青春

「神クズ☆アイドル」レビュー

3.0
青春
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評価 ★★★★☆(60点) 全10話

【22年7月放送‼】TVアニメ「神クズ☆アイドル」本PV

あらすじ 仁淀ユウヤは、金のためだけにデビューを果たしたことから、歌わず踊らず、そしてファンサービスにもやる気を出さないクズアイドルである引用- Wikipedia

クズが神に至る話

原作はコミックZERO-SUMで連載中の漫画作品。
監督は福岡大生、制作はStudio五組

やる気なし

この作品は「男性アイドル」を扱ったものだ。
アイドルマスター、ラブライブなどの女性アイドルアニメブームから、
うたの☆プリンスさまっ♪などの男性アイドルアニメブームは
いまだに続いており、アイドルアニメというジャンルの作品数は
この10年ほどでかなり増えた。

そんな中でこの作品はもっともやる気がないアイドルと言える(笑)
二人組のアイドルなのに、主人公は一切やる気がない。
目は死んでおり、曲もろくにおぼえず、気にするのは給料のみ。
社長からはやる気を出さなければクビにすると宣告される始末だ。

彼はやる気がない。楽ができるからとアイドルを始めただけで、
苦労するくらいならアイドルを辞めることをあっさり選ぼうとする始末だ。
ちなみに彼の推しは「造幣局」である(笑)
自分を応援してくれる「ファン」の気持ちすらろくに理解できず、
アイドルとしての自覚も、プロとしての自覚もない。

物語の主人公としての魅力や自覚といったものもないものの、
このやる気がないアイドルである「仁淀 ユウヤ」に不思議な魅力を感じてしまう。
アイドルアニメのアイドルは基本的に夢と希望とやる気にあふれている、
輝く彼女、彼らの青春の物語を私たちは何度も見てきた。

しかし、そんなアイドルアニメのアイドルとはまるで違うのが
「仁淀 ユウヤ」だ。
そんな彼の前に唐突に「伝説のアイドル」が現れるところから
物語が始まる。

幽霊

伝説のアイドルである「最上 アサヒ」は人気絶頂の中、
交通事故でなくなってしまったアイドルだ。
彼女には「未練」がある。
所属するグループのセンターも目前で、アイドルとしての自分が大好きで、
アイドルが彼女の天職でもあった。
それゆえに夢最中での死は彼女を現世にとどまらせてしまっている。

幽霊である彼女が唐突に主人公の前に現れても、主人公は一切動じない。
「もうすぐ死んで1周年記念だね」なんて
デリカシーのないセリフを吐いたりする。

「最上 アサヒ」も非常に可愛らしいキャラクターだ。
演じている東山奈央さんの声と演技のおかげもあるが、
天真爛漫で明るく、テンションが高い彼女が見た目も相まって
非常に可愛らしく、二人の主人公の会話劇が
夫婦漫才のようなボケとツッコミを生んでいる。

憑依合体

「最上 アサヒ」には未練がある、もっとアイドルをやりたい。
もっとステージに立ちたい、もっと歌いたい、もっと踊りたい。
そんな「最上 アサヒ」にとっての希望と、「仁淀 ユウヤ」の希望、
需要と供給が奇跡的にマッチする(笑)

やる気はあるけど体がないアイドル、やる気はないけど体はあるアイドル。
互いが提供できるものを提供することで利益が一致する。
その結果、アイドルアニメ史上、おそらくは初めての
「憑依されたアイドル」が誕生する。

さっきまではやる気が一切なかったはずの男性アイドルが、
伝説の女性アイドルを憑依させることで、
やる気全開、キラキラなアイドルへと変貌する。
そのギャップと変化に見ている側が笑ってしまい、
彼のファンたちは「戸惑い」を隠せない。

自らの推しがなんの前触れもなく唐突にキャラ変する衝撃、
ライブ中にファンにレスを送っただけでファンは狂喜乱舞する。

「によどくんがレスだとぉぉ?!この世の終わりですぞぉぉ!?」
「まさか仁淀くんの表情筋が稼働するなんて…」
「今日の仁淀くん本物だったのかな…?幻覚だったのかな…?」
「仁淀くんの存在が居るからこそ仁淀くんの幻覚を見られる!」

ファンの反応がいちいち面白く、
彼女たちのオタクらしい言葉選びと反応が
見ている私達の主人公に対する思いを後押ししている。
1話で見ている側もすっかりと「仁淀 ユウヤ」という
神アイドルに取り憑かれたアイドルのファンになってしまう。

