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「アサルトリリィ BOUQUET」レビュー

3.0
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評価 ★★★☆☆(51点) 全12話

あらすじ 近未来の地球。人類は謎の巨大生命体「ヒュージ」の出現で破滅の危機にあった。引用- Wikipedia

詰め込みすぎぃぃ!

本作品はメディアミックス作品として制作された作品。
ではあるものの、実質、ソシャゲ原作アニメであり、
本作品の放送後にソーシャルゲームの配信が開始した。
監督は佐伯昭志、制作はシャフト

下手くそ導入


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 1話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

1話冒頭から武器を持った女の子が謎の敵と戦っている。
そんな姿を見つめる幼い主人公。
女の子の正体はなんなのか、謎の敵はなんなのか。
1話冒頭の「引き」としては王道だ。

そんな始まりに対して世界観の設定を主人公が
モノローグベースで説明しまくりだ。

「はじめまして!私、一柳 梨璃っていいます」

視聴者に向けたセリフであることは分かるものの、
そんなメタ的なセリフでしか主人公の名前を紹介したり、
状況を説明できないのかと思うほど導入があまりにも下手くそだ。

自分が入るのが名門の「リリィ」養成のための学校であり、
リリィというものが50年前にいきなり現れた人類の敵に
対抗するための存在であること。

それを1から100まで説明してしまう。
世界観や設定を説明台詞で視聴者に説明するなど素人にでも
できることだ。
いかに自然に世界観や設定、キャラの名前を視聴者に
見せるかがアニメーションという媒体では重要であり、
説明を説明台詞で長々と視聴者に向けてするなど悪手でしかない。

1話はこういった説明台詞のオンパレードであり、
とにかく1話ですべての設定を説明しようという
制作側の意向は感じるものの、それが面白さにはなっていない。

この世界では10代の女性しかヒュージに対しての武器である
CHARMを最大限に使うことしかできない。
この手の設定は「インフィニット・ストラトス」の後から
増えまくっているが、10代の女性に戦わせるための設定でしか無い。

こういう設定があるならば「ストライクウィッチーズ」のように
年齢を重ねたキャラの力が消失していく「葛藤」などが
描かれていれば意味があるが、この作品でそういった部分は
描かれていない。
あくまで10代の女性を戦わせるためだけの舞台装置だ。

提示


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 1話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

1話からどんどんとキャラクターが出てくる。
1クールで総勢20名近いキャラクターが出てくるものの、
結果的に、掘り下げ不足のキャラクターも多い。

1話で設定、世界観、キャラクターなど作品の序盤で
説明する部分をまとめて一気にやっている感じが強く、
方法としてはいささか乱暴ではあるものの、
この作品が1クールしか無いために、
1話に説明を詰め込んだのかも知れない。

この作品の基本情報を見せた後にバトルシーンが描かれる。
基本的にこの作品は「武器」による戦いだ。
少女の身に対して大きな武器を振り回す姿は迫力があり、
どこか「ロボットアニメ」を彷彿とさせるようなカメラワークや、
武器の変形機構はそそられるものがある。

1話の段階で「こういう世界」で「こういう女の子達」が
「こういう敵」と「こういう風に」戦って「百合」です。
というのが伝わるようになっている。

百合


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 2話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

この作品はほぼ男性キャラは出てこない。二人くらいだ。
女の子だらけの世界観、そんな世界観だからこその「百合」要素
命の危険のある状況に身を置く少女だからこそ、
生存本能から湧き上がる恋愛感情が生まれやすいせいなのか、
女の子しか居ない場所だからこそ結果的にそういう関係性も生まれる。

女性キャラクターは基本的に艶かしく描かれており、
スカートごしはお尻の形がくっきりと分かるようなシーンがあったり、
下着や、お風呂、いわゆる「壁ドン」的な距離感で顔を近づけるような
シチュエーションも多い。

いわゆるマリア様がみてる的な要素もある。
「シュッツエンゲルの契り」と言われるそれは、
上級生を「お姉さま」と呼び、擬似姉妹のような関係性を結ぶ。
露骨に「マリア様がみてる」をこの作品でやりたいんだなと感じる要素だ。

主人公は過去に「白井 夢結」に助けてもらったからこそ、
彼女と「シュッツエンゲルの契り」を結びたいと考えている。
だが、彼女は過去の出来事から人と戦うことを望んでいない。
そんな彼女が主人公に影響され、少しずつ変わっていく。

この作品で描きたいのはそういった少女たちの百合ドラマでもある。
戦闘中であろうが抱き合い、イチャコラしつつ、
関係性が深まったからこそ最後は二人の合体技で勝利を掴む。
百合、愛情、勝利なわかりやすい構図がこの作品にはある。

設定やキャラが多いからこそ展開もかなり早く、
色々な要素を引き伸ばしすぎないためダレない。
この作品はいい意味でも悪い意味でもわかりやすさを重視している。

キャラの多さ


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 2話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

