 東京24区、それは「極東法令外特別地区」と呼ばれる東京湾に浮かぶ人工島。2021年、宝小学校火災事件の1周年追悼ミサで、幼馴染のシュウタ、ラン、コウキの3人は再会する。引用- Wikipedia

脚本轢殺

本作品はCloverWorks制作によるオリジナルテレビアニメ作品。
監督は津田尚克、制作はCloverWorks

ヒャッハー!

この作品は「架空の日本」を舞台にした作品だ。
東京に人口島が作り出され、
そんな人口島で「ヒーロー」になれなかった少年の後悔が描かれる。
1話冒頭から世界観の説明や意味ありげな台詞が多く、
どこか「どんより」とした空気感が漂っている。

そんな空気感や世界観の説明よりもアニメーションとしての演出の面白さが
1話から目立つ。
1枚絵に1枚絵を重ねるような、アニメというよりは
アドベンチャーゲームなどでよく見かける手法をあえてこの作品は取っており、
シーンの切り替えの際にこの手法を使うことでシームレスにカットが切り替わる。

主人公たちが住む24区の治安は悪く、
落書きやヒャッハーな連中、いわゆるヤンキーのようなものも多い。
そんな治安の悪い地域だからこそ主人公はかつて「ヒーロー」をしていた。
しかし、彼はそんなヒーロー活動の中で「助けることが出来なかった」ものへの
思いから今はもうヒーロー活動をしていない。
それでも彼は自身の正義感を捨てきれていない。

ただ1話からメインとなるキャラクターが多く、
この作品は実質的に3人も主人公がいる。
そんな3人の主人公のそれぞれの行動を描くために
視点の切り替わりがやたら多い。

一人はパン屋、一人はヤンキー、一人は財閥の跡取り。
幼なじみな3人がそれぞれ主人公だ。
そんな3人に同時に死者である「アスミ」から着信があり「未来予知」のようなものを
見せられるところから物語が始まる。

トロッコ問題

この作品で描かれるのはいわゆる「トロッコ問題」だ。
多くの乗客が乗った電車、その進路には線路で動けない少女がいる。
路線を変更すれば多くの乗客が犠牲になり、
変更しなければ彼らの幼なじみが犠牲になる。
この状況をどうするのかが3人の主人公の見せ場でもある。

3人はなぜか身体能力が超絶強化されており、
それを魅せるためのアクションがあったりするものの、
特にそれが面白いわけでもない。

最近はヒロアカの映画にしろ、バブルにしろ、なぜか
アニメでパルクールをやらせたがる傾向にあるのか、
この作品もパルクールのマネごとをしているものの、
それが特にアニメーションとしての面白さや、
この作品の面白さになっているわけでもない。

主人公が走っている姿も「これはもしかしてギャグなのか…?」と
思うほどかっこ悪く、アクションを見せたいのは分かるが、
アクションを見せたいだけになってしまっている。

「トロッコ問題」という難しい問題を扱っているのに、
結局は解決手段は強化された超絶能力での解決だ。
「主人公」が電車より早く走ることが出来たので解決できましたと
言われても特にそこにおもしろさがあるわけでもない。

ストーリー的にもフックになる部分がなく、
「予想」できるストーリーを淡々と見せられている感じが強い。
序盤から時系列もごちゃごちゃであり、
頻繁に「アスミ」との思い出話が回想シーンで語れることが多く、
キャラへのキャラクターへの感情移入が生まれない。

ストーリーも散漫しており、
彼らが住む商店街の地上げ問題、3人の主人公の物語、
アスミとの関係性を掘り下げる過去回想、死んでるはずのアスミからの
電話の正体、過去のアスミが死んだ事件のせいで引き持ってる少女の問題、
ハザードキャストと呼ばれる犯罪予測システムと
序盤から同時に展開している話があまりにも多い。

この作品の方向性が序盤で見えない。

二択

いろいろな状況で3人は究極?の二択に迫られる。
誰を助けるか、誰を犠牲にするか。
死んだはずのアスミに見せられる「2つの未来」、
そんな最悪の未来を防ぐために3人は行動をする。

1話の問題もそうだが、3話でもキャラクターたちは
「またトロッコ問題か」というが、結局はトロッコ問題ではない。
「そのいずれかを現実にしなくてはいけない」とアスミはいうものの、
結局、3人はそのいずれかの現実にもならないように行動をする。

本来はトロッコ問題は倫理観の問題だ。
ただ、その倫理観の扱いの問題が甘く、そもそも起こる問題がアホっぽい。
「突然、線路に飛び出した犬を追いかけたら線路に脚が挟まってしまいました」
「なんかいきなり竜巻が起きました」など、
あまりにもいきなり唐突に起こる出来事が多く、自然な流れとはいえない。

