「はたらく細胞BLACK」レビュー

スポンサーリンク
サスペンス
スポンサーリンク

評価 ★★★★☆(68点) 全13話

あらすじ 毎日せっせと体中に酸素を運ぶ、新米赤血球。しかし彼の職場の労働環境は、徹底的にブラック引用- Wikipedia

スポンサーリンク

これぞブラックユーモア

原作は「はたらく細胞」のスピンオフ漫画。
監督は山本秀世、制作はライデンフィルム

ブラック


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 1話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

1話早々に主人公の叫びから始まる

「僕達は!一体何のために働いてるんですか!」

細胞たちの切なる叫びである(笑)
この作品ははたらく細胞のスピンオフ作品だ、
我々の体の中にいる細胞を擬人化し、そんな細胞たちの働きを
わかりやすく解説しつつコミカルに描いているのが元の作品だ。
教育機関などでも使われるほど人気の作品になっている。

しかし、このBLACKはその名の通り「ブラック」だ。
本家とはどこか雰囲気が違う。まるで「社畜」を育てるように
企業説明のビデオを新人細胞たちに細胞たちの働きを見せつけ、
本当にブラック企業のごとく「洗脳」していく(笑)

アットホームな仕事場です!と言わんばかりの紹介ビデオ、
家族や仲間を強調する言葉、あからさまにそういう意識で作られている。
とある細胞が上司にこんな質問をする

「時間外労働ってどれくらいあるんですか?」

時間外労働がある仕事場ほど怖いものはない。
月にどれだけ残業があるのか、また残業代はあるのか。
そんなふとした疑問に上司は答えるr

「ないとは言い切れませんが極力減らすように動いています。
 働き方改革というやつですね」」

嘘である(笑)
上司はすでに洗脳済みであり、目は死んでいる。夢も希望もない。
自らの負担を減らすためには新人にもっと頑張ってもらわなければならない
たとえ「細胞」たちが働く体内が「ブラック」でも
細胞たちに休みはない。

先に働いている先輩たちの目も当然死んでいる。
この作品のキャラに目にハイライトがあるキャラのほうが少ない(笑)
研修もなく、休みもなく、ひたすらに働き続ける細胞たちの
果てしない労働の物語が始まる。

癒やしはないのか!


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 1話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

ブラックな環境で働く細胞たちは全員が全員やさぐれている。
働かなければ宿主は死ぬ、一分一秒の動きが宿主の命に関わる。
それは「血小板」も同じだ。
スピンオフ元では可愛らしく癒やしな大人気キャラクターだが、
この作品の宿主の体内では血小板ちゃんすらやさぐれてしまっている。

宿主の体内はボロボロだ。
「睡眠不足」「疲労困憊」、宿主もブラックで働く社畜なのだろう。
暴飲暴食を繰り返し、新人研修のためのビデオを撮ったときとは
比べ物にならないほど、この体はもう手遅れだ。
末端の細胞たちはクレームを出しまくり、
そんなクレームの対応にも追われている。

宿主が抱える「ストレス」のせいで血流も悪い。
この作品を見ているともしかしたら自分の体内も
こんなブラックな環境になってるのでは?とまるで
健康診断前日の夜の緊張感のような不安にすら駆られる。

いわゆる「ブラックジョーク」に溢れた作品だ。
本来なら笑えないぼろぼろな人間の体内の状況を
「ブラック企業」に見立てることでダークな笑いに変えている。
本家のはたらく細胞の世界観では描けなかった、
ある意味で本当の「はたらく細胞」たちの物語とも言える。

肺炎


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 1話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

本家のはたらく細胞の体内はキレイだ。
だが、この作品はそこら中にコレステロールがあり、それが酸化し、
汚れまくっている。不健康な体の中がどんな状態になってるのかを
「はたらく細胞」の世界観で見せることで笑えるのだが、
笑えないというような状況を描いている。

「この体…大丈夫なんでしょうか…?」

主人公は思わず不安になる。だが、そんな不安を抱える余裕すら
この体内にはない。
ナレーションを「津田健次郎」さんが冷静にかつ淡々と行うことで、
より「緊張感」が高まっている。

