ウィスキーの香り漂う、大人の渋いアニメ「91days」レビュー

2017年1月31日

評価★★★★☆(69点)全13話

あらすじ マフィアに家族を殺され、アヴィリオと名を変え孤独な生活を送る青年アンジェロは、ある日、事件の犯人の名が書かれた手紙を受け取る。引用 – Wikipedia


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ウィスキーの香り漂う、大人の渋いアニメ

本作品は朱夏制作によるオリジナルアニメ作品。
監督は鏑木ひろ、制作は朱夏。

見出して感じるのは世界観設定の面白さだろう。
時代は1920年台、舞台はイタリア&アメリカのような街、
そして物語の登場人物は「マフィア」。

アニメにおいてこういう設定の作品はあまり多くなく、
あえて上げるならば「バッカーノ」や「Gungrave」などが世界観としては近い。
非常に「渋い」世界観であり、製作者側も
『ゴッドファーザー』『ワンスアポンアタイム』『ブレイキングバッド』などを
意識して制作しているようだ。

だからこそ盛り上がりが薄い。
実写映画で「見たことのある」雰囲気やストーリー展開であり、
それを敢えてアニメに落とし込むことで面白さを醸し出しているが、
同じ系統のバッカーノやGungraveのような不死の設定といった
アニメらしい設定はこの作品にはない。
あくまでもリアルな「復讐劇」を描いている。

特に1話は強烈に地味だ。
主人公が復讐する理由、世界観の雰囲気の描写、
まるで作品の舞台の「匂い」を伝えたいかのような、
丁寧すぎる描写の数々は人によって大きく受け止め方が違うだろう。

いわゆる1話切りする人も多かっただろう。
しかし、逆に1話でこの作品の世界観にぐぐっと引き込まれ、
最終話まで止まらなくなってしまう人もいるはずだ。
「洋画」特有、80年代映画のようなウィットに富んだ台詞回しなど、
思わず笑ってしまい、作品の世界観に浸ることができる。

キャラクター数は非常に多い、だが、あっさりと死ぬ。
いかにも重要そうなキャラでも、掘り下げたキャラでも関係がない。
マフィアの世界に生きる彼らの日常は常に死に満ちており、
理由があってもなくても関係がない。
些細なきっかけで殺し殺される。

そんな中で主人公は最初の段階ではマフィアですらない。
禁酒時代の中で密造酒を作る友人の手を借り、
マフィアに酒を下ろしているだけだ。
しかし、そんな彼が徐々にマフィアの中に入り込んでいき、
復讐を遂げるためになりふり構わずに行動していく。

信頼を得るために、地位を得るために、
ときには自分が殺そうとしている相手すらも守り、
長年の友人すらも殺す。
ためらいのない彼の復讐劇はブレることはなく、
まっすぐだからこそ惹かれる主人公だ。

1話では面白さが伝わらないかもしれない。
だが、1話、2話、3話と話が積み重なっていくことで、
面白さも増していく。

絵面的には地味なのは中盤以降も変わらない。
だが、きちんと序盤で作品の世界観に引き込み、
地味な中でも決定的なシーンの印象を強烈に見ている側に残す。
シーンとしての派手さを犠牲に、内容の面白さを淡々と、丁寧に、
染み渡るように見せていく。

特に6話の終盤。
このシーンはただマフィアが「ラザニア」を食べているだけだ。
しかし、そのラザニアの材料とそれを食べさせられるマフィアたち、
その後に普通のラザニアを食べる主人公たちの対比と、
シーンとしては地味だが、内容のエグさが見ている側に強烈な印象を残す。

6話以降の展開の数々はまさにマフィア映画そのものだ。
この作品が盛り上がるのは中盤から終盤だが、
その中盤に至るまでの地味さと淡々さを見ている側がいかに
消化するかで評価が大きく変わる作品だろう。

全体的に見て実に地味で渋い作品だ。
だが、そんな地味さと渋さの中に、大人がお酒と一緒に深夜に一気に見たくなる、
そんな上質な葉巻のような洗練された面白さが、この作品にはある。

可愛い子なんて一切でない、腐女子受けするようなシーンもない。
いわゆる売れるための「狙ったシーン」というのがこの作品にはない。
そんなある種時代に反した、クリエイターが自分の作りたいものを作ったという
一本芯の通った新年のようなものを感じる作品だ。

事実、この作品の売上は1000枚前後と悪い。
だが、売上的には芳しくなくともこの作品は配信や再放送などで、
徐々に知名度を上げていく作品かもしれない。
売れ線の作品ではないが、決して売上=面白さではないことを証明するかのような
腰の座った面白さとこだわりを貫き通しているような感じだ。

個人的にだが、見終わった後に強烈にウィスキーが飲みたくなる作品だった。
キャラクターたちがしきりに飲んでいるからなのもあるのだが、
あのラストの何とも言えない空気感がいつまでも身体に残り、
この作品を見終わった後の余韻をつまみに
一杯やりたくなる感覚が強く沸き立つ、そんな作品だ。

好き嫌いははっきりと別れる作品だろう。
だが1話を見て作品の空気感にハマれば、
一気に最後まで見てしまい、最後の余韻がずっと身体に残る作品だ。
地味そうな作品なため見ていない人もいると思うが、
ぜひ1話だけでも試してほしい。
ウィスキーを飲みたくなる気持ちがわかるはずだ。

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