「BANANA FISH」レビュー

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サスペンス
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評価 90点 全24話

あらすじ ダウンタウンのストリート・キッズのボスとして君臨するアッシュは、コルシカ・マフィアのボス ゴルツィネの指示で銃撃された男から、「バナナ・フィッシュ」という言葉と「カルフォルニアの住所」を伝えられるとともに、小さなロケットペンダントを受け取る。引用- Wikipedia

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この作品はBLではない、ブロマンスだ!

原作は漫画な本作品。
監督は内海紘子、制作はMAPPA

バナナ・フィッシュ


画像引用元:BANANA FISH 1話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

私はタイトルの意味が話が進んでいくことで分かる作品が好きだ。
最初は意味のない言葉に聞こえるそれが意味をなし、
ときに主人公そのものを指したりもする。
作品の「タイトル」に込めた作者の思いを、
タイトルという仕掛けから感じられる。

見てない人も見る前から誰しも「タイトル」というのは最初に目に入る。
そんなタイトルをキャッチーなものにしたり惹かれるものにするのではなく、
あえて作品全体の「仕掛け」の1つとして利用する、
そんな作者の粋すら感じるものだからこそ
私はタイトルの意味が分かる作品が好きだ。

そして、この作品もまた1話冒頭からやってくれる。
ベトナム戦争の最中、仲間の兵士が突然銃を乱射し
「バナナ・フィッシュ」という言葉をつぶやく。

バナナ・フィッシュとは一体何なのか?どうしてこうなったのか?
たった数分で一気に物語を気にならせてくれる。
まんまと釣り針に引っかかった魚のような気分にさせられる。

マフィア


画像引用元:BANANA FISH 1話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

物語の舞台はアメリカへと移る。台詞回しはまさに「ウィット」だ。
日本のアニメではあるものの80年代の洋画を見ているような
そんな感覚になるほどの台詞回しはウィスキーを片手に
この作品を味わいたくなるほどの雰囲気を醸し出している。

80年代の洋画の雰囲気を感じさせるのは物語の主軸が
「マフィア」だからかもしれない。「ゴッドファーザー」を
この作品はアニメでやろうとしているのではないか。
80年代の洋画に対する「敬意」と「憧れ」をこの作品からは感じる。

主人公は金髪の少年の「アッシュ」だ。
子供の頃に拾われたボスの命令には逆らえず、支配されている中で、
彼もまた「バナナ・フィッシュ」を追っている。
「バナナ・フィッシュに会え」という死ぬ間際の言葉、
廃人のようになってしまった兄。

そんなアッシュと奥村 英二が出会う。
日本という平和な国に居た少年がマフィアがはびこる街で
アッシュという男と出会ったことで物語が始まる。

匂い


画像引用元:BANANA FISH 2話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

この作品の原作は85年から94年に連載された漫画だ。
だからこそなのか見ているうちに色々な作品が見えてくる。
カウボーイビバップ、攻殻機動隊、シティーハンター、
あの頃の名作たちと同時期に連載していた作品だからこそ、
そんな名作たちと同じ「匂い」を感じさせる。

なぜこの作品は90年代ではなく、2018年にアニメ化されたのか。色々と謎だ。
この作品を私は2020年に見ている。だが、
この作品を見ているときの私の心は1990年代だ。
あのときの、あのころの、あの時代の、アニメを「今」味わえる。
なんて贅沢なんだろうか。もちろん作画はデジタルだが、そんな事は構わない。

ブラウン管にかじりついて「アニメ」を見ていた自分を思い返させてくれる。
そんな「匂い」と雰囲気がこの作品にはある。

アッシュと英二


画像引用元:BANANA FISH 2話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

マフィア内のいざこざの中でアッシュと英二は囚われの身になる。
本来ならで出会ったばかりの英二など見捨ててもおかしくないはずだが、
人質に取られてしまった英二を助けるためにもアッシュもまた囚われの身になる。
序盤のこの展開で「アッシュ」という主人公がどんなキャラなのかを感じさせる。

頭がよくクールで今はストリートギャングのボスではあるものの、
幼い頃にマフィアに拾われている。
冷酷非情に見えて仲間を捨てきれない優しさのある男であり、
そんな彼に助けてもらったからこそ英二もまた自分にできることをする。