特に4話から5話にかけて提示される問題は意味不明だ
「テロリストが豪華客船に爆弾を仕掛けました、
テロリストを逃がせば豪華客船の客が死にます、
テロリストを殺せば客は助かります」

コレは果たして「トロッコ問題」と言えるのだろうか?と
言えるようなトロッコ問題まで出てくる。
一応、テロリストは3人の主人公のうちの一人の友だちであり、
そんな友達も事情があってテロ行為を行ってはいるものの、
無理やり「トロッコ問題」に結びつけているだけで大したエピソードではない。

主人公たちに近しいキャラが死ぬ展開を見せることで
悲劇を作り出しているものの、
序盤から話の作り方がワンパターンで見れば見るほど飽きてくる。

3人が2つの未来を選ばなければ、別の誰かが犠牲になることもある。
話が進んでくるとやりたいことはわかってくるものの、
どこかアニメでありながらアドベンチャーゲームを
やっているような感覚になるものの、
それが作品としての面白さやキャラクターの魅力にはつながっていない。

3人の主人公も話が進めば進むほど仲違いしていき、
喧嘩ばっかりしている状況が続いてしまい、
そもそもの話の進行も遅く、どうでもいいエピソードがあまりも多い

ハザードキャスト

この作品の舞台となっている街には
「ハザードキャスト」といういシステムが有る。
街に仕掛けられた監視カメラなどから得た情報をもとに
コンピューターが事前に犯罪が起こりそうな場所や時間を特定するというものだ。

ぶっちゃけていってしまえばこれは「PSYCHO-PASS」のシビュラシステムだ。
それの劣化版といってもいい。
「PSYCHO-PASS」を見た人にとっては二番煎じにしか思えないシステムであり、
シビュラシステムは人の「脳」を用いていたことが物語の中で
明らかになるが、この作品も同様に物語の中盤で
「死者」が利用されていることが明らかになる。

脳か死者かの違いでしかなく、やってることは二番煎じでしかない。
この作品の脚本を手掛けている「下倉バイオ」さんは
ニトロプラス所属の脚本家さんではあるが、
同じニトロプラスが手掛ける「PSYCHO-PASS」の
二番煎じにしかなっていないのはなんとも頭を抱えてしまう内容だ。

PSYCHO-PASSから残虐な要素をなくして
ちょっと青春っぽくして、色々と爽やかにした上で
ツッコミどころまみれにしたらこの作品になる。

システムの真実を知るもの、知ってもなおそのシステムの正しさを主張するもの、
知らずともシステムに違和感を持つもの、システムに反するもの。
PSYCHO-PASSでもやったようなキャラの立ち位置で
同じようなストーリーをもう1度、
この作品でやっているだけにすぎない。

魅力0

この作品で致命的なのはキャラクターの魅力がまるでないことだ。
どこかで見たことのあるような3人の主人公に
なんの思いれも愛着ももてず、
キャラ描写やキャラの掘り下げには必ず回想がつきまとう。
回想シーンでしかキャラの掘り下げが出来ないのかと思うほど回想まみれだ。

ようやくこの作品の根幹部分が明らかになり、
シリアスな雰囲気が漂い始めたのに、
呑気に主人公の一人である「シュウタ」は胸の感触と同じようなパンを作り始める。
他の2人はそれぞれの立場で切羽詰まっているのにもかかわらず、
そんな2人を描かずにどうでもいい「シュウタ」の日常が描かれてしまう。

せっかく話が盛り上がってきたのに、
それまで1番存在感のない「シュウタ」の日常を描かれても
話の腰を折られるだけだ。
こういった余計なエピソードのせいもあって
びっくりするほど話が進まない。

システムの真実や、3人の主人公の立ち位置、世界の謎など
色々と話が進めば明らかになってくるものの、
「そういう感じだろうな」という予想通りのストーリーを
予想通りのまま見せられて、面白さにはなっていない。

設定の掘り下げ、キャラ描写など、どれこれも中途半端になっており、
それがどこかで見た要素でしかなく、
この作品だからこその面白さがまるでない。
唯一あるのは「トロッコ問題」くらいだが、
そんなトロッコ問題もアホみたいなトロッコ問題ばかりだ。

回想回想回想…

本当にこの作品は回想が大好きだ。回想がなければキャラを語れない。
9話になると過去回想で「ハザードキャスト」を運用している
「カナエシステム」がいかに作られたかが語られる。
この回想シーンに3人の主人公は一切絡んでおらず、
3人の主人公の誰かがこの回想を誰かから聞いているわけでもない。

視聴者に対する説明のための説明の回だ。
本来ならあまり状況を理解していない
「ショウタ」あたりに誰かが聞かせる形で回想をするなら分かるものの、
特にそういうわけでもなく、いきなり9話で回想が始まる。

