ロボット

気持ち悪い…「想星のアクエリオン Myth of Emotions」レビュー

1.0
想星のアクエリオン Myth of Emotions ロボット
画像引用元:©2023 SHOJI KAWAMORI,SATELIGHT/Project AQUARION MOE
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評価 ★☆☆☆☆(18点) 全12話

TVアニメ『想星のアクエリオン Myth of Emotions』本PV|2025年1月TOKYO MXほか放送開始

あらすじ 「思い出して、翅(はね)があったころのことを」1万2千年前の想いに応え、繋がったのは欠けたこころ。太陽と月と火星が出会うとき、新たな合体の調べが流れる引用- Wikipedia

気持ち悪い…

本作品はアクエリオンシリーズとしては4作品目の作品となる。
監督は糸曽賢志、制作はサテライト

謎ポエム

1話冒頭から謎ポエムで始まる。
長々とやっているが要約すると、
この世界が始まる前に夢見るものという存在が
世界のすべてを夢見ることを願い夢を見続けていたら石になってしまい、
最終的には卵になった。

この時点でよくわからない。
おなじみの曲のOPがおわると、今度は誰か知らない学生の葬式が
行われており、陰鬱とした空気が流れている。

カートゥン調のキャラクターデザインもかなりクセがあり、
それだけでなくやたら頻繁なカット割りでシーンを構成しており、
どこか違和感のあるアニメーションになっている。

そんな違和感を感じていると「宇宙保全機構」なるものが、
江の島に特別な学園を作っており、主人公たちはそこに通っている。
そうかとおもえば「陰謀論」をつぶやくモブがでてくる。

1話の時点から散らかった部屋にぶち込まれたような感覚になり、
1話の段階でキャラクターもドバドバ出てきて
やたら陰鬱な空気のせいでキャッチーさが一切ない。

死んだ生徒の名前は「サヨ」という名前らしいのだが、
葬式が終わったのにさらっと再登場する。
死んだキャラがなんの前触れもなくあらわれ
「みんなエレメントクラス頑張ろうね!」と言ってくる。

死んだはずなのに普通に主人公たちの横に立っており、
「神話宇宙」からやってくる敵とたたかうメンバーに選ばれる。
もうなにもかもわからない(苦笑)

実写アニマティクス

本作品はどうやら「実写アニマティクス」という
謎技術で作られているアニメだ。
公式サイトでの説明を軽く抜粋すると

「本作では絵コンテではなく、
実写映像を使用したVコンテ(=ビデオコンテ)で制作となりました。」

本来は絵コンテを作りアニメーションを創るが、
その絵コンテを実写映像を用いて作られている。
ロトスコープに近いやり方ではあるが、
ロトスコープほど実写をそのまま取り込んでいないという感じだ。

おそらくそのせいなのだろう。
頻繁なカット割りもそうだが、ただキャラクターが棒立ちで
淡々とキャラクターが会話しているようなシーンも多い。
実写マニアティクスという技術に挑戦したのはわかるが、
その技術が面白さに繋がっていない。

エヴァの呪い

話自体もわけがわからないのに、アニメーションも
見ていてシンプルにつまらないシーンが多く、
意味深なセリフを意味深に描き、いわゆる考察アニメを
やりたいのはわかるが、多くの考察アニメが犯したミスを
同じようにやってしまっている。

新世紀エヴァンゲリオン以降、この手の考察アニメは増えた。
エヴァの呪いに視聴者だけでなく制作側もかかってしまった結果、
2000年代前半にはそういう作品が非常に増えた流れがある。

だが、その手の作品の多くは新世紀エヴァンゲリオンが
1話や序盤の時点ではわかりにくいロボットアニメではなかったことを
わかっておらず、ただただ意味深な謎や専門用語を並べ奉り、
それっぽい雰囲気だけのアニメにしてしまっている。

公式サイトやガイドブック、アニメ本編では描かれてない部分を
調べ、考察することで初めて物語がわかるようになったり、
もしくは「分かった気になれる」アニメが多かった。
創聖のアクエリオンもそれに近いものがあったが、
創聖のアクエリオンにはそれを上回るキャッチーさがあった。