キャラ数は多いものの、そういう関係性を二人一組で結ぶため
実質一人のキャラクターというよりは
「カップル」として認識できるキャラクターたちも居るため、
話が進んでくるとキャラの把握はしやすくなる。

カメラアングルもかなり狙っており、肉感的な太ももや胸など、
キャラが登場する前にキャラクターのパーツをまず映してから
キャラの顔を映す始末だ(笑)

シャフトらしいとも言えるエロスな女体美を
この作品ではたっぷりと味わうことができる。
キャラクターはたしかに多いものの、
一人一人のキャラクターデザインにこだわりを感じる。

一応「学園」という場所で彼女達は制服を着ているのだが、
同じ制服だからこそ目立つ体格差があり、
制服は制服でもノースリーブに改造してる子がいたり、
制服以外ならば髪型や体格などで特徴を出そうとしているのを感じる。

ただ、それでもキャラが出るたびに、
初登場でもないのに名前のテロップが出る、
主人公でさえ毎話きっちりとテロップが出る。
制作側もキャラの印象をはっきりつけられていないことは
承知の上なのだろう。

どうにか名前を覚えてもらいたいという意気込みは感じるものの、
逆に「あと何話たてば名前のテロップがなくなるんだろうか」と
変なところが気になってくる。
ちなみに主人公含め全キャラ最終話までしっかりと出る(笑)

ゆるゆり


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 5話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

序盤も中盤も敵をそっちのけで彼女達は百合百合している(笑)
日常描写が多いからこそ、キャラクターの印象も残りやすい。
「シュッツエンゲルの契り」を結んだ関係性だからこそ、
その関係性を彼女達は楽しんでると言っても良い。

誕生日に何を渡そうか悩んだり、
レギオンというチーム的なものを作るために頑張ったり。
ゆるーい彼女達の日常が描かれる。
敵もそんな百合な空気を読んでまるで襲ってこない(笑)

だが、そんな日常も「主人公のスキル」のせいではないかという
疑問が出てくる。彼女は「支配」のスキルを持っている疑惑があり、
彼女の周りに自然と人が集まり、
過去に色々あったお姉さまでさえ彼女を慕うのは
そのスキルのせいではないかと。

ゆるく可愛らしい日常を描きつつ、そういった陰の部分を見せることで
自然と話の続きが気になってくる。

情緒不安定


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 6話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

主人公のお姉さまは情緒不安定の極みだ。
過去に彼女自身もお姉さまを失い、
彼女自信が暴走のような能力があるからこそなのだが、
メンドクサの極みだ。

自分自身のトラウマを乗り越えたのか?と思いきや乗り越えておらず、
いつまでも暴走し、過去の女を忘れられず、
今の女である主人公にメンヘラ大爆発を決め込む。
どんどんと主人公に依存していく姿と情緒不安定ぶりは笑うしか無い。

「うわぁぁぁ!」と大暴走したかと思えば、
主人公にちょっと説得されるとあっさりと機嫌を直し、戦いに戻る。
お姉さまのメンタル次第で戦況が変化する様は
百合アニメとしては面白く、お姉さまのメンタルケアを
常に主人公含め全員でやっているような感じだ。

彼女のメンタルがもとに戻り、主人公との愛情が深まり、
仲間との友情が強固なものになると敵に勝利することができる。
「合体技」的なものもあり、それぞれのスキルも含めて
ソシャゲ的なシステムを感じる部分はあるものの、
そういったシステム部分をうまく百合と友情に落とし込んでる。

詰め込み


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 9話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

この作品は1クールではあるものの、
2クール分くらいの話を詰め込んでいる感じがある。
主人公のお姉さまも本来はもっと悩んで落ち込み考えるシーンが
長くてもおかしくないのだが、あっさりとそんな悩みが解決する。

このサクサク感はみやすさにつながっているもののの、
中盤以降から出てくる新キャラは本来ならば2クールアニメの
2クール目から出てくるような設定のキャラクターだ。

人類が生み出した敵の細胞から作られた「人造リリィ」、
それをめぐる政府やいろいろな組織の陰謀や対立。
人類にとって兵器とみなされれることもある「リリィ」の存在、
彼女達の敵でもある「ヒュージ」と、リリィもヒュージも使う
マギという力は何なのか。

90年代から00年代前半の世界系アニメを見ているような
世界観の設定は、明かされるたびに面白くなってくるものの、
流石に8話になって新キャラが出てくるというのは遅い上に
唐突に現れて、唐突に退場してしまうのは
詰め込み感が強く出てしまってあっけない上に展開についていけない。

本来なら2クールかけてやるような話を強引にテンポを上げて
1クールに収めてしまっているような感覚だ。
展開があまりにも急展開すぎて見ている側に感情がついていかない。

