「啄木鳥探偵處」レビュー

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サスペンス
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評価 ★★☆☆☆(27点) 全12話

あらすじ 時は、明治の末――金欠に苦しむ天才歌人・石川啄木は、とある殺人事件をきっかけに下宿で探偵稼業を始めることに。引用- Wikipedia

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クズの中のクズ

原作は1999年に発売されたミステリー小説。
総監督は江崎慎平、製作はライデンフィルム。

語り


画像引用元:啄木鳥探偵處 1話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

1話冒頭、主人公の友人である「金田一 京助」の語りから始まる。
彼が語る主人公は女好きで嘘つきでやんちゃだ。
タバコが切れたと彼にたかり、小説家を目指していた歌人
「石川 啄木」だ。

アニメも色々な歴史上の人物を美少女化、イケメン化してきたが
「石川 啄木」を主人公に据えているのはこの作品くらいかもしれない。
明治時代に生きる彼らは浮世人のごとく、日々の銭に困りつつも飲み歩く。
そんな中で彼らは「殺人事件」の現場に出会うことから物語が始まる。

この作品はミステリーだ。
「石川 啄木」を探偵にし、「金田一 京助」を相棒であるワトソン役にする。
シャーロック・ホームズものはアニメでも数多く存在するが、
そんな中でも「歌人」を探偵にする作品はこの作品くらいかもしれない。

そもそも歌人である石川啄木に推理力があるというのも
いささか違和感のある設定ではあるものの、彼いわく
「探偵と歌人は似ている、歌を詠むのが歌人、探偵が読むのは現場」らしいが、
どこが似ているのかは見てる側にはよくわからない。

これで事件解決の際に歌を詠んだりするならば、
某「落語家探偵」のような面白さがあるかもしれないが、
別にそんなことはしない。
1話で起きた事件も1話の時点では解決せず
「真犯人は別にいる」ということだけ示唆されて、宙ぶらりんになってしまう。


画像引用元:啄木鳥探偵處 3話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

1話の終盤、金田一京助は大事なものを売ってまで石川啄木の家賃を渡している。
石川啄木も彼が大事なものを売ったことにはショックを受けたようで、
金になる「探偵業」を始めるというのが1話の流れだ。
二人の友情と物語の主軸である二人のキャラクターが際立つエピソードだ。

だが、そんなことはさておいて2話では1話のことを忘れたかのように
石川啄木は飲み歩き、女を買い漁っている。なんなんだろうか(苦笑)
実際の石川啄木もクズというエピソードは色々と有名ではあるものの、
そんな実際の石川啄木のクズさをアニメでは更に際立たせており、
それが彼自身の魅力になるわけでもない。

これだけならまだ、この時代の歌人や文豪を現したキャラ描写だが、
彼は更にクズなエピソードを披露してくれる。
自らの大事なものを売ってまで家賃を肩代わりしてくれた「金田一京助」に
石川啄木は冤罪を着せる。

彼が犯人ではないと最初から分かっていたのにも関わらず、
彼に腹がたったからという理由だけで嘘の証言をし、
彼を貶めるような事をしている。
こんなキャラクターを好きになれる人がいるのだろうか。

「憎くて憎くて憎くてしょうがなくなったから、彼を警察につきだした」

と高笑いをするさまは気持ち悪さすら感じさせる。
腹を立った理由は一応ある。
「田舎の娘が金田一に一目惚れして上京したものの、
金田一がそれを受け止めず自殺をした」というものだ。

老い先短いとは言え衝動的に自殺する田舎の娘もはた迷惑だが、
彼女に感情移入しすぎて金田一にはらがたちを警察につきだす石川啄木も
迷惑極まりない。物語の中心にいる主人公を全くもって好きになれない。

アニオリ


画像引用元:啄木鳥探偵處 1話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

主人公たちが住む「菊乳舎」には多くの文豪や歌人が住んでいる。
のちの江戸川乱歩だったり、芥川龍之介だったり、
探偵長屋ならぬ文豪下宿である。
彼らが石川啄木に混ざり雁首を揃えて推理をぶつけ合う。

癖のあるキャラクターは多いものの、別に彼らが必要なわけではない。
色々な推理を披露し、尺を稼いでいるだけだ。
そもそもWikipediaによると彼らはアニメオリジナルキャラクターだ。

本来、原作は短編小説であり5話しかない。
そんなたった5話を全12話のストーリーに仕上げるために
かなり強引なことをしている。その1つがオリジナルキャラの大量追加だ。
そのオリジナルキャラや石川啄木に「妄想」という名の推理を披露させる。
ながったらしい何の証拠もない妄想の推理をひたすら聞かされる。

