銀の匙 Silver Spoon

評価/★★★★★(81点)

銀の匙 Silver Spoon 評価

全11話
監督/伊藤智彦
声優/木村良平,三宅麻理恵,櫻井トオル,庄司将之,島﨑信長ほか

あらすじ
北海道に所在する大蝦夷農業高等学校(通称:エゾノー)は、農業・酪農・獣医師などに従事することを目指す農家の子供が多く通う学校であった。 進学校として名高い中学出身でありながら、低偏差値校であるエゾノーに寮があるからという理由で入学した八軒勇吾は、他のエゾノー生徒たちの多くが明確に将来の夢を持つ中、1人だけ何も夢を持っていないことに焦燥を感じ始める。

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うちの畑はマクロス一機分、馬にまたがって鹿肉捌いて、豚を食う。

原作は鋼の錬金術師でお馴染みの荒川弘氏による漫画作品
アニメとしては珍しく「農業高等学校」を舞台にした作品、
似た作品でもやしもんというのがあるが、あちらは「農業大学」なので
「農業高等学校」を扱ったアニメ作品はこの作品が初だろう
また既に来年に2期が決まっている。分割2クールともいえる。

1話から生々しいまでの「農業」の実態が描かれる。
主人公の目の前でいともあっさり、鶏の頭が包丁で叩き落とされ血しぶきが顔に飛び、
鶏の肛門から卵が生まれる(笑)
普通に暮らしていれば目にすることもない、知ることもない畜産物の製造過程を
生々しく見せつけられ、主人公と同じような気持ちで見ることが出来る。

主人公の周りは基本的に「農家の生まれ」だったりで慣れているが、
主人公は視聴者と同じく、畜産物の実態に慣れない。
鶏の肛門から卵が生まれるのを見た後に朝食で「卵かけご飯」が出てくるなど
知ってしまうと嫌悪感を感じてしまう事だろう

しかし、この「卵かけご飯」が実に美味そうなのだ。
黄金色に輝く卵ご飯の作画は素晴らしく、ぷるんぷるんの黄身の上に醤油が流れ、
御飯を無心にかき混ぜ黄金色の白米が出来上がり勢い良く口に運ぶ。
見ている人も「卵かけごはん」を食べたことがあるならば、
間違いなくヨダレが口に溢れ出てくるシーンだ。

1話から本当に素晴らしい。
「農業高等学校」と「畜産物」の実態を描きつつ、
そんな中で普通の高校生である主人公が戸惑いつつも学校生活を送る。
「農業高等学校」という馴染みのないものだからこそ、新鮮な面白みが生まれている
畜産物に関する豆知識も豊富に学ぶことができ、それを解説ちっくに解説しておらず
若干濃ゆいキャラクターが解説するので純粋に面白く学べてしまう。

ストーリーが進めば「生き物を食べる」という意味を考えるような内容も増えていく
卵の生産効率が悪ければ殺されてしまう鳥、競争に負ければ馬肉になる馬、
小さな子豚はあっさりとベーコンになる。
大切に育てて愛着を持った家畜もいずれは「食べる」事になる。
しかし、そんなジレンマを感じつつも「困ったことに旨い」のだ。

この作品において重要な「料理」は本当に妥協を一切感じない作画だ。
美味しそうな料理の数々が主人公の眼の前に並べられる
卵かけごはん、ピザ、ベーコン、煮物、田舎料理、鹿の焼肉、とうきび、
どれもこれも深夜アニメでは「テロ」と呼ばれるほど美味そうだ(笑)
だからこそ、その料理の素材になっている家畜たちが頭に残る。

頭に残るからこそ家畜を育てることを大事に思い、家畜を育てることの大変さを実感する。
酪農の楽しさを描きつつもらくのうの苦しさも描写する
農家の苦労、農家の喜び、

そういったものを普通の学生だった「主人公」を通して視聴者も味わうことが出来る

この展開や内容は一歩間違えば酷く重くなってしまう。
しかし、濃ゆいキャラクターがユニークにあくまでも明るくストーリーを展開しているため
重くなりすぎず、だが重要な言葉がしっかりと伝わる。
普通の高校生が「鹿を解体する」という、文字に起こせば簡単だが
アニメとして描写されるシーンの「重さ」と「意味」は文字では書ききれないものだ。

