評価 ★☆☆☆☆(15点) 全122分
あらすじ あやかしと人間が共存する世界。優れた容姿と能力で人々を魅了するあやかしたちは、時に人間の中から花嫁を選ぶ。あやかしの中で最も強く美しい「鬼」の花嫁に選ばれることは、最高の名誉とされていた引用- Wikipedia
原作要素1割の魔改造実写映画
原作は漫画の本作品。
監督は池田千尋。
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この映画、原作を実写化した作品だと思って見ると、開始5分で混乱する。
知らない特区、知らない三大勢力、知らない設定。
私が見た「鬼の花嫁」と同じなのは、キャラクターの名前くらいだ。
私はこの映画を見る前にアニメ版を見ている。
アニメ版もカットされている部分はあれど、基本的には原作準拠だ。
しかし、映画はいきなり「あやかし特区」という聞いたことのない言葉から始まる。
人間とあやかしが共存している世界なのは変わらないが、
その「あやかし」の中でも三大勢力があるという謎の設定が出てくる。
鬼が最も強いあやかしではあるものの、
妖狐や烏天狗なども存在し、鬼の座を狙っているという謎の要素まで追加されている。
映画が始まって5分も経たないうちに、
「原作、改変します!」という意思を見せつけられている。
暗い
この作品は、邦画特有のバカみたいに暗い画作りを常に行っている。
「あやかし」たちの集まりですら、
「電気つけろよ」と突っ込んでしまうほど暗い。
常に画面を暗くすることで「絵」をごまかしているようにすら見える。
電気をつけて明るくしてしまえば、安っぽさが見えてしまうからだろうか。
背景や美術に予算をかけられない。
だからバカみたいに暗くして見えなくしてしまえば、
安っぽさも目立ちにくくなる。
邦画でたびたび見るごまかし方だ。
どんなシーンでも常に暗く、
どんなシーンでも常にボソボソとしゃべる。
役者によっては滑舌の問題もあり、セリフすら聞き取りづらい。
暗い画面、ボソボソ演技。
邦画でよく指摘される欠点が、これでもかというほど出ている。
カメラワーク
カメラワークも駄目だ。
ただしゃべっているだけなのに無駄にカメラを揺らし、
見ている側を酔わせてくる。
微妙に左右へ手ブレし続けるカメラは最悪でしかなく、
手ブレ補正をあえて切って撮影しているのかと思うほどブレブレだ。
何の意図でここまでカメラを揺らしているのかが分からない。
画面は暗い、役者はボソボソしゃべる、
そのうえカメラまでブレる。
映像作品として見づらさの三重苦だ。
主人公
妹があやかしの花嫁になり、
主人公は自分を特別ではない存在だと思っている。
無駄に豪華な家で、
花婿である妖狐から「金のゴルフクラブ」をもらって喜ぶ両親など、
妙にアホっぽい描写まで追加されている。
原作やアニメもツッコミどころが凄まじい作品だったが、
実写化したことで安っぽさまで加わり、
ツッコミどころがさらに増している。
もともと整合性に問題のある原作をゴリゴリに改変した結果、
整合性が良くなるどころか、さらに悪化してしまった印象だ。
原作改変要素も多すぎる。
原作では高校生だった主人公が大学生になっており、
妹の花婿は妹に絶対という感じだったが、
実写では妹が「ショートカット」にすることすら拒否している。
主人公はろくに誕生日を祝われたことがないという設定のはずだったのに、
普通に友達から誕生日を祝ってもらい、高いプレゼントまでもらっている。
そして、そのプレゼントを妹に奪われる。
原作やアニメでは、
祖父母からもらった大切な服を妹に取られるという展開だったが、
そんな設定すら意味もなく変更されている。
ちなみに祖父母そのものが出てこない。
妹とのいざこざの中で妖狐が主人公の右腕を燃やすというのは、
原作やアニメにもあったシーンではあるが、
その場面で妹と両親が主人公を心配している(苦笑)。
この両親と妹は、主人公を心配するようなキャラクターではない。
何もかもが改変祭だ。
ビビビビ!
