「メイドインアビス」レビュー

2018年1月5日

評価 ★★★★☆(66点) 全13話
メイドインアビス

あらすじ 人類最後の秘境と呼ばれる、未だ底知れぬ巨大な縦穴「アビス」。その大穴の縁に作られた街には、アビスの探検を担う「探窟家」たちが暮らしていた。引用- Wikipedia

美しくも度し難い

原作は竹書房のウェブコミック配信サイトである『WEBコミックガンマ』にて
連載中の漫画作品。
監督は小島正幸、制作はキネマシトラス

見出して感じるのはびっくりするほど可愛いキャラクターデザインだろう。
身長が低く丸顔、コロコロっとしたデザインであり、
このまま平和なほっこり異世界日常系が始まってもおかしくないほど可愛く、
子供向けアニメと言われても違和感を感じないほどだ。

しかし、そんな可愛らしいキャラクターデザインのキャラの前に、
唐突に現れる巨大なモンスター。
キャラデザに対してモンスターのデザインはファンタジー世界の異型そのものであり、
容赦なく襲いかかるモンスターと必死に逃げるキャラクターの対比が素晴らしく、
1話の冒頭で一気にこの作品の世界観に惹き込まれる。
メイドインアビス

非常に安易なたとえではあるのだが、この作品の世界観はまるでジブリのようだ。
「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」をあわせたような
重厚な背景描写と細かい部分までこだわって描かれるからこそ、
作品の世界観に惹き込まれキャラクターたちにもしっかりと感情移入できる。

後から知ったが、この作品の美術スタッフは元ジブリのアニメーターだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/増山修
ハウルの動く城、千と千尋の神隠し、あの世界観を作り上げた背景が
この作品に息吹いており、ジブリではないのにジブリらしさを感じさせるのは
さすがとしかいいようがない。

調べれば調べるほどこの作品を作ってるスタッフは恐ろしい。
小島正幸監督はMASTERキートンやMONSTERなどを手がけており、
キャラクターデザインは黄瀬和哉、モンスターデザインは吉成鋼、
シリーズ構成は倉田英之と、名前を検索すれば
有名な作品しか出てこないようなメンツばかりを揃えている。
メイドインアビス

この作品の世界観は面白い。
巨大な穴が空いた街、その穴はどこまでも地下深くに続いており、
その穴でしかとれない「遺物」を求めて採掘を行うものが居る。
主人公もまた採掘者の見習いの一人であり、
母親は行方不明ではあるが偉大な採掘者の一人だ。
そんな彼女の前に謎のロボットが現れる。

まるで「天空の城ラピュタ」で空から降ってきたシータをキャッチしたように、
人間にしか見えないが人間とは思えない「伸びる腕」や傷つかない肌をもつ
ロボットの少年と出会うことで彼女の冒険は動き出す。
非常に王道なボーイミーツガール、いやガールミーツロボットだ。

きっちりと考え込まれた世界観、描き込まれた背景、可愛いキャラクターデザイン、
そして王道を感じさせるストーリーの始まり方。
この作品の1話を見て面白いと感じない人のほうが少ないのでは?と
思ってしまうほど、物語の初め方が素晴らしい。
メイドインアビス

この作品のストーリーの進め方は丁寧だ。
1話で出会い、2話で自分の出生の秘密を知る。
文章にすれば単純なのだが、きちんと丁寧に見せることできっちりと分かりやすく、
最近の1クールアニメにありがちな怒涛の展開ではない序盤だからこそ、
メインキャラクターにしっかりと感情移入できる。

主人公とヒロインが冒険に出るのは3話だ。
普通ならば「遅い」と感じてもおかしくはない、だが、
この作品は遅いとは微塵も感じない。
きちんと1話からストーリーを積み重ね、
自分の生まれた理由と母親に会うために危険な奈落の底へと挑む。

