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「IDOLY PRIDE アイドリープライド」レビュー

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青春
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評価 ★★☆☆☆(27点) 全12話

あらすじ またたく間にアイドルランキングを駆け上がった長瀬麻奈が所属する星見プロダクション。引用- Wikipedia

プライドはどこへ?

本作品は「アイドル」をテーマにしたメディアミックス作品。
漫画、アニメ、そしてソーシャルゲームにもなる予定だ。
監督は木野目優、制作はLerche

幽霊


画像引用元:IDOLY PRIDE 1話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

1話冒頭、本編よりも先のシーンが描かれる。
これ自体はありがちな手法であり、アイドルアニメの場合は
1話の冒頭で「ライブシーン」を見せ、
そこに至る過程まで描かれることも多い。

しかし、この作品の場合はライブ直前の
覚えきれないキャラクターをとりあえず1話の冒頭で一気に出す。
そのあとにライブシーンが描かれれば期待感も生まれたかもしれないが、
直後に描かれるのはライブシーンではなく過去回想が始まる。
未来にいったり過去にいったりと落ち着きのないストーリー構成だ。

アイドルアニメは今は大量に存在する。
特にこの作品が放送された2021年冬アニメは
同時期に大量のアイドルアニメがいやしくも放送されており、
なにか秀でたものがなければ有象無象のアイドルアニメの1つとして
埋もれてしまうのは必然だ。

そんな中でこの作品は「幽霊」というのが最大の特徴だ。

やる気はあるのか?


画像引用元:IDOLY PRIDE 1話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

1話で描かれるのは「ソロ」のアイドルだ。
学生時代の主人公とアイドルになろうとしている「長瀬 麻奈」。
彼女は主人公への好意を見せつつアイドルになる事を決意し、
主人公は彼女のマネージャーとなりデビューする。

1話の大事な初めてのライブシーン。
アイドルアニメにおいてライブシーンは重要だ。
そのアイドルアニメの特色が1番に出るシーンであり、
そこをどういうふうに描くのか、曲はどんなものなのかが
1番大事と言っても良い。

しかし、この作品はそこを放棄している。
なにせ1話の最初に描かれるライブシーンが止め絵だ。
やる気があるのか?と思うほどがっくりとしてしまう。
特に曲が印象に残るわけでもなく、つまらないライブシーンに
この作品への期待感は0になる。


画像引用元:IDOLY PRIDE 1話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

この世界には「ヴィーナスプログラム」というのが存在し、
簡単に言えばAIによるアイドルのランク付けが行われている。
現実世界と同じくこの作品の世界でも大量のアイドルが存在する。
そんな世界で「長瀬 麻奈」のランクはどんどんと上がり、
アイドル街道を駆け上がっている。

しかし、そんな中で彼女が交通事故でなくなる。
それだけならまだしも彼女は心半ばに亡くなってしまったせいか
「幽霊」となり主人公に取り憑くところから物語が始まる。
彼女は主人公にだけ見えて声も聞こえる。
そんな彼女とどう向き合うのか。

斬新といえば斬新な設定だ。幽霊なアイドルという要素は
確かに類を見ない要素ではあるものの、
アイドルの死とその先を描いた「ゾンビランドサガ」という作品もあり、
「幽霊」が出るアニメ作品も少なくないだけに、
色々な作品の組み合わせを変えただけとも言える。

一気に時系列も幽霊アイドルにとりつかれたまま3年経過し、
彼女の妹が「アイドル」になるというところから物語が動き出す。

妹と通りすがりと有象無象


画像引用元:IDOLY PRIDE 2話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

幽霊になったアイドルの妹は「姉の無念」を晴らそうとしている。
姉と同じ事務所で、姉と同じようにソロのアイドルでトップになりたい。
どこか影のある存在であり、怨念のようなものすら感じるほどの
気迫を感じさせる子だ。

そんな彼女の前に「通りすがり」でオーディションに
いきなり参加する「川咲 さくら」が現れる。
彼女は特にアイドルになろうとしたわけでもなく、
「心の赴くまま」に心に従いオーディションに参加しようとしている。
アイドルの妹としては舐めているとすら思われる存在だ。

なぜか「川咲 さくら」の歌は亡くなった「長瀬 麻奈」と
そっくりという設定なのだが、そういう設定であることは分るものの
見ているこちら側としては全然似ているとは感じない。

