プラスティック・メモリーズ」

2016年6月29日

評価/★★☆☆☆(25点)

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SFに大事なのは練りこまれた設定だ

本作品はMAGES.所属のシナリオライターである林直孝による
アニメオリジナル作品。
監督は藤原佳幸、アニメーション制作は動画工房

この作品はいわゆる「アンドロイド」と「人間」の交流を描いた作品だ
この1文だけで思わず「あー・・・そういう感じか」と
思わずつぶやいてしまう人もいるだろう
それほどまでに、この基本的な設定部分は「使い古された」ネタであり
アニメのみならず映画でも使われている設定だ

アニメだけでも「ちょびっツ」「ハンドメイドメイ」「まほろまてぃっく」etc…
実写映画だけでも「AI」「ブレードランナー」、
わかりやすく言えば「ターミネーター」などもこの手の作品の中の1つといえるだろう。
それだけに見れば見るほどいろいろな作品が頭の中を駆け巡っていく。
いわゆるテンプレートがすでに確率化されているジャンルであり、
そのジャンルの中でどう「オリジナル性」をだし、どう「面白くする」のかが
この作品のポイントだったのだろう。
しかし、この作品はオリジナル性を出そうとして「失敗」している

SFという作品で一番大事なのは設定だろう。
いかに現実的に、いかにファンタジー的に、いかに未来感を描写するか
それがSFという作品における根幹であり面白さだ。
だが、この作品に限って言えば「現実的じゃない未来」のファンタジーであり
多くの作品のいい所どりをして、そのいい所どりした部分に余計なオリジナル性を
出そうとして破綻した設定を産んでしまっている。

この作品の世界における「アンドロイド」は「ギフティア」と呼ばれている
見た目は人間と見分けることができず、心を持ち表情もある
幼女から青年まで様々な外見のギフティアが存在する。
人と違うところは外見の変化がなく「9年4ヶ月」で
人格や記憶が壊れるというのが決まっている。

だが「なぜ人格や記憶が壊れるのか」という説明はされない
そういうものだからというのをまず受け止めないといけない。
更に「9年4ヶ月」になるまえに「回収」する業者が存在し、
回収することも法律でも定められている
そんな業者に務めるのが主人公だ。
だが、法律で定められているのにも関わらずグダグダと交渉する。

心のあるアンドロイドと9年近く過ごせば愛情が湧くのは理解できるが
最初から「9年」という月日が決まっているのにも関わらず
自動的に強制回収するプログラムのようなものが最初から組み込まれておらず、
わざわざお宅に出向いて「回収しますよー」という交渉をしないといけない
法律で決まっているにも関わらずだ。

更に回収される側も「回収されたくない、失いたくない」と
主人公たちに思いをぶつける。
だが、それが知られざる事実だったのならわかるのだが
「9年」で回収されるということは公にされている。
回収されたくない失いたくないといっても9年4ヶ月をすぎれば
どんなに文句を言おうとも「記憶と人格」はなくなる。

この寿命設定はSF的な設定ではなく、
主人公とヒロイン、人間とアンドロイドのラブストーリーを描くための
「泣かせるためだけの設定」になってしまっており、
すべての設定、すべてのストーリー展開が「最終話」の展開のための描写になっている
はっきりいってまえば中盤くらいから
「あー最終話はこうなるんだろうな」というのが透けて見えてしまっており、
そのせいで中盤辺りからストーリーを惰性で見ている感じが強い。

見終わったあとに思い返すと中盤のストーリーは
「何だったんだ?」と思う設定のもとに作られているストーリーが多い。
法律で決められている回収義務のはずなのに
回収業者が正式なものでなく闇業者が存在したり、
9年4ヶ月を過ぎると「人格と記憶」だけでなく暴走し人を襲うようになるなど
尺稼ぎのためのストーリーと設定が多い

特に暴走設定に関してはもはや飲み込める設定ではない。
人間と共に暮らしていて法律的にも認められているアンドロイド、
そんなアンドロイドが「暴走」し人を襲う危険がある。
9年で別れなければならず、そのせいで心の傷は深い

「ペットロス症候群」のような問題もあるにも関わらず
現在もなお生産中であり9年問題、暴走問題に対して解決策や掘り下げられる事はない
別のSF作品ならば「ギフティア」を恨んで破壊し回る組織があってもおかしくない
危険なアンドロイドの設定を抱えたまま「別れ」と「恋愛」を描かれても
しっくりとこず、パズルの間違ったピースを強引に埋め込んでいるような
そんな感覚になる作品だ

そんな危険があるのにもかかわらず主人公たちは
「理解してもらった上で交渉し解消する」という理解し難い行動を行っている
理解してもらわず逃げられたりしたら暴走し人を襲う危険があるのにもかかわらず
ひたすら人情派の刑事のごとく持ち主と話すのを見せられる。

制作側も最終話を描きたいのはわかる。
だが、それまでのストーリーの展開があまりにも薄く
本来キャラクターや設定を掘り下げるべき中盤のストーリー展開が
作品の設定の強引さが産み出す消化ストーリーになってしまっており、
話の内容的に序盤と終盤を見ればなんの問題もないストーリーになってしまっている。

例えば主人公たちが回収しに行くアンドロイドと人間の関係性だったり、
サブキャラクターの掘り下げだったりが甘く、
「中盤のストーリー?どうでもいい、早く最終話を描きたい」という感じが強く出ており
そのせいで1話のあとが最終話のための消化ストーリーになってしまっている。

最終話を描くためのシンプルなストーリーではなく、
もう少しシンプルな設定とストーリーにすればいいのに、
尺稼ぎのために余計な設定とストーリーを付け足してしまうせいで
最終話を「素直」に受け入れることができない。
この最終話を描くための最低限の設定は序盤の段階で用意されており
それ以上の余計な肉付けは不必要だったのにも かかわらず
話が進めば進むほど余計な肉詰げがされてしまっている作品だった

結局、描きたかったはずの最終話を見ても
雰囲気や声優さんの演技で「泣ける」人はいるかもしれないが、
結局のところ「バッドエンド」であり、
最後の最後でしっくりこないシーンが描かれて終わっても
「うーん?」という感覚が強く残ってしまった

全体的に見て設定の詰めが甘かった作品だった。
TVアニメとして全13話構成で話をつくろうとしたが、
もともとが「連作短編小説用」のネタだっただけに
そのネタで作られる尺が圧倒的に1クールという尺に足りず、
尺を埋めるために「暴走」や「闇業者」などの要らない設定を付け足した結果、
序盤から想像できる以上の最終話にはならず、
序盤と最終話をつなぐ中盤の余計なストーリーのせいで
感動できるはずの最終話もしっくりこない感じになってしまっていた。

もっと設定を掘り下げて2クール尺で描くか、
逆に余計な設定を取り払って1時間半の映画として作られれば
作品の評価がもっと違っただろう。
「1クール」という尺のせいでいろいろな部分が中途半端になってしまい
作品の面白さも中途半端になってしまった作品だ

売り上げ的に見ても現実的ではないが、
総集編という形で映画化されれば逆に面白くなる作品かもしれない
個人的にはこの手の作品では「まほろまてぃっく」に対する思い入れが強すぎるため
どうにも最後までこの作品に対するモチベーションを保てなかった。
アイラというメインヒロインは徐々に可愛くなっていったが、
どうにもキャラクターに対する感情移入が最後までしきれなかった。