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ゴルフとは人生だ「空色ユーティリティ」レビュー

3.0
空色ユーティリティ 日常
画像引用元:©空色ユーティリティ
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評価 ★★★☆☆(56点) 全12話

TVアニメ「空色ユーティリティ」第3弾PV

あらすじ 高校生になった青羽美波は、大好きだったソーシャルゲームのサービス終了を切っ掛けに「自分が特別になれる何か」を探す 引用- Wikipedia

ゴルフとは人生だ

本作品はTVアニメオリジナル作品。
5年ほど前に大晦日にパイロットフィルム的なものが放送され、
5年の月日を経てのTVアニメ化になった。
監督は斉藤健吾 、制作はYostar Pictures

特別なもの

1話冒頭の始まりは緩やかだ。
主人口がプレイしていたソシャゲがサービス終了し、
「なにか」を求めて部活動探しを始める。

非常に緩やかな始まりだ。
5年前の大晦日にやったパイロットフィルムは
日常アニメというよりもゴルフをやっている女子のフェチズムを
くすぐるシーンが多く、尺的にも短かったため、
その印象しか残っていない。

だが、そんなパイロットフィルムを経てのTVアニメになると
いわゆる「日常系」の雰囲気が爆発しており、
緩やかな空気感と会話劇の心地よさが染み渡る。

自分のやりたいこと、特別に慣れること。
そんなものを求めてさまようもののなかなか見つかるわけでもない。
そんな主人公がとあるきっかけで「ゴルフ」と出会うというところから物語が始まる。
この作品の緩やかな空気感とリズムカルな会話劇、
そして響き渡るゴルフの音がこの作品だからこその雰囲気を作り出している。

ゴルフ

主人公は別に運動神経がいいというわけでもない、
いざゴルフを始めても彼女に「隠された才能」があるわけでもない。
ゴルフというものを扱っているものの、あくまで主人公のゴルフは「趣味」だ。
プロになって大会にでて…とかいうストーリーはこの作品にはない。
あくまで女子校世の中の日常にゴルフが組み込まれているだけだ。

だからこそ純粋に彼女はゴルフを楽しんでいる。
初めてボールをクラブで打った感覚、その感覚にハマり、
自分が特別になれる瞬間を彼女は求めてゴルフを始めることになる。
やや強引な展開ではあるものの、この作品のノリが
その展開の強引さを感じさせず、ゆるーくかるーく物語が展開していく。

ゴルフの技術や知識なども初心者の主人公に教える形で
丁寧に解説しており、ゴルフを知らない人でも楽しめるように仕上げている。
ゴルフに何を求めるのか、それはプレイする人次第だ。
飛距離を伸ばすことを求めるもの、打数を減らすことを求めるもの、
主人公は何を求めるのか、それを1クール通して描いている作品だ。

フェチズム

5年前のパイロットフィルム版は女体賛美なフェチズム溢れる作品だった。
しかし、TVアニメ版になるとそのフェチズム要素はかなり抑えられている。
このあたりはパイロットフィルムと1クールやるアニメの違いや、
5年という月日故になのかもしれないが、フェチズム要素が薄れているのは
やや残念なところだ。

ゴルフの後のシャワーシーンやお風呂シーンんなどもあるものの、
そこまでこだわって描かれている感じはない。
あくまでおまけ程度だ。

パイロットフィルム版と違い、あくまでも女子高生の日常を描きつつ、
そこにゴルフというものを足している。
ゴルフと出会い、ゴルフを教えてくれる人に出会って、
ゴルフを続けるために打ちっぱなしでバイトをする。

ゴルフと出会わなければ出会わなかったであろう
「読者モデル」と関わったりしながら、
彼女のゴルフな日常は緩やかに続いていく。

お金

だが、あくまで女子高生だ。ゴルフをやるにはお金がかかる。
練習する場所も、道具も、女子高生がやるにはコストがかかる趣味だ。
だからこそ序盤はバイトやお金の問題などが中心に描かれるものの、
ノリが軽く、コメディな要素も多いため、
クスクスと笑いながら楽しめる日常アニメになっている。

道具は必要だ、だが、高い道具だからといって
ゴルフのスコアがよくなるわけでもない。
コメディで描きながらもそういった芯をつく要素をさり気なく描いている。

練習のために練習場所に持続的に通えるお金を手に入れ、
ゴルフをするための道具を手に入れ、
ゴルフをするための「筋肉」を手に入れるためにトレーニングする。

3人のメインキャラは年齢もバラバラだ。
だが、そんな3人がゴルフというものでつながり、
かけがえのない日常を過ごしていく。

1話1話の内容は濃ゆいとはいえないものの、
日常アニメ8割、ゴルフアニメ2割位のバランスで
ガチすぎない趣味のゴルフが描かれている作品だ。

地味

みていて気づいたのだがゴルフというスポーツは絵面として地味だ。
走り回るわけでもなく、打つときは静かに、そして打ったら移動し、
また打つ、基本はこの繰り返しであり、対戦相手がいたところで
妨害行為があるわけでもなく、自分との戦いだ。

だからこそ真面目にゴルフを描いてしまうと地味だ。
いわゆる必殺技があるようなタイプのゴルフアニメならば違うだろうが、
この作品にはそういったものはない。
リアルにやればやろうとするほどゴルフというものは地味になりがちだ。