某アイドルアニメでは「歌がうまい」という設定なのに
声優のせいで対してうまくなかったという問題も合ったが、
この作品もまた特に似ていないのに似ていると言われてもピンとこない。
「長瀬 麻奈」を演じている神田沙也加さんはどちらかといえば
ミュージカルっぽい歌い方だが、「川咲 さくら」は普通の歌い方だ。

キャラクターたちが「麻奈の声を持つ謎の少女」と称する者の、
見ている側にはそれが伝わっていないのはやや致命的だ。
やりたいことに対して表現が追いついていない。
なぜ彼女が「長瀬 麻奈」と同じ歌い方なのかという謎は
物語のファクターにはなるものの、いまいちこの作品に乗り切れない。

2話のラストにはグループアイドルとしての仲間も
一気に出てくるものの、テンプレート的なお嬢様キャラだったり
どれもこれも「どこかで見たことのあるような」キャラクターでしか無い。
演じているのも新人声優ということもあり声でキャラの特色が
生まれてるとは言い難く、キャラによっては演技力もギリギリだ。

ライバルのアイドルグループも出てくるものの、
ろくにキャラの印象づけや掘り下げをやっていないのに
どんどんとキャラを増やしている印象だ。

「幽霊」という突飛な存在はいるものの、
序盤はその存在を活かすわけでもなく彼女のセリフも
思い出したかのように各話2,3個しかなく、
淡々とありきたりな王道アイドルアニメストーリーを描いており、
キャラクターもストーリーも光るものが見えてこない。

結局、4話までメンバー集めだ。
主人公いわく「未完成なグループ」らしく、
その未完成を補うためにどんどんとキャラを入れる。
本格的なレッスンもなく、本格的なライブもないまま5話を迎える。

分断


画像引用元:IDOLY PRIDE 5話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

5話でいきなり4話まで集めたメンバーを半分にし、
2グループに分けることが発表される。
キャラ数の多さは2グループにするためであることは納得できるものの、
この作品は1クールしか無い。

すでに半分の尺を使ってる時点で掘り下げの甘いキャラも多く、
各グループ5人ずつ、総勢10人のアイドルと
マネージャーと幽霊になったアイドル、更にライバルアイドルも居る。
明らかに中盤の時点で掘り下げられないキャラも
居るんだろうなと感じるほど1クールにしてはキャラクターがやや多い。

このあたりは後にソーシャルゲームになるのを想定した
キャラクター数であるものは分るものの、
中盤の時点で名前すら覚えていない、存在感がほぼ無いキャラも多く、
キャラクターを使いこなせていない。

あれだけ丁寧にメンバーを集めていたのに5話になると急に
雑に二人メンバーが追加される。売れなかったソロアイドルと
すでにいるキャラとデザインが被りすぎているキャラクターだ。
もう名前すら覚えられない。

ちなみになぜか片方のアイドルグループのキャラクターを演じている
声優さんが所属しているのが全員「ミュージックレイン」なのは
きのせいだろう(苦笑)
ミュージックレインVS他事務所の声優アイドルグループという図式が
何故か生まれてしまっており、色々と邪推してしまう。

グループを2つに分ける選択をしたのはマネージャーである主人公だが
彼の決断に見ている側がついていけない。
特に彼にマネージャーとしての実績や実力があるとは言い難く、
見ている側が「2つに分けたほうが良い」というふうに感じられない。

1つのグループだとこの人数をさばききれないから
2つに分けましたと言われたほうが納得レベルだ。

カクカクデビュー


画像引用元:IDOLY PRIDE 6話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

6話にしてようやく彼女たちはデビューする。
本格的なレッスン、アイドルとしての仕事の数々を次々とこなしているが
まだデビュー前の状態なのに「ラジオ番組」をやっていたり
雑誌の取材を受けていたりするのは色々と謎だ。
いざライブが始まるとデビューライブなのにファンも大勢いる。

だが、そんなことよりもライブが大問題だ。
作画が悪い、CGの違和感、アイドルアニメのライブシーンでも
色々な問題はあったが、こんなことを言うのは初めてかもしれない。
わかりやすく言えば「カクカク」だ。

私はDアニメでこの作品を見ていたがインターネットの回線か
パソコンに不調をきたしたのか?と思うほどライブシーンがカクカクだ。
いわゆる「FPS」が低い。フレームレートの問題なのは分るが、
誰か制作サイドが確認しなかったのか?と思うほどのカクカク具合は
旧FF7のムービーシーンを一瞬思い出してしまった。

いくらアイドルたちが一生懸命笑顔で歌って踊っていても、
「カクカク」がきになってライブに一切集中できない。
中盤の最大の盛り上がりどころかカクカク、
制作サイドはこれでいいと思ったのだろうか、疑問しか浮かばない。

自分たちで考えた…?


