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「異世界食堂」レビュー

異世界食堂 ファンタジー
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評価 ★★★☆☆(58点) 全12話

TVアニメ「異世界食堂」本PV

あらすじ とある街、オフィス街に近い商店街の一角にある洋食屋「洋食のねこや」は、平日は普通の食堂であるが、土曜日だけは扉が異世界につながる不思議な店だった引用- Wikipedia

YOUは何を食べに食堂へ?

原作は『小説家になろう』で連載されているライトノベル作品。
監督は神保昌登、制作はSILVER LINK.

唐突

STORYの始まりはやや唐突だ。
ストーリーも割りと唐突でやや説明不足だ。
いきなり異世界の住民と思われるキャラクターが
日本の洋食屋にやってきて普通にご飯を食べている光景が普通に描写される。

獣人や魔法使いなど色々なファンタジーキャラが普通に食事してる様は面白いのだが、
世界観の説明がかなり不足している。
なぜ異世界の扉が食堂につながっているのかや、
異世界の人たちが何故食べに来ているのかなど
作品の「経緯」が見えずいきなり何の説明もなく始まり、
原作を読んでる人ならば問題ないかもしれないが物語の1話としては
地味な印象が強く、主人公も地味だ。

特徴のある客に比べて本来は主人公のはずの店主があまりにも普通だ。
はっきりいって普通のおっさんである。
何の特徴もなく印象にも残りづらく、
演じているのが「諏訪部順一」さんだからこそなんとか主人公としての存在感がギリギリにあるが、
キャラクターとしての魅力や存在感は薄い。

リアクション

キャラクターのリアクションもやや薄い。
料理アニメにおける食べた時の「リアクション」と言うのは最も重要だ。
過剰な演出や意味不明な妄想をするアニメもあれば、
性欲を感じさせるようなリアクションをする作品もある。

だが、この作品はそのどれでもなくひたすらに
「うん、うまい」「おいしぃ」とかなり普通だ。
過剰な演出や過剰なリアクションはほぼ無く、
非常に淡々としており、はっきりいって絵面としては地味だ。

キャラクターを演じる声優さんがベテラン陣ばかりであり、
例えば「勇者王」なあの方がライオンな獣人を演じており、
カツ丼を食している。
そんなベテランな声優さん達による、ある種の食レポが
この作品のメインであり、魅力でもある。

ひとりひとりのキャラクターには「好物」があり、
そんな好物を求めて異世界食堂の扉をくぐりやってくる。

作画

そのやや地味なリアクションに対して料理の描写は美麗だ。
1話こそかなり地味な印象だが、2話からはメンチカツ、エビフライ、
ミートソースにカレーライスと日本の料理屋で出される料理に
新鮮に感動し、美味しそうに異世界の住人が食べてくれる。

ただ、料理を切る時、アップになる時の作画はキレイでおいしそうなのだが、
いざフォークに指して口元に運ぶと作画が劣化する時がある。
作画の予算が足りていないのかスケジュールがきつかったのかは分からないが、
明らかに「作画のミス」が目立つこともあり、
なんとか頑張って静止画の料理の描写の質は保っているものの、
逆に料理の作画の質がいいだけに他の時の作画の悪さが目立ってしまっていた

料理アニメにおける食事の美味しさの表現が作画や
アニメーションで見せるのではなく、
演じている声優さんの演技力頼みになってることが多すぎる。
ベテランか中堅以上の声優さんが出ているおかげで救われている部分が多い。

序盤の杉田智和さんの「エビフライ」、立木文彦さんの「カレーライス」、
屋良有作さんの「ミートスパゲティ」、檜山修之さんの「カツ丼」など
こうして文章にしても「声」の想像のできる方は美味しそうに演技をしており、
それが想像通り見てる側にも伝わる。

だが、逆に新人声優や演技力不足な方、キャラクターの特徴的に
派手なリアクションをしづらい場合は美味しさが伝わりづらい。
本来は声優の演技だけでなくアニメーション的にも盛り上げないといけない部分を
盛り上げきれていないのはやや残念だ。

