評価 ★★★★★(80点) 全110分
あらすじ 2人の愛を受け止めることなんてできないと返事に悩んでいたれな子は、グループの妹的存在・香穂に誘われてコスプレイベントに参加することになる。引用- Wikipedia
最低で最高な百合物語
本作品は「わたなれ」の劇場先行版。
劇場で先行上映されたのちに地上波でも放送された。
監督は内沼菜摘 、制作はstudio MOTHER
振り返り
冒頭で軽く振り返りがある、一応は13話から17話という扱いになっているが
映画ということを意識した冒頭の振り返りは短いながらも
わたなれらしいものになっており、あの衝撃の最終話を
再び思い返される印象だ。
告白された「れな子」の返答、それは猶予だ。
一か月の返答への猶予、友達だと思っていた女の子からの
ストレートな告白は1話で彼女が受けた告白とはまるで違う。
友達としてきちんと接し、彼女との日々を過ごしたからこそ、
そして「もう一人」の友達以上恋人以下な女子の気持ちにも揺れ動く。
シンプルな話ではある。どちらが好きなのか、どちらも好きではないのか。
「自分」を好きではない少女は、他者からの好意に悩んでしまう。
誰かに嫌われたくない、自分が嫌いだからこそ、
彼女は「他者」からの保証が欲しい。
嫌われないという保証を、自分を好きになる、陽キャになるという確証を。
ニヤニヤしつつ、くすくすと楽しめていた1クール全12話から、
13話以降は少し雰囲気が変わる。
もう一人の女
だが、この作品は「わたなれ」であり、そしてこの作品の主人公は
「れな子」である、つまり新しい女に手を出す(笑)
12話までではあまり存在感がなかった「小柳 香穂 」だ。
実はれな子とは幼馴染ではあるものの、れな子は完全に忘れている。
「小柳 香穂 」 があの頃よりもかわいくなったからこそ、
色々と変わったからこそ気づかなかったのだが、
それをストレートに彼女に言い、隠していた思いがあらわになる。
れな子と同じように「陽キャ」になろうとする彼女は
れな子の理解者であると同時に正反対の存在だ。
オタクな彼女とは違い、れな子は二人の女から言い寄られている(笑)
そんな悩みをドストレートにあらわにし、
怒涛の会話劇を繰り広げるさまは「わたなれ」らしさ全開であり、
悩みながらも新しい女に無自覚に手を出し始める「たらし」っぷりは
さすがの一言だ。
そんな彼女にいわれ、「れな子」は3万円のバイトをすることになる。
コスプレ
そのバイトは「コスプレ」だ。イベントでコスプレをする、
とんでもないバイトであり、セクシーシーンの盛り込みまくりだ。
採寸シーンからコスプレシーンまで、
陰キャな彼女が戸惑いながらも精一杯コスプレする様は
恥じらいとエロスが融合しており、思わずニヤニヤしてしまう。
さらに「小柳 香穂 」よるASMR、催眠音声まである(笑)
予想できない展開の数々を怒涛に見せており、
このハイテンションな展開を詰め込むことで飽きさせない
ストーリー展開をあいも変わらず見せている。
しかも、「れな子」は催眠音声にあっさりかかる。
そうかと思えば「小柳 香穂 」とともにラブホへGOだ。
もうわけのわからない展開を脳みそにひたすら叩き込まれるような
スピード感はドーパミンを常に放出されるような感覚だ。
陽キャのコスプレを脱いだ「小柳 香穂 」との
お約束お風呂シーンも素晴らしく、
「裸の付き合い」を通じてもう1段階深いつながりへとなる展開は
この作品のお約束にきちんとなっている。
曝け出せ!
そうかと思えばデートである(笑)
まるでジェットコースターのごとく展開がハイスピードに
ぐるんぐるんと変わるのが本当に心地よく、
その中で描かれるキャラクターごとの揺れ動く心理描写はさすがだ。
れな子以外にもみんながみんな悩んでいる。
それでも1歩踏み出し、本当の自分と演じている自分の差に悩み、
あがいている、この作品のキャラだけではない、
見ている側も同じような悩みを、多くの人が抱えているはずだ。
その悩みを「れな子」という女はまっすぐにぶつかり、壊してくる。
コンタクトレンズがなければ陽キャになれなかった少女に頭突きをし、
「どんなに失敗しても本当にやりたいことからは逃げたくない」
そんな気持ちを彼女自身がずっと抱えてるからこそ、
「れな子」という女は失敗を恐れずに共に突き進んでくれる。
罪な女
男気溢れた女だ。多くの女が彼女に惚れてしまうのも納得できる。
そんな「れな子」が自分の思いをさらけ出す。
他人の仮面をはぎとり、素をさらけ出していった「れな子」が
嘘も偽りもなく、素になり、二人の女から告白された彼女が
曝け出した思い、その答えは…
最悪だ(笑)
この作品らしいラストはもう笑うしかなく、
そして全てが綺麗にまとまるラストは心地よさがすさまじく、完璧だ。
普通に縛られることはない、普通であることが正しいわけではない。
無茶苦茶ではあるものの「れな子」という主人公らしい女の子の、
精一杯な答えは笑いつつも、なぜか涙が流れている。
自分を好きになれなかった少女が自分を好きになれるように、
本当の自分をさらけ出すようになるまで物語が
気持ちいいくらいに描かれている作品だった
そんな鑑賞感に包まれて、最後の最後で
とんでもない右ストレートをぶち込んでくる、
さすがはわたなれだ。
総評:れな子、お前がナンバー1だ!!
全体的に見てすばらしい作品だ。
1期の段階から完成度が高かった作品だが、
この映画、13話から17話まで描くことでこの作品の完成度が
さらに1段階上がったような感覚になる。
れな子という陽キャの仮面をかぶっていた少女が、
他者の仮面をはぎ取り、そして自らの仮面を脱ぎ去る。
自分を好きではなかった女の子が自分を好きになるまでの
物語が全17話までまっすぐに描かれており、
最初から最後までニヤニヤしながら楽しめてしまう作品だ。
主人公が最後に選んだ答えは最悪ではある。
だが、それは一般論だ、そんな一般論という
「バイアス」からの解放がこの作品には描かれている。
社会に溶け込み、人間関係を構築するうえで「普通」という
バイアスは共通の認識、価値観として必要だ。
しかし、それは時に息苦しさを生む。
そんな息苦しさからの解放、自由な答えが
この作品らしいラストになっており、
一本の作品として大満足な作品だった。
個人的な感想:商才
ここまでシンプルに「商才」を感じる作品もなかなかない。
1クールのアニメを放送した2か月後に、
続きを映画館で先行上映という形でやる、
これが半年や1年、それ以上なら見に行くお客さんは
もっと少なかっただろう。
鉄は熱いうちに打てとはよく言ったもので、
この作品はアチアチな状態で映画をぶつけることで、
ファンの熱を冷めさせなかった。非常にうまいやり方だ。
公開規模も200や300といった欲を出すのではなく、
小規模でやることで宣伝効果も生まれてる。
誰が考えたのかはわからないが、この天才的な戦略を
今後マネするアニメも生まれるかもしれない。



