SF

「プリマドール」レビュー

SF
スポンサーリンク

評価 ★☆☆☆☆(17点) 全12話

TVアニメ『プリマドール』本PV

あらすじ 喫茶・黒猫亭。それは皇都五区の片隅に、ぽつんとある喫茶店。そこで働くのは、技術の粋を結集した、自律人形(オートマタ)の少女たち。引用- Wikipedia

泣け(圧)

本作品はKeyによるメディアミックスプロジェクトとして制作された作品。
監督は天衝、制作はバイブリーアニメーションスタジオ

自動人形

冒頭からやけに画面が明るい。
モニターの輝度を少し落としたくなるほどの明るさはやや
違和感があるものの、少女たちのきらびやかさを
強調させるための演出なのかもしれない。

しかし、そんな明るさだけでなく「デジャビュ」がひどい作品だ。
戦争のために作られた自動人形の少女たち、
そんな少女が操る機械も「サクラ大戦」でみたことのあるようなデザインをしており、
戦後に機械人形の少女たちは「ごちうさ」のような喫茶店を開いている。
いろいろな作品を組みわせ多様な要素を1話から見せられる。

最近のアニメというよりは、それこそ「ご注文はうさぎですか?」の
アニメの1期のころ、8年か10年くらい前のような雰囲気があり、
作画のクォリティは高いものの、どこか古臭さを感じさせる。

戦争人形は名前の通り戦争で使用され、修理されても
「記憶」がリセットされてしまうことがある。
主人公も自身が何処で何をしていたのか名前すらも覚えていない。
そんな中で彼女は「夕霧」という戦争人形と出会うところから物語が始まる。

泣け

1話から「Key」作品らしいともいえる泣きの圧がある。
戦争で壊れてしまった夕霧が、主人公のなにかに触発され、起動する。
しかし、直ったわけではない。
そんなつかぬまの、まるでお盆に帰ってくる先祖の霊と再会したかのごとく、
夕霧は自分を姉と慕う少女とつかぬまの時間を過ごす。

しかし「記憶」は戻っていない。壊れた人形は戻らない。
戦争で傷ついた心が簡単に言えぬように、壊れた人形が簡単に戻ることはない。
やりたいストーリーはあるものの、世界観もキャラクターの掘り下げも甘い状態で、
「泣け」と言われるようなストーリー展開を描かれても、
涙1つ流れることはない。

序盤は世界観の設定とキャラの過去や説明台詞が非常に多く、
なにかが起こるようで起こらず、淡々とした描写は盛り上がりにかけるものがある。
この世界はこういう厳しい世界観で、
メインキャラの過去にはこういう悲しい過去がありますよーという
淡々とした説明描写は盛り上がりに欠け、面白みも薄い。

無知な主人公

そもそも主人公の魅力も薄い。
彼女は記憶をなくしており、何者なのかもわからない。
この世界に基礎的な知識すらなくしており、
そんななにも知らない彼女が世界観やキャラの設定を
視聴者に見せるためだけのキャラにしかなっておらず、主人公としての魅力が薄い。

唐突に歌を歌うシーンも多く、別に今歌う必要性はないのでは?と
思うところでも歌う。
例えば2話では主人公が街へおつかいにいく話が描かれるが、
町の住民に「君ってオートマタなのかい?なにができるの?」と問われ、
いきなり長々と歌い出す。

3話でもメインキャラの一人が「初期化」するかどうかという
シリアスな状況で
「私何もできないんですけど、そうだ歌います!」と
いきなり歌い出す。これが別に印象的なシーンでも歌でもなく、
作品全体で歌いまくるものの、歌が作品に効果的に作用していない感じだ。

正直ウザさを感じる主人公だ。
真剣な話をしているときやシリアスな話をしているときでも
「んにょ?」や「はにょ?」といった
どこのでじこだといわんばかりの語尾をつけるのもかなり気になる。

各話1キャラずつ、ギャルゲーのごとく主人公が攻略、
仲良くなっていく過程が描かれているものの、
1話1話が駆け足のせいで積み重ねが足りていない。

掘り下げ不足

1話完結のため、本来なら1話で片付かないような話ですら
あっさり解決してしまうことも多く、
「こういう過去があります」「こういうトラウマがあります」まではいいのだが、
あとは主人公の言葉なり行動なりであっさりと解決することが多い。

戦争が終結した直後だからこそ、戦争のための人形として
使われてきた彼女たちだからこそのエピソードではあるものの、
1話完結が故の積み重ねが足りず、
泣けと言われても泣けない。

アイドルアニメのごとく毎話毎話歌われるのも
なんの意味があるのだろうと感じてしまう。
5話では新キャラが出てきて主人公たちと一緒に働くのだが、
敵国の「スパイ疑惑」が出てきたかと思えばあっさりとスパイであることがわかる。

主人公はスパイとわかっても同僚や上司であるマスターにも報告せず、
「戦争はもう終わったんです!」「機械人形は戦うだけじゃない!」
「命令に縛られる必要はない!」と訴えかけるものの、
主人公のそんな言葉になんの共感も生まれず、
何がしたいんだろうと思ってしまう。