しかし、この作品にはない。
ただただわけのわからない状況の中で、
面白みにかけるアニメーションで見せられている。

宇宙保全機構という組織は「予言書」に従い、
神話宇宙からの敵との戦いに備えており、
生態コンピュータである「ディーバ」というものが主人公を含む
3人のパイロットを選び、神話宇宙との戦いに巻き込まれてしまう。

1話の段階から戦闘シーンもつまらない。
唐突に敵が現れ、唐突に戦闘が始まり、
3機の戦闘機で淡々と「触手を出す球体」と戦っていたかと思えば、
膿に墜落し、謎の声が聞こえてきたかと思えばアクエリオンが出てくる。

アクエリオンといえば「合体ロボット」なのだが、
その合体シーンを1話で見せないためまったくもって盛り上がらない。
これで2クールのアニメなら、ゆっくりとした見せ方として
飲み込めなくはないが、この作品は1クールだ。

昨今では3話切りどころか1話切りする視聴者も多い。
この作品の1話を見ると多くの視聴者が1話で見るのを
辞めてしまっただろうなと、ものすごく感じてしまう。

気持ち悪い…

創生のアクエリオンも天使や前世など分かりづらい部分はあるものの、
熱血タイプの主人公を中心に勢いがあり、
「気持ちいい!」などのセリフや必殺技に爽快感があった。

しかし、この作品は合体した瞬間に「気持ち悪い…」というセリフを吐く。
他者と合体することの気持ち悪さ、他者の心に触れる、
精神がつながることへの拒絶からの言葉だ。
このあたりから相当エヴァも意識していることがわかる。

2話ではアクエリオンによる戦闘シーンが描かれるのだが、
これが本当につまらない。
パンチして「やった!2倍パンチだ!」という謎セリフをはき、
そのあと「3倍キック」をして敵が撤退し終わる。

アクエリオンの初登場、初戦闘シーンが
適当にパンチをしてキックをしただけだ。
爽快感というのがまるでない。
アクエリオン、ロボットの動きものっそりとしている。

エヴァを意識しまくったストーリーも壊滅的であり、
江の島学園に集められた特別な生徒こと選ばれし子供たち、
ラーカル文書という名の死海文書、宇宙保全機構という名のネルフ、
宇宙保全機構の裏にいる声しかでてこない世界覚醒会議という名のゼーレ。
ディーバという名のMAGI、神話宇宙からの侵略者堕天使族という名の使徒。

もう設定がエヴァからもってきてることがわかりやすい。
ちなみに世界覚醒会議は全人類を精神の牢獄から
「覚醒」させようとしている、人類補完計画である(苦笑)
アクエリオンの合体のためにはマナゲージが高まらなければならず、
これもまたエヴァにおけるシンクロ率だ。
あまりにも露骨すぎて少し笑ってしまうほどだ。

この世界はかつて2つに別れたようで、それが合体しようとしている。
合体した結果、大きい方に吸収されるため、
堕天翅族は自らの世界の領域を広げようとしている。
このあたりは形を変えているものの、
つまりセカンドインパクトを防ごうという話だ。

死んだはずのサヨも「宇宙の修正能力」とやらで
生きてるのか死んでるのかよくわからない状態にされている。
こういう説明セリフが淡々と描かれ、
それが終わるとつまらない戦闘シーンが描かれたとおもったら
サヨがまた死ぬ(苦笑)

考察すれば2つの宇宙が合体しそうになってる中で
「宇宙の修正能力」とやらが働いた結果、時間軸すら前後している。
2話の戦闘でサヨが死ぬが、宇宙の修正能力の影響で
葬式が先に行われ、生きてるのか死んでるのかわからない状態になっている。
記憶すらおかしなことになっている。

そういったことを描きたいのはわかるが、
意味不明な中で「無限絶望パンチ」という技が
つまらない演出とともに描かれる。
なぜかアメコミ的なエフェクトがあるのだが、
これも効果的に作用していない。

