「ワンダーエッグ・プライオリティ」レビュー

4.0
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SF
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評価 ★★★★☆(60点) 全12話

あらすじ 不登校の中学生大戸アイは、深夜の散歩中に、謎の声に導かれエッグを入手する 引用- Wikipedia

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シュレーディンガーの猫

本作品はTVアニメオリジナル作品。
101回目のプロポーズなどで有名な「野島伸司」氏が
初めてアニメの脚本を務めている作品だ。
監督は若林信、制作はCloverWorks


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 1話より
©WEP PROJECT

1話冒頭、不思議な世界観が繰り広げられる。
オッドアイな主人公が夢なのか現実なのかわからない空間で
しゃべる虫に話しかけられ「初回無料のガチャ」を引く。
そのガチャは特別であり、欲しい物が入っている。
夢から目覚めた主人公のもとには数字の書かれた「卵」があった。
というところからストーリーが始まる。

独特な空気感だ。
キャラクターデザインと作画の雰囲気、劇伴などもあるいかもしれないが
掴みどころがないが、その掴みどころの無さにひかれてしまう。
ほとんど説明されない謎、そんな謎が解き明かされていくような期待感。

1話の段階でわけのわからない要素をドンッと叩きつけれたような
そんな感覚に陥る。
最近のアニメでは味わえない「質アニメ」と呼ばれた類、
いや、それ以前の「考察アニメ」と呼ばれた類の空気感。

「割れない卵」を手にした主人公。
卵はなんなのか、卵の中には何が入っているのか。
不登校な主人公を比喩するかのような割れそうで割れない卵。
現実と非現実の境が曖昧で主人公もよくわからないままに
非現実的な空間へと迷い込んでしまう。

そんな非現実的な空間で主人公の過去が描かれる。
彼女がなぜ「不登校」なのか。
彼女の過去がえぐられる中で、「卵」を割ることを強いられる。
卵の中から生まれたのは「少女」だ。

彼女が求めた「友達」、求めたからこそ卵から友達が生まれた。
話の流れとしては理解できるものの、
重要な部分は何も説明されない状況であるがゆえに困惑する人も多いはずだ
暗喩や比喩、見る側が「想像」し「考える」ことを強いられている。

彼女の親友は死んでいる。
友達の居なかった彼女の唯一の友人、そんな友人を守れなかった後悔。
なにも出来なかった、なにもしなかった自分。
そんな自分はもう嫌だと自ら行動を起こす。
「親友」を取り戻すために。

非現実的な空間で卵から孵る「友達」を守りつづければ、
死んだ「親友」が生き返る。いつか、その日のために彼女は戦う。
友達を守り、親友を取り戻す。
これは贖罪と懺悔の物語だ。

あの時出来なかったことを、後悔した今だからこそ。
懺悔することで自分の罪を認め、自分と向き合い、
親友が生き返るという許しを得るための物語。

友達


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 1話より
©WEP PROJECT

卵から孵る「友達」は既に亡くなっている。
彼女達はなんらかの理由で自殺をしており、
卵からかえるとその「原因」が彼女達を殺そうと襲ってくる。
そんな原因から友達を守り、原因を倒すことで少女たちの
トラウマを開放している。

トラウマに囚われれる他者と対話をしながら自分も見つめ直している。
誰かを救うことは自分を救うことにつながり、
逃げずに、自らも立ち向かうことで自身の逃げた過去と向き合える。
他者の魂を救済することで徳を得る。
何処か宗教的概念を感じるストーリー展開だ。

そういった宗教的概念において「自殺」とはタブーであることが多い。
なにかから逃げたい、苦しみから解放されたい。
そんな状況で自身の命を投げだすことは甘美なる誘惑だ、
だが、生への冒涜でもある。
ゆえに自殺した少女たちの魂はこの世界に囚われている。

そんな魂の救済を主人公に行わせている。
同じように亡くなった「親友」を助けるために、
多くの「友達」の魂を救済しないといけない。

友達は自身のトラウマと向き合い、その原因を倒すことで救済される。
敵と戦うのは主人公ではあるものの、
卵から孵る友達自身がトラウマと向き合い立ち向かう努力をしなければ
敵を倒すことは出来ない。

こういった部分は言葉であまり説明されない、
彼女達の台詞やストーリー展開の中で見る側が察していく。
現代の少女たちの「自殺」の原因となる様々な要素を描きながら、
物語は少しずつ進んでいく。

同志


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 4話より
©WEP PROJECT

主人公以外にも戦っている人間が居る。
彼女達も主人公と同じように誰かを生き返らせたいと思い戦っている。
そんな同志であるがゆえに絆が生まれる。

他者には理解できない、誰かを生き返らせるために戦ってる少女たち
同志だからこそ理解できることがある。
そんな相互理解から「友情」が生まれる。

友達が欲しかった彼女達が「誰かを助ける」ために戦ってる中で
現実の友達ができる。一人だからこそ悩んでしまった、
誰にも相談できず自身を追い詰めてしまった。
そんな彼女達が目的が同じ「相談できる相手」ができることで、
より自分を見つめ直すことができる。

