「恋は雨上がりのように」レビュー

評価 ★★★★★(100点) 全12話

あらすじ 感情表現が不器用で一見クールな17歳の女子高生・橘あきら。彼女はアルバイト先のファミレス『cafeレストラン ガーデン』の店長である45歳の近藤正己に密かに想いを寄せている引用- Wikipedia

この感情を恋と呼ぶにはあまりにも軽薄だ

原作は月刊!スピリッツで連載されていた漫画作品。
監督は渡辺歩、制作はWIT STUDIO。
なお原作はアニメ放送中に完結した。
ノイタミナ枠で放映された。

見出して感じるのは癖のあるキャラクターデザインだろう。
スラッと高い身長と長い足、あごの尖り方、まつげの強調など、
「ああ、原作者は女性なんだろうな」ということが感じられるほど
少女漫画っぽいキャラクターデザインであり、
しかもやや古めの少女漫画の雰囲気すらある。


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

1話は丁寧かつ淡々とした始まりだ。
何やら感慨深げな女子高生がファミレスで働く、
そこには離婚歴ありの子持ちな駄目中年である店長がおり、
彼女は、そんな店長に想いを寄せている。

分かりやすく、その状況と2人の関係性が伝わり、
彼女と彼が「どういう状況」で
「どんな心理状態なのか」というのを丁寧に描いている。

こういった恋愛アニメに置いて重要なのは
「なぜ好きなのか」という点だろう。
ラブコメなどは勢い任せに無条件に惚れてしまうヒロインも多い中で、
この作品はきちんとした理由付けがされている。


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

キッカケは些細に過ぎない、言い方を変えれば弱っている所を
優しくされただけとも言えなくはないのだが、
思春期の女子高生だからこそ、年上の男性の「下心のない優しさ」に触れ、
好意を持ってしまう。
些細なキッカケ、ちょっとした出来事でしか無いが、
「ヒロインがなぜ主人公を好きなのか」という理由にきちんと納得ができる。

そして年の差。
店長は45歳である、一方ヒロインは17歳。
現実ではありえないほどの年の差であり、
店長も年の差があるからこそ彼女の思いに全く気づかない。
17歳の女子高生が45歳のバツイチ子持ちの男に思いを寄せるはずはないと。

だからこそヒロインはグイグイ攻めてくる。
LINEのIDを聞こうとしたり、ふいに告白したりと、かなり積極的だ。
だが、鈍感な上に年の差があるからこそ店長は思いに気づかない。
「鈍感な主人公」というのはラブコメではお約束ではあるが、
その鈍感さに「年の差」が加わることできちんとした説得力が生まれている


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

これで鈍感すぎていつまでもいつまでも気づかなかったりすれば、
週刊漫画のラブコメのような感じになってしまっただろう。
だが、この作品は違う。3話で1つの転機が訪れ、
45歳の大人の男は17歳の女の子の告白を断ろうとする。

大人として常識的に、世間一般的に、自分の立場を自覚し、
誠実に「断る」選択をする彼は、当たり前な返答ではあるのだが、
そんな当たり前を描くことで「45歳のおじさん」な主人公に
見ている側はきっちりと感情移入できる。

しかし、17歳の女子高生も負けていない(笑)
若いからこその無謀さ、若いからこその真っ直ぐさ、
若いからこその純真さをこれでもかとストレートにぶつけてくる。
言葉尻を捕まえて「デート」にこぎつける様など、
あまりにも、真っ直ぐすぎる言動や行動に「断れない主人公」に強く共感してしまう


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

それと同時にまっすぐなヒロインの可愛さにやられる。
「想像の中での行為」や恋のお守りを手に入れようとする様、
店長が好きなものを自分も好きになろうとするところなど、
もう健気すぎて本当にかわいい。
このヒロインを嫌いと思ったり、可愛いと思わない人は居ないだろう。

序盤から中盤にかけて進みそうで進まない2人の年の差恋愛関係を見せられ、
すっかりと2人に感情移入した所で「物語」が進み出す。
この作品のタイトルは「恋は雨上がりのように」だ。
それは、この作品の内容と結末を示唆している。

