サスペンス

激甘推理「鴨乃橋ロンの禁断推理」レビュー

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鴨乃橋ロンの禁断推理 サスペンス
©天野明/集英社・鴨乃橋ロンの禁断推理製作委員会
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評価 ★★☆☆☆(29点) 全13話

TVアニメ『鴨乃橋ロンの禁断推理』PV第1弾

あらすじ 探偵として致命的な欠陥を抱え、探偵行為を禁止されていた鴨乃橋ロン。しかし、捜査一課の刑事・一色都々丸と知り合ったロンは、彼とコンビを組んで再び推理を再開する。引用- Wikipedia

激甘推理

原作は少年ジャンプ+で連載中の漫画作品。
監督は井畑翔太、制作はディオメディア

無能刑事と有能探偵

1話冒頭から怒涛のテンポで話が展開される。
巷では5人の被害者が出ている連続殺人事件が起きている、
そんな事件を捜査する中で主人公の一人である
「一色 都々丸」は使えない刑事だ。

犯人に騙されて3回も逃げられるほどの純粋さは
刑事としては厳しいものがあり、
同じ刑事からも「使えない」と思われている。
そんな中で彼はとある場所に訪れる。

そこにいるのは「目が死んだ探偵」だ。
やる気もなく、覇気もない、退屈な日常を怠惰に過ごし、
パソコンもテレビもない部屋で横たわっているのみだ。

そんなやる気のない探偵とやる気だけはある刑事。
このバディ関係が序盤から描かれており、
テンポ感のいい会話劇でボケとツッコミを繰り返している。

原作を手掛ける「天野明」さんらしいキャラクターデザインは
魅力的ではあるものの、作画はあまり良いとは言えない。
基本的にこの作品はミステリーであるがゆえに会話劇だ、
そんな会話劇を淡々と描いている感じが強く、
アニメーションとしての面白みはあまり感じない。

主人公である「鴨乃橋 ロン」は探偵であるものの、
この世界に存在する探偵資格を剥奪されている。
謎解きこそが彼の生きがいであり、そんな生きがいを
奪われてしまったがゆえに怠惰な生活をしている。

彼は謎を求めている、だが、そんな謎解きが出来ない。
そんな怠惰な生活を送っていた彼を
もう一人の主人公である「一色 都々丸」が引きずり出すところから
物語が始まる。

速攻推理

そんな探偵が事件現場に訪れるとあっというまに
事件を解決してしまう。
なぜ水のない場所に溺死体があったのか、犯人の目的はなんなのか。
被害者の死体を見ただけであっというまに事件を解き明かしてしまう。
ただ、この推理に関してはかなり強引だ。

水のない場所での溺死体。
これを見ただけで主人公は「床屋」が
犯行場所であることを解き明かしてしまう。
それだけならともかく、数多ある床屋から一箇所を
あっというまに特定してしまう。

優秀な探偵という特徴を強調させたいのはわかるが、
ミステリー的な面白さはかなり薄く、
どちらかといえばバディものとしての要素と、
二人の主人公の会話劇を楽しむ作品だ。

飛べ

ミステリー部分はおまけ程度だ。
本筋は主人公がなぜ探偵をやめたのかという部分にある。
彼は犯人を追い詰める際に「犯人」を自害させようとしてしまう。
自覚もなく犯人を追い詰める言葉を放ち、
そんな言葉になぜか犯人も従ってしまう。

優秀だが犯人を殺してしまう探偵。
そんな探偵だからこそ事件解決率100%だが、検挙率は0%な探偵だ。
なぜ彼が自覚なしに犯人を追い詰めてしまうのか、
なぜ犯人は彼の言葉に従ってしまうのか。

1話の時点でそんな謎を提示することで自然と先の展開が気になってくる。
もう一人の主人公である
「一色 都々丸」も使えない刑事ではあるものの、やる気だけはある。
自殺しようとする犯人を己の命を顧みずに助ける姿をみて、
主人公である「鴨乃橋 ロン」は彼をパートナーにすることを決める。

