蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-

評価/★★★★☆(61点)

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フル3DCGで描かれたキャラクターはここまで可愛くなった

原作はヤングキングアワーズで連載中の漫画作品。
アニメは場人物を含め、作中の動く物体はほぼフル3DCGで制作されている作品だ
そのため、通常のアニメ作品に比べ制作費が少ない

基本的なストーリーはSFアクション。
近未来の地球、温暖化の影響で海上の領域が広がる中、
謎の超兵器を搭載した第二次世界大戦時の軍艦群が出現した。
人類が制海権を失う中で、人類側についた“霧の艦隊”の潜水艦・イ401に乗り込んで
闘うことになるというところかストーリーが始まる。

見だして感じるのは人物の作画だろう。
前述したように基本的にフル3DCGで描かれているため人物が分かりやすく「CG」だ
特にメインではない、いわゆるモブキャラの作画はいかにもCGという印象がある。
表情も非常に固く、メインキャラのデザインも「微妙」な印象がある。
女性キャラクターのデザインは可愛らしくなっているが、
男性キャラクターのデザインはフル3DCGのキャラデザの欠点である「尖った」感じが強く出ている
その一方で「艦隊」の描写は素晴らしい。

フル3DCGは手描きのアニメに比べて「軽さ」を感じることが欠点でもあった。
しかし、この作品は基本的に「海」を舞台としており、
そこに浮かぶ艦隊や、海中の潜水艦が基本的な艦隊の描写となるため「軽さ」が欠点になっておらず
これで演出が弱ければ軽さばかりが目立ってしまうが、
そこにしっかりとした「水」の描写と軽さを感じさせないSEによる演出で軽さを感じさせず
海での艦隊戦がしっかりと迫力ある描写になっている。

更に謎の超兵器を使う戦闘の「エフェクト」だったり、
艦隊のシステムだったり、「未知の技術」の描写と「フル3DCG」の描写がマッチしており
戦闘シーンにおいて、この作品ならではの雰囲気を生んでいる。

1話の段階では「フル3DCG」の違和感、特にキャラクターに関しては強い違和感がある。
戦闘シーンも序盤の段階では迫力は確かにあるものの、決定打に欠けるという感じだ。
はっきりいってしまえば序盤の段階での「インパクト」は薄く、
ストーリー的にも淡々と物語の導入、主人公と意思を持つ戦艦の少女が出会うボーイ・ミーツ・ガールと
世界観や設定の説明などを粛々と描写してしまっている印象だ。

しかし2話以降からこの作品に対する印象が変わる。
この世界における「艦隊」は未知の技術で特殊な武器を持っており、
モデルは日本軍の戦艦ではあるものの「メンタルモデル」という意思と姿がそれぞれおり、
更に通常の戦艦の能力以上の能力を持っている。
重力砲や侵食魚雷、海を割るほどの砲撃など未知の技術で作られた兵器の破壊力の描写は派手だ。
攻撃の際は戦艦の「変形機構」も描き、
ただ派手なだけでなくアニメーションとしての面白さも生んでいる

派手な戦艦と戦艦の戦闘シーンは「戦艦のみ」だからこその
派手な戦闘シーンと戦略の面白さを産んでおり、
更に派手なだけではなく、レーダーに映る魚雷、艦影、ソナーから聞こえる音を判別し
それに応じた戦略を展開していく。

そういった「戦艦」の戦闘シーンの面白さを素直にシーンに展開し、
丁寧に丁寧に、丁寧だが「テンポよく」展開する戦闘シーンは
別作品になるが「無責任艦長タイラー」や「宇宙戦艦ヤマト」のような
船同士の戦闘シーンは高い緊張感保ちつつの派手な戦闘シーンを描写している。

本当に1シーン1シーンが丁寧な描写だ。
戦闘シーンもきちんと練られた「戦術」を基本に展開しており、
圧倒的な霧の艦隊に対し、主人公たちが彼女たちにはない「戦術」を用いて戦う
戦艦に人間が乗る意味というストーリーの重要な部分を戦闘シーンにきちんと反映し、
戦術と戦艦同士の戦いの面白さをダイレクトに画面に描写されている。

