評価 ★★★☆☆(58点) 全13話
あらすじ 交通事故で命を落としたロボットオタクの日本人、倉田翼は、異世界のエルネスティ・エチェバルリアに転生する。引用- Wikipedia
転生しようともロボット魂は不滅である
原作は小説投稿サイト『小説家になろう』に掲載されたライトノベル。
いわゆる「なろう系」と呼ばれるたぐいのものだ。
監督は山本裕介、制作はエイトビット
見出して感じるのはストーリーのテンポの速さだろう。
天才プログラマーとして企業に務めていた主人公は事故にあい死亡する。
転生したファンタジーの世界である日、前世の記憶が目覚め、
目の前にある「ロボット」に感動する。
彼は前世ではロボットオタクであり、ロボットが現実に存在する世界に転生した事を
喜んだと言う所からストーリーが始まる。
このあらすじのストーリーを描くのにわずか5分しか使っていない(笑)
本来ならAパート丸々使ってもおかしくない内容なのだが、
びっくるするほどサクサクとストーリーが進み、
幼少期だった主人公が9歳になり、1話の後半では12歳まで成長する。
主人公の子供時代のストーリーがかなり圧縮されている。
だからといって悪いわけではない。
サクサクとストーリーが進んでいくさまは面白く、
ベタベタな異世界転生な始まり方ではあるものの、
その王道な始まりから盛り上がるところまで一気に時系列を進めていき、
この作品の「世界観」と「設定」が分かりやすく伝わってくる。
そして出てくるロボット。
この世界におけるロボットは「魔法の力」を動力としている。
昨今のロボットアニメはいわゆるSFであり、ファンタジーな世界観での
ロボットアニメは非常に少ない。
古くはダンバイン、魔法騎士レイアース、天空のエスカフローネといった作品が
「魔法+ロボット」アニメとしての要素を兼ね備えていたが、
ここまでがっつり魔法も出てきてロボットも出てくるアニメは珍しく、
ラノベで「なろう系」という似たような作品が生まれやすい環境だからこそ、
久しぶりに純粋な「魔法+ロボット」要素の楽しめる作品だ。
ロボットのデザインも素晴らしいの一言だ。
無骨を絵に描いたようなカラーリングと濃厚な重厚感、
3DCGで描かれてはいるもののきちんとした演出と、
「機体の傷や汚れ」まできちんと描写しディティールにこだわっているからこそ、
ロボットが歩いているだけでも素直にかっこいい。
そんな前世では乗ることなどできなかったロボット、
憧れ夢見ることしかできなかったロボットに「乗れる世界」に
ロボットオタクな男が「可愛い男の子」として転生する(笑)
前世の記憶があり、プログラマーとしての能力が魔法にも活かせるという、
ラノベ特有な「転生した主人公の高待遇」はあるものの、
主人公のキャラクターがそんな高待遇を感じさせない憎めないキャラクターだ。
なにせ彼はロボットオタクである。というより完全に「俺ら」である。
「専用機最高、カスタマイズ最高」「ロボットを壊して良いのはロボットだけ」と、
可愛い男の子から飛び出すセリフはロボットオタクでしかない。
ロボットを見つめて顔を赤らめ、人的被害よりもロボットの被害でブチ切れる。
初めての戦闘では胸の高鳴りを止められず終始笑顔である(笑)
そんな彼の前世の記憶=ロボットアニメの知識を利用し、
異世界でのロボットがどんどん進化していく。
最初は重く、遅い、重厚感のある昭和なロボットだったのに
終盤では空を飛び高速で戦闘している平成なロボットだ。
作中の中での技術革新が凄まじく、ロボットが出来ていく過程が面白い。
はっきりいって「何処かで見たことのある」ロボットと装備の数々だ。
本来ならパロディ的な要素ともいえるのだが、
この作品においては「主人公の前世の記憶」という要素が、
私達の見てきた「ロボットアニメ」と同じであり、
パロディではなくロボットアニメを知識としてファンタジーの世界で活かしている。
まさに男のロマンである。
ロボット好きの男がロボットを自由に作れる異世界に転生したらどうなるか?