3人の主人公以外の大人たちの過去が描かれるものの、
もうこうなると3人の主人公はいらないのではとすら思ってしまう。

ネズミ(笑)

3人の主人公にとって大事な人である「アスミ」
彼女は小学校の火事の際に犠牲になった女の子だ。
そんな犠牲の果に今は「カナエシステム」に組み込まれ
演算処理として脳を使われている。
火事は放火だと思われているものの犯人は捕まっていない。

これ自体はいい。
しかし11話でもうこの作品はギャグになる。
なにせ火事の原因は「ネズミがかじった」ことによる漏電である(笑)
人間にはどうしようもない「自然火災」ともいえるものだ。
しかし、そんな火事を主人粉である「ショウタ」は後悔している。

ネズミを見逃したからである(笑)
「あのとき俺がネズミを見逃しさえしなければアスミはしななかった!」
と困惑してシリアスな雰囲気にしているものの、
ちょっとあまりにも馬鹿馬鹿すぎて大爆笑してしまう。

シュウタではなく彼らの幼なじみの少女も
「あのネズミを退治してなければ火事は起きなかったはずなのに..」
と後悔しており、ちょっとキャラクターの心理にまるでついていけない。

もう少し、なにか人為的な原因にはできなかったのだろうか?
彼らは母校である小学校を守るために活動しており、
そんな小学校がとり壊れる原因は「再開発」だ。
その再開発に絡んだ何かで誰かが放火したということにすれば
まともなストーリーが生まれそうなのに「ネズミ」である。

終盤ではシステムに組み込まれた「アスミ」をどうするかで、
3人の主人公が殴り合いの喧嘩をしながら口喧嘩をする。
もう勝手にやってろと思うほどキャラに対しても、
この作品に対しても感じてしまう。
無駄に喧嘩のシーンも長く、本当に作品全体がグダグダだ。

最終的に色々と解決するものの、
アスミと3人の主人公による「めんまみーつけた」みたいな
ラストと告白には見ている側の感情を何もくすぐらず、
いろいろな人が「アスミ」に告白するものの、
そもそもアスミの存在すら知らないモブにすら「大好きだ」と
言わせる意味がわからない。

この作品の世界の問題も「根性論」や「精神論」で解決している部分が多く、
1クール、私は何を見せられたんだろうと思うような作品だった

総評:俺が!俺がネズミを見逃したからっ!!

全体的にみて作品全体が破綻してしまっている。
「シビュラシステム」のようなもので管理しようとしている地区、
そんなシステムが抱える問題と真実や、3人の主人公の価値観の違いを
「トロッコ問題」にからめて描きたかったのは分かるものの、ガバガバだ。

作品の芯となっている「トロッコ問題」も唐突かつばかみたいな問題が多く、
それを3人がなんとか違う未来にしようとするという序盤の流れ自体は
悪くなかったものの、ストーリーがなかなか進まずにぐだぐだで
どうでもいいストーリーや過去回想によるキャラ描写があまりにも多く、
PSYCHO-PASSの二番煎じみたいな設定を扱いきれていない。

放送中に7話が延期したりとスケジュール的にきつかったのは分かるが、
作画も序盤のような良さは中盤からはなくなり、
そもそも序盤から主人公の走る姿などどこかギャグ的に見えるシーンも多い。
作画に関しても脚本に関しても練り込み不足としか言いようがない。

「PSYCHO-PASS」に「あの花」を無理やりくっつけたようなストーリーも、
話が進めば進むほどついていけなくなり、
謎や設定自体は理解できるものの、それを活かしきれておらず、
ヒロインの死亡理由がネズミだったり、3人の喧嘩や区民全員がヒロインへ告白する展開など
ツッコミどころがあまりにも多い。

作品が抱える問題も根性論と精神論で投げっぱなしになってる部分が多く、
「青春」っぽさやキャラクターの「若さ」という勢いで
それをごまかしきれていない感じだ。

CloverWorksは2022年冬アニメで「その着せ替え人形は恋をする」や
「明日ちゃんのセーラー服」などかなり高品質かつ素晴らしい作品を
手掛けた一方で肝心のオリジナル作品がこうなってしまったのは
残念でならない作品だった。

個人的な感想:大爆笑

1話のシュウタの走り方もそうだが、
時折シュールな笑いをぶち込んでくる作品だった。
とくに最終話の区民全員がヒロインに「大好き」と投げかけるシーンは
あまりにもシュール過ぎてちょっとお腹が痛かった(笑)

グダグダなストーリー展開を含め、
もしかしたら2時間くらいの映画としてまとめれば
もう少し面白い作品に鳴ったかもしれないだけに残念な作品だった。

「東京24区」は面白い?つまらない?

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