しかし、友だちができたからこそ主人公は悩む。
「友達」とは何なのか。救いたいはずの「小糸」は
主人公にとって本当に「友達」だったのか。
主人公はなぜ「小糸」が死んだのか、原因すらも理解できていない。
いじめのせいなのか、先生とのただらぬ関係性のせいなのか。

「小糸」とは違い、今の友達とはきちんと
会話をし向き合うことが出来ている。
彼女達の悩み、彼女達の過去を「聞く」事ができ、
そして理解することもできる。

彼女達もまた「後悔」している。
そんな彼女達の後悔を聞いたからこそ、
あの頃には理解できなかった感情が湧き上がる
友達なのにどうして相談してくれなかったのかという怒り。
友達と向き合うことで「向き合えなかったあの頃」の後悔がより蘇る。

救おうとしている「小糸」は主人公にとって本当に
友達だったのか?相手はそう思っていたのか?
見ている側にもそんな疑念が湧き上がる。
断片的に見せられる主人公と小糸の関係性は純粋な友達同士とは
言えないものがあり、何かしらの裏を感じてしまう。

それは同時に彼女達が「戦う」理由への疑問にもつながる。
本当に彼女達が命をかけて生き返らせるべきなのだろうか?と。
生き返らせようとしている友達は本当に生き返りたいのか、
それすらもよくわからず、
死者のために戦う4人の仲が良くなればなるほど、
見ている側の疑問は高まってくる。

これ以上、戦う必要はないんじゃないかと。
確かに彼女達は自殺したものを救えなかったことを
多かれ少なかれ後悔している。
彼女達自身が自殺の原因になっていっる子もいる、
だが、それを選んだのは彼女達が救おうとしたものだ。

彼女達自身が手を下したわけではない。
後悔や責任はあるかもしれない、だが、義務ではない。
4人の仲が深まれば深まるほど、互いを理解し合えばし合うほど
「過去の友」に対する疑念が強まっていく。

もうやめねぇ?


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 5話より
©WEP PROJECT

「行きたくないなー、今、最高に楽しいのに。もうやめねぇ?」
メインキャラの一人がこんなことをこぼす。
彼女達に相談もなく勝手に死んだ友だ。今は友だちもいる。
自己中な友達よりも自分を理解してくれる友が3人もいる。
行きたくなければいかなければいい。義務ではない。

なにか「契約」があるわけでもない。戦い続けなければ死ぬわけでもない。
戦い続ければいつか死んだ友が蘇るかもしれないという、
ただ、それだけだ。

それだけだからこそ、やめることもできるこそ、彼女達は悩む。
楽しい時を過ごした、今は友だちもいる。
だが、ここでやめることは今の彼女達だからこそ出来ない。
今辞めてしまえば以前の自分と同じだ。

過去を精算するために、
一歩進むために、彼女達は戦いの場へと戻る。

9話


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 9話より
©WEP PROJECT

終盤になると話の核心に迫ってくる。
非現実的な空間で再会した植物人間状態の友人、
そんな友人との会話を見ている「大人」。

この作品の大人は何かを隠している。
4人の少女が必死に戦っているその世界を覗き見る大人たち、
少女たちの自殺の本当の理由、
少女たちに卵を売るアカと裏アカの本当の目的。
様々なことを隠している。

序盤は「ファンタジー」な力のように見える卵や
少女たちの力や非現実的な空間、
それはすべてファンタジーではなく「科学」の産物だ。

大人たちは何を隠しているのか、大人たちは何がしたいのか。
少女たちが必死に戦っている裏で何かを企む大人たちの
不穏な空気が物語に緊張感を生んでいる。

クリア


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 10話より
©WEP PROJECT

終盤、4人のうちの2人がクリアする。
本来は生き返るはずの友、だが、その姿はすぐに消えてしまう。
希望は絶望へと変わり、その絶望は挫折につながる。
そこに現れる圧倒的な「死の恐怖」。

人間である以上、生きるものである以上、常によりそう「死」。
この世界にはそんな「死の誘惑」をけしかけてくるAIが居る。
二人の科学者が生み出したそれは、二人の科学者では
止められないほどのものになってしまう。

そんな死の誘惑のせいで多くの子供が死にいざなわれた。
彼女に勝つためには死を乗り越えなければならない。
自殺した少女たちの魂を救いながら、多くの死の誘惑を
見せられた主人公たちは「死の誘惑」を乗り越え、
自殺した友を持つ主人公たちだからこそ「生」に執着できるかもしれない。

強い死の誘惑に抗う「エロス(生の衝動)」の戦士を作り上げるために
彼女達は戦わされていた。その真実を知った主人公。
彼女は一体、どうするのか。真実を知ってもなお、戦うことを選ぶのか。