戦闘シーン以外にも戦艦が港に入るシーン、戦艦の内部描写、ゆっくりと旋回する戦艦、
そういった戦艦を「魅せる」シーンを丁寧に描写しているからこそ作品の世界観が強まり
淡々としているストーリーを盛り上げる。

更に序盤以降は「キャラクターの作画」もこなれてくる。
1話や2話の段階ではキャラクターのCGモデリングは尖った印象があったが、
中盤以降になってくるとキャラクターのモデリングが柔らかくなり、CG感はもちろん出ているが
序盤よりも画面の中に居るキャラクターが自然に描写され違和感が薄れていく。
特に序盤にはなかった「魅せる」キャラ描写が中盤以降は目立ってくる。

例えばキャラクターごとの立ち方や体の動き。
フル3DCG特有の「滑らか過ぎる動き」をそれぞれの体の動きに反映しており、
キャラクターのなめらかな手の動きや細かい髪の動きなど
フル3DCGによるキャラクター描写の面白さも生まれており、
動きだけではなく止まってるシーンいわゆる1枚絵のときのキャラクターも美しく描かれている。
登場するキャラクターの多くは艦隊のシステムの擬人化プログラムであるため
フル3CGによるキャラクター描写の違和感ともマッチしているとも言える。

更にキャラ描写が自然になり、
違和感が適度に薄れてことでキャラクターの可愛らしさが出てくる。
「人間の戦略に対抗」するために戦艦が創りだした彼女たちは
序盤の段階で「感情」を感じさせるほどの行動や言動はない。
あくまでも艦隊のシステムの擬人化であり、機械的だ。
しかし、彼女たちにはそれぞれが人格があり「自我」ある。
様々な経験をすることで彼女たちに徐々に感情が芽生え、変化していく様は不思議な魅力を生んでいる。

無表情な敵キャラだった「ハルナ」は少女との触れ合いで、
いきなり恥ずかしがる表情や泣き顔など表情豊かななキャラにいきなり変わったり、
最初はツンとした敵キャラだった「タカオ」は主人公たちとの戦いで
艦長を欲しがる恋する戦艦状態になっていたりと、イオナラブな日向の暴走など
話が進めば進むほどキャラクターたちが「ユニーク」になっていく(笑)
最初の印象と違う彼女たちの変化は可愛らしさに繋がり、
更に変化していく彼女たちは「成長」し、キャラクターの魅力が深まっていく。

彼女たちの成長がストーリーにダイレクトに反映し、ストーリーの面白さにもつながっていく。
特に5話以降のストーリー展開はキャラクターの感情の変化やキャラクター同士の掛け合いなど
序盤にはなかった面白さが「キャラクター描写」が深まったことで生まれてくる
はっきりいって序盤は淡々としていて面白みにかけていたが
中盤以降は「別のアニメ」のような面白みを生んでいる

序盤は艦隊アニメらしく淡々と硬派にストーリーを展開しているが
中盤以降は若干キャラ萌えアニメの要素が強くなる印象だ。
この点に関しては人によっては好みが分かれるところかもしれない
ただ萌え要素が強くなったことで序盤の淡々とした印象は薄まり、
ストーリーにメリハリが生まれており、序盤に比べると見やすくなっている。

更に終盤。
成長した彼女たちの自己犠牲。
「兵器」だった彼女たちが成長したからこそ人を救おうと「自己犠牲」をする
その姿は美しく、それは「人の美しさ」でもある。
兵器である彼女達が人としての行動を起こすシーンは感極まるシーンだ。
成長してしまったからこその戸惑いや変化から感情が爆発し、
人間らしい「自殺行為」にも似たコンゴウとヒロインであるイオナのぶつかりは
最終話らしい盛り上がりを見せた。

全体的に見て中盤から面白くなる作品だ。
序盤はフル3DCGの欠点である違和感が強く出てしまっており、
戦闘シーンこそ迫力があるがキャラクターのデザインは違和感や尖った印象がある。
しかしながら中盤からはその尖った印象が薄れキャラクターが可愛らしく描写されており、
戦闘シーンもきちんとした戦略のある内容のある戦闘シーンになっており、
フル3DCGの欠点でもある「軽さ」をうまく世界観にマッチさせた内容になっている。

