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「機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER」レビュー

4.0
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評価 ★★★★☆(69点) 全90分

『機動戦士ガンダム サンダーボルト BANDIT FLOWER』特報2 60秒ver.

あらすじ 一年戦争終結から7か月が経過した宇宙世紀0080年7月。戦後の混乱・貧困と連邦の支配力低下をきっかけとして、極東からインド洋・中東周辺地域を勢力圏とする「南洋同盟」は連邦からの独立と宗教国家建設を目論み、極秘にRPDの開発を継続していた。引用- Wikipedia

絶望の果に行き着く先は…

原作は漫画な本作品。
元々はWebアニメとして制作され、本作品は後編に当たる4話までを
つなげ新規カットをくわえた劇場アニメとなる。
監督は松尾衡、制作はサンライズ

僕は運がいい

冒頭、少年の過去が描かれる。
物思いに耽ながら彼らは自分自身の思いをポエミーに語る。
友達の死体を前にしながら、彼は自分の心を落ち着けるように。
自分自身に言い聞かせるように。

「僕は運がいい」

そんな少年から戦場へと舞台が移る。
前編も戦闘シーンまみれだったが、後編も戦闘シーンまみれだ。
死は彼らの間近にある、沿う感じさせるほどの激しい戦闘シーンの中で
多くの期待があっさりと失われていく。

ア・バオア・クーの中には多くの兵士がいる。
だが、そんな守りたいものはあっさりと失われていく。
敵に侵入されながら、それでも守りたいものを守るために
彼らは命の炎を燃やしていく。

ダリル・ローレンツは今もなお戦場の中に身をおいている。
失ったサイコザクのかわりに載っている機体は
彼の失った両手と両足で動かすには困難であり、
かつてのエースの姿はそこにはいない。

そんな中で捕虜となった「イオ・フレミング」は助け出される。
前編はまだ外伝的な作品におちついいていたが、
後編からは外伝というよりもパラレルワールド感が強くなっていく。
南米同盟に奪われたサイコミュ、主人公機の設定など
外伝というよりパラレルワールドだ。

かつてシドニーだった場所は廃虚になり、
戦争はより苛烈を極める。
彼らの故郷が、彼らの思い出が、美しい地球は戦争により壊れていく。
サンダーボルド宙域で生き残った彼らの舞台は地球に移る。

「連邦もジオンも滅んじまえ!」
名も知らぬ兵士は自身の命があっさりと死ぬ瞬間に叫ぶ。
自身の命が尽きる瞬間に「戦争」を呪う。
その小さな呪いは大きなしがらみとなり、戦争をより激化させる。

ジャズとともに

そんな戦場に「あいつ」が帰ってくる。
1度は負け、捕虜となった彼、だが、変わらない。
相変わらずジャズを鳴り響かせ、新型の「アトラスガンダム」に乗り
戦場をかき乱す。

独特の関節とデザインは1度見たら忘れられない。
水陸両用、ジオンの技術までも取り込んだ機体、
「戦場に魅入られた」男らしい機体だ。
勝つためならば、戦場をかき乱すためならば敵の技術だろうと関係ない。

それは敵も同じだ。
義手と義足をつけなければ動かせない「リユース・サイコ・デバイス」を
ジオンでも連邦でもない南米同盟が奪い活用しようとしている。

一年戦争は終結したはずなのに、戦争は止まらない。
終戦協定を交わしたはずなのにジオンと地球連邦の小競り合いは止まらず、
第三勢力も独立し敵対し始めている。
多くの犠牲の上に成り立った和平も意味はない。
一人ひとりの小さな犠牲、小さな憎しみの連鎖は止まることはない。

水中戦

前編は宇宙が舞台だったこともあり無重力の環境の中での戦闘だ。
重力がないからこその自由な動きが戦闘シーンに迫力を生んでいた。
後編はそんな宇宙から地球へと舞台が移っている。
そこには「海」があり「重力」が存在する。