そこには「声優」の演技、緊迫感のある「BGM」、リアルに描写される「作画」、
その全てが重なって「鹿を解体する」というだけの文字ではわずか6文字のシーンでも
余計な言葉を使わずに「面白い」と素直に思ってしまう。

そしてその後のご褒美とも言える食事のシーンにつながる。
美味しそうなシカの焼き肉は、その味が舌の上で再現されそうなほど素晴らしかった。
ただの食事のシーンで「感動」するとは本当に思わなかった。
他のアニメでは味わえない、「農業」を題材にしたこの作品だからこそのシーンだ

中盤以降も素晴らしい。
主人公は夏休みを利用して友人の家に泊まりこみでバイトしに行く、
そんな生活の中で完璧に恒常化された酪農家や、牛の壮絶な出産、牛乳の値段、農家の儲けなどを目の当たりにする。
扱っているネタ自体は恐らく本業の農家や酪農家さんにとっては「あるある」ネタなのだろうが
知らないからこそ新鮮なネタの数々が純粋に面白く、
その新鮮なネタの驚きをほんとうに普通の「主人公」が視聴者と同じように驚く。
彼は受験に失敗し挫折した高校生だが、農業や酪農を通じて成長していく。

彼は決して完璧ではない、
最近のアニメの主人公にはいないタイプのストレートな普通の学生だ。
ルックスだってメガネ以外の印象はほぼないといっていい。
癖のない彼だからこそ、素直に一緒に驚くことができ、素直に一緒に感心してしまい
彼がバイトで失態を犯してしまった時は一緒に血の気が引いてしまうような共感を覚える。
そして彼は初めてのバイトと初めての給料を受け取る。
「バイト代を受け取る」というだけのシーンが感動的になる作品など他に例を見ない。

終盤の展開は酷といっていい、描写自体は明るいが・・・テーマ自体は本当に重い。
主人公である「八軒」は物語序盤である子豚に感情移入してしまう
彼が感情移入した「豚丼」は他の子豚に比べて小さく、値がつかないくらいだ。
そんな「豚丼」に対し彼は一生懸命世話をし太らせる
そして太らせた結果、食べる事になる。

名前をつけ、子豚の時から愛情を込め、感情移入し付きっきりで育てる。
彼の愛情のお陰で丸々と太った彼は「3万円」という値段で「3ヶ月」の命が終わる。
豚が肉に加工される映像を彼はしっかりと目に焼き付る
彼はそんな「豚丼」を買う。
51kgになった精肉は見事に切り分けられ、そんな肉を彼は自らの手で加工し、そして食べる。

盛られた豚肉は本当に美味しそうで、美味しそうなのだが涙腺をくすぐられる。
畜産物を育てる意味、生命を食べることの意味、食べ物の大切さ。
そういった普段は忘れていることを深く、深く実感させる内容だ。

全体的に見て素晴らしい内容だ。
本当に深夜アニメでやるのはもったいないと感じるほど、「食べ物の大切さ」を教えてくれる内容で
その内容を変に重くせず、変に堅苦しくせずに素直に面白いと感じる内容に仕上げている
それを支えるように「美味そうな作画」と「声優の演技」が光り、
主人公が普通の男子高校生だからこそ癖がなく光る。
普通の男子高校生なのにきちんと彼は「主人公」だ

この作品を深夜アニメに収めておくのは本当にもったいない。
朝アニメだとお子様のトラウマになりかねないが(笑)
日曜五時やNHKの夕方アニメで放映してほしいと感じるほど、もっと若い世代にも見てほしい
見やすく明るい雰囲気の作品だが胸に「ずどん」と来る重さを感じる作品だ

1期のストーリーは2期を想定した内容になっているため、
主人公の青春はまだまだこれからだ!という感じで終わってしまってはいるものの、
主人公の成長をしっかりと味わった。
今から2期の内容を期待してしまう、2期が楽しみで仕方ない。
来年が待ち遠しくなる作品だった。

余談だが私は初めて「豚が可愛い」と思った(笑)
あんなにも可愛い豚がうまそうな肉に変わってしまうジレンマは
登場人物と深く共感することができ、涙腺を思わず刺激されてしまった。

いやぁ・・・この作品は本当に良い作品だ。
物語がきちんと完結していない作品はあまり高い評価はしてこなかったが、
この作品だけは高い評価以外ができなかった。

2期、楽しみにしています。

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