一歩間違えば死ぬ、細胞どころか、宿主が死んでしまう。
そんな状況の「体内」の緊迫感は凄まじく、
そんな宿主が「肺炎」になってしまう。

次々と殺される赤血球たち。本家よりも血液の描写が過激であり、
そんな戦闘シーンの中でメインキャラに見えたキャラがあっさりと死ぬ、
仲間の死を慈しむ暇もない、彼らがやれることをやらなければ
宿主は死ぬ。

そんな危機的な状況が常に描かれることで本家とは
まるで違う味わいがこの作品にはある。単なるスピンオフではない。
これはもう1つの「はたらく細胞」の物語だ。
これだけ必死に働いているのに宿主は10年間の禁煙を破り、
喫煙をしてしまう(笑)

「この体はなんでそんなものをわざわざ摂取するんですか?」

喫煙者には耳が痛いセリフである。
だが、吸わなければやっていられない程、宿主も追い詰められている。
だからこその体内の状況だ。

抜く


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 2話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

体内の治安も最悪である。
アルコールにまみれた体内では細胞たちもアルコールにさらされてしまい、
「抜く」必要がある。まるでキャバクラのような場所で
細胞たちがアルコールを抜くさまは本家では絶対に描けない(笑)
間違っても教育機関では使えない。

我々が楽しくお酒を飲んだ結果、夜のお店に走り、やさぐれる。
「お酒を飲む」ということがどういうことなのかを
痛いほどに見せつけてくれる。酒飲みの私としてはもはや
涙ながらに見ざる得ない。

毎話、必ず誰かが死ぬ。
メインキャラに見えるようなキャラでさえ、
この作品はあっさりと死を描き、この体内の過酷さを感じさせる。
我々がタバコを吸ったから、我々がお酒のんだから。
その結果、死にゆく細胞たちに思わず敬礼してしまいたくなる。

歴戦の細胞は静かに息を引き取り、若い細胞にもあっけなく死が訪れる。
死んだ細胞でさえ無駄にしない。死んだ細胞は別の細胞に食われる。
本家では描かれない「赤血球」の一生には
本家の彼女の最後を感じさせることで壮大な物語になっている。

我々は多くの細胞の「死」によって生きている。
そう実感させられる。

エレクチオン


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 3話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

この作品はブラックユーモアにあふれる作品だ。
当然のように「下ネタ」がある。
特に3話は海綿体に酸素を送る仕事が描かれている、
つまりは「勃○」である。

男性が興奮状態になるときに体内ではどんな働きをしているのか?
彼らは「子孫を残す行為」だと奮起するものの、
そうとは限らない(笑)
あまりの重労働ぶりに男性視聴者はおそらく下半身を抑えながら
見る羽目になるかもしれない。申し訳ないほどの重労働だ。

たかが「勃○」、しかし、細胞にとっては命がけだ。
健康的な肉体ならまだしも、彼らの宿主は不健康そのものだ。
疲労、睡眠不足、ストレス…、それが「ED」という結果を生む。
そんな状況にも関わらず宿主は「バイアグラ」まで飲んでことに
及んでいる。

薬に頼らなければ自然にそういう行為すらできない。
それほどまでにこの体の宿主は追い詰められている。
ちなみにお相手は性病の持ち主だ。もうこの世界は終わりである(笑)

末期


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 4話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

この体は限界だ。ありとあらゆる病や症状が出まくっている。
睡眠不足、疲労困憊、ストレス、喫煙、飲酒、ED、円形脱毛、
血尿、尿路結石、エナジードリンク中毒、加齢臭、鼻血、
エコノミークラス症候群、水虫、胃潰瘍、痛風。

症状がでるたびに宿主は病院に行き、薬を飲み、手術をするからこそ
ギリギリ助かってはいるものの、生活習慣は改善しないえうに、
かかりつけの医者はヤブ医者のようで医療器具の消毒もおろそかにしている

少し遅れれば手遅れになる、一歩間違えば死ぬ。
そんな緊張感が常にこの体の中には漂い、
そんな緊張感が細胞たちも気を緩めることができない。
常にギリギリの戦いを強いられ、ギスギスした雰囲気が常に漂っている。

減り続ける白血球、暴走する細胞達。
最初はまだ元気だった細胞たちも、話が進めば進むほど弱り、疲れ、
そして死んでいく。この体に果たして未来はあるのか。
先が見えない戦を彼らは強いられる。働くことに強迫観念すら感じさせ、
人材が少ないからこそ自分がもっと頑張らないといけないと必死に働く。

