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「きみの声をとどけたい」レビュー

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評価 ★☆☆☆☆(11点) 全94分

あらすじ 神奈川県の海辺にある町、日ノ坂町に住む行合なぎさは、龍ノ口かえで・土橋雫の2人の幼馴染と同じ神奈川県立日ノ坂高校に通っている高校2年の女子高生引用- Wikipedia

街のみんな!おらに言霊を分けてくれ!

本作品はマッドハウス制作によるアニメオリジナル映画作品。
監督は伊藤尚往、制作はマッドハウス。

見出して感じるのは明らかに「一般向け」を意識した作画だろう。
君の名はブームが起きてから「背景は異様にリアル」にして、
そこにアニメキャラを乗せるような作品が増えたが、
この作品も背景描写はかなり頑張っている。

ただキャラクターデザインの癖が強い。
全キャラ小顔で丸顔で頭身が高い。いわゆる萌アニメっぽさはないものの、
子供向けなんだか大人向けなんだか分かりづらいキャラデザで、
やわからかい雰囲気ではあるものの、
少し好き嫌いが分かれそうなデザインだ。


引用元:(C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会

更に声優。この作品のためにわざわざオーディションした声優さんらしく、
メインの7人のうち6人はWIkipediaのページすら無い。
ただ「棒読み」ではなく新人っぽさ全開の演技であり、
ジブリのように「プロの演技は要らない」と思ったのかもしれないが、
素人or芸能人と声優の間のようなどっちつかずな感じになっている。

そして挿入歌。
冒頭始まって10分もたたないうちに主人公が歌う挿入歌がガンガン流れる。
驚くことにこの作品は挿入歌が4つもあり、
エンディングテーマを合わせれば5つも曲が流れることになる。
90分の尺の中で18分に1回曲が流れると考えれば異様さが分かるはずだ。

ストーリーも強引な感じが強すぎる。
主人公は言霊の存在を信じており「言霊」が見える。
自分のちょっとした発言で言霊が発生し、それが実現してしまうため
余計なことはしゃべらないようにしている。

そんな彼女が雨宿りで誰も居ない喫茶店に入り、
棚にしまってあるレコードを勝手にとり、勝手に再生する。
ちなみに彼女はレコードを掛けた経験がないようで
記憶を頼りにレコードの上に針を落としている。
この時点で「こいつなんなんだ?」と思わない方は少ないだろう。


引用元:(C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会

小学生ならいざしらず、高校生の女の子が誰も居ないお店に勝手に入り、
勝手にレコードを掛けるという非常識過ぎる行動が意味がわからず、
一歩間違えばレコードが傷らだけになってもおかしくない。
更にその喫茶店にはラジオブースがあり、勝手にマイクを使って喋りだす。

見ていて「ぞわっ」っとするほどの鳥肌が出てしまうほどの気持ち悪さだ。
非常識かつ痛すぎるこの行動が物語が動き出すきっかけにもなっており、
女子高生が「ミニFM」をするという舞台づくりをしたいのは分かるが、
もう少し自然な流れでそうできなかったのか?と思うほどに
強引過ぎる上にやや気持ち悪さすら感じてしまう導入だ。

ちなみに不法侵入の件について一応、注意されるのだが、
注意されたことに対して主人公は「ひどくなーい?」と言い放つ。
それだけならまだしも翌日に次に不法侵入したら通報すると言われてるのに、
また行き、入ろうとする。

これだけでも我慢の限界だが、お店の情報を自分で調べ、
会ったこともない人物の寝たきりの母親の病室に勝手に入りこむ始末だ。
この主人公にモラルというものはあるのだろうか?
もしくはマトモな教育を受けていないか、サイコパスだろう。
そう感じるほど序盤の主人公の行動がひどすぎる。

物語の始まりが強引な作品やご都合主義な作品はある。
だが、この作品の場合はそれ以上に主人公の行動げあまりにもぶっ飛びすぎていて、
冷静に考えたらありえない行動ばかりを起こしている。
突っ込みどころが多すぎてちょっと冷静に見ていられない。


引用元:(C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会

この作品の重要な設定として「言霊」がある。
主人公はそれが見えて信じており、だからこそ喫茶店の娘の言霊を
寝たきりの母親に届くようにラジオをやろうという展開になる。
この段階で「あ、最後母親目覚めるんだろうな」という
ストーリーの予測ができる上に、そのとおりにしかならない。
ちなみに言霊が出てくるのは最初と最後くらいしか無い。

そもそもメインキャラが一部を除いて存在感がうすすぎる。
主人公と喫茶店の娘のキャラはかなり時間を割かれて描かれるのだが、
メインの7人のうちの2人は映画が始まって40分過ぎてようやく現れる、
ちなみに映画は90分しかない。メインキャラが揃うのが映画が
半分過ぎてからというストーリー構成は疑問だ。