その瞬間に主人公の背後に「成人男性」が現れる。
アクエリオンにおける「前世要素」だ

前世

サヨが読んでいた本を開くと急にリアルなPS3くらいの
フルCGのキャラクターがでてくる。羽の生えた天使たち、前世の記憶だ。
ただ、これも断片的にしか描かれないため、
キャラクターたち以上に見ている側も意味不明だ。

アクエリオンのパイロットに選ばれている存在は
「なにか」が欠けてている。感情の一部が欠けた存在である。
つまりはエヴァにおけるロストマザーチルドレンだ。
堕天使たちはこちらの世界に侵入し
「杭」をうつことで領域を広げようとしている。

戦うことが目的ではなく領域を広げるのが目的であり、
だからこそ戦闘シーンがつまらない。
せっかく必殺技を使っても防がれて、
敵は杭を打って逃げるみたいな盛り上がらない戦闘シーンが多い

すっきりと勝つという戦闘シーンがほぼ無い中で
ストーリーが淡々と進んでしまう。
断片的に前世のシーンが描かれるが、
断片的でしか無いせいもあって「髪色」で
誰の前世かようやく把握できる感じだ。

その前世がわかったところで面白くなるわけでもなく、
「ふぅーん」という感情しか浮かび上がらないうえに、
前世の時系列もバラバラなため余計に分かりづらさを生んでいる。

この前世のやたらバタ臭いフルCGの姿も
好みが分かれる要素になっており、
今世がカートゥン調なのに前世がフルCGという
デザインの変化も効果的に作用してるとは言えない。

カヲルくん

5話になるとピアノを引いて「転校生」が現れる。
意味深でポエミーなセリフを吐く新キャラだ。
もう露骨に渚カヲルだ、エヴァから色々な設定を持ってくるのはいいが
その設定の持って生き方があまりにも下手すぎる。

カヲルくんならぬ転校生は「世界覚醒会議」が絡んでいる始末で、
そうかと思えば「サヨ」の妹が転校生としてやってくるかとおもえば、
カヲルくんことサンとメインヒロインである「モモヒメ」が合体しようとし、
サヨの妹は暗殺者としてモモヒメを殺そうとしている。

もう状況自体もわけがわからないのに、
露骨なエヴァパロディを詰め込んでくるせいで
頭がぐちゃぐちゃになる感覚だ。
サンによって生徒たちも江の島の人たちも徐々におかしくなり、
夢の世界へと誘われだす。

ストーリー的には色々と気になる部分はあるものの、
相変わらず戦闘シーンは盛り上がらない。
敵の姿が徐々にアクエリオンのような人の形に近づき、
動きの面での面白みは生まれてくるものの、
相変わらずスッキリとした戦闘シーンはない。

特に中盤以降になると「敵の声」も聞こえだし、
敵を殺すかどうか迷い出し始めるキャラも現れるため、
アニメーション的にもストーリー的にも
スッキリとしない戦闘シーンばかりになってしまう。

アクエリオンのCGのクォリティ、必殺技のシーンは悪くないのだが、
そこに至るまでの過程のアクションがやぼったく、
かといって必殺技をうってスッキリ終わるわけでもない。

エヴァのパロディ、考察させたいストーリーよりも、
ロボットアニメとして致命的なまでに
戦闘シーンがつまらず、キャラの魅力も欠けているせいで、
「考察」したくなる魅力がない。

終盤

終盤の慌ただしさは凄まじく、もう1つの世界に行ったと思ったら
戻ってきて、サヨの妹によりモモヒメが殺され、
あと72時間で2つの宇宙が合体が行われることがわかり、
更にモモヒメもサヨと同じく宇宙の修正能力により
時系列が変わり、生き返る。

主人公たちの世界が勝利する、その結果のためには
モモヒメが犠牲になる必要がある。
そういったセカイ系的なストーリーなのはわかるが、
色々な謎や前世などがポンポンポンポンでてきて
それを整理するにの必死だ。かなり詰め込んだ終盤だ。

人造アクエリオンや、ゼウスの杖という謎の兵器や
方舟というものもでてきたり、
モモヒメが敵に捕らわれたりともうぐちゃぐちゃだ。
ただ、これもエヴァに置き換えるとわかりやすい。