でこぼこで正反対ともいえる二人の主人公によるバディもの、
王道ではあるものの抑えるところを抑えたキャラクター性と、
作品全体に渡って描かれる主人公の謎が、
視聴意欲をわかせてくれる。

2話以降の事件もミステリー要素は薄く、
貯金箱の謎など事件の始まりは面白いのだが、
その推理を解き明かす過程や肝心の推理が軽い感じだ。
あくまでキャラクター性を楽しむものであり、ミステリーは本筋ではない。
ライトなミステリーアニメといえる。

事件そのものや推理を楽しむのではなく、
なぜ主人公が犯人を催眠能力のようなもので
無意識に殺そうとするのか。そこが気になってくる作品であり、
そこが本筋だ。

探偵免許

この作品には探偵養成学校のようなものがあり、
「BLUE」と呼ばれるその学校の卒業生は探偵資格をもらい、
世界中で優秀な探偵として活躍している。
だが、探偵資格を剥奪したものが探偵行為をした場合は
「粛清」対象にもなる世界だ。

主人公は犯人を自殺させてしまう無自覚な能力が故に
探偵免許の資格を剥奪されている、
BLUEのルールが故に本来は探偵行為はできない。
だからこそ「一色 都々丸」を隠れ蓑に探偵行為を行っている。

そんな主人公を探るBLUEの探偵たちも序盤をすぎると現れる。
ただ、現れたからと行って主人公の謎に迫るような
メインストーリーになるわけでもなく、
ややテンポ感は遅い印象だ。

中盤になると脳外科医な女性キャラクターや、
別の刑事なども現れるものの、
特にメインストーリーは進まない。

あくまで二人の主人公のやり取りと
バディ感を楽しむのが中心であり、
そんな二人のキャラ付けはしっかりしており、
やり取りは楽しめる部分はあるもののミステリー部分の弱さと、
メインとも言える主人公の謎になかなか迫らないのは気になるところだ。

ただ、それでもバディものとしての面白さはしっかりとある。
犯人を自殺に追い込む「鴨乃橋 ロン」ではあるものの、
そんな自殺を必死に「一色 都々丸」は毎回止めている。
それゆえに一歩間違えば一色 都々丸は死にかねない状況だ。

それでも一色 都々丸は彼から逃げず、
そんな思いを鴨乃橋 ロンも受け止める。
鴨乃橋 ロンが自分自身を信じられるように、
一色 都々丸は彼のそばに寄り添い続ける。

クローズドサークル

序盤から中盤までのミステリー要素は
あまり面白みがあるものではないものの、
中盤の孤島でのクローズドサークルな環境での
殺人事件は興味深い。

鴨乃橋 ロン自身にも容疑がかかり、
扉は鍵が締まっている中、鍵は中にいた眠らされたロン自身が持っている。
なおかつ、扉は糸が入る隙間すらないように
接着剤まで塗られている始末だ。

そんな状況で次々と殺人事件が起こる。
ロンの学生時代の先生まで殺され、
過去にロンが犯人を問い詰めて自殺させたのでは?と
言われている事件すらも絡んでくる。

謎が謎を呼ぶ、まさにミステリーな状況が生まれることで
中盤にしてようやくミステリーとしての面白さも生まれてくる。
ただ、この謎、トリックと言える部分も
「被害者自身が閉まっていると思っていた鍵を自分で締めた」
というやや突っ込みどころのあるトリックだ。

鍵が開いているか、閉まっているか。
サムターンの方向でわかりそうなものだ、
分からなくとも開け締めを繰り返して、
鍵が開いている状態になる可能性もある。

密室の中で被害者を殺すトリックに関しても
かなり無理があり、被疑者がとあるもののスイッチを押して
しばらくすると銃弾が発射されるのだが、
その時間、そこに立ち続けている可能性も高いものではなく、
一撃で即死させられる場所に命中するかもわからない。

状況や謎自体は面白いのだがトリックの詰めが甘いのは
中盤以降も変わらない。
だが、メインストーリー部分はようやく進む。
クローズドサークルの事件ではわざとロンの前で先生を殺し、
更にロンの首に残る傷と同じマークをしたいに残した「あの人」