オーディションで6人声優を起用したために、
このメインキャラの多さなのは理解できるが正直多すぎる。
多すぎるメインキャラをさばききれておらず、キャラの役割を分散してるに
過ぎない。挿入歌や楽曲作りの展開など、
起用した声優を売り出したいがための要素があからさまに目立ちすぎている。


引用元:(C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会

メインキャラが多いからこそ、それを最低限掘り下げるために
ダイジェストばかりになってしまっている。
これが1クールのアニメなら、キチンと描かれただろうなと言う部分もあり、
ナレーションベースで描かれてばかりの日常描写は見ていて退屈で、
まるで「総集編映画」のようなストーリー構成になってしまっている。

そのせいでキャラクター同士の関係性が薄く、
ラジオもやってる理由も「喫茶店の娘の母親を目覚めさせるため」だが、
別に喫茶店の娘がラジオをやってくださいと頼んだわけではない。
そのため、終盤で彼女はメインキャラたちに向かい
「あなた達が勝手に盛り上がってたから」と言い放つ。

これがまさに真実である。
別に頼んでも居ないのに不法侵入した主人公が友人を集め、
自分のもうすぐ潰れる喫茶店でラジオを勝手に始め、
主人公すらも知らないやつまで集まってきて盛り上がって、
自分の知らない主人公の友人までやってくる始末だ。


引用元:(C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会

言霊の設定も驚くほど意味不明だ。
最初は主人公にしか見えないものだったはずなのだが、
終盤ではみんなが見える。全く関係のない電車の車掌や客にも見えており、
これはファンタジーかなんなのか測りかねてしまう。
せめて見えるのはメインキャラのみで抑えておくべきだっただろう。

結局、トントン拍子でできたテーマソングを掘り下げの甘いキャラたちが歌い、
何故か発生した大量の言霊のおかげで母親が目覚めるという
予定調和で終わってしまう。
謎の言霊シャボン玉が昏睡状態の母親に吸収され蘇る姿は
この作品の最大の笑いどころだろう。


引用元:(C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会

総評

全体的に見て1つ1つの要素があまりにも中途半端でダイジェストすぎだ。
女子高生がラジオを始める展開になるかと思えばダイジェスト、
キャラクターが増えて関係性が深まるかと思えばダイジェスト、
テーマソングづくりが始まったかとも思えばダイジェスト、
ぶつ切りにされたようなストーリー構成では作品に入り込めるはずもない。

1つ1つの要素を掘り下げるかと思いきやダイジェストばかりで、
必要のないキャラクターがあまりにも多い。
思わせぶりに出てきた寺の息子やヤンキーの兄ちゃんなど
存在感があるのに物語に一切必要がない。
キャラクターは多いのに、そのキャラクターをまるで使いこなせていない。

特にメインキャラは7人もいるのに描写しきれていない。
お菓子作りが得意、ラジオ好き、曲作りができるくらいの
印象しか残らないメインキャラなど存在価値があまりにも薄く、
キャラクターの要素を7人で分け合ってるだけに過ぎない。
オーディションで起用するのは4人位に絞るべきだっただろう。

ストーリー自体は王道かつありきたりだ。
やりたいことや描きたいことも分かるのだが90分に収めきれておらず、
序盤の主人公のサイコパスな行動の数々や、
掘り下げの甘いキャラクターたち、ダイジェストなストーリー構成と
1つの映画として完成度があまりにも低い作品だった。


引用元:(C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会

個人的な感想

個人的には物語の主人公に鳥肌が立ってしまった時点で無理だった。
ちなみに、この主人公は母親をなぜか下の名前で「みつえさん」と呼ぶ。
見た目も非常に若く、見てる側としては
「あ~父が再婚したのか?」と感じさせる設定だ。

だからこそ母親が昏睡状態とはいえ居ない喫茶店の娘に同情した部分が
あったのかと思ったのだが、そんな設定は存在しない、実の母親だ(苦笑)
匿名掲示板や感想サイトなどでは勘違いしたまま
思いこんでる方も多かったが、そうなってしまうのも分かる。

じゃあ、なぜ名前呼びしているのかという理由の解説は劇中では一切ない。
劇中で描写されない設定が非常に気になる描写になってしまっており、
ミスリードすら生んでいる。
調べると脚本家のツイッターでの解説はあったので気になる方は
そちらをのぞいてください。
https://twitter.com/ishkawamannbuu/status/914859001166184449

興行収入を調べようとしたのだが残念ながら正確な数字はなかったものの、
映画ランキングなどではデイリー興行収入ランキングの上位25位も
入らなかった。これはある意味奇跡的な数字らしい。

この作品を隠れた名作、傑作と評してる方も多かったのだが、
こんなダイジェストだらけの作品を私は名作と感じることができなかった。
恋愛要素や性的な描写を排除した、ちょっと道徳アニメっぽい雰囲気もあり、
過激な描写もないため子供に見せても安心なアニメではある。

絶賛してる人もいるため、好みの問題もあるのかもしれないが
私個人としてはこの評価になってしまう作品だった。

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