「老人Z」レビュー

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映画
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評価 ★★★★☆(70点) 全80分

あらすじ 看護学校に通う晴子はボランティアで高沢老人の介護を行っていたが、高沢が最新型介護ロボット「Z-001号機」のモニターに選ばれ、お役御免となってしまう。引用- Wikipedia

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画期的すぎる老人介護問題解決策

本作品は1991年に公開されたアニメ映画作品。
監督は北久保弘之、制作はA.P.P.P.
原作、脚本、メカニックデザインには大友克洋、キャラクター原案には江口寿史、
美術設定には今敏とビッグネームが驚くほど並んでる作品だ。

始まりは…


引用元:(C)1991 TOKYO THEATERS CO.,INC/KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD/
MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.

この作品の第一声は「晴子さん、漏らしちゃったよぉ~」だ(笑)
寝たきりの独居老人が介護をしてる女の子を呼ぶ声であり、
この作品はなんなんだ?と思わず思ってしまうような作品だ。
そして世界観が語られる。

この作品は高齢化社会がより深刻になった日本で、
厚生省が老人介護の打開策として1つの事業を立ち上げる。
それが全自動介護ロボットによる介護だ。
ベッド型のその装置に老人を入れ、寝たままの状態で食事も入浴も排泄も運動も
健康管理も全自動でできてしまうロボットだ。

そんなロボットのモニターとして寝たきりの老人である
「高沢喜十郎」が選ばれるところから物語が始まる。
彼のもとにはもともと19際の女子大生が介護に訪れていたのだが、
彼女が介護してる眼の前で老人は国に連れて行かれてしまう。

Z-001号機


引用元:(C)1991 TOKYO THEATERS CO.,INC/KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD/
MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.

厚生省が開発したロボットはある意味完璧だ。
後期高齢化社会になった日本では老人に対して若者の数が足りず、
介護職の人材不足は現実の日本でも深刻であり、
今後ますます問題になってくると言っても過言ではない。

そんな日本でロボットによる介護はある意味理想だ。
人の手を借りず、寝たきりの老人の世話を24時間完璧に行ってくれる。
家族や、介護に関わる人のストレスが無くなるというのは
理想的なロボットと言えるかもしれない。

娯楽設備も完備しており、テレビやオーディオ、ネットにもつながっている。
他のZ-001号機に収容されている老人とも会話することができる。完璧だ。
現実にこんなロボットがあったら救われる人も多いだろうと感じるほど
完璧な機械だ。

しかし、その完璧の上を行こうとしている。
「自ら増殖」し「自ら学習」し「自ら考える」コンピューターを搭載している。
ちなみに動力は小型原子力だ(笑)

愛はあるのか?


引用元:(C)1991 TOKYO THEATERS CO.,INC/KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD/
MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.

高沢喜十郎氏が収容されてる姿を見て彼を介護していた晴子は
「人間の愛情みたいなものを感じられない」と訴える。
確かに介護というよりは、ここまで行くともはや「管理」とも言える。
全部機械任せにすることは老人を厄介払いしたような感じすらある。

そんな中で彼女のもとに「助けて」というメッセージが届く。
機械に繋がれた老人は機械とほぼ同化しており、何度も何度も彼女に助けを求める。
彼女はおじいさんを助けようとするが、
そんな中でおじいさんがベッドごと勝手に動き出す。

家族の同意は取れていても、おじいさん本人の同意は取れていない。
意思がないのを良いことに強制的に介護施設に入れられたようなものだ。
彼女自身も昔、自分の祖母を介護施設に入れたという負い目があり、
だからこそ同じような状況になっているおじいさんに感情移入してしまっている

人が愛を持って介護する、それは理想であると同時に理想論だ。
現実的なロボットの介護を推し進める国と、愛のある介護をしたいという人、
この両者の対峙が物語の中に入れ込まれている。

遠き思い出に


引用元:(C)1991 TOKYO THEATERS CO.,INC/KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD/
MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.

