文章を読み解く面白さを活かしきれていない「ハーモニー」レビュー

評価★★☆☆☆(38点)全120分
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あらすじ 2019年、アメリカ合衆国で発生した暴動をきっかけに全世界で戦争と未知のウイルスが蔓延した「大災禍(ザ・メイルストロム)」によって従来の政府は崩壊し、新たな統治機構「生府」の下で高度な医療経済社会が築かれ、そこに参加する人々自身が公共のリソースとみなされ、社会のために健康・幸福であれと願う世界が構築された。引用 – Wikipedia


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「文章を読み解く面白さ」を活かしきれていない

原作は伊藤計劃による小説。
「ノイタミナムービー」第2弾「伊藤計劃プロジェクト」として
『虐殺器官』と共に劇場版アニメ化された。
監督はなかむらたかし、マイケル・アリアス。
制作はSTUDIO 4℃。

見出して感じるのはとっつきにくい世界観だろう。
冒頭でSFチックな世界観を描写したかと思えば場面が切り替わると
戦車のような乗り物で背景にはひまわり、
そうかと思えばラクダにのって砂漠からくるものが現れる。

そして描かれる戦闘シーン。
この作品は2015年の作品だが、あからさまな3DCGをぶちこんでくる。
はっきりいって、この3DCGが「浮いて」しまっており、
普通の作画のときとアクションシーンのときのあからさまな3DCGの
描写の差が激しく、強い違和感を産んでいる。

更にストーリーの構成。
基本的にこの作品は「回想」シーンが多い。
回想シーンで「世界観」を説明し、モノローグで「設定」を説明する。
小説という媒体ではこのストーリー構成で問題ないのだろう。

しかし、「アニメーション」という媒体ではこのストーリー構成では
ストーリーがいきてこない。
いわゆる物語の「起伏」が生まれにくく、
序盤から終盤まで非常に淡々とした印象が拭えない。

内容は理解できる。
しかし、ストーリーが進み段々と世界観や謎や
キャラクターの過去などが紐解かれていっても
「なるほど!そうだったのか!」という面白さではなく、
「あーそういう感じね」というような面白さが突き刺さらない感じだ。

はっきりといってしまえば「アニメ向き」とはいえない原作なのだろう。
会話劇でも「シャフト」のごとくクセのある演出で彩れば
淡々とした印象が拭えたかもしれないが、
妙に正統派かつきっちりとした演出が多く、
クォリティは高いのだがそのクォリティが面白さにつながっていない。
例えるならば色気のない美人のような感じだ。

中盤くらいからは「その演出は必要なのか?」と感じる演出やカメラワークが多い。
ただ二人が喋っているだけという場面なのだが、
喋っている人物を360度舐め回すように写したり、
何故か遠くのアングルから写したりと、地味なシーンを地味にさせないように
無駄にカメラを動かしまくっており、正直酔いそうになる


全体的に見て原作の「文章」を読み解く面白さを、
アニメーションという媒体で活かしきれていない作品だ。
回想やモノローグで話がストーリーが進むため非常に淡々としており、
「スクリーン」を意識していない画面づくりのせいで絵的にも地味だ。

アクションシーンと呼べるのは冒頭と中盤と終盤で1シーンくらいで
8割は淡々とした会話劇。
アニメーションとしては非常に「動き」の面での面白さが薄く、
背景の描写や人物の描写の作画はしっかりしているものの、
演出での遊び心がなく、硬い。

ストーリー的には面白い。
だが、原作を読んだほうが数倍、この面白さをストレートに味わえそうだなと
感じる部分が非常に多く、原作を読んでいないとしっくりこない部分も多い。
「文章を読む」面白さを「アニメーションでの動きの面白さ」に
うまく変換できておらず、冗長かつ淡々で地味な作品に仕上げてしまっている。

伊藤計劃プロジェクトは「屍者の帝国」でも感じたが、
原作の面白さは凄い感じるのに、その面白さを
アニメーションという媒体で活かしきれていない歯がゆさが強い。
「屍者の帝国」に比べればストーリーは分かりやすかったが、
映画としては「屍者の帝国」のほうが見ごたえがあった。

来年には伊藤計劃プロジェクトの最後の作品として
「虐殺器官」も公開されるが、
同じような感じにならないことを祈りたい。

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