神アイドルをとりつかせることで金のことしか頭に無い
クズなアイドルが神アイドルになる。
このシンプルな設定からキャラクター設定をうみ、
コミカルなストーリーが描かれている。

ファン

ファンたちはそんな変化に戸惑いつつも、受け入れる(笑)
チラシなんて配らなかった彼、ファンサなんてしなかった彼、
笑顔すら振り向かなかった「推し」がキャラ変する。

そんな彼の変化に対するファンの反応がこの作品の魅力でもある。
アイドルはファンがあってこそだ、ファンが誰も居なければ
アイドルとはいえない。
やる気もなく、クズな思考だった「仁淀 ユウヤ」ではあるものの、
そんな取り憑かれる前の彼ですら推してくれる存在が居たからこそ、
彼は「アイドル」で居られた。

しかし、そんな彼はファンの気持を理解していない。
何が楽しくて自分を推しているのか、なぜ自分を推しているのか、
アイドルの何が楽しいのか。
「アイドル」というものの本質をアイドルであるはずの、
アイドルアニメのこの作品の主人公が理解していない。

そんな彼に「最上 アサヒ」は自覚させようとする。
彼女のお陰で彼の人気は上がった。
多くのファンが彼に声援を送り、彼に熱い眼差しを送る。

自分の人気ではあるものの、その人気は「最上 アサヒ」の
神アイドルとしての行動のおかげでもある。
だが、同時に彼が今まで培ってきたものではある。
お金のためではある、楽をしようとした結果ではある、
しかし、それでも応援してくれていたファンは居た。

彼の中にいる「最上 アサヒ」を見に来たのではない、
アイドルである「仁淀 ユウヤ」を見に来たのだ。
この作品は神アイドルを通してクズアイドルが神アイドルへと至る物語だ。
そんな彼を「ファン」と同じ目線で私達にも見せてくれる。

毎話毎話、Cパートでファン3人によるミーティングが行われるのも
面白く、彼女たちが出てくるたびに笑ってしまう。
神アイドルに憑依されてるときの「仁淀 ユウヤ」と
「仁淀 ユウヤ」としての行動に振り回されるファンが
この作品の魅力でもある。

同じユニットの相方や、幽霊になってしまった神アイドル、
ファンを通じて、彼は何を思い、どう変化していくのか。
クズなアイドルはアイドルとしての自覚を持ち、
神アイドルへと至ることができるのか。

真面目にストーリーを語るとこんな感じではあるものの、
基本的にはまるで二重人格なアイドルに振り回されるファンと
クズなアイドルによるギャグアニメになっている。
アイキャッチの際の「神クズ」というタイトルコールも
どこか懐かしさを感じる演出だ。

「仁淀 ユウヤ」は「最上 アサヒ」を憑依させることで
神アイドルになれる。
しかし、それは「最上 アサヒ」が神アイドルだからこそだ。
彼女の笑顔、彼女のパフォーマンス、彼女のアイドルとしての見せ方が
あるからこそ神アイドルになれる。

見た目は「仁淀ユウヤ」でも、魂は「最上アサヒ」だ。
そんな「魂」に気づくものも居る。
それが「瀬戸内 ヒカル」だ。彼自身は人気の男性アイドルではあるものの、
同時に「最上アサヒ」のファンだ。

それゆえに気づいてしまう。
仁淀ユウヤがまるで最上アサヒのようにパフォーマンスをすることを。
たとえ肉体が滅んでも「魂」でファンは気づいてくれる。
死んでも自分を応援してくれるファンの存在。

「瀬戸内くんは最上アサヒのファンだったんですね」
「違う、ファンだ」

彼女が死んでも過去形になんかしない。
死んでもアイドルで居たい、そんな未練が彼女を幽霊として
現世にとどまらせている。
そんな気持ちを汲むように、ファンで居てくれる人もいる。

死んだアイドルが死んでも応援してくれるファンに送るライブ、
ファンの愛、ファンが推しを応援する意味、
それを「仁淀ユウヤ」を感じていく。

作画

ただ、この作品ははっきりいって作画はあまり良くない。
日常パートの作画のクォリティは普通ではあるものの、
イケメンアイドル達のイケメン感を感じる部分は少なく、
もう少しクォリティが高ければ…と高望みしてしまう部分がある。

