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原作破壊「夢見る男子は現実主義者」レビュー

夢見る男子は現実主義者 ラブコメ
夢見る男子は現実主義者
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評価 ☆☆☆☆☆(7点) 全12話

TVアニメ『夢見る男子は現実主義者』第2弾PV

あらすじ 佐城渉は同じクラスの美少女・夏川愛華にアプローチしては断られる、というやりとりを続けていたが、ある日突然、渉は自分が愛華に分不相応ではと気づいて熱が冷めてしまい、愛華と距離を置き始める。引用- Wikipedia

原作破壊

原作は小説家になろうで連載している作品。
監督は古賀一臣、製作はStudio五組、AXsiZ

ストーカー

1話冒頭から主人公のヤバさが際立っている。
主人公はヒロインが「嫌がっている」のにつきまとっており、
彼女が拒否しまくっているのに彼女のつきまとい続けている。
別に幼馴染や腐れ縁というわけでもなく、
ただ好意を持っている同級生というだけだ。

そんないつものつきまとい行為をしているなかで
彼にサッカーボールがあたりそうになる。
時間が止まりサッカーボールが花火のように空中で炸裂する
「想像」を彼がすると、急にヒロインに対して冷めてしまう。

意味がわからない。
1話の冒頭から主人公のストーカー行為に嫌悪感を感じたかと思えば、
そんな嫌悪感を感じる行動を急に主人公がやめてしまう。
なにか特別な、ファンタジーな能力やSF的な設定があるわけでもない。

急に主人公がサッカーボールが当たりそうになった瞬間に
「現実」をみてしまい、ヒロインに対して冷めただけだ。
あまりにも突拍子もない展開に1話の2分足らずで、
この作品のヤバさを感じてしまう。
この突拍子もない展開には原因がある。

原作では丁寧に心理描写されているようなのだが、
アニメではそういったキャラクターの心理描写、
モノローグというべきものをズバッとカットしてしまってるために、
見ている側にキャラクターがなぜそう思ったのか、
どうしてそういう行動に至ったのか、なぜそういう事を言うのかがわからない。

急にストーカー行為をしてるシーンから始まったかと思えば、
急に人が変わったように主人公が彼女に対して冷めており、
本当に話についていけない。

1話からギャルゲーのごとく色々なヒロインが出てくるのだが、
そんなヒロインを出す前に主人公がなぜ
ここまで急にヒロインに対しての態度が変わったのかを
説明してくれと叫びたくなる作品だ。

新しいヒロインが主人公に絡んできたかと思えば、
1話で元彼氏とよりを戻して終わっており、本当に意味不明だ。
ヒロインに対しても主人公はもう1度告白するも振られるが、
主人公がつきまといすぎたために彼女が孤独になっている。

すると主人公は彼女の魅力の「布教活動」を始める。
意味不明だ。

孤独

ヒロインである夏川 愛華には友達が一人くらいしか居ない。
主人公がつきまとっていたせいで、他の女子や男子も
彼女に近づいていない。
主人公も振られ、サッカーボールに人格を乗っ取られたごとく
人格が変わってしまったせいで彼女を諦めている。

だからこそ、彼女の友達を増やそうと考える。
ここまではまだわかる。
しかし、そういう話の展開になったはずなのに、
1話でぶつかってしまった女の子のストーリーが描かれる(苦笑)

メインヒロインである夏川を放置したまま、
別のヒロインの問題を解決する話をだらだらと描いている。
色々な女性の問題解決のために会話劇を繰り広げるのだが、
コレが本当に退屈だ。

そもそも知り合ったばかり、すれ違ったりぶつかっただけの
関係性の薄いヒロインの問題を主人公が解決する道理がない、
そんな道理がないのに彼は色々な女性ヒロインの問題を
ひたすら解決し続けている。

その問題や会話劇が面白ければ作品と成立するのだが、
ひたすらつまらない。
いきなり現れた風紀委員長が後輩の問題や自分の問題を
彼にいきなり相談し、そんな中で主人公は面倒事にさけるために名前を偽る。

面倒だから名前を偽る。
これが道端で出会った女性ならばまだ成立するかもしれないが、
同じ学校の先輩だ。少し調べれば名前を偽ってることなどあっさりと
バレルに決まっているのに、主人公はわざわざ名前を偽り、
偽ったことがバレて追求される。