何の面白みもない。キャラクター本来の魅力が薄いのを隠すように
有名男性声優を起用しているものの、
彼らがキャラクターの魅力を後押しするのではなく、
彼らの人気に頼っているのを凄く感じてしまう配役だ。

1話で完結できるような話をアニオリキャラを追加し、
尺を稼ぎ2話構成にしていることが多く、
1話1話の話が薄味になってしまっている。
本来は1クール分もない原作を1クールに仕上げる。薄味になって当たり前だ。

推理


画像引用元:啄木鳥探偵處 4話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

そもそものミステリーとしての質が低い。
「真犯人は別にいる」とされた1話の事件は宙ぶらりんのまま、
2話と3話はただの自殺をあーだこーだと妄想推理、
4話はもう、本当に酷い。

ある殺人事件が起こりダイイングメッセージが残っている。
「のどのつき」というダイイングメッセージだ。
このダイイングメッセージがどんな意味を持ち、誰が犯人なのか。

ちなみに4話で出てくる人物の一人がずーっと何故か
「喉」を手ぬぐいなどで隠している(苦笑)
もはや、この説明の時点で多くの人はわかるだろう。
「喉の突き痕」がある彼が犯人だ。

わざわざ探偵に推理させるほどのダイイングメッセージでもなく、
シンプルにミステリーとしての面白さがない。
肝心の犯人も証拠つきつけるのではなく、誘導尋問で自白させるのも拍子抜けだ。

基本的に推理というものが弱い。石川啄木は探偵ではなく歌人であるからこそ
「人を読む」能力はたけてても探偵としての力はないことを感じさせるものの、
推測や誘導尋問など推理とはいえないような推理が多いのは残念だ。
そうなると後はキャラクターを楽しむしか無いが、前述したとおり、
主人公がクズの塊みたいなキャラであり、何の共感もできない。

7話


画像引用元:啄木鳥探偵處 7話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

ちょっと看過出来ないのが7話だ。なにせ「二銭銅貨」のパクリだ。
トリックや暗号、細かい部分までそのままだ。
ここまでされるとパロディともいえず、オマージュとも言えない。パクリだ。
このエピソードをきっかけに作中に出てくる平井太郎(江戸川乱歩)が
のちに二銭銅貨を書くことになるとしたいのはわかるが、正直、看過できない。

そもそも、彼は3話で二銭銅貨を書いているシーンが作中でも猫写されており、
7話で平井太郎(江戸川乱歩)が事件に絡むことで後に二銭銅貨を書くきっかけに
なりましたと言うならわかるが、3話のシーンがあるせいで
話がいまいちつながっていない。調べた所、3話は原作のエピソードだが
7話はアニメオリジナルストーリーだ。

原作を引き伸ばすためのアニメオリジナルエピソードのせいで
明らかに余計なことをしてしまっている。
この7話のエピソードもオチ自体は「石川啄木」のイタズラだった。
というオチは面白い。

しかし、どの話も話のオチは悪くないのに過程の推理が甘かったり、
7話のように話が丸パクリだったりと、
1話1話の話がしっくりとこない。

そもそも7話以降の話はどうも「江戸川乱歩」の作品を
明らかに意識、もしくはパクってるエピソードが多く、
江戸川乱歩の作品を読んだことがある人なら
「二銭銅貨?」「屋根裏の散歩者?」「陰獣?」といろいろな作品が浮かぶ。

平井太郎(江戸川乱歩)が出ていることもあり、
彼がこの作中の事件を題材にして後に作品を書いたということはわかるものの、
そもそも、それならば「石川啄木」が主人公である必要性はまるで無い。
平井太郎(江戸川乱歩)が探偵のような行動や言動をしていることも多い。


画像引用元:啄木鳥探偵處 10話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

ただ終盤のエピソード自体は悪くない。
1クールの引き伸ばしが終わり、ようやく本筋に入ったという部分はあるものの
「石川啄木」が病にかかり、そんな中で失恋をし、想い人を失う。
死への恐怖、死が目の前に迫ってくる事を実感する。

借りた金の一分を返し、生前整理のようなものを始める。
自らが夢見た「小説家」の夢を死を前にしたからこそ、
もう1度目指し、自らの想いを、自らというものを形に残そうとする。
想い人の望み通りに生まれ変わろうとする。
どんどん痩せこけ、どんどんと死が目の前に迫る。
しかし、自らの小説を「夏目漱石」に見せるものの、評価はされない