本家のはたらく細胞は楽しそうに働いている細胞が多い。
ホワイト企業だ。だが、スピンオフの今作はブラックだ。
そこに生まれてしまったがゆえに、自らの生きる場所を守るためにも、
彼らは自分を顧みずに働き続ける。

まるで倒産前の会社だ。
社員たちが必死に会社をなんとかしようとしても、
どんどんと状況が悪くなる。たとえ社員が犠牲になっても
会社が変わらなければどうしようもない。

はたらけない


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 11話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

主人公には同期の友が居た。
彼が薬物にハマったときは手を貸し、時には自分を励ましてくれた。
こんな世界で、こんなブラックな体内で、二人は友情で結ばれていた。
だが、ちょっとした判断ミスのせいで彼を失ってしまう。
自分を責め続ける中で彼は体に、自らの宿主に叫ぶ。

「この労働環境をなんとかしろ!取り返しがつかなくなるぞ!」

細胞たちの反乱、デモだ。細胞たちの悲鳴だ。
だが、宿主がそれに気づくことはない。
どんなに叫んでも彼らは細胞だ、人間にとっては目に見えない、
小さな小さな体の中の存在だ。そんな存在に声を傾けることはない。

環境は変わらない。この世界は終焉を迎える。


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 13話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

日に日に体内の状況は悪くなる。
血管の道は細くなり、詰まり通れなくなり、ついには心筋梗塞を起こす。
世界が終わる、宿主の死だ。体の機能は停止し世界は終演を迎える。
まるで「セカイ系アニメ」でも見ているかのようなセカイの終わり。

本家のはたらく細胞は「人が生きていく上での細胞の働き」を描いている。
そんな本家と違い、この作品は真逆だ。
「人が死にゆく上での細胞の働き」を描いている。
心臓が止まるといったいどうなるのか。

細胞たちには祈ることしかできない。何もできない。
もうこんな環境で働くことは嫌だと思っていた彼らも、
まさか本当に働かない日が来るとは思ってなかった。
だからこそ、彼らは祈る。もう1度働きたい。
心臓に祈りを捧げることしか、もはや細胞にはできない。

はたらく細胞たちの働きではなく「祈り」がラストに描かれる。
そんな彼らの祈りは届く「AED」という形で(笑)

宿主がようやく健康的な生活を取り戻す。
怠惰な生活をしているものは誰かに言われても何もしない、
1度死にかけないとその考えは変わらない。
宿主が死にかけて初めて、体内の細胞たちの声が届く。

たとえ体内環境がよくなっても、主人公の仕事は変わらない。
「どこにいても」彼は酸素を運ぶ赤血球だ。

スポンサーリンク

総評:青汁のも…


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 11話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

全体的に見て「はたらく細胞」という作品の真髄を見たような作品だ。
本家では描けない、教育機関にはおけない、体の真実。
怠惰な人間に巻き起こっている体内の状況はまるでブラック会社のごとく
劣悪であり、そこで働く彼らの日常は社畜よりひどい。
ブラックユーモアたっぷりな「細胞の擬人化」は突き刺さる面白さがある。

序盤から中盤までは笑えるレベルだ。だが、終盤はもはや笑えない。
笑えないほどひどくなる体内の状況が最初は笑ってみていた視聴者が
思わず自分自身の健康を考えてしまうほどの内容になっており、
本家よりも強烈なインパクトを残す作品になっている。

ブラックな体内環境で必死に働く細胞達の物語、
そんな物語が1つ1つきちんと描かれつつ、
思わずキャラクターに、細胞に感情移入してしまうほど
彼らの生き様と死の物語が描かれている作品だった。

個人的な感想:健康は大事~


画像引用元:はたらく細胞 BLACK 13話より
©原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社・CODE BLACK PROJECT

最初こそブラックユーモアあふれる本作に笑っていたが、
お酒の回あたりから身につまされる思いがよぎってしまった。
座り仕事も多いだけにエコノミークラス症候群は笑えない。
タバコを吸う人、エナジードリンクを飲んでる人、
人によってドキッとさせられる回があるはずだ。

スピンオフ元の2期がやや残念な出来栄えだっただけに、
この作品と合わせてみることで「はたらく細胞」という作品そのものも
極まり、見方が変わるような作品だった。
これほど素晴らしいスピンオフ作品は稀かもしれない。

コメント