「楽園追放 -Expelled from Paradise-」レビュー

3.0
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SF
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評価 (54点) 全104分

あらすじ ナノマシン技術の暴走より地上文明の崩壊をもたらした「ナノハザード」[3]によって、廃墟と化した地球。人類の98%は地上と自らの肉体を捨て、データとなって電脳世界「ディーヴァ」で暮らすようになっていた。引用- Wikipedia

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正統派すぎるSFロボットアニメ

本作品は2014年に公開されたオリジナルアニメ映画作品。
監督は水島精二、脚本は虚淵玄、制作は東映アニメーション。

電脳世界・ディーバ


画像引用元:映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」予告編より
©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

この作品の世界観は独特だ。地上文明の崩壊した世界、
そんな世界で人類は現実世界を捨て電脳世界である「ディーバ」で暮らしている。
わかりやすくいえば人類の殆どがマトリックスの世界で暮らしてるようなものだ。
人類は自分たちが電脳世界で暮らしてることを自覚しており、
人類の98%が電脳世界で暮らしている世界観だ。

そんな世界は「現実世界」からのハッキングを受けている。
現実世界で暮らす人類の2%。
誰が何のために電脳世界にハッキングを仕掛けているのか。
主人公は「システム保安要員」だ。本来は実体のない彼女が生身の体を得て
現実世界へと降り立つところから物語が始まる。

人類の居なくなった世界には別の生物が進化し蔓延っている。
そんな生物と戦うための手段が「ロボット」だ。

アーハン


画像引用元:映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」予告編より
©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

丸っこい球体から、その丸みを維持したようなロボットデザインだ。
一言で言えば「無骨」だが、どこか可愛らしくもある機体であり、
キャラクターと同様に3DCGで描かれているものの、
その無骨さと丸っこさが自然と見た目から「重さ」を感じさせ、
地球が舞台だからこそ「重力」を意識させる演出がされている。

しかし、そんなアーハンがあっさり解体される(笑)
「え?この作品ロボットアニメじゃなかったの?」と拍子抜けするような展開だ。
序盤で主人公機が解体されちゃうアニメなど前代未聞だ。

この作品はどうなってしまうのか、行く末が見えない。

電脳世界と現実世界


画像引用元:映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」予告編より
©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

主人公は生まれてから1300時間以降は電脳世界で暮らしている。
電脳世界で味わう快楽、食事、娯楽、暮らしは味わってきた。
しかし、そんな彼女が任務とは言え「現実世界」に降り立つ。

重力の重みを生身の体で感じ、ほこりっぽい空気を吸い、砂の味を確かめる。
食事も味のしないものだ。肉をすすめられても彼女はそれを求めず、
車で流れる古い「ロック」にもどこか恥ずかしさすら感じる。
彼女にとって初めて味わう現実、そんな現実を彼女は下に見ている。
現実の肉体の「不便さ」を認識する。

それでも彼女は現実に住む人間の言葉を聞いて、自分の価値観が揺らぐ。
現実の肉体の不自由さ、電子世界に住む彼女たちと違って
旧世代のはずの彼らなのに彼らは電子世界に生きる彼女たちよりも
生き生きとしている。現実に生きる彼らとの会話、生活を味わううちに彼女は
考えるようになっていく。

果たして電子の世界で生きる自分と現実の世界で生きる彼らとでは
どちらが「人間らしく」、どちらが「幸せ」なのだろうかと。
ディーバという「籠」で生きてきた主人公が外の世界を知ることで、
彼女は新しい可能性を見出していく。

この作品の描いてることは哲学だ。

意思を持ったAI


画像引用元:映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」予告編より
©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

ハッカーを捜索する中で、ハッカーが自我を発生させたAIであることが発覚する。
彼の目的は人類を宇宙船へと載せて外宇宙へと旅立つことだ。
地球は人が住めなくなっている、だからこそ新たに住める惑星を探すための旅だ。
AIだったはずの彼が「自我」を現実世界で発生させ、音楽を理解し、
人を理解している。

任務を完了し、彼女は電子の世界へと帰還する。
だが、価値観の変わってしまった彼女は電子の世界ではすでに異物だ。
現実の世界を現実の肉体で味わってしまったからこそ、
彼女は「意思を持ったAI」を破壊することを認められない。

確かに電子の世界「ディーバ」は楽園かもしれない。
だが、管理された奴隷でもある。彼女はもはや奴隷ではなくなった。
だからこそ歯向かう。自由を求めるからこそ楽園という名の束縛へ反乱する。
自由に生きる現実の世界の人間を見たからこそ、
自我を持ったAIと出会ったからこそ、自分自身の生き方への変化が生まれる。