アッシュにはできない高い塀を自分の力で飛び越える姿は、
アッシュにとって、彼が「自由」の象徴に見えたのかもしれない。
自らを邪魔し穢す汚い大人ではなく、自由で無垢な彼との出会ったのに
彼は無実の罪で囚われの身になってしまう。

1話1話の密度が濃く、スピーディーに展開するストーリーではあるものの、
ストーリーの中できちんとキャラを描写しているからこそ、
そんなスピーディーなストーリーに目が離せない。

BLか否か


画像引用元:BANANA FISH 3話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

この作品は1つの「論争」が長年続いてると言ってもいい作品だ。
「この作品はBLなのか?」という点だ。
BLなのかとネットで検索すると色々と出てくる。
そして、それを断固として否定する人も多い。

そういう議論になる1つの要因として「同性愛者」が多いということもある。
正確には同性愛者ではなくバイセクシュアルの可能性のあるキャラも多く、
「小児性愛者」のキャラクターも居る。

主人公の「アッシュ」自身も子供の頃に捕まり、大人相手に
そういう事をさせられてきた過去がある。だが、そこには一切の「愛」はない。
子供の頃からそういった事をさせられてきたからこそ、
そういった事をしてくる大人を嫌悪をしてると言っても良い。

刑務所に捕まり「そういう事を」されてしまうシーンも有る。
だが、同じくそこに愛はない。この作品は性的行為を暴力として描いている。
英二とアッシュの「キスシーン」も序盤にあるのだが、
これもまた愛ゆえのキスではない。あくまで「カモフラージュ」としてのキスだ。

アッシュの英二に対する思いは恋愛感情とは違う。
この作品をBLと言ってしまうならジャンプアニメ特有の
「男同士の熱い友情」のある作品はすべてBLになってしまう。
少なくともジャンルと言う枠組みにおいて、この作品を「BL」という
ジャンルでくくってしまうのは違和感がある。

世界


画像引用元:BANANA FISH 9話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

バナナ・フィッシュの謎を追う中で容赦なく家族や仲間が死んでいく。
追い詰められ続けていく中でアッシュにとって
「英二」という存在がよりかけがいのないものになっていく。
容赦なく自分の大切なものが失われていくからこその救いと希望だ。
この作品はアッシュという一人の男が「自由」になる物語だ。

ストリートギャングのボスで知性のある彼でも17歳の少年だ。
アッシュという17歳の少年が敵対する相手に対する声と、
信頼している相手に対する声の違いをきちんと演じ分け、
それを感じさせる「内田雄馬」さんの演技も流石だ。

二人の世界は違う。銃のあるアメリカと銃のない日本。
ギャングのボスとカメラマンの助手。本来は関わり合うことのなかった二人だ。
巻き込んでしまった彼を守るためにも日本へと戻そうとする。
いつ殺されるかわからない、政府も関わっている「バナナ・フィッシュ」を
追うアッシュの周りは危険だ。

バナナ・フィッシュを追えば追うほど仲間が、大切な人が死んでいく。
だが「ケリ」をつけなければ自由にはなれない。
そんな状況だからこそ「英二」という存在を守ろうとする。
1度は彼に銃をもたせたが、そんな彼に銃を持たせず、
純粋で汚れのないまま守ろうとするアッシュの姿は尊さすら感じる。

本当に容赦がない。甘さや救いや希望が無い。
マフィアの世界だからこそ呆気なく命が失われていく。
家族を人質にとるのは当たり前だ。救おうとしても救えない。
アッシュだけでなく、アッシュの仲間も同じように追い詰められていく。

しんどい


画像引用元:BANANA FISH 9話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

辛く、厳しく、しんどい状況の中であがく彼らの姿が胸を締め付けられる。
バナナ・フィッシュの正体が見えてくるのと同時に、
それぞれのキャラクターの立場が厳しくなり
マフィアたちの内争と抗争が激しくなっていく。
単純に、ただ殺し殺されるわけではない。