あの人とはダレなのか、一体何が目的なのか

M

この世界では「M」と呼ばれる組織が暗躍している。
Mが関わった事件は100%迷宮入りの事件になるM家。
主人公である「鴨乃橋 ロン」は
そんなM家の一族が引き継ぐモリアーティーの血と、
ホームズの血を受け継ぐ存在であることが明らかになる。

ミステリーとしては大王道のシャーロック・ホームズの要素が
いきなり出てくる感じだ。
序盤のあたりでロンの祖先が「地動説も天動説も知らない」ということは
セリフとしては出ていたが、ここまでダイレクトに
ホームズ要素を出されるとやや引いてしまう部分がある。

ホームズという要素は創作で使いつくされた要素だ。
そんな要素を変化球もなく取り込んでくるのは
かなり個人的にはではあるが違和感を感じてしまった。

序盤から終盤に至るまで、いわゆるゲストキャラは多いのだが、
メインキャラになりそうな雰囲気を醸し出しているキャラでさえ、
1回でると、しばらく出てこない。
終盤になると再登場するのだが、そこまで重要なキャラでもない
キャラも多く、キャラを使い余している印象だ。

続く

終盤で因習村的な場所で新たな事件が起こるが、
そんな事件もあっさりと解決する。
主人公の犯人を自殺させる能力が「後天的」に
外科的な処置により付与されたものである可能性が巻き起こり、
主人公が過去に起こしたといわれてる事件の真実に迫っていく。

そんな外科的な処置を起こした真犯人、
黒幕とも言える「M家」との関与を主人公も知るものの、
探偵学校であるBLUEにもM家のスパイが存在することが明らかになる。
色々とメインストーリー部分が終盤で明らかになるものの、
明確に主人公とM家が対峙するわけでもなく、話は続く感じで終わる。

この作品はシーズン2が決定しており、
そんなシーズン2でもっと確信に迫る部分が描かれる
ストーリーが描かれるかもしれないが、
1期ではあくまでも序章という感じで終わってしまう作品だった。

総評:黒蜜をぶっかけたミステリー

全体的に見てミステリーとしては甘く物足りない部分がかなり多い。
事件の導入自体は面白そうなものが多いのだが、
解決に至るまでの過程や肝心のトリックなどが
拍子抜けするものやツッコミどころの多いものが多く、
詰めの甘さを感じてしまう。

バディものとしての面白さはしっかりとあり、
自堕落な生活を送ってきた探偵とやる気だけはある刑事という
組み合わせが作品全体の面白さの肝にもなっており、
あくまでそこを楽しむ作品であることが感じられる。

ただ、それにしてもサブキャラを使い余していたり、
メインのストーリーとも言える部分が余り進んでいなかったりと
気になる部分も多い。
特にメインストーリーに関しては名探偵コナンほどでないにしろ、
本当にちょこちょことしか進まないのはかなり気になるところだ。

これは個人的な感覚かもしれないが、そのメインストーリー部分に関しても
使い古されたシャーロック・ホームズとモリアーティーという要素を
出されてしまい、やや萎えてしまうところだ。
シーズン2でこのあたりが一気に描かれて作品が完結すれば
印象は変わるかもしれないが、シーズン2でも完結しなければ
この作品に対する視聴意欲もなくなってしまいそうだ。

キャラクターの魅力はあるものの、その魅力にふさわしい
ストーリーが描ききれていない、
そんな印象を受ける作品だった。

個人的な感想:ホームズ

ホームズという要素はこすり倒された要素だ。
ホームズの血を継ぐという設定や、
ホームズそのものをパロディする要素など、
様々な作品でやってきたことであり、見飽きた部分がある。

主人公がホームズとモリアーティの血を継いでいるという部分では
特色はあるものの、いまいち、そこもピンとこない部分がある。
この焦点のぼやけた作品の面白さが、
シーズン2で定まってくれることを期待したい。

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