サスペンス

アーニャ、尺稼ぎ嫌い「SPY×FAMILY Season2」レビュー

3.0
SPY×FAMILY Season 2 サスペンス
SPY×FAMILY Season 2 ©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会
スポンサーリンク

評価 ★★★☆☆(55点) 全12話

『SPY×FAMILY』Season 2 新章「豪華客船編」PV/2023.11.4 23:00~ ON AIR

あらすじ 人はみな 誰にも見せぬ自分を 持っている――世界各国が水面下で熾烈な情報戦を繰り広げていた時代。東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)は、十数年間にわたる冷戦状態にあった。引用- Wikipedia

アーニャ、尺稼ぎ嫌い

本作品はスパイファミリーの2期。
監督は古橋一浩、原田孝宏、制作はWIT STUDIO、CloverWorks

日常

1期は物語の始まりを描いている作品だった。
「ロイド」というスパイが任務を遂行するために、
偽りの娘であるアーニャを家族とし、
更に「ヨル」という偽りの妻を手に入れ、
最後には「ボンド」という犬まで飼い始めている。

メインキャラクターたちは互いに正体を隠している。
スパイであるロイド、超能力者であるアーニャ、
暗殺者であるヨル、未来予知ができるボンド。
それぞれがそれぞれの立場でこの「偽りの家族」というものを
利用していると言ってもいい関係性だ。

しかし、そんな利用しているはずの偽りの家族に対して
彼らは「愛着」を持ってしまっている。
偽りとはいえ共に日々を過ごし、生活をともにしている。
そんな中で家族としての愛が生まれており、
その過程が描かれているのが1期だった。

そんな1期からの2期、まさに日常系だ。
特に序盤は短いエピソードを繋げている話も多く、
フォージャー家だけではなく、様々なサイドキャラの
エピソードも交えながら起承転結すっきりとした
日常ストーリーを描いている。

くすくすと笑える話も多く
肩の力を抜いて楽しめる日常ストーリーとなっているものの、
メインのストーリーの方はまるで進まない。
2期の段階で1期からステラの数は増えていない。

私は1期の2クール目のレビューで
スパイファミリーがクレヨンしんちゃんや名探偵コナンといった
国民的アニメ枠を狙っているのでは?とレビューしたが、
まさにその予測通りの序盤だ。

名探偵コナンも時々しかメインストーリーが進まず、
日常回という名の単発の殺人事件で話を紡いでいる。
スパイファミリーも本来なら「アーニャ」が
ステラを獲得することで徐々に話が進んでいくはずなのだが、
2期の1クールでは1個も増えていない。

日常を積みかさね、忘れかけたところで
メインストーリーを進めるような流れが
1期の2クール目からは生まれていたが、
2期ではよりその要素が強まっている。

キャラクターたちの魅力を引き出すようなエピソードが多く、
いい意味でも悪い意味でもキャラクターの魅力だよりの日常だ。
1期からそんな日常の積み重ねがあったからこそ、
2期でもそんな日常が積み重ねが楽しめる一方で、
物語の当たり外れは生まれているのは気になるところだ。

豪華客船

中盤からは少しシリアスかつ、メインにも繋がる話が描かれている。
1期の終盤ではヨルの「暗殺者」としての活動が
殆ど描かれていなかったが、その分を取り戻すかのように、
2期ではヨルがメインと言ってもいいほど彼女を中心とした
エピソードが中盤からは描かれている。

今回、彼女は暗殺ではなく護衛の任務を請け負っている。
護衛対象を守るために豪華客船に乗り込むのだが、
同時にロイドとアーニャもそこに訪れている。

家族にバレないか心配になりつつも、
暗殺者としての仕事をプロな彼女はこなすものの、
同時に疑問も生まれている。
なぜ自分は「暗殺者」を続けているのだろうかと。

いつ死ぬかわからない仕事だ、人を殺すという裏の仕事だ。
両親が亡くなり幼い弟を養うために、
最初はお金のためという部分もあったが、
幼かった弟は立派に成長し、お金の心配はなくなっている。

なぜ自分が暗殺者を続けているのか。
そんな疑問が彼女の中に生まれてしまう。
豪華客船の中での命の取り合いの中で自問自答を繰り返し、
彼女は答えにたどり着く。

それは「平和」を保つためだ。
この世界のメインキャラが住んでいる国はいつ、
戦争が再開してもおかしくない状況だ。

戦争を再開する悪い人たちを殺すことで、
そんな平和が保たれている部分もある。
ロイドもまたスパイとして平和を保つために
嘘を付きながら暗躍している。

もし自分の正体がロイドにバレても受け入れてくれるかもしれない。
そんな思いがヨルの中には生まれている。
たとえ偽りの家族でも、彼女の中にはロイドとアーニャ、
そしてボンドに対する深い愛情が生まれている。

だからこそ、そんな平和を、偽りの家族を続けるためにも、
彼女は暗殺者でありつづける。
そんなエピソードがしっかりと描かれている。

ヨルにそんな事が起きていることなどロイドは知らない。
だが、ヨルの敵が仕掛けていた爆弾を発見し、
ヨルが敵と戦っている事も知らずに彼は解除するために奔走している。