前編よりも、どっしりとした機体の重みを感じる描写だ。
水中だからこその不自由さと水の抵抗を感じるような戦闘シーンから、
地上に映れば雪が降りしきる中、彼らは戦う。
地球の重力がまとわりついているような重みを感じる戦闘シーンは
思わずニヤニヤしてしまう。

特に「アトラスガンダム」の多彩な動きには惚れ惚れしてしまうほどだ。
多数のズコック相手に不利な状況の中で、
戦場を見極め、大地を踏みしめ、多彩な武器で敵を翻弄する。
フルアーマーガンダムも多彩な武器を持っていたが、アトラスガンダムはそれ以上だ。
「メデューサの矢」で敵を効果させ、地上だろうが水中だろうが自由に動く。

「伊達に足がついてんじゃねぇんだよ!」

まるでどこかのジオン兵に告げるが如く、
彼はガンダムの足で敵機にとどめを刺す。
敵を倒すためならば、自身が生き残るためならば、
武装のすべてを使い尽くす彼の荒々しい戦い方に惚れ惚れしてしまう。

精神

前作のストーリーの中でリユース・サイコ・デバイスを開発していた
「カーラ」は事故にまきこまれ、彼女は幼児退行してしまっている。
父親が亡くなる前の幸せだった頃の記憶にしがみついているかのように、
彼女は自らの技術の犠牲者でもある「ダリル・ローレンツ」を父と思いこんでいる。

そんな彼女を見つめながらもダリル・ローレンツは戦場へと赴く。
もう彼女の開発した機体はない、不自由な両手と
両足でアッガイを操り、任務に挑んでいる。
行方不明事になったはずの「クローディア」もなぜか南洋同盟に所属している。
戦争が彼らを、彼女たちをおかしくしていく。

そんな彼らが最後に頼るのは「信仰」だ。
どうしようもない人間同士の争いの中で宗教的概念は拡大し、宗教国家も生まれる。
自らの命が失われることなど関係ない、彼らにとっての自己犠牲は神の国への近道だ。
そんな南洋同盟の「信仰」の怖さもひしひしと感じられる。
現世に未練など無い彼らは味方を犠牲にし、味方を盾にし、道を切り開く。

自ら戦争における人的資源になる彼らはへたなガンダムよりも恐ろしい。
機体の性能で負けるなら、白兵戦を挑めば良い。
大局のために自らの意思で自らの命を捧げるものほど恐ろしいものはない。

「クローディア」はなぜ南洋同盟へと組みしたのか、
ニュータイプ研究所の存在、ニュータイプの力を利用した「宗教」の存在、
新たなるサイコザクの存在を匂わせて物語が終わってしまう。

総評:絶望の果に行き着く先は…

全体的にみて前編を楽しめた方ならば間違いなく後編も楽しめるようになっている。
時系列的には1年戦争は終わっている、しかし、それでも彼らの戦争は終わらない。
地球という重力に捕われた彼らの戦闘シーンのクォリティは素晴らしく、
「アトラスガンダム」という新機体がでてきても、
あっさりとぼろぼろになってしまう。

私はロボットアニメは「破壊の美学」だとおもっている。
戦闘シーンでどう、そのロボットが壊れるのか。
その見せ方次第でロボットアニメは決まる。
この作品はそんな破壊の美学を惜しみなく、絶え間なく見せ続けてくれる。

キャラクターたちの状況も悲惨だ。
せっかく生き残ったのに、せっかく捕虜から解放されたのに、
彼らの居場所は結局、戦場しか無い。
生き残って精神を壊すもの、生き残って宗教にハマるもの。
戦場に生きる彼らの「精神」を追い詰め、その追い詰めた状況を余すことなく描いている。

惜しむべくはかなり中途半端なところで終わってしまっているところだ。
原作の漫画はまだ続いており、アニメ化も今後、またされるかもしれないが…
果たして…

個人的な感想:続編

個人的に早く続きが見たい作品だ。
2017年以降、本作品のアニメ化についての続報がなく、
続きを見るためには原作を読むしか無い。
だが、できればアニメで続きを見たい。

本当に心の底からそう想ってしまう作品だった。

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