亡き妻の声を聞いたおじいさんは「鎌倉」に行ったことを思い出す。
コンピューターは自己進化を続け、人の管理下から離れてしまう。
おじいさんは思い出後へ行きたいだけだ、
その思いだけで暴走し続け鎌倉の海へ向かっていく。

前半こそ真面目に介護問題を描いてる部分があるのだが、
後半からはさながら怪獣映画のごとくだ。
誰の言うことも聞かずに暴走する老人はまるで怪獣のようだという
暗喩かもしれないが、どんどん進化し巨大になっていく老人Zの姿は
怪獣映画の怪獣が進化していくような雰囲気すらある。

街を縦横無尽に駆け巡り、破壊しつづけていく。誰も暴走する老人を止められない。
扱ってる問題や暴走する老人など描き方一つでシリアスになってしまいそうだが、
この作品はあくまでもコミカルに描いている。

最初は暴走する老人に反対していた厚生省の人間も、話し合うことで理解を示す。
彼はあくまでも「後期高齢化社会」の介護問題をなんとかしたいだけだ。
そんな彼の真摯な思いとは違い、進化するコンピューターを軍事的に利用するものは
おじいさんを止めようとする。

意思の宿るコンピューター


引用元:(C)1991 TOKYO THEATERS CO.,INC/KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD/
MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.

進化したコンピューターはおじいさんのために行動している。
彼の体を気遣い、彼の気持ちを気遣い、彼の願いを叶えようとする。
亡くなった妻の人格を模倣し、彼のために行動する姿は
コンピューターでありながら愛情を感じる。

自分の身が破壊されても、おじいさんをなんとか海に送り届けようとする姿は
決して「管理」するためのコンピューターではなく、
「介護」するためのコンピューターの姿だ。
短い尺でAIの人間性の目覚めまで描いている。

コンピューターではなく「高沢喜十郎」の妻として彼を守ろとする姿は
少し涙腺を刺激されるほどだ。
だが、そんな感動的かつまとまったストーリーを見せてくれた後に
この作品には「オチ」がある(笑)

おじいさんに訪れる「お迎え」という名のオチはこの作品らしい
コミカルな終わりになっていた。
登場キャラクターが「拝んで」終わる作品などこの作品くらいかもしれない。

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総評:今だからこそ


引用元:(C)1991 TOKYO THEATERS CO.,INC/KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD/
MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.

全滝に見て80分という尺で非常によくまとまって描かれている作品だ。
後期高齢化社会の日本という未来を予知したかのような日本で、
もしかしたら今後本当にそうなるかもしれない機械による介護という要素と、
その問題点も描きつつ、現実問題と理想論のぶつかり合いをするキャラクターと、
その問題の果に起こった暴走はハチャメチャではあるものの痛快だった。

20年前の作品であるがゆえに少し古さを感じる部分はあるものの、
江口寿史さん原案のキャラクターは今見てもしっかりとした可愛らしさがあり、
大友克洋の描く世界観とメカニックデザインと脚本は流石としか言いようがない。
美術設定に今敏さんがいたからこその1枚絵としてみても圧巻の
シーンの数々は手書きのセル画時代の「凄さ」を画面から感じるとることができる。

20年前の日本よりも後期高齢化が進み、人材不足に悩む日本という今だからこそ、
この作品を見て響くものが多く、
20年前の作品なのに色褪せない面白さがしっかり詰まっている作品だ。

個人的な感想:見返すと


引用元:(C)1991 TOKYO THEATERS CO.,INC/KADOKAWA SHOTEN PUBLISHING CO.,LTD/
MOVIC CO.,LTD/tv asahi/Aniplex Inc.

このアニメ自体は私は2010年に1度レビューしており
サイト開設当初に見た作品だった。
いざ見返してみると、約10年前に見たときよりも刺さる部分が多く、
最後のオチの「大仏」の姿は本当に圧巻としか言いようがない。

また10年後に見たら、より刺さる作品かもしれない。
現実の日本は本当にこの老人Zの世界のように後期高齢化社会と
介護問題がかなり深刻になってきている。
もしかしたら10年語や20年後には本当に機械で完全介護されている
時代がくるのかもしれない。

そう思うと色々と考えさせられてしまう作品だった。

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