「ましろのおと」レビュー

青春
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評価 ★★★☆☆(48点) 全12話

あらすじ 16歳の津軽三味線奏者の澤村雪。三味線の師であった祖父・澤村松吾郎が亡くなったことで、自分の音を探すため、単身上京する。 引用- Wikipedia

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名作になりそこねた

原作は月刊少年マガジンで連載中の漫画作品。
監督は赤城博昭、制作はシンエイ動画

三味線

1話冒頭から「三味線」の音がかき鳴らされる。
津軽生まれの主人公は祖父が亡くなり、その空虚感から家を出て東京を目指す。
この作品は一体、なにをやりたいのかが1話冒頭ではまるでわからない。
どこか寂しさを感じる空気感を感じる東京の風景、
そんな東京で夢に憧れるキャバ嬢と夢のない主人公が出会うところから物語が始まる

原作は少年漫画ではあるものの、どことなくキャラクターデザインは少女漫画原作の
アニメを彷彿とさせるような雰囲気だ。
線が細く、どこかのっぺりとしたキャラデザはあまり印象に残りにくく、
主人公が使う「津軽弁」と彼が弾く「三味線」の音のインパクトはあるものの、
そこから妙に「絵」が安っぽくなってしまう。

1話はあえてキャラクターに「影」を落としていない。
そのせいでのっぺりとした印象を画面から受けてしまう。
室内でも外でも、どこでも彼等に影が落とされていない。
見続けると目がチカチカしてくる印象だ。

唐突に東京に来る展開や、唐突にキャバ嬢と出会う展開など、
かなり唐突な展開が唐突に続きつけるため、いまいち話にもキャラにも集中できず、
作品の空気にのめり込み難い。
ゆっくりとした空気感が似合う雰囲気なのにせわしないストーリー展開が
噛み合っていない。

だが、その分、三味線を弾くシーンになると画面が一気に引き締まる。
絵よりも「音」にこだわったと感じさせる音の圧で
画面に説得力をもたせており、彼の奏でる三味線の音、
そんな音で震わされる登場人物の心の琴線。
演奏時にはしっかりとキャラの作画に「影」を落とすことで
日常シーンとの作画の雰囲気の対比を生んでいる

がむしゃらに自分の「音」を追い求める主人公の「音」に影響され、
登場人物も動いていく。
あるものは夢を諦め、あるものは自分自信を見つめ直す。
主人公が三味線を奏でるたびに物語が、キャラの心が動く。

唐突y

展開の唐突さは2話になっても変わらない。
いきなり派手な母親が来たかと思えば主人公を催涙ガスで眠らせるわ、
一人暮らしするための場所を用意したかと思えば
商店街に向けて三味線をかき鳴らさせ、彼女自身は歌い出す。

脈絡なく話が展開し、脈絡なく歌い出す。
そうかと思えば高校に通い出す。驚くほど展開が急だ。
だが、そんな展開の急さを引き締めるように毎話、演奏シーンが際立つ。
ときには兄弟で、ときには舞台で1人で。

日常シーンののっぺり感や演出の古臭さと、
演奏シーンの迫力と演出の気合の入りっぷり。
力をガッツリ入れてるところと入れていないところの差が激しく、
もう少し日常シーンでの作画や演出に気合を入れてほしいと思うほど
もったいなさを感じてしまう。

音、三味線に演奏による盛り上げがあるからこそ
この作品は見れる部分があるものの、良い意味でも悪い意味でも
三味線の音だよりになっている部分が大きい。
そこに比重を置きすぎていると言っても良い。

削ぎ落とす

主人公は自分自身の「音」にまよっている青年だ。
目指していた、憧れていた存在である「祖父」が亡くなり、
亡くなってしまったからこそ余計に自分の音がわからなくなっている。
そんな彼の前に「過去の祖父」の音がやってくる。
ずっと昔に祖父が奏でた曲、今の自分ではその時の祖父のように弾くことすらできない。

