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2本に分ける意味はあったのか?「僕が愛したすべての君へ」レビュー

3.0
僕が愛したすべての君へ 映画
僕が愛したすべての君へ
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評価 ★★★☆☆(40点) 102分

本予告『僕が愛したすべての君へ』60秒

あらすじ 母親に引き取られた高崎暦は母の実家で祖父母とその愛犬のユノと暮らす。やがて高校生になった暦はクラスメイトの瀧川和音から声をかけられる。引用- Wikipedia

2本に分ける意味はあったのか?

原作は小説な本作品。
監督は 松本淳、制作は BAKKEN RECORD。
この作品は日本同時公開の作品であり、
原作も同じく2本発売されている。

原作は「2作を読むと互いの世界が
絡み合っている様子が見えてくる」ことがうりであり、
アニメ映画でも同じ形を取ったようだ。

あとに

2本同時公開された作品だが、見る順番によって
結末が変わることをアピールしている作品だった。
私はこの作品をあとに見ている。

1本目の君を愛したひとりの僕へは主人公の子供時代から始まったが、
2本目のこの作品は年老いた主人公の視線から始まっている。
死を目前にした彼、そんな彼の端末には
見覚えのないスケジュールが入っていたというところから物語が始まる。

この冒頭の時点で見る順番は間違っていなかったと感じる。
1本目のラストと2本目のラストが繋がっており、
こちらから先に見てしまうと、1本目の作品のヒロインだった少女が
なぜ交差点の真ん中に居たのか、
一体彼女は誰だったのかというのがわかりにくい。

こちらをあとに見ることで世界観も理解しやすく、
物語の流れも理解しやすい。
パラレルシフトがたまに起る世界、
自分が選択しなかった世界が並行世界にはある。

この世界において主人公は離婚した母のもとにいる。
君を愛したひとりの僕へは父のもとにいった世界だ。
君を愛したひとりの僕へではあまり深く描かれていなかった
主人公の家庭など、2本目をみることでより深く理解できる。

同じ

ただ、映画が始まって10分ほどで「君を愛したひとりの僕へ」の中でも
描かれたシーンを見せられてしまう。
1度見せられたシーンをまた見せられるというのは苦痛だ。
しかも、そのシーンが長い。

君を愛したひとりの僕へでも見たシーンが3分くらいならまだしも、
10分以上も同じシーンが流れる。
細かいシーンでも同じシーンがあり、
そこに君を愛したひとりの僕へにはないセリフなどもあったりするが、
すでに1度見たシーンをもう1度みるというのは変わらない。

この作品を先に見ていれば、この欠点を感じることはなかったが、
先に見ていなかったために、そんな欠点が生まれている。

自分であって自分ではない

君を愛したひとりの僕へとの大きな違いは
主人公のモノローグの多さだ。
並行世界の同一人物といっても同じような性格になるわけでもない。
彼は母のもとで育ったからこそ、厳しい祖父のもとにいたからこそ、
彼は自分の殻を持っている。

友だちが少ない彼の前に「並行世界」の和音が現れる。
パラレルシフトしてしまった彼女、
彼女はパラレルシフトしたくてしたかったわけではない。
並行世界で恋人だった主人公に近づき、
彼女は並行世界からやってきたことを告白する。

1本目を先に見ているからこそパラレルシフトなどの
用語もすんなり頭に入っているからこそ話についていける、
なぜ彼女はパラレルシフトしてしまったのか。
元の世界に戻るためにはどうすればいいのか。

1本目よりも話が理解しやすく、
冒頭から作品への没入感を高めてくれる。
並行世界では恋人同士だった2人、でも、この世界線では違う。
彼女のことを心配しながらも、どうすることもできない自分。

だが、唐突に彼女はもとの並行世界に帰ってしまう。
この世界の和音とのぎこちない会話、
並行世界では恋人同士だったことを2人は知っている、
だが、自分であって自分ではない。そんな不思議な感覚だ。

しかし、真実が明かされる。
彼女はそもそもパラレルシフトなどしていない(笑)
自分のことを忘れていた彼への仕返しとして偽っていただけだ。
そんなヒロインの可愛らしさを感じることができる。

「君を愛したひとりの僕へ」は尺の使い方が下手だったことを
この作品を見ると改めて感じてしまう。
2本同時公開ではあるものの監督も制作会社も違う、
センスの違い、見せ方の違いをはっきりと感じられる。

とくに序盤でダイジェストを使わないことが大きい。
ヒロインと仲良くなる過程を「君を愛したひとりの僕へ」は
ダイジェストで雑に片付けたが、
この作品は丁寧に描きつつモノローグを多用している。

そんなヒロインに心を奪われた主人公だが、
何度告白されても断れてしまう。
だが、大学に進学すると彼女から告白してくれる。

大人になり、就職し、虚数科学を研究するようになった彼らの
日常がダイジェストで描かれる。
「君を愛したひとりの僕へ」とダイジェストの使い方が大きく違い、
見せ方もまるで違う。

アニメにおける「センス」をここまで如実に感じられる作品は
なかなかないだけに、この手法は斬新とも言える。

パラレルシフト

だが、この世界はパラレルシフトが細かく起こっている。
一瞬のパラレルシフトで本人さえ気づかない、
カバンを左においた並行世界の自分と一瞬入れ替わり、
カバンが右にないことに驚いたりもする。

