評価 ★★★☆☆(58点) 全90分
あらすじ おかしと人間が仲良く暮らすスイーツランドでは、歌って踊るスーパーアイドル「たべっ子どうぶつ」が大人気。し 引用- Wikipedia
まさかのお菓子原作映画!?
本作品はたべっ子どうぶつのアニメ映画化作品。
監督は竹清仁、制作はマーザ・アニメーションプラネット
世界観
この作品の世界観は非常に不思議な世界観になっている。
ある日、隕石のようなものが落ちた結果、
人間がお菓子を食べると、そのお菓子が現れるようになった世界だ。
意味が分からないと思うがそういう世界観なのだから仕方ない(苦笑)
タラタラシしてんじゃねぇよを食べれば
たらたらしてんじゃねぇよのあのキャラが現れ、
うまい棒を食べればうまえもんが現れる。
同じキャラは複数存在しないようだが、いろいろと突っ込みどころというか
不思議な世界観が広がっている。
そんな世界を人間たちは受け入れお菓子のキャラクター、
「おかしーズ」と共存しており、
たべっ子どうぶつたちは「アイドル」として世界中に人気で
ワールドツアーをしているほどだ。
たべっ子どうぶつに描かれていたおなじみのキャラクターが
まるではやりのアイドルのように歌い踊るさまは
シュールさすら感じられるほどであり、
独特すぎる世界観が広がっている。
この作品はたべっ子どうぶつでおなじみの
製菓会社であるギンビス が原作となっているが、
そんなギンビス以外の商品も当たり前のように出てくる。
ばかうけやうまい棒、ポリンキー、もうお菓子の
アベンジャーズ状態だ(笑)
ただあくまでもサブキャラというかゲストキャラ的に
画面に出てくるお菓子も多く、
イメージとしては「シュガー・ラッシュ」を
思い浮かべるといいかもしれない。
画面の端から端までお菓子だらけ、
どんなお菓子がでてくるのかを探すだけでも楽しい。
ただでてくるだけではなく、意思を持って動いている。
トイ・ストーリーのようなワクワク感、
ピクサー的な世界観がこの作品にはしっかりとある。
ライオン
本作の主人公はたべっ子どうぶつ のライオンだ。
百獣の王である彼はたべっ子どうぶつ のリーダーとして活動しており、
自分がリーダーだという自負がある。
だが、それは同時に自尊心につながり、リーダーだから
1番目立たないといけないとすら思っている。
そんな彼の立場を揺るがすのが「ペガサス」だ。
つのがあって優雅に空を舞う翼があり、歌も上手。
ペガサスの人気はライオンを上回るほどになっており、
そんな彼女にライオンは嫉妬してしまっている。
この作品、脚本家の方がトイ・ストーリーのような
ストーリーを目指して手掛けているそうで、
それを如実に感じる部分だ。
トイ・ストーリーは「アイデンティティ」の物語だ。
おもちゃに実は意思があり、そんなおもちゃである
ウッディにライバルであるバズ・ライトイヤーが現れて、
彼のアイデンティティが揺らぐ、そんな話が描かれていた。
この作品もそんなアイデンティティを描いている。
彼らはお菓子だ、だが、命を持ち、意識を持ち、
人々に愛される存在になっている。
だからこそ、自分の立ち位置、存在意義を考えてしまう。
ペガサスという自分のアイデンティティを揺るがす存在が
現れたことでライオンは焦るのだが、
彼らの故郷であるスイーツランドが「綿あめ」に
乗っ取られる所から物語が動き出す。
綿あめ
街中が綿あめだらけになり、人っ子一人居なくなり、
街にある城には巨大な綿あめが刺さってる状況だ。
そんな綿あめたちの目的はシンプルだ。
「この世にはお菓子が多すぎる、綿あめくらいでいい」
とんでもない理論ではあるものの、
綿あめという他のお菓子に比べて人気のないお菓子だからこそ、
彼らが反旗を翻すような状況になっている。
たべっ子動物たちはあくまでお菓子だ、彼らに「戦う力」などはない。
なすすべもなく城からなんとか逃げ切るものの、
ペガサスだけは捕まってしまう。
どうにか助けようとしたものの、助けられなかったライオンを
仲間たちは攻め立ててくる。
ペガサスの人気に嫉妬したんじゃないか、
ライオンはペガサスを見捨てたんじゃないか。
このあたりのストーリーラインもまさにトイ・ストーリーだ。
しかし、そんな序盤をすぎるとトイ・ストーリーではなく
「たべっ子どうぶつ」の映画としての本領を発揮していく。
いただきます
おかしーずは不思議な隕石の力によって生まれた存在だ。
誰かに食べてもらうことで彼らはお菓子ではなく、
知恵と命が宿り動くことができる。
誰かに食べてもらわなければ動くことすらままならない。
そんな彼らにはお菓子としての「本能」がある。
「いただきます」、人間によるこの一言で彼らは
擬人化していたとしてもお菓子の姿に戻ってしまい、
再び食べられるまではそのままだ。
誰かに食べられることで存在することができる。
お菓子としての「存在価値」をさりげない一言と
描写で描いており、大人でもこのいただきますによる変化は
予想外なシーンになっており、中盤辺りから盛り上がってくる。
綿あめ以外のお菓子を亡き者にしようとしている綿あめに対し、
この「いただきます」という言葉が唯一の武器だ。