これをそのまま体現しただけとも言えなくはないのだが、
だからこそ面白い(笑)
国王に専用機を用意しろと言われれば「金ピカ」な機体を用意し、
高速で動き回るために「人馬」な機体を作ったり、
出力を求めるために高出力スラスターを搭載してみたりと、
ロボット好きがロボットに求める「ロマン」を試行錯誤していく。
それがこの作品の魅力であり、ある意味全てでもある。
ストーリー自体は魔獣との戦い、国内の権力争い、国家間の戦争と
ファンタジーの世界で「よくある」ストーリーでしか無い。
そんなストーリーを展開しているものの、
主人公は基本的にそんなものは一切興味がない。
「ロボットに乗りたい、専用機がほしい、敵の技術がほしい」
主人公の目的はコレである(苦笑)
もはやロボットアニメにおける変人の博士や開発者みたいなキャラだが、
可愛い男の子な外見だからこそ憎めない。
ただ「人」を殺すことに何の躊躇もないのはいささか気になる所ではあるが、
ロボットアニメにありがちな「葛藤」や「シリアス」な展開はこの作品にはない。
主人公以外の人物が悩み、葛藤し、その中で成長していく過程はあるものの、
主人公の主義は一切ぶれない。
難点を言うならば敵に歯ごたえがなさすぎると言う所だろう。
終盤では敵も強くなるものの、明確に主人公が「負ける」展開はない。
破壊こそロボットのロマンと作中でも主人公は言っていたが、
肝心の主人公機の破壊の描写がほとんどなく、そのロマンを味あわせてくれない。
あくまでも「なろう系」であり「俺TUEEE」な作品であることに
変わりがないのは残念だ。
総評
全体的に見てノーストレスで楽しめるファンタジーロボットアニメだ。
ロボットオタクがロボットを作れる異世界に転生したらどうなるか?という
主軸を画きつつも王道なファンタジーストーリーを描写し、
徐々に進化していくロボットの制作の過程と戦闘シーンを味わえる、
ロボットアニメ好きならば楽しめる作品といえるだろう。
その反面でテンポの早すぎるストーリー展開は、
極端に言ってしまうと「総集編」を見ているような気分になる。
ナレーションで時系列がどんどん進んだり、戦闘シーンも尺が短かったり、
やや全体的に「物足りなさ」を感じる部分が多く、
テンポを重視したのは悪くはないと思うのだが、サクサク進みすぎている感じが強い
ロボットのデザインの素晴らしさ、戦闘シーンの面白さがあるからこそ、
欠点に感じにくいものの、ロボットの作画に比べキャラの作画はやや不安定であり、
魅力的なキャラクターは多いのに、キャラの魅力を感じられるシーンが少ない。
ロボットアニメ特有のいわゆる「人間ドラマ」のようなものを求めてしまうと、
拍子抜けしてしまうだろう。
ストーリーの密度は総集編かと思うほど詰め込まれており、
1クールでこれだけの内容を詰め込んでいるストーリー構成は賞賛したい反面で、
もう少しじっくりと見たかったと思う部分も出てしまっていた。
良い意味でも悪い意味でも「ライトノベル」らしく
「なろう系」らしい部分が出てしまっており、
それが最近のアニメらしい良さでもあり悪さでもある。
簡単に言ってしまえば全てにおいて「軽い」ノリで進んでいくのを
受け止められるかどうかで、この作品の印象は違ってくるだろう。
個人的な感想
個人的にはロボットアニメのロマンをアニメの中で描写しているのは
面白いなと素直に思ってしまった。
特に最初の主人公の戦闘シーンなど見ていて「ワクワク」してしまい、
魔法という要素もうまく使っていた。
ただ終盤になると魔法の要素が「動力源」でしかなく、
技術革新があまりにも早くて、もう少し序盤から中盤くらいのロボットでの
戦闘シーンが見たかったとも思ってしまった。
売上的には3500枚前後とやや物足りない。
作品全体のどこか物足りない感じが売上にも響いてしまった感じだろう。
個々まで速いテンポではなくじっくりと細かいエピソードも交えつつ、
2クールくらいでガッツリ見たかった作品だった。
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