食事のじゃまにならない程度に…

この作品は1話2エピソードで基本的に構成されている。
やや淡々としてる部分や地味な部分、話の当たり外れはある。
しかし、その淡々とした感じがまるで食事にじゃまにならない程度の
「小咄」のように見れば見るほど染み渡ってくる。

主人公だけでなく、主人公の親の代からやっている
異世界につながる食堂。
そんな食堂だからこそ「歴史」があり「常連」がいる。

お客さんひとりひとりにエピソードが有り、
彼らが店に訪れた経緯、再訪する経緯、「いつもの」が決まる経緯を
1エピソード1エピソード、起承転結スッキリと描くことで
程よいおもしろさが生まれている。

店で客たちが名前を呼び合うことはない。
「メンチカツのやつ」「エビフライの」「カツ丼の」
それぞれの好物があだ名になっており、店だけで通じる名前だ。
長年続く街の小料理屋、地元の人が愛するそんなお店。
そんな店を覗き見るかのような感覚だ。

客が異世界人であろうと関係ない、
ひとりひとりの客の人情味あふれる異世界話が
食事の程よいスパイスになっている。

最終話

最終話まで見ると、この作品の輪郭のようなものがくっきりする。
少しずつ語られた異世界の歴史とバックボーンがきちんと
最終話で主人公の生い立ちとつながる。

ちょっとした縁が生まれ、その縁が異世界食堂を作り、
そんな異世界食堂でまた違う縁が生まれる。
キャラクターが増えることで、店に訪れるキャラが増えれば増えるほど
そんな「縁」が深まりストーリーが生まれていく。

客同士の色恋や因縁、関係性の変化は緩やかだ。
1話で一気に変化することはない、1話1話積み重なり
その関係性が変化することもあれば変わらないこともある。
最終話まで見て見ると、この作品で描きたいことが明確に見え、
2クールや4クールくらいで描いてほしいと思える作品に仕上がっている。

総評:このアニメは肉じゃがです

全体的に見て地味ではあるものの、話が積み重なるほど
染み渡るようなおもしろさを感じられるようになる作品だ。
1話2エピソードで色々な客が異世界食堂を訪れ、
そんな客同士の縁がまた新たな客を呼び、ストーリーを生む。

早い段階でパターン化とマンネリ化してる部分はあるものの、
だからこそ、その「惰性」が心地よくなる。
大きな事件や何らかのイベントが起きることは少ない。
少しずつ語られる異世界の歴史とキャラの過去、
それがつながる最終話の物語はこの作品の面白さがしっくりとくるものになる。

序盤こそ声優さんによる「食レポアニメ」感が強いものの、
そこからこの作品ならではのおもしろさが生まれている。
実写ドラマで言えば孤独のグルメや深夜食堂などと似ており、
アニメだからこそのファンタジー的な異世界要素が
この作品らしいストーリーを生んでいる。

料理自体の作画も思わず「飯テロ」といえるほど
深夜に見ればお腹が空いてしまう描写だ。
キャラクターの口に運んだ瞬間にやや作画のクォリティが落ちる部分は
残念ではあるものの、思わず「カツ丼」や「豚汁」を食べたくなる。

話の当たり外れはあるものの、そんな当たり外れがあるからこその
「趣」すら感じる。一軒の食堂が異世界とつながったら。
そんなifをたっぷりと魅せてくれる作品だ。

個人的な感想:2度目

個人的には料理アニメは大好きな部類なのだが、
最初はなかなかピンと来なかった。
しかし、再レビューに伴いこの作品を改めてみてみると
1度目よりもこの作品のおもしろさがどこかより染み渡り、
しっかりとこの作品を楽しんでしまった。

やや地味な部分はあるものの、食事のおともに1話、2話と
ちょっとずつ見ていくとこの作品の面白さが
貴方にも染み渡るかもしれない。

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