「最悪」とも言えるような状況を作り出される。
それを「ショー」と称して楽しむマフィアの残酷さ、
「殺してくれ」と願う仲間の姿は思わず目を背けたくなるほどだ。
時には仲間を撃たなければならない状況にもなる。
殺された後ですら自由ではない。本当に救いがない。

そんな一切救いのない状態で1話1話が終わることで
「いったい、この先どうなってしまうんだろう」と、
気になる部分とこれ以上辛い展開を見たくないという矛盾を抱えながらも、
「BANANA FISH」という作品に取り憑かれるような感覚になるほどだ。

日常回


画像引用元:BANANA FISH 11話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

11話は貴重な、本当に貴重な日常回だ。
命の奪い合い、バナナ・フィッシュをめぐるストーリー、マフィア。
そんな重苦しい雰囲気から11話だけは小休憩のように日常回が描かれる。
アッシュと英二が食事をし、何気ない会話をする。

今まではそんな余裕のある状況ではなかったからこその日常だ。
「17歳の少年」であることを感じさせるアッシュと、
そんなアッシュと楽しそうに会話する英二。
二人が年相応に可愛らしく日常を過ごしているシーンは和む。

そんな和む状況なのになぜか涙腺を刺激される。
今までの彼らの物語が、これから描かれるであろう彼らの物語が
辛いものであることがわかっているからこそ、
こんな11話のような日常回はもう訪れないかけがいのないものになることを
察してしまうから。

「アッシュ」は自らが壊れていく感覚があり、
そんな感覚に悩みつつ、ほんの些細な日常の中で弱音を彼に漏らすからこそ、
彼を支えてくれる英二と、彼の言葉がアッシュにとって救いになる。
それが見ている側にも痛いほどに伝わるからこそ、泣いてしまう。

唯一となってしまった本当に心を許せる相手へ甘えているシーン。
言葉にすればたった1行ほどのそんなシーンがたまらない。
この11話までの展開、11話があったからこそ「アッシュ」は覚悟を決める。

執着


画像引用元:BANANA FISH 12話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

覚悟を決めたからこそ人を殺すことも否定しない。
容赦なく敵を殺し、容赦なく拳銃を撃つ。
それが「英二」に嫌われる行為だとは分かっていても彼はやめない。
そんな彼に対して「英二」は怒り、喧嘩をする。

友達だ。本音で言い合える、相手が嫌とわかってることも言える。
それが本当の友達だからこそ、腹を割って話し合い、ぶつかれる。
本当は離れたくはない、だが、離れなければ危険だ。
たとえ嫌われようとも離れなければならない。

死を恐れないアッシュと、そんなアッシュの死を願わない「英二」。
二人の形容しがたい関係性と二人の気持ちが分かってしまうからこそ
彼らが平和な日々を送れることを願ってしまう。

ある種の執着だ。二人だけではない、この作品に出てくるキャラクターは
「アッシュ」という人間に執着している。
マフィアのボスは寵愛を授けたアッシュを何度も殺すタイミングがあるのに殺さず、
アッシュと因縁があり目の敵にしているオーサーも
執念深いまでの執着を「アッシュ」というキャラクターに向けている。

特にマフィアのボスである「ディノ・フランシス・ゴルツィネ」は異常とも言える。
彼の心と体を手に入れるためにありとあらゆる手段を講じ、支配し、
「息子」として「妻」として迎えようとしている。
自らが幼い時に目をかけ、育ててきたからこその執着はおぞましさすら感じる。
たとえアッシュが壊れても、壊れたとしても自分が手にかければいいと。

壊れていくアッシュの姿は本当に見るのが苦しく、
そんな彼を助けるために銃を握る「英二」の頼もしさの対比、
二人の切っても切れない関係性が終盤には描かれている。

悲しみ


画像引用元:BANANA FISH 22話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

この作品のキャラの多くは悲しみを負っている。
つらい過去がそれぞれにあり、それが今の彼らを作り上げている。
一人一人のキャラクターが「なぜいまこうなっているのか」というのが
きちんと描かれることで、対立しているはずのキャラにさえ感情移入できる。