決死に書いたものが評価されず、彼は自暴自棄に陥る。
変わろうとしたのに変わった自分が評価されない。だからこそ彼は元に戻る。
金をたかり、大切なものを壊し、人を殺そうとまでし、自らを傷つけようともする。

そんな彼を「金田一 京助」は全て理解し、彼を支える。
あまりにも無償すぎる彼の愛は尊さを感じるものの、
同時に「なぜそこまで」石川啄木という男に彼はそこまで無償の愛を捧げるのか。
そこがいまいち納得できない。

本来は余計な引き伸ばしなどセずのこのエピソードまでつなげれば
そんな違和感は生まれなかったかもしれない。
しかし、引き伸ばしてしまったがゆえに妙な引っ掛かりを覚えてしまう。

恐らくこの作品で描きたいのは事件だの推理だの探偵だのではなく、
「石川啄木」という男と「金田一 京助」という男の関係性だ。
ある意味でボーイズラブの要素すら感じる。

愛というものでしか語れないような二人の共依存ともいうべき関係性を
見る側がどう受け止めるかで二人の関係性の印象も変わるだろう。
もはや視聴者が「なぜこんなクズにここまで思い入れするんだ」と思うのは
野暮だ。二人には二人にしかわからない関係性がある。

終盤


画像引用元:啄木鳥探偵處 10話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

1話からの謎が回収されたりするものの、
それ自体はこの作品ではどうでもいい事だ。
うまく伏線を活かしたりするわけでもない。
意外な人物が「黒幕」である衝撃はあるものの、やや唐突だ。

二人の関係性は彼が死んでも続く。
そう感じさせるほどのラストはある意味この作品らしい終わり方であり、
「オチ」は良いというこの作品の良さを、
最後も感じさせてくれた。

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総評:共依存の二人


画像引用元:啄木鳥探偵處 12話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

全体的に見て、この作品自体が6話くらいでまとめられるならば、
黒幕の正体、「石川啄木」という男と「金田一 京助」という男の関係性を
芯に捉えたいい作品になったかもしれないと感じさせる。
しかし、明らかに原作を引き伸ばすための引き伸ばしが目立ちすぎる。

大量のアニメオリジナルキャラクター、アニメオリジナルエピソードなど
本筋からそれた脇道のエピソードが非常に多く、
本来は短編小説だった原作を1クールに引き伸ばすための要素があまりにも多い。
そのせいでこの作品の「魅力」や「良さ」を感じるのが終盤になってしまっており、
見ても見なくても良いようなエピソードも多い。

「石川啄木」という男のクズっぷりも凄まじく、特に序盤はそれを感じやすい。
10話まで見ると、そんなクズを愛する「金田一 京助」との関係性の
深さを感じることができるものの、多くの視聴者は3話あたりで限界だろう。
沿う感じさせるほど「石川啄木」という男のクズっぷりが凄まじい(苦笑)

彼のクズっぷりを受け止めきれて、なおかつ「金田一 京助」との
BLにも似た関係性を受け入れられるかがこの作品を楽しめるかのポイントであり、
なかなかにハードルが高い。ミステリーとしての面白みはほとんどなく、
ここまでアニオリキャラやアニメオリジナルエピソードを入れるならば、
いっそこの「石川啄木」と「金田一 京助」をサブキャラに据えて、
江戸川乱歩を主人公にした方が良いのでは?と感じてしまう。

かなり好き嫌いの分かれる「石川啄木」というキャラを
現実のとおりに濁すこと無くクズに描いたという部分は興味深いが、
それを「面白い」と感じるかどうかは人によってかなり違う作品だ。

個人的な感想:やりたいこと


画像引用元:啄木鳥探偵處 5話より
©2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会

個人的には序盤から中盤はどうにもこの作品の魅力がわからなかったが、
終盤あたりで見えてきたことで作品全体としては
そこまで悪い印象がつかなかった作品だった。

ただ、序盤から中盤までのキャラ猫写、弱いミステリー要素など
気になる部分はかなり多い。
「文豪ストレイドッグス」などのイケメン文豪ブームに乗っかろうとした
作品だったのかもしれないが、いまいちキャラの魅力を引き出しきれずに
終わってしまった印象だ。

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コメント

  1. 今野悌治 より:

    3話ぐらいで挫折しました
    脚本は岸本卓さんでしたね 歌舞伎町シャーロックでも思ったのですが岸本さんは推理物には向いていないのではないかと(ひとりよがりが激しくてw)
    他の作品は面白いものが多いのですけれどね