新キャラも新キャラでもう少し掘り下げれば彼女の物語、
「命令」がなくなり、自分自身の存在価値がなくなった戦争の道具としての
彼女の物語に感動できるかもしれないが、
ぽっと出のキャラにはなんの思入れもなく、感動しろといいたいのかもしれないが
感動はできない。

7話ではスパイの夫婦とメインキャラの一人が出会い、
娘のように扱われ、スパイと知らずに中を深めるも
最終的にはスパイ夫婦は捕まる。
これで泣けと言われるのがこの作品だ。

1話完結でずーっと似たような展開が続き、
メインストーリーは徐々にしか進まない。

メイン

8話では彼女たちの「マスター」が行方不明になる。
終戦状態ではあるものの、それの不満を持つ一派もおり、
「桜花」という機械人形の先祖のような存在を彼らは探している。
そんな桜花と主人公の関係性はなんなのか?桜花とはなんなのか?というのが
メインストーリーではある。

ただ、そのメインストーリーは終盤にならないとすすまない。
機械人形のたちの悲しい過去やトラウマを1話完結で描きつつ、
歌いまくりつつ、日常エピソードが続きながら、
ちょっとずつメインストーリーが進むようなストーリー構成だ。

マスターも8話であっさり助け出すことができ、
その過程で主人公が敵に囚われそうになるが、
これまたあっさり助けられる。
話の展開が早すぎてトントン拍子に物語が進んでしまうため、
感動に至るまでの「溜め」が圧倒的に足りない印象だ。

新キャラ

9話という終盤で更にキャラクターが増える。
そのキャラクターのお陰でようやく話が進む部分はあるものの、
それまでの10話ほどで描かれてきた内容で
「まあそうだろうな」と思えるような予想できる展開でしかなく、
主人公の正体もなんの意外性もなく、王道の面白さがあるわけでもない。

どこかでみたキャラ、どこかでみた設定、どこかでみたストーリーを
ずーっとこの作品は続けている。
終盤のAIの暴走、AIの人類に対する反旗など
こすり倒されたネタをやっている。

常に既視感がつきまとい、1話1話の展開の速さで
それをごまかしているのかもしれないが、展開が早いせいで
見ている側の感情移入ができずに、蚊帳の外だ。
最終回はもう全キャラなきまくり状態でボロボロ泣いているが、
見ているこちらの涙腺は微動だにしない。

結局、ラストも予定調和の予想できる落ちであり、
うだつの上がらない作品になってしまった印象だ。

総評:時代遅れの感動ポルノ

全体的にみて本来は1クールでやるような内容ではなく、
しかも1話完結で物語を進めてしまっているため、
key系作品特有の「泣き」にいたるまでの溜めがたりていない。
ゲーム原作のアニメにもありがちな尺不足を感じ、
序盤から中盤は個別ルートを適当にやっているような印象だ。

終盤はメインストーリーを一気に進めて物語のラストまで
持っていっており、歌の要素などの伏線も活かさせるものの、
1クールでしつこいくらいに「歌」を歌ってしまっているせいで、
ここぞというところでの歌や泣き顔が作品全体で生きていない。

作画のクォリティは高く、キャラクターデザインは可愛らしく、
声優さんの演技は素晴らしいものの、駆け足のストーリー構成と、
既視感だらけの脚本が足を引っ張ってしまった印象だ。

特にこの脚本の既視感は致命的で、
ごちうさ、ヴァイオレットエヴァーガーデン、サクラ大戦や、
Key作品でもやったような要素も多く、
二番煎じ感が凄まじい作品だった

個人的な感想:Keyブランドは大丈夫か…

一昨年の「神様になった日」で失敗したらKeyブランドが
失墜すると麻枝准さんがおっしゃっていたが、
神様になった日は失敗し、この作品も失敗してしまっている。
ソーシャルゲームのヘブンバーンズレッドはいまのところ好調のようだが、
Keyブランドは大丈夫なのだろうか…

この作品もキネティックノベルとして来年、
前日譚や後日譚がゲームになるようだが、
最初からゲームとして発売したほうがもっと深みが生まれた作品かもしれない。
1クールというTVアニメの尺に縛られてしまった結果、
何とも言えない作品に仕上がってしまっている作品だ。

「プリマドール」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください

  1. にわかアニオタ より:

    確かに泣くことはなかったかなー
    でもキャラクター達の一つ一つの行動の時にどんな意味があるのかとかなぜするのかを否定せず考えて見るととてもいい作品だと思う
    自分で勝手に理解した方が面白かった

  2. 匿名 より:

    Keyのアニメ作品は良かったのはリトバスまでで、それ以降は全て失敗してしまってる
    リトバスまで、初めからアニメだったAngelbeatsもどこかゲームからの派生アニメを感じさせてて、そこから12話分をうまく切り取ってる感じなんだけど、シャーロットとか神様になった日とかこのアニメとか最初からアニメ作ろうとして話数配分失敗してる感じ
    麻枝は今一度ゲームに戻った方がいいと思う