評価 ★★★★★(80点) 全13話
あらすじ 3人の利害が一致したことで、お互いの正体を隠しながら共に暮らすこととなる。ハプニング連続の仮初めの家族に、世界の平和は託された 引用- Wikipedia
極上の緊張感と最高級の緩和
本作品はスパイファミリーの3期。
制作はWIT STUDIO、CloverWorks、
監督は2期から変更され今井友紀子となっている。
3期
スパイファミリーの1期が放送されたのは2022年だ。
そこから2期が2023年に放送され、2023年末には映画も公開された。
3期までブランクとして1年ほど空いているものの、
定期的にアニメ化が続くことで人気も安定したものになった印象だ。
2期はややテンポが悪い点は気になったものの、
良くも悪くも安定している。
1期は始まりが描かれ、2期ではメインキャラの「ヨル」が掘り下げられ、
疑似家族を形成している3人が偽りの家族ではあるものの、
支え合う家族の姿が描かれていた。
そこからの3期だ。
1年ぶりに見るアーニャの姿は相変わらず可愛らしく、
2期から参加したボンドも含め、家族としてほほえましい姿が描かれている。
そんな微笑ましさから一転「超能力」をもつアーニャだからこそ
気づけた事件をロイドとヨルが解決する。
スパイファミリーらしい1話は3期が始まったことを
しっかりと感じさせてくれる。
バランスよくメインキャラを活躍させる話運びもさすがであり、
1話あたり2エピソード構成でテンポよく話を進めている。
1話の前半ではメインキャラ4人を描き、後半ではサブキャラの話を描く。
2話以降もバランスよくキャラの日常を描いており、
1期や2期を楽しんだ人ならば安定して楽しめる3期であることを
序盤からしっかり感じさせてくれる。
過去
そんな序盤から「ロイド」の過去が描かれる。
彼がなぜ優秀なスパイになったのか、黄昏と呼ばれるまでの過去だ。
ロイドは平和に暮らしていた少年だ。
西と東の小競り合いはあるものの、戦争がまだ起きてはいない時代だ。
そんな時代のささやかな嘘、父への嘘は呪いのように彼にのしかかる。
謝ることも、なかったことにもできない嘘、
「戦争」が平和な少年の日常を破壊する。
時々シリアスなシーンが有るスパイファミリーではあるものの、
3期はこのシリアスが重い。
明確に描かれる「死」と「戦争」、東と西が一歩間違えば
またロイドが子供時代に味わったような緊迫した状態であることを
どっしりと感じさせてくれる。
家族も、友達も、知り合いもなくした少年は
戸籍すらなくし、彼の本当の名前を知るものはいない。
兵士として戦争に参加し、実際に多くの敵を討ち取っても
「虚しさ」だけが残り、真実すらわからなくなる。
そんな彼だからこそ「真実」を追い求め、平和のためにスパイになる。
ロイドのバックボーンをきちんと描いており、
2期のヨルのときのようなテンポの悪さもない。
変に引っ張らずサクサクと展開する物語は1期を彷彿とさせる。
ロイドの過去を描いたからこそ「今」の平和と日常がより際立つ。
スパイ
序盤から中盤まで日常を積み重ねている、
その中でロイドの過去を描いたかと思えば、
ヨルが「デズモンド」の妻と知り合いになったりと、
さりげなく本筋が進んでいく。
1歩間違えば戦争が始まる、1歩間違えば偽装家族が終わる。
その1歩を日常の中で匂わせることで、程よい緊張感が生まれる。
単純な日常物でも、サザエさんのように永遠に続く物語でもない、
少しずつ、1歩ずつ、スパイファミリーという作品は終わりに近づいている。
そんな足音が聞こえてくるストーリー構成だ。
特に「デズモンド家」の事情、彼らが抱えている立場ゆえの
家族としての立ち位置や内情もほのめかしており、
単純な日常コメディアニメで終わらせない、スパイファミリーらしい
面白さをきちんと感じさせてくれる。
バスジャック
そんな日常コメディとスパイ・アクションの酸いも甘いも楽しませてくれた所で、
終盤「バスジャック」事件が発生する。
アーニャが通う学園の生徒達が乗るバスが凶悪なテロリストにバスジャックされる、
かなり危機的な状況ゆえの緊張感が走る。
そんな緊張感の中でもコメディは忘れない。
アーニャの超能力、そしてスパイアニメで得た知識(笑)。
幼い子どもたちが「自分」にできることを精一杯やる姿は微笑ましいのだが、
1歩間違えば「死」が待っている。
本来はその「死」というのは最大の緊張感だ。
アーニャの行動がテロリストにバレてしまい、彼女は首に爆弾を取り付けられる。
その「死」の緊張感で一気にシリアスな空気になるのだが、
そこからアーニャがテロリストの心を読み爆弾が偽物になることで、
一気に緊張感が緩和され笑いに変わる。
アーニャたちの一大事に、多くのキャラクターが動き出す。
きちんとこれまで「サブキャラ」を使い捨てせずに描いたからこそ、
バスジャック事件という大事件の中でのキャラの活躍が効果的に作用する。
この緊張と緩和こそスパイファミリーだ。
結末もロイドやヨルに頼るのではなく「アーニャ」が
「アーニャ」だからこそたどり着いた結末だ。
物語の目的の1つである「ステラ」の獲得にもつながり、
スパイファミリーらしい面白さが3期には詰まっている。
最終話ではWIT STUDIO、CloverWorksという
2つの制作会社が関わってるからこその
アクションもしっかりと見せてくれて大満足な3期だった。
総評:最高の3期
全体的に見て素晴らしい3期だ。
2期は明らかに尺稼ぎが目立ち、テンポが悪くなってしまっていたが、
3期ではそれが一気に改善されテンポよく物語が進み、
決っして「サザエさん時空」で終わらせない物語ではなく、
1歩1歩確実に終わりに近づいている物語であることを感じさせてくれる。
一歩間違えば冷戦が終わり、戦争が始まるかもしれない世界、
一歩間違えば正体がバレて偽装家族が続けられなくなる世界、
一歩間違えばテロリストに襲われて死んでしまう世界。
そんなスパイだからこそ、他人の正体を隠してるからこそ、
スパイファミリーという作品だからこその緊張と緩和、笑いが生まれている。
キャラクター描写も流石であり、決して使い捨てにしないサブキャラたち、
メインキャラ達の掘り下げもしっかりしており、
バランスの良いキャラ描写があるからこそ、
シリアスな展開になったときのそれぞれのキャラの活躍が光る。
1クールにおけるダレもマンネリも感じず、
シリアスなシーンではキャラクターの死を匂わせる極上の緊張を感じさせながらも、
最高級の緩和を見せる、これぞスパイファミリーという作品であり、
4期への期待感をつのらせてくれる作品だった。
個人的な感想:盛り返した
2期がちょっと個人的には微妙な印象を受けたため、
3期はあまり期待していなかったのだが、いい意味で裏切られ、
スパイファミリーという作品の底力を見せてくれた作品だった。
4期がいつになるかはわからないが、心待ちにしたいところだ。