画像引用元:IDOLY PRIDE 6話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

中盤までこの作品の最大の特徴である
「幽霊」という要素もまったくもって活かしきれていない。

7話で彼女たちは自分たちのユニット名を自分たちで考えたと
答えているのだが、そういったシーンは描かれておらず、
グループの分散もユニット名も主人公の指示だ。
彼女たちはあやつり人形でしかない。
彼女たちの自主性、主体性のようなものを感じず、
主人公というプロデューサーの指示に流されているような感覚だ。

いつのまにかアイドルのランクもどんどん上がってるようで
ライブバトルという唐突に出てきた謎システムで
全戦全勝しているらしい。

デビューしたてなのにどこにそんな実力が合ったのか、
あのカクカクなライブが話題沸騰になったと考えれば
少し納得できる部分もあるものの、彼女たちの実力が見えてこない。
6話で見せられたライブシーンで「凄い」と感じなかったせいで
彼女たちの実力に説得力が生まれていない。

他のアイドルグループに対して彼女たちが優れていると
見ていて感じられず、そもそも他のアイドルグループも
ろくに描写されないため「結果」しか伝わらない。

確信に迫る


画像引用元:IDOLY PRIDE 8話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

終盤になるとようやく本筋とも言うべき部分が描かれる。
アイドルだった姉を失った「長瀬 琴乃」
彼女は姉の背中をおい続けている、ある種の執念だ。
姉がなし得なかったことを、喧嘩別れした姉の代わりに成し遂げる。

だが、ライバルアイドルからは「劣化コピー」だとすら言われてしまう。
それほどまでに姉であり幽霊になった「長瀬 麻奈」は偉大だ。
グループアイドルが当たり前の時代にソロのアイドルとして君臨し、
そんなアイドル半ばで亡くなったからこそある種、伝説的になっている。
それは妹も、他のアイドルたちも、ファンもそうだ。

妹であることは世間にバレている。だからこそ必然的に姉と比較される。
そんな伝説的なアイドルと歌い方が似てると言われた
「川咲 さくら」もまた比較されることや再来と言われることに迷うが、
彼女だからこそ、「長瀬 麻奈」がなし得なかったことを
彼女の代わりに成し遂げられるはずだ。

それぞれが多かれ少なかれ「長瀬 麻奈」の存在を意識している。
ときに比較され、その存在に押しつぶされそうになるものの、
「仲間」がいるからこそ乗り越えられる。
王道ではあるものの自分は自分でいいんだと仲間が居たからこそ
自覚できる物語は悪くない。

移植


画像引用元:IDOLY PRIDE 9話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

「川咲 さくら」は3年前に心臓移植を受けている、
彼女の心臓は「長瀬 麻奈」のものだ。その心臓のときめきを
彼女は信じてここまでやってきた。心臓移植で
歌い方が似るかどうかというのはやや突っ込みどころではあるものの
要素としては悪くない。

心臓移植の件も世間にバレ彼女は追い詰められる。
そのエピソードは流れ的に理解できるものの、
主人公が唐突に「長瀬 麻奈」が幽霊として存在することを明らかにする。

ただ、彼女が幽霊として自分の心臓が移植されたアイドルの
背中を押す部分はあるものの、「幽霊」という要素は
この話に本当必要だったのか?と疑問に思ってしまう。

「川咲 さくら」が自分に移植された心臓の持ち主であるアイドルの
意思を引き継ぐ必要はなく、彼女らしく、彼女のまま突き進む。
彼女はもう「長瀬 麻奈」のようには歌わない。

話の流れ自体は王道で悪くないエピソードだが、
「幽霊」という要素を活かしきれていない感じが常に付きまとう。

本来はこういったアイドルの成長や決意のあとに行われる
ライブがきちんと描かれることで、アイドルアニメとしての
本質と面白さを感じられるが、この作品はそこを放棄しており、
ライブが行われても止め絵かカクカクだ。

ライバル


画像引用元:IDOLY PRIDE 11話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

序盤から出ていたライバルのエピソードが終盤描かれるが、
主人公たちのグループの子達の掘り下げ諸國していないのに
ライバルアイドルの掘り下げが行われても微妙でしかない。

