「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」レビュー

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ロボット
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評価 ★★★★★(85点) 全6話

あらすじ 一年戦争末期、地球連邦軍が新型ガンダムを開発しているという情報を掴んだジオン公国軍の特殊部隊「サイクロプス隊」は、機体を奪取すべく北極の連邦軍基地を襲撃する。引用- Wikipedia

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ただの小学生がガンダムの主人公に。

本作品は機動戦士ガンダムシリーズとしては初のOVA作品であり、
現在もご活躍されている声優である浪川大輔さんが
子役時代に主人公として出演した作品だ。
監督は富野由悠季ではなく高山文彦、制作はサンライズ

主人公は小学5年生


引用元:©創通・サンライズ

この作品は「機動戦士ガンダム」という作品の中では異質だ。
なにせ主人公は11歳、小学5年生だ。
強化人間でもなければ武道の達人でもなければニュータイプでもない。
ごくごく普通のサイド6に住む男の子でしか無い。

彼は世界の現状を理解していない。
戦争してるのはジオンと連邦で自分たちには全く関係ない、
戦争は自分とは遠い場所で起こっている出来事だ。
だからこそ彼は「軍人」にあこがれを抱き、家では銃を使ったゲームで遊んでいる。
軍人もモビルスーツは彼にとって戦争の道具ではなく「かっこいい」ものだ。

彼にとって戦争は現実ではない。
学校の近くで連邦とジオンのモビルスーツが戦闘を起こしても実感はない。
目の前で起こっても実感できない。
それどころか「好奇心」で被弾したザクを撮影に行くほどだ。

そこで彼は「バーニィ」と出会う所から物語が始まる。
ただの小学5年生の男の子がどう「ガンダム」のストーリーの
主人公として活躍するのか?
1話や2話の段階では全く判断できないところが面白い部分だ

バーニィ


引用元:©創通・サンライズ

彼は新兵だ、初戦で被弾したところ主人公である「アル」と出会う。
彼はアルの住むサイド6に搬入された連邦の新型ガンダムを
奪取する任務を受けている。

被弾して墜落したところで出会ったアルに
付きまとわれる彼はアルに嘘を付く。
自分が誰かを殺したということ、自分があと1機落とせばエースパイロットだと。
その嘘は「アル」により「バーニィ」に対する憧れを抱かせてしまう。

彼は「バーニィ」にエースパイロットになってほしい。
だからこそ危険を顧みず、いや、
自分が死ぬなんてこと考えることすらできないからこそ無謀な行動をする。
そんな彼の行動に「バーニィ」は巻き込まれる

年の離れた兄弟のような関係性が序盤から中盤までに築かれていく。

クリス


引用元:©創通・サンライズ

バーニィは「アル」の家の隣に住む「クリス」とも出会う。彼女は連邦軍の兵士だ。
本来は敵同士の二人がお互いのホントの正体も知らずに出会う。
クリスはバーニィがジオン軍だとは知らず、バーニィはクリスが
テストパイロットであることも知らない。

この作品がもし全6話でなく2クールや4クールの作品なら
互いの正体に気づくような展開が合ったかもしれない。
だが、二人は最後まで互いの正体を知ることはない。

恋の始まりを予感させるような二人ではあるが、それが結びつことはない。
モビルスーツに乗ってる同士の戦闘だからこそ、互いの正体に気づけない。
もし互いが気づいていれば最後の結末のようにはならなかったかもしれない。
そんな可能性を予感させるだけに、よりこの作品の悲しみが増している。

4話


引用元:©創通・サンライズ

この作品のターニグポイントは4話だ。
連邦軍の施設に見学に来ていた主人公に対し博士が彼に言い放つ
「モビルスーツは必要悪というべきもの、人を幸せにするべきものではない」

主人公である「アル」はモビルスーツを軍人をかっこいいものと思っていた。
彼にとってジオンも連邦も関係なかった。
むしろジオン軍のほうがバーニィが居て、バーニィの仲間も居るから好きだった。
だが、彼の目の前でそんなバーニィの仲間が殺されていく。
初めて自分の前で人が死ぬ光景を彼は目撃する。

4話で彼は戦争に巻き込まれる。
目の前で自分が知ってるジオン軍の兵士と、隣に住む「クリス」が乗る
ガンダムが戦う光景を目の当たりにする。
彼にとって戦争が「現実」になった瞬間だ。

1話の彼は自分からモビルスーツに近づくほどだった。
だが4話の彼は目の前で戦うモビルスーツから逃げ出す。
自分が知ってる人が「亡くなる」ことで彼にとっての戦争は憧れではなくなる

昨日まで遊んでいた公園がなくなり、同じ年齢の子供が死んでいる。
たった1日で少年にとっての平和は崩れ去る。
バーニィも仲間を失いたった一人になってしまう。

真実


引用元:©創通・サンライズ

アルは戦争を知ってもバーニィに対する憧れを捨てられない。
仲間を失い、新兵でもあるバーニィにはどうすることもできず、
クリスマスまでにガンダムを破壊できなければアルの住むコロニーごと
核兵器で破壊されようとしている。