同時にアーニャはヨルの事情もロイドの事情も知っている。
子供でしかない彼女にできることはわずかだ。
だが、そんなわずかなことがヨルの勝利につながる。

例え真実を知らなくとも、知らないところで家族は支え合っている。
そんなスパイファミリーらしい家族の姿が
描かれているのが2期といえるだろう

テンポ

しかし、2期で気になるのはテンポの悪さだ。
序盤こそ日常エピソードが詰め込まれている話が多いため
気にならないのだが、問題は豪華客船に乗ってからだ。

豪華客船の中でのストーリー自体は面白く、
アーニャとロイドのギャグシーンも多いのだが、
ヨルの戦闘シーンなどがかなりグダグダになってしまっている。

特に目立つのがスロー演出だ。
じっくり見せたいのはわかるのだが、
スロー演出を多用しすぎていて締まりの無い
緊張感にかける戦闘シーンが非常に多く、
グダグダになってしまっている。

護衛対象を狙う暗殺者もやたらめったらに多く、
その暗殺者のすべてをヨルとヨルの仲間である部長が相手しており、
数が多いせいで時間がかかりすぎてしまっているシーンがかなり目立つ。
作画のクォリティ自体はWIT STUDIO、CloverWorks制作だからこそ
高いものの、1期のような印象に残るシーンが少ない。

日常回にしても1期のテニスのようなインパクトのあるシーンは
ほとんどなく、作画はいいのだが印象に残らないシーンが多い。
一言で言えば演出不足、演出の悪さを感じてしまう。
ダラダラとスロー演出を多用する戦闘シーンや、
なかなか船上での話が進まないもどかしさもあり、グダグダだ。

この豪華客船のストーリーは約5話ほどかけて描かれているのだが、
明らかに尺を持て余してしまっている。
1期と同じテンポ感ならば3話とはいわないが4話で
収められた話を5話に引き伸ばしてしまっているような、
そんなストーリー構成の悪さが作品全体のテンポの悪さに繋がっている。

ダイジェスト

スパイファミリーはすでに原作のストックといえるものがない。
1期の段階では余裕があり2クール構成だからこそ、
考えられたストーリー構成だったためダレが生まれなかったのだが、
2期になって原作のストックも気になりだし、
そのせいで間延びするストーリー構成になってしまっている。

その結果、意味不明なダイジェストが挟まれる。
まるで新海誠監督映画を彷彿とさせるようにBGMを流しながら
キャラクターたちの日常シーンをダイジェストで
セリフ無しで流すという展開が何度かあり、
それがまるで面白さに繋がっていない。

最終話などまさにわかりやすい。
ロイドとボンドが散歩中に起こった事件を解決して、
家にかえると、超能力ですべてを知ったアーニャが
彼らに折り紙でつくた「ステラ」を渡す。
いいシーンだ、最終回のラストカットして悪くない。

しかし、尺を使い余してしまっているせいで、
そこからサイドキャラクラーの日常がBGMとともに流れる。
ぐだぐだと尺を稼ぐためのどうでもいいキャラの日常を見せられるのは
最終回としての締まりもなくなってしまい、
2期の欠点を強く感じてしまう作品だった

総評:明らかに尺使い余してるのよ

全体的に見て作品全体のストーリー構成の悪さと
テンポ感がきになってしまう作品だった。
序盤と終盤の日常回はそんなテンポ感が気にならず、
短いエピソードが詰め込まれた日常の話はキャラクターの
魅力と可愛らしさを感じることができるストーリーになっている。

序盤のヨルさんとロイドのデートや、
終盤のベッキーが家にやってくる回など
可愛らしさとコミカルさが光っており、
スパイファミリーの日常回の魅力を強く感じるエピソードも多い

ただ中盤の豪華客船のストーリーはグダグダの極みだ。
1クールという尺を使い余してしまっているせいで、
無駄なスロー演出やグダグダなストーリーになってしまっており、
メリハリのないテンポで常に描かれてしまっている印象だ。

BGMを流しながらのダイジェストも尺稼ぎにしかなっておらず、
尺稼ぎしていることを露骨に感じてしまうようなシーンがあまりにも多い。
豪華客船のストーリーも描きたいことはわかり、面白くはあるのだが、
その面白さが間延びしてしまっている。
せっかく、面白いのにその面白さを引き伸ばしてしまっているせいで
1期のようなインパクトのある面白さにしきれていない印象だ。

特に最終回は露骨な尺稼ぎもしており、
原作のストックがあまりない状況で3期でやる部分を
想定した場合、原作のどこまでを描くのかを考えた結果の
ストーリー構成なのかもしれないが、
この尺を使い余してしまってたストーリー構成は本当にもったいなかった。

メインストーリーが進まないことは
1期の2クール目でも同じことであり気にならなかったのだが、
1期と違って演出の悪さやメリハリのなさ、
作品全体で尺を使い余してしまっているテンポ感の悪さが
気になってしまう作品だった。

個人的な感想:スタッフ

気になるのは地味にスタッフが変わっていることだ。
監督は1期の段階では一人体制だったのだが、
2期では二人体制になり、1期の監督である古橋一浩さんと
原田孝宏さんがやられている。

このあたりも作品全体の演出のズレや間延び感に繋がっているのかもしれない。
1期では監督自身がストーリー構成を手掛けていたが、
2期では監督ではなく映画の脚本も務めている大河内一楼さんになっている。

このあたりのスタッフの変更は監督への負担の軽減を
目的としたものだったのかもしれないが、
その結果、作品全体がふわっとしたものになってしまっていた。

3期もおそらく制作されるがゆえに、
3期では1期のような勢いと面白さを
取り戻してくれることに期待したいところだ

「SPY×FAMILY Season 2」に似てるアニメレビュー

「SPY×FAMILY Season 2」は面白い?つまらない?

この作品をどう思いましたか?あなたのご感想をお聞かせください