ライバルアイドルもかなりの強敵だったはずなのにサクッと
勝っているものの、相変わらず勝ち負けの判断がよくわからない。
なぜ主人公たちのグループが勝ったのかという説得力が
ストーリー的にもアニメーション的にも描かれていない。

個人的な主観になるが11話の対決など、
ライバルアイドルのほうがアニメーション的にも楽曲的にも
優れていると感じるため、余計に結果に納得できない。
対決の要素が常に結果ありきの茶番でしか無い。

いや、そもそも茶番だったのかもしれない。
決勝に勝ち進んだ2つのアイドルグループ。
主人公がプロデュースした2つのアイドルグループが戦うことになる。

茶番


画像引用元:IDOLY PRIDE 12話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

彼女たちが競い合っているネクストビーナスグランプリ、
これは「長瀬 麻奈」がかつて目指したものであり、
そこに「長瀬 麻奈」の妹が居る「月のテンペスト」と
「長瀬 麻奈」の心臓を移植された「サニーピース」が参加し、
ベスト4にはそんな2グループとバンプロダクションのアイドルグループが残る。

ちなみにバンプロダクションから独立したのが星見プロダクションであり、
星見プロダクションは主人公たちが所属する事務所だ。
もうゴリゴリに「仕組まれた」感のあるグランプリだ。
例えるならAVEX主催のグランプリで倖田來未と浜崎あゆみしかおらず、
他の事務所の歌手も残っているが、その事務所はAVEXの関連事務所。
みたいな空気感だ。

決勝戦に残るのは当然、「月のテンペスト」と「サニーピース」だ。
アイドル同士の戦い、そんな戦いに「説得力」があれば
茶番感は生まれなかったかもしれないが、説得力がないせいで
茶番にまみれたグランプリに見えてしまう。

しかも、決勝戦が描かれる最終話。
この手の集団としては「結果がわからず」に終わるパターンもあるが、
この作品は結果まできちんと描かれる。

「同点」である(笑)
それだけなら話の都合上の予定調和で納得できるが、
その結果がわかっていたかのように
「月のテンペスト」と「サニーピース」の合同曲と
おそろいの衣装まで用意されている。もはや茶番を隠す気すら無い。

幽霊だった「長瀬 麻奈」もあっさり成仏する。
この別れのシーン自体は悪くないものの、
ほぼ彼女を活かしきれずに終わってしまっため
感動にはつながらずに終わってしまった。

総評:幽霊要素…いる?


画像引用元:IDOLY PRIDE 12話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

全体的に見ていろいろな要素を活かせず仕舞いな作品だった。
伝説的なアイドルが幽霊として存在し、その妹と、
彼女の心臓を受け継いだアイドルがトップアイドルを目指す。
そのプロット自体は興味深く悪くないものだったが、
結局、「幽霊」という要素を活かしきれていない。

序盤から中盤までは傍観しており、
終盤で幽霊である彼女の出番はあるものの、
別に遺言という別の形でもよかったのでは?と感じるほど
幽霊としての彼女の存在を活かしきれておらず、
彼女の存在のせいで彼女と関わりの薄いキャラの描写や活躍も薄い。

キャラクター数も非常に多く、1クールでキャラが揃うのは中盤。
個別回のようなものもほとんどなく、終盤になっても名前を
覚えていないようなキャラクターも多く、必要性を感じない
キャラクターがあまりにも多い。
幽霊要素を削れば生かせる子もいたかもしれないだけに残念だ。

ライブシーンも序盤は止め絵、中盤はカクカクで見応えはなく、
終盤はカクカクさはましになったものの止め絵は目立ち、
ライブシーンの見ごたえがない。
アイドルアニメにおいて1番重要とも言える部分に
力を入れていないのは残念でしか無い。

ストーリー的にも茶番感が際立ってしまい、
なんだかなーという印象で終わってしまう作品だった。

個人的な感想:プロット段階では良さそう


画像引用元:IDOLY PRIDE 12話より
© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクショ

この作品のプロット段階では面白そうな感じがしたものの、
いざ形にしたら失敗したという印象を受ける作品だ。
1つ1つの要素は悪くない、設定は決して悪くないのに
ライブシーンやストーリーなどの見せ方や表現がついてきてない。
そんな印象を受ける作品だった。

ソーシャルゲームも出るようだが、アニメ自体の売上は芳しく無く
果たしていつサービスが開始し、いつまで続くのか…
気になるところだ。

「」は面白い?つまらない?

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