そんな中で彼がやるのは削ぎ落としだ。
祖父にはなれないとわかったからこそ、祖父の音を削ぎ、
自分の音にしようとする。
祖父の音と向き合い、自分と向き合い、自分の音を探していく。

これから自分はどうすれば良いのか、自分の三味線は何のためにあるのか。
自分の「音」はどんな音なのか。
迷いし若者が三味線を通じて自分を見つめ直していく。
ゆっくりとゆっくりと、真っ白なノートに自らの音符を書き連ねるように
奏で続ける、彼にはそれしか無い。

音を削ぎ落とすように、悩みを削ぎ落とし、葛藤を削ぎ落とし、
だが、決して自分を表現する音だけは削ぎ落とさず、
自分という存在を三味線で表現する。
この作品はひたすらに主人公が自分自身というものに向き合う作品だ。

時には自分自身と、時にはライバルと言える存在と、時には誰かに
三味線を教えることで彼はひたすらに自分に、三味線というものを向き合う。
他者の評価、他者と競い合うことに興味のなかった主人公が
他者への「教育」と他者との「合奏」を経て自らの心を共鳴させる。

三味線甲子園など唐突な展開は相変わらずではあるものの、
ゆっくりと主人公は他者との係わり合いの中で
自分の「音」を求めていく

そんな彼の姿と音に同じ三味線愛好会の部員も影響されていく。
スポーツの夢を諦めたもの、祖母のために三味線を始めたもの、
自分自身の悩みが主人公と共鳴し、彼等もまた一歩ずつ自分自身の音を
求めて三味線を奏でる。

重圧

主人公は祖父の音を追い求めている。
自分がどうやれば祖父のように弾けるのか、
どうやれば祖父のような音を出せるのか。1話から葛藤し、
そんな中で自分の音を追い求めている。

主人公以外にも祖父の影を追いかけ続けているものが居る。
主人公の母親だ。名人でありながら知名度がほぼなかった祖父、
そんな祖父を尊敬しているからこそ彼の名を世に知らしめるためにも
息子である主人公を有名にしようとしている。

だが、彼はそんなことを求めていない。
彼の意思とは裏腹に母が、父が、別の流派の演奏者たちが
主人公に彼の祖父の影を重ね、彼により重圧をかけていく。
勝手に責任を押し付け、勝手にライバル視し、勝手に期待される。

本来ならそれぞれのキャラクター描写をしっかりすることで
その身勝手な重圧の身勝手さが薄まるものの、
1クールと言う尺がゆえのストーリー構成のせいで、
原作を知らずとも「あー原作カットされてるな」と感じる部分が多く、
そのせいで身勝手さが極まり、唐突な展開の唐突さも極まる。

ストーリー構成

本来なら1クールで収まりきらないストーリーを
やや強引に1クールに収めようとして
細かい部分がこぼれ落ちているような印象だ。

原作で言えば8巻までの内容をアニメ化しているようだが、
通常は1巻あたり2話~3話でアニメ化することが多いが、
1巻あたり1話~2話と早い展開になっているのが分る。
本来はもっと丁寧に描いてほしい部分を丁寧に描ききれておらず、
この作品の魅力を100%出し切れていないもどかしさを感じてしまう。

三味線甲子園が始まっても、どんな採点方法なのかすら説明されない。
どういった審査基準で彼等が審査されているのかもわからない。
それをカバーするための奏者ごとの演出と三味線の音でうまく
誤魔化してはいるものの、もう少し原作で説明されている部分を
説明してほしかったと思う部分は多い。

更に終盤は回想シーンも多く演奏が中断されることも有り、
更に余計なBGMを三味線にかぶせてくるのは悪手でしか無い。
ピアノのBGMを聞きたいのではない、この作品で聞きたいのは
三味線の音だ。それなのにそれを素直に聞かせてくれない。

ピアノと三味線のおとをまぜるセンスは最悪でしかない。
時には演奏中に三味線の音を消しピアノをメインに持ってくることもある、
不協和音とはこの事を言うと言いたくなるほどの演出の悪さが
終盤で出てきてしまう。