家を飛び出した主人公を鬼が見かける。
その瞬間、分かりやすく
「ビビビビ!」
という電流のような音が鳴り胸を抑える(笑)。
あやかしは人間の女性から花嫁を見出す。
それは本能であり、運命の相手だ。
理由もなくビビッときたら惚れているという設定なのだが、
その「ビビッ」をわざわざ効果音にするのが究極に安っぽい。
主人公は鬼と出会い、右腕を治してもらう。
ここまでは原作通りの展開なのだが、
なぜか「癒しの霊力」という概念が急に出てくる。
癒しの霊力には代償が必要で、
場合によってはあやかしの命すら奪う。
後の展開を作るためだけに、
原作にはない「癒しの霊力」という設定を盛り込む。
この時点で、
原作を実写化するというより、
原作を材料に別の話を作ろうとしているように見えてしまう。
衣装
衣装も独自性を出そうとして、よく分からないことになっている。
原作やアニメでは、キャラクターがそこまで奇抜な服を着ているわけではない。
しかし実写では、メイドたちは黒ずくめで変な耳をつけており、
主人公も黒い服に帯だけをつけた、
洋装なのか和装なのかよく分からないバグった衣装を着ている。
世界観や雰囲気を作ろうとしているのは分かる。
ただ、鬼が両腕と背中に家紋の入ったスーツを着ていたりと、
尖りすぎた服が多すぎて、逆にノイズにしかなっていない。
「あやかし」という用語に引っ張られて和装にするのはまだ分かる。
しかし和装だけでなく、
顔に縄をくくりつけてセルフSMプレイしているような人物までいる。
謎すぎる服飾デザインばかりで戸惑ってしまう。
主人公が花嫁に選ばれたことで鬼の一族は騒ぎ出し、
「長老」という、
これまた原作やアニメには存在しない謎の老人たちまで登場して反対し始める。
鬼
原作やアニメでは、鬼こと「鬼龍院玲夜」はクールで冷静なキャラクターだ。
主人公にだけは甘いものの、その甘さを見せながらも基本的にはクール。
しかし、実写ではそのキャラクター性すらブレている。
主人公に対して焦ったり、戸惑ったり、慌てたりと、
感情を大爆発させている。
「鬼龍院玲夜」というキャラクターでさえブレまくりだ。
まともに原作を読んだのか?と思うほど、
この作品は「鬼の花嫁」でありながら「鬼の花嫁」ではない。
まったくもってクールではなく、
少年のような笑みを浮かべる「鬼龍院玲夜」など、
私の知っている「鬼龍院玲夜」ではない。
実写版は、ただの永瀬廉に見えてしまう。
ナヨナヨしていて、
鬼龍院玲夜というキャラクターを演じきれていない。
ただし、これは永瀬廉さん本人だけの問題ではないだろう。
そもそもの脚本が、鬼龍院玲夜という人物を、
「鬼の花嫁」という作品を理解しているように見えない。
主人公の運命を変えてしまったことを悩んだり、一緒に料理をしたりと、
鬼龍院玲夜らしさがまるでない。
ここまで来ると、「鬼の花嫁」が原作というより、
原案と言ったほうが近いくらいだ。
21個
原作やアニメでは、18歳のときに鬼と主人公が出会う。
そして鬼が、18歳までの誕生日プレゼントを18個渡す。
1歳なら1歳にふさわしいプレゼント、
2歳なら2歳にふさわしいプレゼント……という、
なかなかの激キモイベントだ。
しかし、この作品では年齢設定を大学生に変えている。
その結果、プレゼントの数まで増えている。
原作のキモさに、さらに3つ足されている。
こうした原作のエピソードを一応消化しているのは中盤くらいまでだ。
もっとも、そこまでの時点ですでに改変しまくっているのだが、
中盤以降はほぼオリジナル作品に近くなっていく。
主人公をお披露目するため、
舞踏会へ参加することになる。