序盤はわりと「ほっこり」な印象を受ける作品だ。
しかし、この作品は話が進めば進むほど、穴の底へと進めば進むほど
辛辣な世界が待っており、シリアスになっていく。
メイドインアビス

彼女たちが潜る穴は単純にモンスターが住んでいるだけではない、
穴を深く深く潜れば潜るほど「上昇」するときに負荷がかかる。
浅い階層ではめまいと吐き気くらいだが、
12kmも下に進めば登るときに「穴という穴からの流血」し、
15km潜れば登る際に「確実な死」がまっている。

可愛らしいデザインのキャラクターのそんな姿が
平気で描かれるような設定がこの作品には潜んでおり、
序盤では潜んでいるが話が進むほど、その設定が顔を出す。
序盤ではめまい、中盤からは嘔吐、流血描写、終盤では人体の切断まである。
はっきりいって「グロい」作品だ。
メイドインアビス

彼女たちの目的は母親に会うためと自分が何者なのかを知るためだ。
世界名作劇場アニメのような目的でありながら、
あまりにも辛辣すぎる展開の数々はキャラクターに容赦がない。
はっきりいって好みの分かれる部分だろう。

原作者は間違いなく「ドS」だろうと感じてしまうほど、
自分の生み出したキャラクターをどんどんと過酷に、過剰に追い詰めていく。
特に終盤の辛辣すぎる展開は目を背けたくなる人もいるだろう。
気合の入った作画と気合の入った演技が相まって
単純な描写のグロテスクさというよりも
キャラクターを精神的に追い詰める「エグさ」を感じさせる。

こういった過激な表現は「エロ描写」と同様に好みが分かれる点であり、
序盤からその要素があるならばいいが、この作品は厄介なことに序盤では
その様子は感じさせない。
そのギャップこそがこの作品の魅力でもあるのだが、
嫌悪感を抱きそれを受け入れられない人もいるだろう。

さらに言えば残念なことに1クールで終わってしまうため、
ストーリー的にもかなり中途半端な所で終わっており、
いろいろな謎や伏線など明らかにされていない部分があまりにも多く、
丁寧に描写しているだけにストーリー進行が遅いのは欠点ともいえる。
メイドインアビス

総評

全体的に見て強烈に好みの分かれる作品だ。
序盤のジブリのようなほっこりな世界観とキャラクターからの、
中盤以降のエグくグロい展開と描写の数々は「面白い!」と感じる人と
「見たくない」と感じる人に分かれてしまう。

簡単に言えば「熱心なファン」と「強烈なアンチ」を生み出す作品だ。
なまじ、序盤の描写が非常に丁寧なだけにキャラに感情移入しやすく、
中盤以降の辛辣な展開の数々とのギャップで作品にハマるか、
逆にその展開を受け入れられず拒否感を生むか。

それは好みでしか無い。
きちんと作り込まれた世界観と設定だからこそキャラクター描写が光り、
ストーリーも面白い。その部分の評価は変わらない。

「子供」が主人公だからこそ、その世界観の中で必死に生き抜こうとする様と、
度し難いほどの現実を大胆に描写する事でこの作品の魅力を強烈に生み出しているが、
その魅力は強烈すぎるゆえにおぞましいと感じる人もいるだろう。
突き詰めていけば個人個人のモラルや倫理観の問題まで発展していきそうだ(苦笑)
メイドインアビス

個人的な感想

個人的には好きな作品だ。
うるさい団体やフェミニストな方に目をつけられたら確実に問題作として
取り扱われるであろう内容と描写であり、
私個人としては娯楽は好みが分かれるほど独創性があり面白いと感じ、
問題作として扱われるほどエンターテイメントとしては優秀だと思うのだが、
この作品を毛嫌いしてしまう人の気持ちも理解できる。

2期も決定しているが、1期の序盤のようなほっこり描写はもうないだろう。
できればストーリーの最後まで2期で描いてほしい所だ。

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