俺の三味線はここからだ

自分を表現する音と、大会で勝つための音は違う。
そういうことなの分るものの、審査方法もろくに説明されて居ない中で
そういう審査結果を見せられてもいまいち結果に納得できず、
ある意味で主人公の挫折で終わっている最終話は
モヤモヤ感の残るものになっている。

ストーリー構成としての1クールの区切りとして
原作の三味線甲子園まで描きたかったのは分るが、
区切りとしてはあまり良くない。
話的にはココからが重要だ。

自分と祖父の音にしか興味がなかった主人公が祖父の影を追いつつ、
母や父からそれを求められながらも自分を見つめ直し、
他者との係わり合いの中で他人を意識し
自分だけの音を追い求めながら「他人に聞かせる音」を模索する。

それゆえに勝ちたいと思うようになり、自分らしい演奏をしたものの挫折した。
さぁここからだ。
主人公がこれからどんな音を求めていくのか、
他者の評価なんか気にしなかった彼が他者と比べられ
敗北という挫折を知り、どんな音に仕上げていくのか

そこで終わってしまっている。
もう一歩先が見たい、もう一歩踏み込んでほしい。
そうすればこの作品は名作になり得た。
そんな予感だけを感じさせて終わってしまった作品だった。

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総評:名作という琴線に触れた

全体的に見て非常にもったいない作品だ。
三味線という楽器の面白さと魅力を描きつつ、
三味線と祖父に囚われた主人公の自立と自分の音を追い求める物語としては
一本の芯の通ったものが描かれている。

しかし、その反面で尺の都合上、サブキャラたちのキャラ描写が
疎かになっている部分があり、1クールという尺しか無いがゆえに
唐突な展開や細かい部分が原作から省かれているがゆえに違和感があり、
もう一歩踏み込んでほしいのに踏み込んでくれないもどかしさがあり、
1クールという尺の使い方が良いとは言えず、話の区切りも甘い。

そんなもどかしさを圧巻の演奏シーンで魅せている。
ときに華やかに、ときに厳かに三味線による演奏シーンを演出することで
より三味線の音の印象を目でイメージとして伝えつつ、
実際の三味線の音で耳に響かせることで、より三味線の魅力を醸し出している。

ただ、それに比べて明らかに日常シーンの演出や作画の手は抜いており、
力を入れているところと手を抜いているところの落差があり、
その落差が見ていてわかりやすく伝わってしまう。
演奏中の指の動きの描写は激しく見応えがあるのだが、
ピアノのBGMなどの演出で邪魔されることもある。

もう一歩踏み込めば名作になり得た。
2クールと言う尺があれば、日常シーンの作画も気合が入っていれば、
もう一歩踏み込めばこの作品を素直に名作を称えることができた。
しかし、あくまで名作の琴線に触れただけで終わってしまっている。

一言で言えばもったいない。ストーリーの区切りが良いとは言えず、
ここからの物語が面白そうなのに終わってしまうもどかしさが強く、
原作ストックも十分ある作品なだけに、2クールのアニメで
企画されていればもっと面白くなったかもしれないだけに残念だった。

個人的な感想:母

色々と惜しい所が目立つ作品だった。
主人公と母の対立、そういった部分も出てきてストーリー的には
面白くなりそうなところで終わってしまっている。
原作の漫画媒体で続きを読みたいところだが、
この作品はやはり「音」が合ってこそいきてくる。

それゆえにアニメでも三味線の音にはかなり気合を入れているのは
伝わるものの、終盤のあのピアノと一緒に流すシーンは
不快でしか無かった。せっかくこだわったはずの三味線の音に
たいしてこだわっていないピアノの音をどうしてかぶせてしまったのか
謎でしか無い。

キャラの心象、感情表現としてのピアノであることはわかるものの、
主人公の1クールのラストの演奏を邪魔するような流れになっているのは
最後の最後まで納得がいかない演出だった。

2期があるかどうかはわからないが、2期があれば期待したい作品だ

「」おもしろい?つまらない?


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