アルはバーニィならガンダムを破壊できると信じている。
だが、無垢な彼にバーニィは真実を明かす。
彼が新兵なこと、1機もモビルスーツを破壊したことがないこと、
アルを「利用」していたことも明かす。

一人で逃げようとし、仲間の仇も取らないバーニィに失望する。
だが、どこかでアルは「バーニィなら」やってくれるんじゃないかという
希望を捨てられない。
そんな中でバーニィは一人、空港へと赴く。

何気ない女性の電話


引用元:©創通・サンライズ

少年の機体を裏切ったまま、惚れた女性をおいたまま、
部隊の無念を引きずったまま彼はバーニィから逃げようとする。
だが、彼は空港のただの女性の電話を聞き自分の本当の気持ちをさらけ出す。

この「何気ない女性の電話」という演出が、憎いまでの演出だ。
女性にとってはただ裏切られ嘘を疲れた彼氏への愚痴の電話でしかない。
だが、そんな彼女の言葉が少年の期待を裏切り
嘘をついたバーニィの心に深く深く突き刺さる。

バーニィの決意する。少年の期待に答えようとする。
無謀でしか無い。だが、そんな無謀な決意に
アルは「大好きだよ、バーニィ」と無垢に答える。

少年にとって彼が本当の憧れのパイロットになった瞬間だ。

ポケットの中の戦争


引用元:©創通・サンライズ

最終話、二人だけで壊れたザクを修理し二人だけでガンダムを壊すために奮闘する。二人だけの小さなジオン軍だ。
バーニィはアルの無垢な期待に軽口をたたき「楽勝」だと。
最後の別れの時にアルはバーニィに言う

「バーニィ、死なないよね?負けないよね?」

戦争の現実を知った彼は分かっていたのかもしれない。
バーニィは死んでしまうかもしれない、核がコロニーに落ちるかもしれない。
目の前で命が失われる光景を目にしたからこその不安だ。
だが、戦いの前にアルは「核」をコロニーへ落とす作戦が中止になった事を知る、
しかしバーニィはそんなことは知らない。仲間の居ない彼には知る由もない。

そして、バーニィはザクでガンダムに挑む。
たった二人のジオン軍で考えた作戦で、たった二人で修理したザクで、
最新の「ガンダム」に挑む。
ガンダムに乗っているのは惚れた「クリス」であることも知らず、
もう戦う必要性がないことも知らずに彼は戦いを挑む。

少年のために、仲間のために、自分のために彼は戦う。
そんなバーニィをアルは必死に止めようとする、だが声は届かない。
何度も彼は叫ぶ

「もう戦わなくて良いんだ」

と。だが、戦いは終わる。
少年の目の前で「相打ち」という形で彼らの戦争は幕を閉じる。
二人の戦いは結末から言えば意味のない行動だったかもしれない、
だが彼らは確かに戦争をした。

バーニィが目の前で死に、クリスが大怪我をおったガンダムから出てくる。
11歳の少年にとって受け止めがたい結果だ。
そんな結果を目の前にしたあとにバーニィからのビデオレターが流れる。
小さな小さなポケットの中で起こった戦争は少年の心に深く刻まれ大きく成長する。

最後の同級生の言葉は彼に突き刺さる

「大丈夫、戦争はまた始まるって」

現実を知って成長したアルと、以前のアルと同じように何も知らない少年。
この対比と成長が見る側に深く突き刺さる作品だ。

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総評:11歳の少年の成長物語


引用元:©創通・サンライズ

全体的に見て完成度の高い作品だ。
全6話、約2時間の中で平和な日常の中で暮らしていた少年が
戦争という事実を目の当たりにし、ジオン軍の兵士であるバーニィとの関わりから
戦争を、命を、現実を知り成長する物語だ。

エースパイロットがいるわけでもない、政治の駆け引きがあるわけでもない。
この作品にあるのは一般市民の少年とただの兵士の物語だ。
特別な存在が居ない作品だからこそ、アルに、バーニィに感情移入し
自然と涙がこぼれてきてしまう。

30年前の作品なだけに作画やキャラクターデザインの古さを感じる部分はあり、
「ガンダム」という作品を期待すると戦闘シーンの少なさは気になる所ではあるが、
機動戦士ガンダムという作品を別角度で、
普通の少年という立場で描かれた名作だ。

個人的な感想:わすれないよ、バーニィ


引用元:©創通・サンライズ

何度見ても終盤の5話と6話は泣いてしまう(苦笑)
何度も見て展開も分かってるのにも関わらず、泣いてしまう。
それほどこの作品で描かれてるストーリーとキャラクターが素晴らしく、
感情を揺さぶられてしまうからだろう。

難しい用語もなく「ガンダム」という作品を全く知らなくても問題ない。
数多くあるガンダムという作品の中でガンダムという作品を
知らない人にも進めやすい作品だ。

今回再レビューにあたり7年ぶりに見たが、それでも泣いてしまった(笑)

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