しかし、お菓子である彼らがその言葉を呟いても意味がない、
人間が言わなければお菓子に戻ることはない、
この仕組みも非常にうまい。
たべっ子どうぶつには戦う手段はない。
彼らにあるのは「かわいさ」だけだ。
そんなかわいさが生み出すコミカルな戦闘シーンは
みていてシンプルに楽しく、終盤の盛り上がりに繋がっていく。
綿あめ
終盤は怒涛の展開だ。綿あめの裏にいた「黒幕」が本性を表す。
彼の目的は人々から笑顔を奪うことだ。
子ども頃から厳しく育てられお菓子も親に与えられなかった、
そんな彼が子供の頃に自分のお小遣いで買った
「綿あめ」が唯一のお菓子の思い出だ。
しかし、そんな少ない思い出では彼を笑顔にすることはできず、
いつの頃からか人々から笑顔を奪うことで、
自分と同じようにしようと考えた結果が今回の騒動だ。
綿あめ以外のお菓子をなくし人々から笑顔を奪う。
歪んだ親の教育ゆえの末路だ。
子供の頃にお菓子やゲームを禁止した結果、
大人になってその反動が訪れる人も多い。
そんな厳しく育てられて大人になってしまった存在が今回の黒幕だ。
人から笑顔を、幸せを、お菓子を奪っても自分が幸せにはなれない、
幸せになることができないからこそ、みんなを不幸にしようとする。
この作品はそんな人をもテーマに盛り込んでいる。
綿あめは今作の敵ではある、だが、綿あめも愛されるお菓子だ。
夏祭りやイベントのときに「わたあめ」がほしいとねだったことは
誰しも1度はあることだ。
そんな思いに綿あめである「コッチャン」も触れることで、
たべっ子どうぶつの味方になってくれる。
それでも、黒幕は諦めず、「いただきます」の一言で
彼らはをお菓子に戻し、破壊してしまう。見方によっては非常に残酷な行為だ。
しかも、1度に複数のお菓子を食べてしまうと
合体した化け物が生まれてしまう。
見方を変えればお菓子や食べ物は
1つ1つ丁寧に食べようねというような
子どもに対するメッセージすら感じる要素だ。
終盤
終盤は見ごとな伏線回収に溢れている。
舌足らずな子ども、ペガサスの秘密、黒幕の正体、
ラストに至るまで綺麗に物語にばらまかれていた伏線を回収しながら、
ライオンの成長がきちんと描かれ、物語が終着する流れはすばらしく、
特に「ひよこ」の成長からのラストは大人でもちょっと予想外だ(笑)
きちんと物語の中で主人公が成長しており、
起承転結スッキリとしたラストと誰も不幸になっていない
幸せなラストであり、たべっ子どうぶつという
お菓子を原作とするストーリーを綺麗に紡ぎあげている作品だ。
ところどころのパロディギャグなど
子どもが理解しにくい部分は若干あるものの、
子どもも一緒に見ている大人も楽しめる、
素晴らしいファミリー映画に仕上がっていた。
総評:あなたが初めて食べたお菓子は何ですか?
全体的に見て、脚本家の方がトイ・ストーリーを目指したというのが
わかりやすく序盤は伝わるものの、中盤から物語が一気に動き出し、
お菓子が原作だからこその戦闘シーン、お菓子が原作だからこその敵、
お菓子が原作だからこその物語が紡がれており、
見終わった後に思わずお菓子が食べたくなってしまう作品だ。
アニメーションのクォリティも非常に高く、
お菓子たちのビジュアル、コミカルな動きはみているだけで楽しく、
セリフを理解しきれない小さな子どもでも楽しむことができるように
「動き」できちんと魅せている。
ただ、作品として一歩足りない部分もある。
90分という尺で起承転結スッキリと楽しめる作品ではあるものの、
序盤から中盤までがやや冗長で、終盤は盛り上がるものの、
子供向けにしてはやや長いと感じる部分だ。
しかし、きちんと一人ひとりのキャラが立っており、
序盤こそ子供向けだなと感じさせるストーリーではあるものの、
終盤ではみている大人の方がほろりと涙腺を刺激される展開になっており、
たべっ子どうぶつの映画と舐めてかかるとやられてしまう作品だ。
よくを言えば最期にもう1回くらいライブシーンがあったほうが
成長したライオンたちの姿を描くという部分でも良かったかもしれない。
エンドロールでワンカットは流れたものの、
冒頭でライブシーンがきちんと描かれただけに、
最期にライブシーンがなかったのはやや拍子抜けだった。
いろいろなお菓子のキャラが登場するのはシンプルに面白く、
たべっ子どうぶつだけではなく、様々なおかしのキャラの
アニメが見たいと感じさせてくれる作品だ。
それこそ本当にアベンジャーズのようにお菓子のキャラが集まって
世界を救う話が描かれる日が来るかもしれない(笑)
個人的な感想:シンプルに
王道かつシンプルではあるものの、予想外な展開もあり、
子供向けではあるものの、しっかりと
「たべっ子どうぶつ」の映画になっていた。
調べたところ、たべっ子どうぶつ自体は1978年あたりに
発売され、50年近く多くの人に愛されている商品だ。
なぜか去年、秋元康プロデュースで
9人の小学生による音楽ユニットが作られたりしたようだが、
そういう展開自体、発売以来ほぼない。
過去にCMでアニメ化されたようだが、
これだけ長く愛され続けている商品なだけに、
今後も映像化が続くことを期待したい。