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最強VS最強「呪術廻戦 懐玉・玉折編」レビュー

4.0
呪術廻戦 懐玉・玉折編 ファンタジー
呪術廻戦 懐玉・玉折編
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評価 ★★★★☆(67点) 全5話

TVアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」ノンクレジットOPムービー/OPテーマ:キタニタツヤ「青のすみか」|毎週木曜夜11時56分~MBS/TBS系列全国28局にて放送中!!

あらすじ 甚爾との対決を経て挫折と苦悩を味わった五条と夏油は、それぞれが歩まんとする道を違えていく。 引用- Wikipedia

最強VS最強

本作品は呪術廻戦の2期の懐玉・玉折編。
監督は1期から変更され御所園翔太になったものの、
制作はMAPPAで変更はない。

本来は2期まとめてレビューする予定だったものの、
一部のサイトでは2期の懐玉・玉折編と渋谷事変と別れているため、
本サイトでも分けてレビューすることにした

戻れぬ青春

2期の1話である「懐玉・玉折編」は呪術廻戦の主人公である
虎杖悠仁の先生「五条悟」を主人公とした物語だ。
彼の過去を全5話ほどで描いている作品であり、
渋谷事変に入る前の、ある種の「前日譚」的なエピソードだ。

彼と「夏油傑」に何があったのか。
呪術廻戦では断片的に描かれていた「過去」と
呪術廻戦0で描かれた板部分をつなぐ物語が描かれている。

そんな前日譚的なエピソードだからなのか、
本編とは違った独特の雰囲気を醸し出している。
本編はダークバトルファンタジーものだが、
2期の1話では「ホラー」テイストをかなり強めている印象だ。

呪霊が街にはびこる世界、そんな呪霊を払う呪術師達。
そんな呪術師の二人がとある古びた屋敷にいる呪霊を探す。
呪術廻戦自体がバトルアクションとしての要素を強めているせいもあってか、
このホラーな雰囲気は呪霊というものを扱いつつもあまり感じられなかった。

しかし、この2期の懐玉・玉折編の序盤では
しっかりとホラーな雰囲気を強めており、
二人の女性が警戒しつつ、怯えながら呪霊を探す様は
ホラー映画のような雰囲気を醸し出している。

永遠に続く屋敷の景色、呪霊の腸に囚われた二人の女性。
どうすればここから抜け出すことはできるのか、
呪霊はどこにいるのか。

だが、そんなホラーな雰囲気を壊すのが「五条悟」だ(笑)

五条悟

前日譚なだけに今作に出てくる五条悟は若い。
本編の主人公である虎杖悠仁と同じ呪術高専の生徒である彼はまだ10代の学生だ。
大人の彼とは違い、どこか世間を舐めたような、
本編とは違う「余裕」という名の「おごり」が彼には有る。

自身が持つ力ゆえに、自身が持つ才能ゆえに。
彼は「自分が最強」だと思うからこそ自身を強者と思い、
呪術師としての力すら持たない一般人を弱者と下に見ている。
軽口を叩きながら吐き散らすセリフは心地よささえ感じさせ、
そんなセリフを同級生である「夏油傑」が受け止める。

彼にとっての理解者であり、少ない友人だ。
最強の自分と親友である「夏油傑」は同じく最強だ。
二人がいれば何事もなせる、そんなおごりがある。

そんな二人に「護衛と護衛対象の抹消」という任務がくだされる。
矛盾しているそんな任務に若い二人が任命されることで、
運命は狂い始める。

最強

呪術界の大物であり、不死の存在が天元だ。
だが不老ではない存在であるがゆえに、
彼は500年に1度、新しい体に乗り換える。
そんな新しい体が二人が護衛する対象であり、抹消する対象だ。

多くのものが、そんな新しい体を狙っており、常に敵が襲ってくる。
そんな戦闘シーンを盛り上げるアニメーションがしっかりとある。
流石はMAPPAと言いたくなるようなスピーディーなシーン展開と、
それをしっかりと見せるカメラワークがあり、
序盤からしっかりと盛り上がりどころと最強のふたりの姿を見せてくれる。

戦闘シーンも変に間延びしない。
サクサクと1つずつの戦闘シーンを描いており、
そのサクサク感がより、二人の「最強」感を強めている。
シンプルに彼らの戦闘シーンがかっこいい。