もう彼女は縛られない、縛られたくないと自由を求める。

宇宙と地球


画像引用元:映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」予告編より
©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

序盤で地上の重力を感じさせる戦闘シーンを見せ、終盤では宇宙の
「無重力」だからこその高速な戦闘シーンを見せる。
機体からの攻撃を華麗に避け、回り込み、弾丸を打ち込む。
心地いい流れで描かれる戦闘シーンは見ていて気持ちがいい戦闘シーンだ。
そこから、また地球へと降り立つ。

今度の相手はかつての同僚達だ。
主人公と同じ保安官が同じ機体で彼女たちを取り囲む。
1時間40分という尺の都合上仕方ないが、
メインキャラの3人以外はほとんど他のキャラクターの掘り下げがなく、
本来は彼女の同僚のキャラの掘り下げもあっていいはずなのだが無いのは残念だ。

しかし、それでも終盤の戦闘シーンはさすが水島精二としか言いようがない。
「市街地」での戦いは地の利を活かし、多勢に無勢をひっくり返す。
むやみにカメラを動かず、その分、ロボットを動かすことで
3DCGで発生しやすい「酔い」をなくし、セクシーなスーツを着る主人公の
戦う際の苦悶の表情とロボットの姿を交互に映し戦闘シーンを盛り上げる。

何度の攻撃で破損する機体の姿はロボットの美しさを際立てる。
ただ、やはりメインキャラ以外の掘り下げが甘いことで、
もう一歩盛り上がりきらなかったのは残念でならない。

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総評:正統派SFロボットアニメ


画像引用元:映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」予告編より
©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

全体的に見てすごく真面目なSFロボットアニメだ。フル3DCGで描かれた世界観、
セルルックにすることで3DCGであることの違和感を消し、
なめらかに動く登場人物やロボット、細かい表情の変化は一見の価値があり、
ロボットの戦闘シーンこそ序盤と終盤の2回位で少ないものの、
砂地、宇宙、市街地とそれぞれ違った魅力のある
ロボットバトルをしっかりと見せてくれる。

ストーリー的にも「電脳世界」で暮らす幸せと「現実世界」で暮らす幸せ、
どちらが人間らしく自由なのかという問いと、それを受けて主人公が選択する
「楽園追放」というタイトルにふさわしいストーリー展開になっており、
ラストまでの展開もまっすぐで心地が良いストーリーだ。

ただ、その反面でやや盛り上がりに欠ける部分が多い。
序盤でロボットを1度失ってしまったため、ロボットによる戦闘シーンは少なく、
ハッカーを探すなかで廃退した地球を旅するロードムービー的なニュアンスがあり、
その中で主人公が電脳世界と現実世界について考えるという展開自体はいいものの、
やや淡々としている部分が多い。

メインキャラも少なく、終盤でいきなりでてくるキャラも多いのに、
そのキャラの掘り下げや姿がほとんど映されないまま終わってしまっており、
戦闘シーン自体はいいものの、キャラクターの掘り下げがメインキャラ以外
おろそかになってしまったせいでストーリーに「厚み」が生まれなかった印象だ。

ストーリー自体も「士郎正宗」作品などのSF作品でやってきたことであり、
新鮮味は薄い。脚本の虚淵玄らしさというのをあまり感じず
よくまとまっており正統派で真っ直ぐな作品ではあるものの、
もう一歩なにか貫き通すようなものが欲しかったと感じてしまう作品だった。
簡単に言えばまとまりすぎてしまった作品といえばわかりやすいかもしれない。

個人的な感想:物足りない


画像引用元:映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」予告編より
©東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

3DCG自体のできは非常によく、セルルックで違和感のない絵になっていたものの、
そのクォリティ自体は素直に評価したい反面で、
ストーリーがやはり物足りない作品だった。
戦闘シーンも燃えるものの、やはり「敵」の描写がほとんどないせいで
燃えきれなかったというのが1番残念なポイントかも知れない。

メインキャラの声優に釘宮理恵、三木眞一郎、神谷浩史を起用し
キャラの声によるキャラ付けをしている部分もあり、
一方でちょい役に林原めぐみ、高山みなみ、三石琴乃を起用し、
ほとんど出番がないというちょい役すぎる起用はちょっと残念でならない。

どうせなら「釘宮理恵」VS「林原めぐみ」や「釘宮理恵」VS「高山みなみ」の
熱い戦いと掛け合いが見たかった。最後の戦いでパイロットも描写されてるのに
戦闘中に掛け合いがないというのはちょっと意味不明だ。
あの戦いの中で「電脳世界」と「現実世界」の認識の問答があって
あのエンディングに繋がるならば、この作品の印象も大きく変わったかもしれない。

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