「劇場編集版かくしごと ―ひめごとはなんですか―」レビュー

5.0
映画
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評価 ★★★★★(85点) 全約80分

あらすじ テレビアニメ版を編集して新規カットを追加し、テレビアニメ版では描かれなかったもうひとつのラストを描く引用- Wikipedia

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これはもう1つの「かくしごと」

本作品は「かくしごと」の総集編映画作品。
監督は村野佑太、制作は亜細亜堂

親子の物語

冒頭、新規カットからは始まる。
夏に上映される総集編映画、そんな夏にふさわしい風鈴の音と蝉の声、
「姫」はそんな夏の日差しを感じながら物語の始まりを告げる

「これは私と、父と、母の物語」

彼女は父の「かくしごと」を知ってから1年。
アニメの最終話から1年たった彼女があの時を振り返る形で
この作品が作られている。

「姫」を演じる高橋李依さんのささやくようなナレーション。
そのナレーションがあるからこそ総集編としての味わいが
きちんと冒頭から感じられるようになっている。

この手の総集編映画だと単純に放送した内容を切り貼りして
90分や2時間にまとめただけの作品も少なくない。
かつては総集編映画ブームが有り、特典商法と合わせて
ろくに1本の映画としてのストーリー構成が機能していないような
作品も多く、総集編映画ときくと警戒してしまう人も少なくないだろう

しかし、この作品は違う。編集されたTVアニメの内容、
私達が見たあの1クールを「19歳の姫」とともに振り返る。
下ネタ漫画家である主人公が自分の仕事を「隠した理由」。
1話の冒頭のあのシーンを姫の心理描写を含めたナレーションを
いれることで単純な総集編映画とは違った趣が生まれている。

全てのかくしごとを知った姫の語り口が、
全てのかくしごとを知った視聴者の心に染み渡る。
決して泣くシーンではない、だが、
まるでアルバムをめくりながら思い出を振り返るように、
想い出と懐かしさが涙腺を刺激する。

この作品は「総集編」だ。だが、ただの総集編として終わらせない。
制作側のそういった意気込みを感じてしまうほど
総集編であることを忘れるほど自然にストーリーが描かれ、
カットした話も単純にカットするのではなく
思い出のアルバムの中の1枚のように見せることでカットした感じが薄まる。

愛ゆえに隠す

主人公の後藤可久士は漫画家だ。
彼はシモネタ漫画家として有名であり、そんな漫画を描いているからこそ
どこか漫画家としての自分に自信がなく、
自分のような漫画家が将来、娘の婚約者として現れたら怒ると思ってるほど
自己矛盾を抱えている。

優しすぎる父だ。それは母のいない娘を思うがゆえに、
幸せで平凡な生活が続くように彼は描く仕事を隠している。
娘も父を思い、父も娘を思うからこその「かくしごと」

なぜ後藤可久士が描く仕事を隠すに至ったのか。
総集編ではあるもののメインとなるストーリー部分をカットしすぎず、
もし、本編や原作を見ていなくとも問題ないほどに
自然なストーリー構成になっている。

「俺はいつまでできるんだろう、この仕事を」

原作者である「久米田先生」とかぶる主人公のキャラ像。
自己投影と、久米田先生自身が抱えていた自己矛盾を、
総集編だからこそより感じることが出来る。

ただの漫画家ではない、ワンピースやNARUTOを描いているわけでもない。
下ネタのあるギャグ漫画家が抱えている思い。
どこかおおっぴらにできないのに人気になりたいという思い。
ギャグ漫画家に悲劇はいらない。
読者にもかくしていた後藤可久士のかくしごと。

総集編でメインのストーリーが強調されているからこそ、
漫画家人生30年、「久米田康治」の漫画家としての思いを
より強く感じることが出来る。

後藤可久士のかくしごと、姫のひめごと

アニメのラストはやや駆け足に感じる部分があった。
1クールという尺故にやや詰め込まないといけない部分もあり、
そこが惜しい部分でもあった。
しかし、総集編は「新規カット」という形で
TVアニメでは描かれなかった部分が描かれている。

だからこそ、より「かくしごと」という作品の魅力が強まっている。
約80分にまとめられ、そしてTVアニメでは描かれなかった部分を
追加したからこそ「ひめの最初で最後のわがまま」がより涙を出そい
「19歳の箱」に隠された色にボロ泣きしてしまう。

父の白黒の漫画に母が鮮やかな色を決め娘が色づかせる。
想い出はモノクローム、色を付けてくれ。
鮮やかな色と幸せな家族の姿、そしてあの曲でこの作品の幕は降りる。

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総評:完璧すぎる総集編

全体的に見て素晴らしい総集編だ。
TVアニメ1クールの内容を切り貼りしただけではなく、
「19歳の姫」のナレーションを入れつつ、メインのストーリーとは
関係のない部分を1枚の写真のように切り取りながら振り返ることで、
自然なストーリー構成にしつつ、19歳の姫とともにあの日々を振り返る。
懐かしい思い出に、決して泣くシーンではないのに涙腺を刺激される。

下ネタギャグ漫画家としての日常ギャグやパロディ要素は
TVアニメからほぼカットされており、それゆえに、より、
この作品で描かれている「親子の物語」としての良さが強調されており、
更にそこにTVアニメでは描けなかった部分を追加カットとして入れることで、
TVアニメ以上の「親子愛」が描かれている作品になっている。

原作およびアニメを見ていなくても問題のない構成になっているのは素晴らしく、
展開がわかっているのに演出とナレーションのおかげでもう1度、
いや、もう2、3度泣けてしまう作品に仕上がっていた。

個人的な感想:見に行けばよかった…

公開当時いそがしかったことも有り見に行けなかったが、
劇場でこの作品を見たかったと思わず思ってしまうほど
非常に完成度の高い総集編に仕上がっている。

「かくしごと」という作品が好きな人、
総集編だからと見ていない人もいると思うが、
この作品は総集編ではあるものの単純な総集編ではない。
「もう1つのかくしごと」だ。

「」おもしろい?つまらない?


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