リー・ユエルンもその一人だ。
つらい過去があり、母親を殺した自身の一族を恨み、復讐を誓っている。
そんな立場だからこそ「アッシュ」に自分を重ね、そんなアッシュが
執着する「英二」に嫉妬のような感情を持っている。
終盤の彼の孤独感は英二が居ないアッシュがこうなっていたのかもしれないと
感じさせるようなキャラクターだ。

マフィアとして、プロの暗殺者として、ストリートギャングとして。
それぞれがそれぞれの立場で様々な思いを巡らせ、
終盤でその思いが複雑に交差することで後戻りできない、
取り返しのない状況になっていく。

もう11話のような日常を過ごすことはできない。
予想できないストーリー展開にただただ息を呑むことしかできない。

別れ


画像引用元:BANANA FISH 24話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

終盤、彼は自由になる。自分を支配していたもの、固執していたもの、
確執がなくなり自由だ。だが、そんな自由になった身なのに
英二に素直に会いに行くことができない。
自分はマフィアで英二は一般人、アメリカと日本、そんな色々な思いが
英二を思うゆえに英二に会いに行けない。

だが、そんな思いも分かってしまうのが英二だ。
日本に帰ってしまう英二から送られた1通の手紙、
「僕の魂はいつも君と共にある」
どんなに離れていても、どんな立場であろうとも彼らの関係は変わらない。
そんな英二の手紙にアッシュも突き動かされる。

しかし、彼が自由を求めた代償が襲ってくる。
多くの命を奪った、そんな彼だからこその代償。
彼の最後の笑顔は美しく、自由だ。

そんな彼の笑顔と英二の手紙に強く、強く涙腺を刺激されこの作品は終わる。
とめどなく流れる涙と深い溜息をふかくはいてしまう。

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総評:悲しく美しい物語


画像引用元:BANANA FISH 1話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

全体的に見て素晴らしい作品だ。
バナナ・フィッシュをめぐるミステリアスなストーリーと、
マフィアが絡むことで生まれるクライムアクション、
アッシュと英二という二人の友情という言葉で片付けられないほどの
切れない絆で結ばれた二人の関係性は尊さすら感じる。

容赦なく奪われる命、メインキャラもサブキャラもモブキャラも関係なしに
あっけなく消え去る命が物語に常に緊迫感を生み、
そんな緊迫感あふれる中で生きるキャラクターたちの描写が素晴らしく、
2クールを長いと一切感じさせないスピーディーな展開は目が離せない。

原作が1985年に始まった作品だからこそ懐かしさを感じる雰囲気があり、
原作とはちがいアニメは現代設定になり、
現代設定にする必要があったのかはやや疑問ではあるものの、
2020年にこの作品を見たのに「90年代」のあの頃のアニメを感じさせる
雰囲気と空気感のある作品だ。

暴力的な描写はやや多く、そこが苦手な人はいるかも知れない。
この作品は性的行為を「暴力」として描いており、そういったシーンも多い。
暴力的なマフィアの世界だからこそ、大人に搾取された子供を描くからこその描写だ
そこを逃げずに描いたからこそのキャラクター描写があり、
この作品をより深いものにしている。

非常に見るのが辛い作品であり、もう1度見返すのは話の展開がわかってるからこそ
きついと感じてしまう部分もあるが、是非1度見てほしい作品だ。

個人的な感想:BLじゃないでしょ…


画像引用元:BANANA FISH 21話より
© 吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

BANANFISHがBLか否かの論争は見てないときには触れずに居たが、
見終わった今だからこそあえて触れると、この作品はBLではない。
言葉、ジャンルで言うならばブロマンスが近い作品だ。

アッシュという男は壮絶な過去と仲間や家族を失ってきたからこそ、
ある種の「依存」のような思いが英二にはある。
一方で英二はそんなアッシュに対して見返りのない愛情を与えている。
単純な愛や恋ではなく、もっと大きななにかで二人は結ばれており、
それを表現する言葉がうまいこと見つからないのが難しいところだ。

ただジャンルとしてならばBLではなく、
ブロマンスという言葉が最適かもしれない。
もし、この作品を「BLだから」と食わず嫌いしてる人が居るならば
是非見てほしい。この作品は決してBLではない。

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