櫻子さんの足下には海外ドラマが埋まってる「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」レビュー

2016年5月20日

評価/★☆☆☆☆(13点)/全12話
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 第6巻 [Blu-ray]

あらすじ
北海道・旭川市に住む高校生・館脇正太郎は、良家のお嬢様にして『骨』を愛してやまない標本士の女性・九条櫻子とある切っ掛けで交流を持つようになる。その先々で様々な人の死に絡む事件に遭遇することとなり、検視官としての技能を持つ櫻子の推理に付き合うこととなるが、やがて不可解な殺人事件の背後に潜む教唆犯・花房の影が見え隠れしてゆく。

スポンサーリンク

櫻子さんの足下には海外ドラマが埋まってる。

原作はミステリー小説な本作品。
監督は加藤誠、アニメーション制作はTROYCA。

見だして感じるのは背景の美しさだろう。
1話の冒頭は常に桜が待っており、美しく描かれる桜の木々など
「櫻子」というヒロインの名前にあやかった桜の描写に力を入れており、
CG感が強いものの、印象に残る美しい背景描写だ。

ただ、その背景のせいで肝心のキャラクターの作画が浮いている感じが強い。
ヒロインの櫻子さんが「頭蓋骨」を愛おしそうに眺め、額にキスをするシーンなど
本来はもっと「印象深く」描写しなければならないシーンのはずなのだが、
やけに壮大過ぎる音楽と、豪華過ぎる桜の描写のせいで
キャラクター描写のインパクトが薄くなってしまっている。

更に語りが長すぎる。
原作が小説なのが言わずとも分かるセリフ量で
主人公がヒロインである櫻子さんの解説をバンバン入れてくる。
どんな人でどんな趣味を持っていて、どんな職業なのか。

物語の中でそれが自然に描かれれば自然に受け入れることができるが、
小説の文章をそのまま主人公に言わせてるだけで
絵的な工夫やアニメーションとしての表現を放棄してしまっている。
サウンドノベルを見たいわけではない、ドラマCDを聞きたいわけでもない、
アニメが見たいのにアニメーションとしての表現が薄い。

確かに映像は綺麗だ、背景も美しく、
キャラクターデザインもシュッっとした感じで
ラノベや漫画原作ではない、小説原作だからこその雰囲気が出ている。
しかし、綺麗なだけでアニメーションとしての面白みがない。
作画が綺麗なだけで演出としての力不足を1シーン1シーンで
ひしひしと感じてしまう。

先述したヒロインの櫻子さんのファーストシーンや、
1話の事件の捜査が始まるきっかけでもある「頭蓋骨の発見」など、
本来はもっと強い「インパクト」があってもおかしくないシーンなのに
やけに「さらっ」っと描写される。

更に推理をする際の演出。
指紋を残さないためにゴム手袋をはめる際のパチンという音ともに
「櫻子」さんの周りにありとあらゆる動物の骨が幻想的に描かれる。
確かに綺麗だ、だが綺麗なだけでそこに面白みはない。
いわゆる「質アニメ」的な感じになってしまっている。
ちなみに制作側が飽きたのか中盤辺りから無くなる。

これは私の中での「あるある」なのだが、
今まで演出をしていた人物がいきなり監督をやると、
確かに作画は綺麗で演出も綺麗なのだが、
そこに「アニメーション」としての面白さがない物が多い質アニメになる事が多い。
この作品の監督である加藤誠さんも今まで演出をつとめており、
この作品が初監督作品だ。この監督も「あるある」通りになってしまった。

更に言えば演出も「海外ドラマ」的演出が多い。
いろいろな海外ドラマを見ている方なら「あれこれって・・・」と
よぎるようなシーンが多いはずだ。
特に序盤はその傾向が強く、中盤からは飽きたのか無くなる。
そもそも「骨」というネタも海外ドラマのBONESでやっており、
櫻子さんの推理ポーズも「シャーロック」でのシャーロック・ホームズのポーズだ。