更に「ライブパート」。
アイドルアニメといえばライブシーンが重要な要素の1つではある。
しかし、この作品はライブパートのクォリティは低い。
フルCGで描かれておりヌルヌルと動きはするものの、
モデリング自体のクォリティの低さも相まっていまいちだ。

思わず「おぉ!」と唸るようなライブはなく、
曲はどれもこれも素晴らしく、エンディングが毎話のごとく
変わるこだわりっぷりは素晴らしいのに、
そんな曲が活かされるライブパートのクォリティがあまりにも残念だ。

男性ゆえの等身の高さとCGとの相性の悪さも感じてしまう。
背が高いキャラクターだからこそCGで描かれると
「人形っぽさ」のようなものが妙に強調されてしまい、
違和感とクォリティの低さが目立ってしまっていた。

作画ではないが、9話はやや尺稼ぎをするための
振り返りパートが非常に多く、
全10話という尺を9話で若干持て余してしまったのは
残念でならない。

一緒に頑張りたい

2年間のアイドル人生、彼は無気力ではあるものの続けてきた。
面倒と思いつつ、辛いと思いつつ、やめようと何回もしていた彼、
だが、彼は2年間やめなかった。
その果に見た景色は彼をアイドルたらしめる。

「今日ここに来て、やめなくてよかったなって思います」

彼の素直な気持ちだ。
みんなが頑張った結果の満員のライブ会場、
彼は2年間のアイドル人生のすえに「アイドル」になった。

ファンの気持ちがわからず、アイドルと言う気持ちがわからなかった彼が、
神アイドルの幽霊と、仲間と、ファンのお陰で、
「アイドル」になった瞬間は思わず胸を締め付けられる。

最終話は彼らのファンと、そして1クール通して見て
彼らのファンになった視聴者へ送るライブで物語は締めくくられる。

総評:推しがキャラ変したらあなたはどうしますか?

全体的にみて全10話でクスクスと笑えてちょっと感動できる
完成度の高いアイドルアニメになっている。
やる気のない男性アイドルが、幽霊になってしまった神アイドルに憑依されながら、
アイドルとは?ファンとは?と考えながら、彼がアイドルへと至る物語だ。

アイドルが居るからファンが存在する、
ファンが居るからアイドルが存在する、
そんなアイドルとファンの物語を描きながら、
作品全体をコミカルに描き、シリアスな要素は殆どない。

作画やライブパートのCGの問題や9話の尺稼ぎなど
気になるところは多いものの、
全10話というストーリー構成のなかで
「仁淀 ユウヤ」という人物の成長の物語がストレートに描かれている。

特に「ファン」の描写はこの作品の特徴とも言ってもいい。
推しに狂った彼女たちの1つ1つの言葉が笑いに繋がり、
そんな彼女たちの愛に影響されるように見ている側も、
徐々に彼らのファンになってしまう構図になっている。

「最上アサヒ」という無念を残して死んでしまったアイドルの
物語も良いスパイスになっている。
彼女の明るく元気なキャラクターの存在と、
「瀬戸内 ヒカル」のファンとして貫き通す愛情が
アイドルとはなにか?ファンとはなにか?と問うてるような作品だ。

原作はまだ続いているものの、ストーリーはわりと
すっきりと区切りがついており、気持ちのいいラストが
描かれている作品だった。

個人的な感想:ダークホース

事前情報を入れずに見出した作品だったが、
予想外に面白い作品で驚いてしまった作品だ。
CGや作画のクォリティはやや残念ではあるものの、
制作側のこの作品に対する愛情を感じるこだわりを1話1話、
しっかりと感じられる。

アイキャッチでのタイトルコール、曲の多さ、
「最上アサヒ」の可愛さの描写へのこだわり、
制作側が最大限にこの作品を面白くしようという
意気込みを感じられる作品だ。

良いところで区切りがついているものの、
彼らがこの先、どんなアイドル道を進むのか。
素直に見てみたいという気持ちにさせられる。

2期があるかどうかはわからないが、
2期があればぜひ、みたい作品だ。

「神クズ☆アイドル」は面白い?つまらない?

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  1. ポリコレプリキュア より:

    大抵のアイドルアニメはそもそも何でアイドルやっているのか
    良く分からない作品が多い中、神クズアイドルはちゃんとアイドルをやる動機が書かれていたので、下手なアイドルアニメよりは面白かった