五条悟の「無限」の演出は思わずニヤついてしまうほどだ。
だが、彼はまだ若い、本編では使えた技の一部はまだ使えないものの、
それでも最強だ。

天内理子

そんな新しい体である女子高生は自らの運命を受け入れている。
「天元」との同化は「死」と同様ではあるものの、
同化であるがゆえに自身が天元になることを受け入れている。
天涯孤独の身であり家族は居ない。
しかし、それでも親しいものはいる。

まもなく来る別れのとき、そんな別れの時まで
彼女は精一杯青春を、今を楽しもうとしている。
そんな素直な彼女に二人は感情移入していく、
守るべき対象であり、抹消対象である彼女とは
数日間の付き合いでしか無い。

そんな彼女のために常に術式を使い守る五条悟と夏油傑。
彼女への思いが徐々に彼らの運命を狂わせていく。

伏黒甚爾

彼もまた最強の名を関する一人だ。
術師殺しの異名を持つ彼は「敵」として五条悟達に立ちはだかる。
彼の作戦は若い彼らには効果的だ。
長い護衛の期間の緊張感で体力と呪力を削り、一瞬のスキをつく。

本編では最強のキャラだ、そんな最強のキャラが
若さゆえのおごりと甘さゆえに傷ついてしまう。
呪力が一切なく、ただ「フィジカル」のみが最強の男と、
呪力最強の男戦闘シーンを迫力たっぷりに見せてくれる。

五条悟が術式を使えば、彼の体はあっけなくぶっ飛ぶものの、
ぶっ飛んだ先から一瞬で彼は近づいてくる。
グリグリと舐め回すようなカメラワークで五条悟の術式を見せ、
一瞬の動きで伏黒甚爾のフィジカルの強さを見せつける。
この緩急の付け方がすばらしく、緊張感と迫力のある戦闘シーンを見せてくれる。

1期はかっこいいアクションとスピード感のある作画で
見せていた印象だったが、2期は前日譚だからこその、
雰囲気の違いを生かしたケレン味のあるセンスあふれる
演出と作画を魅せている印象だ。

本編では最強の彼が、あっさりとヤられる姿は衝撃的だ。
五条悟という最強の呪術師の唯一の敗北、
完膚なきまで殺される姿、1カット1カットの印象が
みている側にしっかりと印象づく。

最強のふたり

天内理子は自身の運命を受け入れている、
だが、それは表面上だけだ。
彼女は天涯孤独の身ではあるものの、普通の女子高生だ。
自身が天元と同化する運命を受け入れつつも、
心のなかではそれを拒絶している。

そんな心を救ってくれるのが最強のふたりだ。
たとえ天元と敵対することになっても、
彼らは彼女を守ることをきめている。

だが、そんな思いはあっさりと打ち破られる。
あっけなく死にゆく「天内理子」と、
同時に夏油傑の前に現れる、もうひとりの最強。

1話1話の引きも素晴らしく、シンプルに先が気になる展開になっている。
五条悟だけではなく、夏油傑もまた最強だ。
その身に呪霊を宿し、様々な呪霊を持って戦う姿は
予想外の戦闘シーンを産む。

時に竜を呼び出し、時に銃弾のように呪霊を撃ち出し、
呪いで相手の動きを止める。
だが、そんな呪霊の最強もまたフィジカルの最強には敵わない。

最高にハイってやつだ!

だが、五条悟は最強だ。
たとえ殺されても、彼は死の淵から蘇る。
むしろ「強くなって」蘇ってくる始末だ(笑)

序盤では使えなかった反転術式を戦闘中に習得し、
死の淵から蘇った彼は最高にハイになって再び敵の前に立ちふさがる。
自身が更に強くなったことへの歓喜、
自身を殺した敵に再度挑むことへの興奮、
最強である自分が相まみえるのにふさわしい敵と戦える幸せ。

「天上天下唯我独尊」

まさに彼にふさわしい言葉だ。
更に最強になった彼が繰り出す「茈」は外連味あふれる作画から、
美麗さすら感じる作画で描かれている。
かっこよさから美しさへ、最強はかっこいいだけではなく美しい。