どんどんと月日が積み重なり年齢を重ねていく。
序盤から中盤まで大きなイベントは起きない。
だが、センスのあるストーリー構成だからこそ
ダレることも飽きることもない。

そんな何も起きず平和に幸せな結婚生活を送っていると、
とある事件が起きてしまう。
そんな事件をきっかけに「和音」は無許可の
オプショナル・シフト、並行世界からの移動が行われてしまう。

それは事件をきっかけに息子が障害を負ってしまった世界だ。
それゆえに並行世界への「和音」は
息子が無事だった世界にタイムシフトしてきた。

並行世界というのは可能性の世界だ。
そうはならなかった世界、選ばなかった世界、助けられた世界。

「君を愛したひとりの僕へ」で主人公がヒロインを
助けるためにタイムシフトしたように、
並行世界の「和音」も可能性を求めてオプショナルシフトしてきただけだ。
視線と見せ方が違うだけで印象はかなり違う。

数多に分岐した並行世界の数だけ人生が在り、自分がいる。
だが、どれも自分ではない。幸せの数だけ不幸の数がある。
並行世界にシフトしたとしても、
不幸が幸せに変わっても、幸せが不幸に変わるだけだ。

ダイジェスト

しかし、この作品でも終盤にダイジェストが描かれる。
「君を愛したひとりの僕へ」のストーリーが
「君を愛したひとりの僕へ」と同じように終盤の
ダイジェストとして描かれており、
これもこの作品の序盤と同じくすでに見たシーンの連続だ。

どちらか片方しか見ていない人がわかりやすくするための
ダイジェストであることはわかるのだが、
「君を愛したひとりの僕へ」と同じように
不要に感じてしまうシーンだ。

ただ、こちらを見ると「君を愛したひとりの僕へ」で
意味不明だったシーンや繋がる部分があり、
この作品があって初めて「君を愛したひとりの僕へ」も
完成することを感じる部分がある。

2本ではじめて1つの作品になる。
誰かを助けたい、主人公が困っているときに助けたいという
「君を愛したひとりの僕へ」のヒロインの物語と、
この作品のヒロインの「愛」の物語が
描かれている作品だった。

総評:後にみたからこその面白さと欠点

全体的に見て、この作品を後に見たほうが正解だと感じた。
映画冒頭から「君を愛したひとりの僕へ」のラストと話が繋がっており、
よく分からなかった部分などもわかりやすくなっており、
この作品をみ終わることによって2本で1本の作品であることが
きちんと伝わるようになっている。

ただ、後にみてしまったからこそ「君を愛したひとりの僕へ」の中で
この作品の一部のシーンがダイジェストとして使われており、
同じシーンを2回みるはめになってしまう。
しかも、それが長い。

そういった欠点はあるものの、
「君を愛したひとりの僕へ」よりも明らかに作品としてのクォリティが高い。
ダイジェスト1つとっても使い方に雲泥の差がある。
話の盛り上がりどころは「君を愛したひとりの僕へ」と同じく薄いのだが、
飽きさせないきちんとしたキャラクター描写があり、
「モノローグ」という形で主人公をえがき、
ヒロインの魅力もきちんと感じられるようになっている。

「君を愛したひとりの僕へ」で気になった主人公を
演ずる芸能人声優の演技力のなさも、
こちらの作品では感情を爆発させるようなシーンが少なく、
あまり気にならないようになっている。

そういう意味でも、この作品を後に見たほうが
両作品の印象が良くなるように思える。
もっとも、私はこちらの作品を最初に見たわけではないので、
こちらの作品を最初に見たらまた印象が変わってくるかもしれない。

用語のややこしさ、イベントの少なさ、
アニメーション的な盛り上がりの薄さや、
映画としての迫力が不足してるのは両作品ともあるが、
そんな中でもきちんとアニメという表現のセンスを
この作品では感じることができた。

それぞれの並行世界で2作品で1作品になるという
思い切った試みのあった作品だったが、
手法自体は面白く、この作品自体もわるくないのだが、
手放しで称賛するほどではないという印象は残ってしまう。

2時間半くらいの尺にしてうまいこと2作品をまとめたほうが
1つの作品として理解しやすかったのでは?と
色々と思うところもあり、斬新な手法への挑戦は
評価したいところだが、その斬新な手法が効果的だったのか?
と考えると疑問に感じてしまう作品だった。

個人的な感想:ヒロイン

圧倒的に今作のヒロインのほうが魅力的だ(笑)
「君を愛したひとりの僕へ」へのヒロインは
描写不足、ダイジェストで片付けられてしまったせいもあるが、
今作のヒロインはきちんと掘り下げられており魅力的だ。

原作自体も同じように2作品別れており、
なかなかアニメ化するのには難しかったであろう作品だ。
そもそも映画としては盛り上がりがかなり薄い。
並行世界などのSF要素を扱っているが、
過去のSF青春恋愛アニメ映画と比べると地味であることには違いない。

原作はもっと面白いんだろうなと感じる部分もあり、
スピンオフ作品も気になってしまう作品だった。

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