もう一人の自分


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 12話より
©WEP PROJECT

最終話、主人公が出会うのは自分自身だ。「パラレルワールド」の自分。
別の世界で自殺を選んだ自分自身。自分と同じようにいじめられたが、
「小糸」には会えなかった別の世界の自分。
友達の居る自分と、居なかった自分。
もしかしたら「こうなってしまったかもしれない」可能性の自分。

もう一人の自分は死の誘惑に屈してしまった。
しかし、自分は違う。彼女に対し主人公は幸せであることを告げる。
「小糸」に出会えた、同じ志を持つ「3人の友だち」にも出会えた。
多くの死の誘惑を見てきた中で、
彼女は母親と先生の関係性も納得することが出来た。

だからこそ死の誘惑には屈しない。
確かに死は甘く優しく救われるかもしれない。
生きるということは辛い事が多い。
それでも生きれば「幸せ」を見出すことができる。
誰かを愛し、愛されるために。

それが分かったからこそ主人公である「アイ」は戦士になる。
愛の、エロス(生への衝動)の戦士に。
パラレルワールドの自分を救うために、
多くの死の誘惑に抗えなかった少女を救うために。

投げっぱなし


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 12話より
©WEP PROJECT

この作品でやりたいことは分かる。だが見事なまでに投げっぱなしだ。
1クール全12話の中で8話がなぜか総集編になっており、
簡単にいえば「1話おとした」せいで1話分たりなくなってしまっている。
最終話の12話は本当は11話だ。それゆえに残り1話がある。

6月に特別編として放送されるようだが、
あと1話、30分で残された伏線や話が解決するとはとても思えない。
3人の友だちの問題や明かされていない部分、小糸の自殺理由、
AIとの決着、自殺した少女たちは生き返るのか?などなど。
後1話でコレを全部解決して完結となるのか疑問でしか無い。

特別編ということでもしかしたら1時間位やるのかもしれないが、
その1時間の内容次第でこの作品の評価も大きく変わってしまう。
エロスの戦士となったアイと、タナトスの戦士となってるAI。
どんな結末になるのか、今から6月が楽しみである反面で、
このお預けにされた感じはやや納得できないところでもある。

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総評:名作か駄作か…それは6月次第


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 1話より
©WEP PROJECT

全体的に見て非常に懐かしい雰囲気に慣れるアニメだった。
エヴァ以降の考察系アニメや、いわゆる質アニメとよばれる作品、
そんな作品では随分と減ってしまった「視聴者」に
考えさせるタイプのアニメであり、説明自体はかなり少ない。

1話の段階で人を選ぶ要素が強く、だが、それゆえに面白い。
この世界はなんなのか、このシーンにはこういう意味が
あるんじゃないだろうか。
視聴者に「考察」させるアニメの面白さを久しぶりに味わえる。

1~100まで説明するのではない。20くらいしか説明しない。
のこりの80を視聴者に保管させるための演出や舞台装置、
キャラクターの台詞や表情で察させることで
物語を味あわせている作品だ。

劇場アニメ並の作画のクォリティで描かれてるアニメーションとしての
クォリティも素晴らしく、ぐりぐりに動くアクションシーンと
敵のデザインの独特な気持ち悪さと相まって甘美的な魅力のある
戦闘シーンを作り上げている。

戦闘シーンだけでなく、日常シーンでもキャラクターの描写は
4人のメインキャラクターの魅力につながるような描写が多く、
一人ひとりの魅力をきちんと描くとで
それぞれのキャラの可愛さにつながっていた。

最後まで見ると色々と分かる部分も多く、
特に11話まで見れば「あーそういう話なのね」と納得できる部分も多い。
しかし、肝心の最終話はいろいろな事情から投げっぱなし状態で、
あとは特別編次第だ。

これで特別編でも「投げっぱなし」になってしまったら、
流石に厳しい評価になってしまうが、きちんと物語がキレイに終われば
これほど良質な質アニメは久しぶりに味わえた!と
言える作品になるかもしれない。

全ては6月の特別編次第だ。

個人的な感想:4人


画像引用元:ワンダーエッグ・プライオリティ 5話より
©WEP PROJECT

4人のメインキャラクターの魅力がしっかりと感じられる作品だっただけに
彼女達に救いがあってほしいと思ってしまう。
展開的に友人たちが生き返るのはやや難しそうではあるものの、
何らかの形で「救い」があれば…と期待してしまう。

これで全部ぶん投げて終わったらそれはそれで伝説なアニメになるが、
この作品でそんなことはしてほしくはない。
あと2ヶ月というブランクが無駄にハードルを上げてしまっているが、
あえてこのレビューを見てる人にも言いたい。

騙されたと思って見てみてほしい。
特別編のストーリーの締め方次第で名作にも駄作にもなり得る、
そんなシュレディンガーの猫状態を味わうのは今しかできない(笑)

特別編、この作品を見てよかったと思えるような内容に
なっていることを期待したい。

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