つり球


評価/★★★★☆(78点)



制作/A-1 Pictures
監督/中村健治
声優/逢坂良太,入野自由,内山昂輝ほか


あらすじ
神奈川県の湘南・江の島に引っ越して来た男子高校生・真田ユキは、他人とのコミュニケーションが苦手で、これまでの人生で友人と呼べる存在がいなかった。学校への転入当日、ユキは宇宙人を自称するもう一人の転校生・ハルから強引に釣りに誘われ、不機嫌な同級生・宇佐美夏樹も指南役として巻き込まれる。最初は嫌々だったユキだが、釣りに楽しみを見出し、仲間を見つけ、変わった自分を実感する。



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本日からこのクラスに転校してくることになりました。
25歳ですが気にせず仲良くしてください


本作品はノイタミナで放映された作品
『モノノ怪』『空中ブランコ』『C』とクセのある作品を手がけている
中村健治監督による作品だ

まず見だして感じるのは作画の独特さだろう
かなりキツメの色で構成されており、ビビットな色合いと言えば聞こえはいいが
作画に関しても雑な部分を感じる
アップでの描写は問題ないのだが、遠くから見た時の描写が
やや適当になっている部分が多い。
だが、きつい色合いがその雑な部分をうまく隠し逆にこれは
この作品の味なのか?と感じられないこともない

ストーリーは序盤はやや強引といえるだろう
一種のコミュニケーション障害な主人公、自身の転校初日にいきなり
同じ転校生である自称「宇宙人」があらわれる。
彼は主人公をぐいぐいと釣りに誘う、何の脈絡もなしに(苦笑)
登場人物が釣りをするキッカケ、それまでの展開としてはかなり強引だ
そして自称宇宙人は主人公と同居し「地球を救おう」発言

この1話の段階は「頭の中で思いついた設定」をまとめる前に一気に見せられた感覚だ
詰め込みすぎとはいわないが設定を散漫に押し付けられたような1話は
あまりいい印象を抱かなかった
だが、2話以降はこの「釣り球」の世界観に入り込める。

根本的に言えば本作品は決して「釣りアニメ」ではない。
確かに主人公たちは釣りをしている、だが、それは釣りという行為を用いた
コミュニケーションの1つとなっている。

主人公は「コミュニケーション」が苦手で、注目されたりすると
般若のような顔になってしまう。
そんな主人公が強引に自称宇宙人に釣りに誘われる。
本当にそんな些細なキッカケで主人公は徐々に人とのかかわり合いを持とうとする
最初はただの意地、だが、「釣り」を通じての友達付き合いを
少しずつ楽しく感じていき、少しずつ「コミュニケーション」できるようになる
彼が徐々に成長していく様子は純粋に楽しめる

故に序盤の彼の態度やセリフは若干うざく感じてしまうかもしれない。
だが、中盤ぐらいになってくると彼はすっかりと成長しており
それに釣られるように周囲のキャラも変化していく
時には釣りをしながら、時にはぶつかって、
キャラクターが成長していく様子を味わうことが出来る。

釣り描写に関しては私自身、全然詳しくないので深く追求はしないが
初心者にもわかりやすいように専門用語を交えながら、
釣り初心者の主人公とともに知識を付けられるようになっている。
実際の釣具も出てくるので、釣り好きには必見なのかもしれない。
ただ、普段の作画と違い釣具だけ妙にリアルに描いている点は
若干の違和感を感じる部分だった。

終盤は序盤の伏線であった「地球を救おう」という発言を生かす。
それまでの日常描写はどこへやら、宇宙人であることは事実だったり
異星人調査機関が謎のスーツを着て現れたり、
島民は江ノ島踊りを無心に踊り出す。

序盤こそ自称宇宙人の「ハル」は若干暴走キャラでいい印象を抱かないのだが
この終盤では彼も主人公とともに成長している。
最初は自分の目的のためだったはずのなのに、目的は代わり
1人だけでも「大切なもの」を守ろうと頑張る姿、
最後は命がけで餌になるという生き様は本当によく描かれていた

終盤のストーリー展開はかなり緊張感がある。
それまでに丁寧にキャラクターの描写と成長を描き、
感情移入しているだけに、一気に高められた緊張感のお陰で
「この先どうなるんだ!?」というストーリー展開、
主人公と3人の友たちで江ノ島を救うため
友達のために一匹の「龍」を釣り上げる最終話は素晴らしかった。

その話までは釣りはただの釣りだ。
前述したようにコミュニケーションツールとしての「釣り」でしかない
だが、この最終話の釣りはまさに命がけの釣り。
作画、動き、迫力、釣りアニメにふさわしい釣りシーンだった。
ストーリーも綺麗にまとめられており、出会い・別れ・オチ(笑)も素晴らしく
一本の作品として素晴らしかった

全体的に見て1クールで綺麗にまとまっていた作品だった。
確かに序盤こそ、一気に見せつけられた設定や主人公のキャラのせいで
この「つり球」という作品の世界観をあまり好きになれなかったのだが、
話が進めば進むほど、主人公はきっちりと成長し
見せられた設定も綺麗に回収する。

本当に見事に釣り上げられた作品だ。
見ているこちら側がまるで魚のように、徐々にルアーを美味しそうな餌へと変化ていき
最後には食いついてしまった。そんな印象が残る作品です。

ただ、欠点を述べるなら名作ではないということ。
確かに面白い作品で高評価なのだが、演出に癖があり
作画の面でもかなり色がきついため目が疲れやすい感じのアニメだ
更に設定面でも「インド人」や好みの分かれる「ハル」のキャラクター、
唐突に強くなるSF設定など少々味付けの濃い部分があり、
こういった部分は見る人を選ぶだろう

序盤と終盤とのギャップが強すぎるのも好みが分かれるだろうが、
これは私個人としては「アニメだからこそ許される」ストーリー展開だったと感じる
日常からのSF、そして全編を通しての青春。
3本のアニメを混ぜて生まれたような作品は似たようなアニメばかりの
多くのアニメ作品の中で異彩を放っているといえるだろう

コレは個人的なことで評価に入れていないが、
ED曲は最悪だ、下手くそなカバーのせいでせっかくの名曲を台無しにし
毎話いいところで終わるつり球の余韻も台無しにする。
EDだけは毎回飛ばしてました。

ストーリー展開的に続編の可能性はないだろうが
作りようによってはOVAなどで続編できるのではないだろうか?
せっかく女性キャラクターも可愛らしいので、
女性キャラだけで釣りをしに行くというようなストーリーも見てみたい気もする。
続編制作・・・期待したいですね。