45歳バツイチ子持ちの店長にも「過去」がある。
夢を追い、諦めきれずに店長をやりつつも、夢を追いかけている。
彼女の倍以上生きた彼だからこそ自分をきっちりと見つめており、
同時に自分をどこか諦めている。


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

彼女が自分のことを何故好きなのか分からず、
自分のどこが良いのか、自分は空っぽだと
彼は自分の魅力の無さをつぶやき、彼女に諦めさせようとする。

17歳の女の子は夢を諦めざる得なかった状況だった。
足をけがしてしまい、好きだった陸上を諦めた。
その行き場のない思いが余計に彼女を恋へと走らせてる部分もあり、
ある種、暴走に近い思いを店長にぶつけている。

そんな若さあふれる彼女の力強い思いに店長も当てられる。
若い時の自分を重ね、若い時の自分の思いが蘇り、大人だからこそ、
彼女の涙を見て思わず抱きしめてしまう。
それは恋や情欲ではなく、雨のように降りしきる彼女の想いに、
店長は「傘」をしまい一緒に濡れただけだ。


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

詩的な表現をする主人公のセリフは胸に突き刺さり、
そして「雨」と表現したその思いに終わりがある事も感じさせる。
彼も彼女も「夢」と「約束」の途中だ。
その道すがらに雨が降ったに過ぎず、雨が止めばまた歩き出す。

最終話の展開はもしかしたら人によっては
もやもやした感じが残るかもしれない。
だが、45歳と17歳の恋は現実的ではなく、それをあえて描いた作品だからこそ、
安易に付き合うような展開でも安易に決別するのでもなく、
「余韻」と「予感」を感じさせるラストで締めたのは素晴らしかった。


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

総評

全体的に見て素晴らしい作品だ。
中年男とJKヒロイン、この組み合わせに嫌悪する人もいるかも知れない。
しかし、その組み合わせに真摯に向き合いつつ現実的に描き、
2人の「雨宿り」にも似た恋愛模様と人生は、
「ストーリー」の面白さと「余韻」をきっちりと味わせてくれた。

キャラクターも本当に魅力的だ。
まっすぐな女子高生と駄目さはあるが優しく真面目な中年男、
この組み合わせだからこその生まれた恋愛模様はニヤニヤしてしまい、
ヒロインの可愛さがしっかりと伝わるからこそ、
主人公の言動や行動に深く共感してしまう。

おそらくもう1度見ても面白い。
展開を知っていて、どんなシーンが描かれかわかっていても、
同じように彼女の可愛さにやられ、主人公に共感してしまう。
そう感じさせるほど完成された作品だった。

欠点らしい欠点が本当になく、あとは個人の好みぐらいだろう。
作画も安定しており、私はこの作品の欠点を見つけることが出来なかった。
もちろん、粗を探そうと思ってみれば見つかるかもしれないが、
そんな目線でこの作品をもう1度見たくない(笑)


引用元:© 眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

個人的な感想

個人的には予想以上にハマってしまった作品だ。
主人公を演じている「平田広明 」さんの中年男ボイスは
情けなさと優しさを兼ね備えた素晴らしい演技であり、
詩的なセリフも嫌味にならず臭くなりぎず、突き刺さってしまった。

キャラクターのセリフのセンスが本当によく、記憶に残る。
ヒロインや主人公の思い表現をストレートに表現するのではなく
どこか比喩的にどこか詩的に表現するからこそ、
どこか小説じみた雰囲気もあり、
見終わった後に良い小説を読んだ感覚になってしまう作品だ。

だからこそラストのあのシーンが本当によく、
意図的にそう作られた作品にまんまとハメられてしまった感があり、
最終話を見た後に「あぁ!そうくるか!くぅ!面白かった!」と
思わず叫んでしまった(笑)

原作も完結しているが、原作とアニメではややラストが違うようだ。
というより原作のラストの評判は悪い
この勢いで原作も読もうかと思ったのだが、
うさぎドロップの二の舞にはなりたくないのでやめておく(苦笑)