本当に無意味な展開と無意味な会話劇をひたすら繰り返している。
孤独になってしまったはずの夏川も、
主人公が近づかなくなったおかげでクラスメイトが話しかけている。
主人公が何もしなくてもヒロインの問題が解決してしまっている。

調べたところ、原作の3巻までがアニメの4話くらいで消化している。
異様までの原作消化スピードだ。
1話から感じた違和感、キャラクターの意味不明な心理描写やセリフや行動、
それを説明するモノローグや心理描写をズバズバカットして、
プロットだけで脚本を描いている印象だ。

AIかなにかに原作を読み込ませて「要約して」と命令して、
出来上がった脚本といわれたほうが理解できるほど、
原作やコミカライズの細かい部分をカットしまくっている。
それなのにろくにメインストーリーが進まない。

存在感

この作品のメインヒロインは「夏川 愛華」のはずだ。
主人公は彼につきまとい、サッカーボールをよけたことで
現実を実感してしまい、彼女に改めて振られることで彼女を諦める。
だが、彼女は散々つきまとっていた彼の態度の急変が気になっており、
ときおり視線を彼に送っている。

それだけだ(苦笑)
メインヒロインのはずなのに主人公とろくに会話せず、
視線を送るだけの存在でしかなく、ほぼなにもしていない。
ときおり彼に対して嫉妬心をたぎらせて会話をするのだが、
だからといって関係性が変化するわけでも話が進むわけでもない。

1話1話終わるたびに「あれ?今回結局どういう話なんだっけ?」
と思うほど、話が進んでおらず、
どうでもいいヒロインのどうでもいい問題を、
適当な会話劇を繰り広げて、解決して終わっている。

やりたいことはわかる。
主人公につきまとわれ迷惑がっていたのに、
それを急にやめてしまった主人公のことが逆に気になってしまい、
主人公が離れたことで初めて彼女は自分の中の本心を自覚していく。
ヒロインが恋心を自覚するまでの物語を描きたいのはわかる。

だが、その空白期間を埋めるための他のヒロインの数々との
エピソードがあまりにも無意味だ。
序盤を見たあとに中盤をすっとばして終盤だけ見ても
話が理解できるほど、この中盤のストーリーは無意味でしか無い。

作画

ストーリーに関しては脚本もストーリー構成もガタガタだが、
作画もそれに増してガタガタだ。
1話の段階から作画に気合が入っておらず、
そもそものキャラクターデザインも簡素なもので気合が入っておらず、
どこかで見たことのあるキャラデザでしかない。

そんな作画の悪さは話が進めば進むほど顕著になってくる。
そもそも作画が悪いというよりはやる気がないといったほうが
正しいかもしれない。
例えば4話で主人公が髪を染めるというシーンが有る。

今までのブラウンがかかった色からダークブラウンにするというのが
話の流れなのだが、染めた後も染めた前とまるで変化がない(苦笑)

「ってか黒すぎね?」

と主人公は言うのだが、見てる側としては一切黒みを感じず、
染める前とどこが違っているか教えてほしいと思うほどだ。

他にも主人公がボストンバッグのような通学カバンを
使っているのだが、それを無理やり背中に背負っているため
変になっていたり、背景の作画があきらかにおかしかったりと、
背景の違和感も凄まじく、外注に丸投げした結果なのかもしれないが、
カットされるたびに背景がガクッとかわることまである。

制作スタジオ五組とは思えないほどの作画で描かれており、
OPの構図でさえ他のアニメの構図そのままだったりと、
手抜きなのか偶然なのかわざとなのか、
いかに低予算で力を抜いて作れるのかを試しているような作品だ。

話が進まない

中盤になっても雑なイベントで雑にメインヒロインの
恋の自覚が少しだけ進展仕方と思えば、
主人公のバイト先に女子大生があらわれて雑なイベントで
好感度が上がっていく。
低品質なギャルゲーでももう少しまともなストーリー展開だ。

中盤になってもヒロインが増えていく。
主人公のバイト先に現れたJDに見えるJCや、
同じバイト仲間になった引っ込み思案なクラスメイトなど、
色々と出てきて彼女達のトラブルを解決するのだが、
メインヒロインとの関係性はろくに進まない。

10話という終盤でヒロインがなぜ主人公に興味を持ち、
好感を抱いたかなどが明かされるものの、
このあたりも本来はもっと序盤に描いたほうがいい部分だ。
序盤から中盤まででろくに掘り下げも交流もないメインヒロインの
事情を終盤に明かされても、特に何の面白さも生まれない。