ゼウスの杖はロンギヌスの槍的なものだ。
これによって敵を倒すことはできるが地球も破壊され人類はほぼ
滅亡するが、方舟に人類の「データ」を保存し、AIとして生き返る。
不完全な有限の命を持つ人類ではなく、データとしてAIとして
完全な無限の命を持つ人類になる、人類補完計画だ。

ゼウスの杖によりモモヒメと合体した敵も倒されたかのように見えたものの、
1万年と2千年前に女神と融合していたモモヒメによって
それを拒否されるものの、セカンドインパクトを止められない。

モモヒメも殺されてしまうものの、主人公はそんな世界を望まず、
感情の力を増幅させたアクエリオンの力によって
「宇宙そのものを修正」するパンチを放ち、モモヒメが助かり、
2つの宇宙が合体しなかった世界を生み出す。

そういう展開をやりたいのはわかるが、
この内容を最終話の1話に詰め込みまくっており、
非常にゴチャゴチャしており、わかりにくく、
すっきりとしない「気持ち悪い」ラストになってしまっていた。

総評:エヴァが残した00年代の呪物

全体的に見てアクエリオンらしさがない作品だった。
創聖のアクエリオンも前世などのわかりにくい設定はあったものの、
それを上回る主人公の熱血さやバカバカしい必殺技、
気持ちいい!というキャッチーなフレーズやキャラの魅力があり、
勢いとあつさがあったからこそヒットした作品だった。

しかし、この作品にはそれがないどころか、ほとんどエヴァだ。
前世などの設定、アクエリオンの存在があるからこそ、
まだアクエリオンというシリーズの作品としての形を
ギリギリ保ってはいるものの、ただ言葉を置き換えただけで
エヴァから持ってきた設定があまりにも多い。

しかもその設定を使いこなせてるとはいいがたく、
1クールと言う尺では説明もしきれていない。
特に最終話はひどく、1回見ただけだと納得できない、
理解しきれない展開が山のように起こっている。

戦闘シーンのつまらなさ、盛り上がりの無さも異様だ。
アクエリオンといえば戦闘シーンの魅力も合って然りなのだが、
この作品にはそれがない、必殺技をうっても締まらず、
撤退してばかりの敵にたいして面白みの薄いアニメーションで
だらっと締まりの無い戦闘シーンを描いている。

最終話でもそれは変わらない、主人公たちはろくに戦わず、
ぽっとでの奥山くんという謎のキャラのほうが戦ってるくらいだ。
結局、主人公たちが誰と戦って今なにをしているのか、
それが分かりづらい中で戦闘シーンも盛り上がりに欠けてしまっており、
最期の技ですら無限パンチが伸びるだけで特に面白みがない。

日常シーンのアニメ自体も実写マニアティクスという
謎技術を活かしきれておらず、アニメーション的な面白さがなく、
それと相まって話の分かりづらさもあり、楽しみにくい。

結局最初から最後までなんとなく話しは理解できるものの、
完璧に理解するためには何度見て考察しなければならないのだが、
そうするだけの最低限の面白さがない。

00年代初期にはこういった作品が多かったが、
まさか2025年になってもエヴァの呪縛に囚われたアニメ、
しかも、アクエリオンシリーズで見ることになるとは思っても見なかったが、
なんとも言えない感覚だけが残る作品だった。

個人的な感想:サテライト

今のサテライトの実力というものも感じてしまう作品だった。
近年、サテライトから多くのスタッフが抜け独立してアニメ制作会社を
立ち上げている。

GoHands、エイトビット、つむぎ秋田アニメLab、
スタジオKAI、このあたりの制作会社に多くの人材が流れた結果が
今作品なのだろう。
つまり、かつてのサテライトのような、かつてのアクエリオンのような
アニメを作れなくなっているように感じる作品だ。

新作のマクロスがサテライトからサンライズ制作に
変わったことも納得できる、
今のサテライトにマクロスを創ることはできず、
なんとかアクエリオンだけでも作ろうとした結果なのが
本作品なのだろう。

結果的にエヴァみたいななにかが出来上がった。
サテライトの今後が不安になる作品だった。

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