「クジラの子らは砂上に歌う」レビュー

2018年1月10日

評価 ★☆☆☆☆(20点) 全12話

あらすじ 砂がすべてを覆い尽くす世界。砂の海に浮かぶ巨大な漂泊船“泥クジラ”では、感情を発動源とする超能力“情念動(サイミア)”を持つ「印(シルシ)」と呼ばれる人々と、能力を持たない「無印(むいん)」と呼ばれる人々が共に暮らしていた引用- Wikipedia

どんなに面白い作品も引き伸ばしすぎれば駄作

原作はミステリーボニータで連載中の漫画作品。
監督はイシグロキョウヘイ、制作はJ.C.STAFF。

見出して感じるのは強烈な質アニメ感だろう。
この作品の世界はタイトル通り「砂」の海に覆われた世界であり、
主人公たちは砂の上に浮かぶ泥で出来た船に住んでいる。
そんな世界観の中で「葬儀」のシーンから始まり、
常に主人公の記録と言う名の独白でナレーションがつく
クジラの子らは砂上に歌う

この世界観からも分かるようにやや「ナウシカ」っぽい世界だ。
細かく描き込まれた背景は作品の世界観づくりに役立っており、
ジブリっぽさを醸し出す空気を感じさせる。
だがジブリな世界観と違うのは超能力が使える人間が居るということだろう。

主人公たちが暮らす場所には「サイミア」と呼ばれる能力を使える人間が9割、
だが、その反面で30歳位で死んでしまうほど短命であり、
逆に超能力を使えない1割の人間は1割しか居ないが重要な役職につき長命だ。
主人公は当然、サイミアを使える人間であり、
「少女」と出会うことで物語が始まる。
クジラの子らは砂上に歌う

この序盤の展開は王道かつ広大な世界観と設定を感じさせる作品だ。
まるで重厚な古き良きファンタジーな話が始まるような、
ベタではあるが王道でストレートな面白さを感じさせてくれるような、
そんな「期待感」を強く強く感じさせる。

だが、世界観や設定は素晴らしいのにストーリーが微妙だ。
3話では唐突に敵による無慈悲な虐殺が始まり、
せっかく1話や2話で掘り下げていたキャラもあっけないほどあっさりと殺す。
序盤で出たキャラクターの6割位は終盤では居ない。
登場人物の数は多いのだがあっけなく死んでしまうキャラクターがあまりにも多い。
クジラの子らは砂上に歌う

主人公が仲良く平和に暮らしていたのに唐突に巻き起こる悲劇!という
シリアスな展開であることは分かるのだが、
あまりにも唐突かつ無慈悲な虐殺は悲壮感よりも
「あ、そういう展開になっちゃうんだ?」というような拍子ぬけな感じだ。

キャラクターが死ぬと、人数合わせのように新しいキャラも出てくる。
だが序盤から同じ場所に居たはずなのに
まるでどっかから降って湧いてきたかのように唐突に出てくるため、
「あの虐殺のときにこのキャラは一体どこにいいたんだ?」という違和感が生まれる。
特に虐殺の後に強いキャラが2名ほど出てくるので余計にそう感じる

新しいキャラが出てきても結局死ぬ。
「あ、こいつ死ぬな」というキャラが予想通りに死んでも特に何の感情もわかない。
予定調和が酷く、見せ方も悪い。
クジラの子らは砂上に歌う

敵がいつでもこちらのキャラクターの止めを刺せる状況なのに、
脚とか腕とかを切りつけて、なかなかとどめを刺さず、
結局、不意打ちを食らって敵側があっさり殺される展開などバカバカしすぎる。
引き伸ばさなくていいシーンを無駄に引き伸ばしてしまっているため、
本来は原作では違和感がないであろうシーンも違和感が生まれてしまっている。

ある程度、掘り下げたキャラクターが死ぬと心理描写が無駄に長い。
キャラクターの精神世界的な場所に行き、そのキャラがどう思ってたかなどを
永遠と語られるのだが、正直グダグダだ。
クジラの子らは砂上に歌う

逆に「明らかに死んだ」と思ったキャラクターが生きていたりする。
切られたし、矢も刺さって、明らかに死んだような雰囲気だったのに、
遠く離れた国で実は生きていたする展開など
「あの状況でどうやって帰ったんだ?」と思ってしまうほど意味不明な展開だ。

ストーリー的にも結局中途半端で終わる。
名前も覚えていないようなキャラがイキった結果、内輪もめが始まり、
俺たちの旅はこれからだ!みたいな感じで終わってしまった。
クジラの子らは砂上に歌う

総評

全体的に見て演出とストーリー構成の悪さが響いている。
引き伸ばさなくても良いシーンを無駄に引き伸ばし、
丁寧すぎる描写でグダグダになってしまっており、
キャラクターの生死を分けるようなシーンなのに見ている側が
「さっさと止めさせ」と思ってしまうほど間延びしまくっている。

唐突に歌いだすキャラが居たり、
「殺されるくらいなら全員で死のう」としたり、
キャラクターの行動や言動がいまいちしっくりと来ない場合も多い。
間延びしすぎたせいでそういったキャラの違和感がどんどんと強まってしまい、
話が進めば進むほど見る側の熱量が冷めていくのを感じる作品だ。

原作からの欠点ももちろんあるのだろう。
だが、同じシーンでも漫画という媒体で読めば面白いんだろうなと感じる部分も多く、
非常にもったいない。
単純にアニメーションとしての描写に失敗している。
クジラの子らは砂上に歌う

個人的な感想

個人的には1話の期待感は良かったのだが、
その期待感だけで終わってしまった。
原作で言えば序章くらいの話を1クールかけてたっぷり描いてるのかもしれないが、
正直、この間延びしまくりなストーリー構成は失敗としか言えないだろう。

売上はまだ正確な枚数は出ていないが、
Amazonランキングからの予測だと爆死に近い売上のようだ。
TVアニメではなく劇場版で第一部として作れば報われたかもしれないだけに、
残念な作品だった。

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