キャラクターの魅力も中盤から出てくる。
戦艦の擬人化であるメンタルモデル達は序盤は感情や自我と呼ばれるものが表に出ない
しかしストーリーが進み彼女たちが影響を受け成長し、それぞれの考えで行動を起こし成長していく様は
キャラクターの成長を感じられ、同時にキャラクターの魅力にも繋がっている。
特に序盤から終盤までの「タカオ」や終盤の「コンゴウ」、そしてイオナと
それぞれの心理描写がストーリーの中できっちりと生きており、見所でもある。

しかし、その反面で主人公が圧倒的に魅力がない。
確かにヒロインたちは非常に魅力的で、彼女たちの成長や変化がストーリーの面白さもあるのだが
そのヒロインに対し、主人公が明確な目的や明確な行動理由があるならストーリーにも深みが生まれてくるが、
彼の目的が「ふわふわ」しているせいで、基本的にストーリーは
「霧の艦隊」が襲ってくる→なんとか撃退→「霧の艦隊」が襲ってくる→なんとか撃退を
繰り返しているようなストーリーに見えてしまい、そこに主人公の意思が感じられない。

彼の目的は状況の変化を待っているだけだった世界に風穴を開けたいらしいが、ふわふわだ。
霧の艦隊たちとの共存もありなどの台詞もあったが、
そんな台詞を言っている割には「イオナの姉妹館」を躊躇なく撃沈していたり、
目的が謎な霧の艦隊の謎にに迫るわけでもない。
自分の行動に悩んだり刷るほど未熟でもなく達観している

そのせいでキャラクターとしての魅力が皆無で彼のやったことは
とりあえず状況が変わりそうなミサイルをアメリカに届けただけだ。
そのミサイルも実際に打ってはいないので、どれほどの打開力があるのかがわからない。

そもそもメンタリモデルたちに比べて人間側の描写が少なすぎる。
彼は物語が始まる2年前にイオナと出会ったことで色々なことが変化したのはわかるのだが
その色々なことが省かれてしまっているせいで、
彼に付いて行っている人間たちがなぜ彼に付いて行っているのか、
海上が霧の艦隊がいるせいで閉ざされているのは分かるが、どれほどやばい状況なのか
そもそも主人公はなぜそこまでして世界に風穴を開けたいと思っているのかなど
物語の中心にいるはずなのに、主人公や人間側のキャラが居るだけな感じがある。

メンタリモデルたちの描写と戦闘描写を中心に描いてしまっているため
芯となるストーリーが一向に進んでおらず、何も謎が解決していない。
物語の核心に迫る部分は1クールでは全く描かれておらず、
たしかにある程度1クールで区切はつけたものの、区切をつけただけですっきりと終わった感じはない。
あくまでも物語の序章をアニメ化したような印象だ。
それだけに最初から2クールや4クールでガッツリと見たい物足りなさは感じてしまう。

しかしながらフル3DCGによるアニメは最初こそ違和感があったが中盤以降は「自然」だった。
フル3DCGは拒否感の出る方も多いと思うが、この作品はその拒否感を中盤以降全く感じさせず
更にキャラクターの可愛さまでしっかりと感じさせる描写になっており、
CGがこなれてくるとともにキャラクターの表情も豊かになっていっていた。
そういった点を考慮すればフル3DCGのテレビアニメとしては少し高い評価をしたい
フル3DCGアニメばかりが増えても困るが、1年に1作品くらいは見てみたいと感じさせる作品だ。

個人的には戦艦の変形機構が地味に好きだ。
ガバーっとあられもなく晒す感じは変形機構が好きな方ならば注目のシーンだ。
更に個人的には「ゆかなさん」の演技の凄さだろう。
序盤から中盤までの冷徹かつクールなコンゴウを演じ、
更に終盤での激しい感情に起伏、叫びの演技はさすがは「ゆかなさん」と言いたくなるほど
迫力満載の素晴らしい演技だった。

制作側によると「続編の構想はある」ようで2期の可能性も高いだろう。
ストーリー的にもキャラクター的にも2期に期待したい部分は大きい
そういった意味では1クールという尺でフル3DCGで制作するという意図を抱えつつ
よくまとめあげた作品と言えるだろう。

超個人的にはタカオ演じる沼倉愛美さんのツンデレ演技がツボでした(笑)