序盤の2話くらいまで見たあとに、この10話まで
話を飛ばしてようやく、この作品の面白さを感じられる。
それほどまでに3話から9話くらいまでのエピソードの
必要性を感じない。

細かくあげだしたらきりがないほど突っ込みどころが多い。
同じバイト仲間の兄が彼女を連れ戻そうと古本屋にやってくると、
「落ち着ける場所で話そう」といって場所を変えるのだが、
まさかのコンビニのイートインスペースだったりと、
本当に意味不明な脚本だ。

数多くのヒロインが出てきて、主人公に好感を持ってる
女性キャラクターも多いのだが、
いわゆるハーレム展開になるわけでも、恋愛関係になるわけでもない。
主人公はメインヒロインだからこそ仕方ない部分はあるのだが、
手当たり次第、色々なヒロインと関わってるだけだ。

それゆえに数多のヒロインの存在意味がわからなくなってしまっている。
それなのに、そんな数多のヒロインと比べると
メインヒロインである「夏川」の存在感や魅力が薄い。
本末転倒だ。

最終話

最終話もどうでもいい日常を繰り広げて、
Bパートでようやく話が動き出す。
主人公とメインヒロインである夏川が自分の思いや
抱えていた気持ちを吐露し合う。

この話の区切りというべきところまで話を勧めたかったのはわかる。
確かに1クールの区切りとしては、
お互いの本音を、ヒロインはまだ恋心を自覚しきれないままではあるが、
以前と同じような関係性に戻りたいという気持ちを吐露しあい、
手をつなぐという展開は区切りとしてはわるくない。

だが、その区切りを作るために強引に原作やコミカライズにはある
描写を削りまくり、ばかすこヒロインを登場させた結果、
作品自体が崩壊してしまった印象を受ける作品だった。

総評:サッカーボールに人格を乗っ取られた男

全体的に見てひどすぎる作品だ。
1話の冒頭の主人公への嫌悪感、そんな嫌悪感のほうが
まだマシだったと感じるほど、サッカーボールの影響で
急に現実主義になり性格が変わった主人公と、
変わってしまった主人公が逆に気になるヒロインの物語ではある。

やりたいことはわかる。
主人公はストーカー気質でうざいほどヒロインにつきまとっていたが、
ヒロインもヒロインで中学生時代は孤独であり、
主人公の存在がうざくはありつつも大事ではあった。
そして1度離れたからこそ、主人公への思いを自覚していく。

そんな物語がやりたいことは作品を通じて理解できるが、
突拍子もない展開があまりにも多い。
いきなり現れる数多のヒロインたち、そんなヒロインの事情に
巻き込まれて、彼女達の問題を解決するのに夢中で
メインヒロインの描写がゴリゴリに削られてしまっている。

メインヒロインの嫉妬や感情を呼び起こすために、
他のヒロインがいるのはわかるのだが、
その数が多く、尺をかけすぎてしまっており、
肝心のメインヒロインの魅力も存在も薄くなってしまっていた。

物語としてある程度区切りの付く部分まで話を勧めたかったのはわかるが、
それにしても強引すぎるストーリー構成になってしまっており、
1話1話の話が薄味かつガタガタだ。
話によっては起承転結すらろくにできていない。

作画も脚本動揺にガタガタだ。
キャラクターデザインの時点からやる気を感じないが、
背景作画は本当に酷く、キャラクターの作画もあまり安定しない。
背景に関して言えば昨今流行りのAIに描かせたのでは?と思うほど
人が描いたにしてはバランスが崩壊してる絵があまりにも多い。

原作からの問題点もあるのかもしれないが、
その問題点を抜きにしても、酷いアニメ化だったと言わざる得ない
作品だった。

個人的な感想:独特の気持ち悪さ

なろう原作のラブコメというのは珍しいが、
独特の主人公の気持ち悪さはなろう原作アニメとしては珍しくない。
サッカーボールをよけたことで「現実主義」とやらに
目覚めたといいたいのはわかるが、
そのきっかけもさるごとながら、彼の中の現実主義も気持ち悪い。

意味もなく嘘をついたり、
現実主義という立ち位置のもと気持ち悪い言動も多く、
最初から最後まで主人公にもメインヒロインにも好感が持てない
作品だった。

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