そこに日常というこれまた地味になりがちな要素をこの作品果たしている。
バイトをしたり、ゴルフをしたり、ゲームのゴルフをしたり、
年齢も違えば、学校も違う彼女たちだからこそ、
日常系のベタなイベントは使えない。

しかも、この作品の主人公は
別にゴルフの「プロ」になるためにやっているわけではない。
大会やプロとしての苦悩やドラマがあるわけでもなく、
あくまで「趣味」の範疇だからこそ地味になりがちだ。

ベタな日常系イベントも使いづらく、ガチガチなゴルフもやりづらい。
なかなか話作りというのが難しい作品だ。
それでもドラマはある。

お嬢様

主人公は物語の中のような特別な存在に、物語の主人公のようなものに
憧れている、それを求めてゴルフをしている。
ゴルフとは自己との対話でもある、スポーツではあるものの、
対戦相手の妨害をしたりすることはできない。
あくまで「自分」との戦いだ、それは自分を見つめ直す時間でもある。

何もなかった主人公がゴルフを通して自分を見つめていく、
少しずつゴルフがうまくなっていく、その達成感が積み重なる中で、
ゴルフを通じていろいろな人と出会い、それぞれの人生を目にする。
お年寄りになってもゴルフを続ける人たち、
子どもができプロを諦めキャディになった女性。

メインキャラであるアヤカも読者モデルでインフルエンサーという
肩書はあれど、その肩書だけで人生の何かを掴みきれずに居る。
そんな彼女が終盤、自分の中の何かを見出す。
何もなかった自分に何かが生まれる。

何気ない日常の日々、子供と大人の間のモラトリアムの中で
一人ひとりが「なにか」を掴んでいく。

そして彼女にゴルフを教えている師匠たる「ハルカ」も同じだ。
子どものときは多くの大会にもでていた彼女ではあるものの、
今はでていない、そんな彼女の映像を何度も何度も見つめていた
「お嬢様」が終盤あらわれる。

人生

お嬢様はずっとハルカに憧れていた。
だが、もうハルカは大会にでていない、ゴルフを楽しんでいるだけだ。
お嬢様は過去のハルカそのものだ、スコアを追い求めるゴルフ、
勝負に勝つためのゴルフだ。
それは同時に楽しむことを忘れてしまう部分もある。

ハルカはゴルフを嫌いにならないために競うことをやめた。
それもまたゴルフ、スポーツとの向き合い方の1つだ。
そして「人生」との向き合い方でもある。
うまく行かないことに向き合い続けることでえられるものもあれば、
諦めることで切り開ける部分もある。

お嬢様はあこがれの人と、主人公たちとゴルフをすることで
「自分」を見つめ直し、ゴルフというものとの向き合い方が変わる。
地味に見えるゴルフではあるものの、そこには「人生」が詰まっている。

諦めることも、休むことも大事だ、だが同時に
挑戦する気持ちを忘れないことも大事だ。
そんなゴルフと向き合う人たちの人生に触れ主人公も何かを掴む。

人生で初めて「パー」をとる、
終盤はたった一人で彼女はゴルフに向き合う。
パーを取った瞬間、その瞬間に一人であることに気づき、
彼女はゴルフに何を求めていたのかを実感する。

物語の主人公になるよりも、
3人一緒の日々に彼女は自分の「居場所」を見つける。
彼女なりのゴルフが1クールでしっかりと描かれている作品だった。

総評:人生、ボギー位がちょうどいい

全体的に地味な部分は否めない作品だ。
日常系にゴルフの要素を足す、そんなゴルフもプロを目指すという
話というわけでもなく部活ですらない。
メインキャラたちの3人の年齢も学校もバラバラであり、
バラバラであるがゆえにベタな日常系イベントも描かれない。

だが、日常系の良さはにじみ出ている。
1話1話積み重ねながら、何もなかった主人公が何かを掴んでいく。
ゴルフという自分と向き合うことを求められるスポーツをする人たち、
そんな人達と出会い、ゴルフという名の人生に触れていくことで、
主人公もまた自分にとってのゴルフを見定めていく。

それが1クールできれいに描かれている作品ではあるものの、地味さは否めない。
パイロットフィルム版に比べセクシーシーンも控えめであり、
くすくすと笑えるようなギャグなどはあるものの、
刺激的なシーンや要素は控えめだ。

作画のクォリティは高く、3人のメインキャラの魅力はきちんと
感じられる描写があり、会話劇とゴルフが中心ではあるものの、
場面によってキャラクターのデザインを崩すことによって
コミカルさを強調しており、飽きさせない画面づくりにはなっている。

いい意味でも日常系であり、悪い意味でも日常系だ。
この1話の中での小さな変化とキャラクターの魅力に
みている人が気づき、ハマれるかどうかで
作品の感想もがらりと変わってくる作品だった。

個人的な感想:オリジナルアニメ

今年は本当にオリジナルアニメが多い。
いろいろな作品がある中でも日常系という難しいジャンルに
挑戦する作品もあり、この作品も日常系+ゴルフではあるものの、
ゴルフの要素はそこまでガッツリではないのが特徴だ。

このゆるさゆえに好みはわかれるところだが、
試しに1話観てほしい、この雰囲気にハマってしまうかもしれない。

「空色ユーティリティ」に似てるアニメレビュー

監督:斉藤健吾, Writer:望公太, 出演:高木美佑, 出演:天海由梨奈, 出演:後藤彩佐

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