9話でそんな「喪失」を主人公が経験し、落ち込む中で10話では
主人公以外のキャラがみんなで主人公の髪飾りを探そう!と
なんだか妙に明るい音楽ととともにのんきに描かれるのも
空気感にそぐわず、シリアスをやるならやるでもう少しきちんと
できないのかと首を傾げてしまう。

多くのキャラに見せ場を増やすためにこういった明るいシーンを
多く入れているのは分かるものの、
シリアスとギャグの切り替えが下手で見ている側の感情も困惑してしまう。
キャラの多さという欠点を終盤で如実に感じてしまう。

喪失からの主人公の意識の変化と成長というストーリー展開は悪くないが、
後半の詰め込み具合が同時に目立ってしまっており、
そのストーリーの良さを素直に味わいにくくなっている

終盤


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 1話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

終盤の詰め込み具合は半端ない。
主人公のお姉さまはまた過去の女の件で情緒不安定になっている(笑)

何回同じような展開を繰り返すんだと思わず突っ込みたくなるものの、
そんな中で3体のヒュージが現れ、同時に彼女達の力を封印される。
誰も力が使えない状況で主人公だけが何故か力を使えるという状況で、
強力なヒュージがもう1体現れる。

これが11話までの展開だ。強力なヒュージをどう倒すのか、
メンタル崩壊中のお姉さまのメンタルはどうなるのか。
いろいろな状況が一気に巻き起る中での最終話だ。

そんな状況から最終話になると
封印された力が何故か解除され、お姉さまのメンタルも急に一気に回復し、
みんなで協力して11話で現れた敵を倒す。

お姉さまのメンタル問題の解決に1クール使ったと見れば悪くないと
感じる展開ではあるものの、ラスボスかと思った敵を倒し
毎話のようにあったお風呂パートから「私達の戦いはこれからだ!」で
終わるかと思ったら、今までで1番でかいヒュージが
海底に居ることが明らかになる。

ちなみに最終話の残り時間はもう12分もない。
あまりの展開の慌ただしさに笑うしか無く、
本来なら最終話のBパートだけで1話使ってもおかしくないような話を
10分足らずで繰り広げる。

終盤でここまで尺が明らかに足りてない状況になるならば、
アニメオリジナルキャラの話に3話かける必要はあったのか?と
思う部分もあり、尺の使い方がちょっと下手すぎる。

今までで1番でかいヒュージもほぼ何の抵抗もなく倒され
めでたしめでたしだ(笑)

総評:見てる側の感情が追いつかないんじゃ


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 12話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

全体的に見て1クールでまとめるためにかなりの強硬手段をとっており、
特に終盤は詰め込みまくりなストーリー展開が目立ってしまい、
慌ただしさが半端なく、見ている側の感情と理解がついていかない。
その割にはアニオリキャラで余計な尺を使ったりしており、
尺の使い方の下手さという欠点が話が進むほど出てくる作品だった。

しかし、この20人近いキャラクターをなんとか印象づけようと
11話まで登場するたびにキャラの名前のテロップを出したり、
活躍するシーンを増やすための展開があったりと、
この作品の目的でもあるソシャゲの宣伝という意味ではうまくやっている。

特徴的なキャラクターデザイン、それぞれ違う武器とスキルにより
名前は覚えきらないものの印象に残るキャラクターは多く、
日常描写を増やしたからこそ、百合百合な彼女達の関係性を
ニヤニヤと楽しむことができる。

バトルシーンも、さすがはシャフトといえるような
カメラワークで動き回っており、
しっかりと見応えのあるシーンに仕上がっている。

ソシャゲ的なシステムは感じるものの、
まるで「ゴレンジャー」の如く、みんなでパスを回して
「力をためる」合体技は面白く、そういった部分でキャラ数を活かし、
各キャラの見せ場を用意することで、
キャラの印象を少しでもつけようとする制作側の心意気を感じる。

世界観設定的にエヴァ以降の世界系なアニメを彷彿とさせる部分があり、
新鮮さという意味合いでは薄く、残っている伏線などはあるものの、
百合なバトルファンタジーとしては1クールですっきりとした
面白さの感じられる作品に仕上がっていた。

個人的な感想:続きはゲームで


画像引用元:アサルトリリィ BOUQUET 1話より
©AZONE INTERNATIONAL・acus/アサルトリリィプロジェクト

これが2クールあればもっと面白い作品になったかもしれないと
感じるだけにもったいなさを感じるものの、続きが気になる方はゲームで
ということなのだろう。

シンプルにキャラデザも良かった作品だった。
アイキャッチのイラストのレベルも高く、「キャラクター」というものが
大事なソーシャルゲームという媒体においては
このキャラデザの良さは際立つ部分だ。

個人的に原作ゲームをやろうという気持ちが生まれるまで
行かなかったものの、ソシャゲの宣伝としては
割と良かったのでは?と感じる作品だった。

ミニアニメも作られるようなので、今から楽しみだ。

「」は面白い?つまらない?

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