一人

五条悟は自他ともに認める最強になった。
しかし、それは孤独を生み出す。
二人は最強、そういっていた五条悟と夏油傑だったが、
夏油傑をあっけなく五条悟という天才が超えてしまう。

そんな天才が一人の男の孤独を強める。
たった1度のミスが彼を天才から孤高の存在へと変え、
孤独が彼の脳内をかけめぐり、孤独が彼を追い詰める。
一人の少女を救えなかったことがずっと彼の中には
トゲのように突き刺さっている。

呪霊を食い、呪霊を使い、呪霊を倒す。
彼の戦い方がより孤独を強めていく。
そんな彼に甘い言葉をささやく存在が現れる。

彼らがやってることは「対処療法」でしかない。
現れた呪霊を祓うか、封印するしか無い。
だが、彼の前に現れた女性は呪霊の原因をどうにかする方法を考えている。

呪霊は呪術師以外の存在から生まれるものだ。
一般人から漏れ出る呪力と感情が「呪い」を生み出す、
全人類が呪術師になれば呪霊は生まれない。
もしくは非呪術師を間引くけばいい。
イカれた考えであり、本来は不可能な方法だ。

五条悟は一般人を弱者といいつつも、彼らを守ることを誇りに感じている。
逆に夏油傑は一般人を弱者とは言わず五条悟の意見に反対するものの、
心のなかでは「現状」を生み出す原因である一般人を恨みつつある。
自分を慕う呪術師も犠牲になり、彼の孤独は増大していく。

そんな中で彼はとある事件に遭遇する。
一般人が呪術師を檻に閉じ込め監禁しているところを彼は目撃してしまう。
彼の孤独と悩みと運命はちょっとしたきっかけで歪んでしまう。
自身の両親すらも手にかけ、彼は自らの理想郷を歩む
修羅の道へと足を運んでしまう。

輝かしい青春の日々をともにした友人が、道を違えてしまう。
よき理解者だったはずなのに、親友だと思っていたのに。
道を間違えた友人を正す言葉を「最強」は持ち得ない。
孤独な二人の天才は、孤独故に道を違え、別の道に進んでしまう。

五条悟が彼の仲間になれば、夏油傑の目標は達成することもできるかもしれない。
だが、二人の道はもう交わることはない。

「学生生活」というものは大人になるための、
自分が進む道を見極めるためのものだ。
五条悟は最強の力を自分が正しいとおもうことに、
夏油傑は自らの力を自分がただしいとおもことに使いことを決める。

モラトリアムの終わりと、アイデンティティの確立から
二人の高校生は「大人」になってしまう。

総評:この外連味がたまらない

全体的にみて素晴らしい外連味あふれる作品だ。
1期とは違ってホラーテイストな序盤から、
五条悟という最強を際立たせるアニメーションと作画のクォリティの高さ、
そして若い二人の1つの失敗は外連味をうみ、
その外連味を際立たせるシーンごとの作画の変化が特徴的な作品だ。

ギャグシーンではあえて崩した作画を起用しており、
それが戦闘シーンやシリアスなシーンとのメリハリを産んでいる、
戦闘シーンではハイスピードでは有るものの、
1枚1枚の作画をきちんと見せる構図とカメラワークになっており、
それが外連味のあるアクションシーンに繋がっている。

展開自体もかなりシリアスだ。
のんきに沖縄旅行をしていたり、五条悟が逆ナンされていたり、
夏油傑とバスケで遊んでいたりするようなシーンも有るのだが、
あっさりと今作のヒロインとも言うべき存在が死んでしまう。

ラストの展開も救いがない。
道を間違えた親友を最強の力を持つ五条悟は救うことも出来ず、
道を違えたままだ。
そんなラストがなんとも言えない後味を残してくれており、
2期の「渋谷事変」への期待感を強めてくれる作品だった。

個人的な感想:分けて…

過去編ということで分けてレビューしようと思って
見だした作品だったが、分けて正解だったかもしれない。
呪術廻戦は0もそうだったが、本編とこの過去編、そして0と
どれも趣違い、主人公も違うがゆえの雰囲気の違いもしっかりと有る。

制作側もそれをきちんと意識して描いており、
この「 懐玉・玉折」編は五条悟が主人公だからこその、
外連味あふれる作品に仕上がっていた。

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