原作の原案とも言える「シンデレラ」に近い内容だ。
改変
妹は主人公を逆恨みし、妹の花婿である妖狐は、
主人公と妹の両親に術をかけて操ったりもする。
どうでもいい舞踏会の練習シーンなども描かれながら、
主人公はあっさりと鬼の花嫁になる決意をする。
原作からの問題点でもあった、
「主人公が子供の頃から、なぜか妹より両親からの扱いが悪い」
という部分を薄め、妹がすべてを奪われた結果として逆恨みするなど、
ある程度は原作の整合性のなさをカバーしようとしたのだろう。
そこだけなら、改変する意図もまだ理解できる。
ところが、その直後、主人公が花嫁を辞退すると言い出す。
妹との会話で妹をかわいそうに思ったからなのかもしれないが、
あまりにも唐突すぎる。
そして辞退すると言ったかと思えば、また考え直す。
鬼に告白しようとした矢先、妖狐によって殺される(苦笑)。
もう原作どこ行った。
癒しの霊力
もうお分かりいただけるだろう。
ここで出てくるのが、序盤で追加された「癒しの霊力」である。
妖狐によってぶっ殺された主人公を救うため、
鬼は禁断の癒しの霊力を使う。
その結果、鬼は霊力を失ってしまう。
妖狐の主によって妖狐も妹も罰を受け、
最後は二人が幸せなキスをして終了だ。
びっくりするくらいチープな展開だ。
鬼が霊力を失い、運命や本能ではなく、
二人が自分の意思で恋に落ちて生きていく。
そういう展開にしたかったのは分かる。
ただ、霊力を失った鬼がその後どうなるのか。
鬼の座を狙っていた烏天狗は、
あれだけ設定として出しておきながら何もしない。
序盤に大量追加された設定が、終盤ではまともに回収されない。
原作やアニメもツッコミどころの多い作品だった。
しかし、その原作を大幅に改変した結果、
別方向のツッコミどころがさらに増えている。
総評:原作をこっぱみじんにしてみました
全体的に見て、酷すぎる作品だ。
「だから邦画は駄目」
「だから実写化は駄目」
そう言われてしまう典型のような作品になっている。
暗すぎる画面、ボソボソとした演技、無駄に揺れるカメラ。
そして何より、原作の要素が1割くらいしか残っていないんじゃないかと
思うほどの、大量の原作改変とオリジナル要素。
制作側には、原作が一度こっぱみじんになった状態で渡されたのだろうか。
そう思いたくなるほど、原作の内容が欠けており、
その隙間をオリジナル要素で無理やり埋めている。
そんな事情でもなければ説明できないほどの大改変具合で、
笑うことすらできない。
結果として、原作を大きく改変してまで、
人気俳優やアイドルを前面に押し出した作品に見えてしまう。
原作自体にも色々と問題のある作品ではある。
しかし、それ以前の問題だ。
原作として借り受けている以上、
原作を木っ端微塵にするような改変を行えば、
当然、原作ファンから反発される。
この映画は、なぜ「実写化」が嫌われることがあるのか。
その理由を凝縮したような作品だった。
個人的な感想:酷い
アニメ版は、1周回って楽しめるトンチキな作品だった。
だからこそ実写版でも、そのトンチキさを楽しめるのではないかと期待していた。
しかし、待っていたのは大きな裏切りだった。
アニメ版は、整合性が壊れているから笑えた。
実写版は、原作を壊してまで整合性を作ろうとして、
別のところまで全部壊した。
同じ「鬼の花嫁」なのに、壊れ方の質がまるで違う。
男女の恋愛モノの原作が、人気俳優やアイドルを起用するための素材として
扱われているように感じてしまう作品は、
昔から何度も作られてきた。
その構造が変わらない限り、
同じような失敗はこれからも繰り返されるのだろう。
本当に残念だ。