「シャーロック」と同じように天才的圧倒的な推理力を持つ探偵が
警察をバカにしつつ、少し抜けた相棒と事件を捜査をする。
しかし、あの作品はシャーロックの圧倒的な推理力の描写と
強烈なキャラクター描写、更にベネディクト・カンバーバッチ氏の
演技力があるからこそ、それが嫌味にならず面白さになっているが、
この作品の場合は嫌味にしかなっていない。

ストーリー的にもミステリーとしては弱すぎる。
そもそも原作が短編集的な感じらしく、アニメも同じように
1話ないし2話で事件が解決する。
その構成自体は気にならないのだが、事件自体が弱すぎる。

本来はもっと印象深く視聴者を惹きつけなければならない1話、
探偵役である櫻子さんの推理力の描写を存分にしなければならない1話の推理、
事件は心中事件なのだが、心中したと思われる2つの死体をつなぐ紐を見て
「紐の結び方が本人が結んだものじゃない」という推理。
盛大な演出をしておいて、あまりにもよくある結び方という推理ポイントで、
「櫻子さんが推理しなくても警察が気づいたんじゃないか?」と思うほど浅い。

警察を無能にすることで探偵役を引き立てる。
警察の無能ぶりも天然ボケ的な感じならば面白さになるが、
視聴者が見ていても探偵が言わんとしていることがわかるのに
「なんですかそれ?」というような無能ぶりはいらだちを感じ、
そんな事でしか探偵役を引き立てられない描写はミステリーとして滑稽だ。

全体的に見て作画がいいだけの質アニメになってしまっている感じは否めない。
海外ドラマの演出をアニメに取り入れるというアイデアは悪くはないが、
それが同じジャンルであれば「パクリ」に見えてしまい、
海外ドラマにかぶる要素があまりに多すぎる。
作画自体は確かに綺麗だが「綺麗なだけ」でそれがアニメーションとしての
面白みに繋がっておらず、独りよがりだ。

ストーリー的にも原作は「ライトミステリー」を謳ってはいるものの、
推理の内容の割にはやけに豪華な演出のせいで滑稽に見えてしまう。
1つ1つのストーリー自体も弱く、そのストーリーの表現も甘い。
本来はインパクトが有るシーンなのに演出のせいで印象が残らず、
1つ1つの事件も凄いトリックがあるわけでも、
凄い残虐な殺され方をしているわけでも、意外な犯人がいるわけでもない。

更にこの作品は「シャーロック・ホームズ」のごとく
悪の権化、犯罪を企むもの、いわゆる「モリアーティ教授」的な
存在が示唆されている。
言葉通り示唆されているだけで1クールが終わっており中途半端だ。

2期がある、もしくは前提ならばこの展開も悪くはないのだが
「裏で糸を引いている人物がいるよ!」と匂わせまくった所で
終わる展開は完璧に不完全燃焼だ。

キャラクター描写に関しても、
肝心の櫻子さんと主人公の関係性がいまひとつすっきりとしないまま
1話がスタートするためモヤモヤした感じが強い。
最終話で出会ったきっかけの話が描かれるのだが、
正直言って、最初に描かれていたほうが自然に作品にのめり込めたはずだ

一人一人のキャラクター描写が浅く、
正直言って伊藤静さんや、石田彰さん、子安武人さんといった
声優による「演技」による味付け意外の印象でしかなく、
はっきりいえば声優だよりなキャラ描写になってしまっている。

個人的には「SHERLOCK」や「BONSE」、特にシャーロックは
大好きな海外ドラマなだけに、
この作品が余計に劣化海外ドラマにしか見えなかった。
オマージュやパロディ、パクリでも面白ければ私は受け入れるが、
面白くないせいで余計に鼻についてしまった。

売り上げ的には爆死、恐らく2期はないだろう。