「蛍火の杜へ」レビュー

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ファンタジー
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評価 ★★★★★(81点) 全45分

あらすじ 祖父の家へ遊びに来ていた6歳の少女・竹川蛍は、妖怪が住むという『山神の森』に迷い込み、人の姿をしたこの森に住む者・ギンと出会う引用- Wikipedia

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これは甘くて苦い恋の物語

原作は「夏目友人帳」でおなじみの緑川ゆきによる短編マンガ作品。
監督は大森貴弘、製作はブレインズ・ベース
本作品は夏目友人帳と同じスタッフで制作されている短編映画作品となっている、

ボーイミーツガール


引用元:©緑川ゆき・白泉社/「蛍火の杜へ」製作委員会

冒頭で彼女は大人の姿をしている、就活を控えている彼女が
自分の家から飛び出し「夏」を思い出す。
子供の頃の自分の思い出、祖父の住む田舎での毎年の思い出を
彼女が思い出すところから物語が始まる。

出会いは幼少期、妖怪が住むという「山」で迷子になってしまった彼女は
「狐」のお面をつけた青年と出会う。
彼は「人間に触れられてしまうと消えてしまう」存在だ。

小さな少女と触れると消えてしまう不思議な存在が出会う。
美しいまでのボーイミーツガールが冒頭から描かれる。
繊細に書き込まれた田舎の山、夏という季節、
さすがは「夏目友人帳」のスタッフだといいたくなるほどの
「空気感」が作られている。

優しい音楽と優しい雰囲気、優しいキャラクター。
原作者である緑川ゆき先生の作品の世界観をアニメーションという媒体でも
きちんと表現している。

ほっこりしつつ、キャラクター同士の掛け合いにクスクスとさせられる。
妖怪が住む山を小さな幼女が「ギン」につれられて歩く、
自分の祖父も出会えなかった妖怪に出会い、自分の知らない世界が広がる喜び、
小さな頃の「夏の日々」の思い出を彼女は思い返す。

恋に


引用元:©緑川ゆき・白泉社/「蛍火の杜へ」製作委員会

体が触れられないからこそ心の触れ合いが増えていく。
ちょっとした会話や「秘密の共有」が幼い少女に恋心を募らせる。
夏の間にしか来れない「祖父の家」だからこそ、
夏にしか会えない相手だからこそ、思いはどんどんと強くなっていく。

「約束の夏」に彼のもとに訪れる。
毎年毎年彼女は成長していき、大人になっていく。
決して触れることの出来ない二人、夏の間にしか会えない二人、
この「障害」が二人の関係性をより強いものにしていく。

「何があっても絶対、私に触らないでね」
泣きながら彼にそう訴える彼女の気持ちは見ている側にも痛いほど伝わる。
どれほど愛おしくても、どれほど抱きしめたくても、
彼と彼女は触れ合うことは許されない。

少女の気持ちがどんどんと「恋する乙女」になっていく姿は
可愛らしさを感じさせると同時に、
切ない二人の関係性がどうなるのか、見れば見るほど気になっていく。
彼女の同級生が彼女に思いを寄せても、彼女は「ギン」のことばかりを想う。

強まる思い


引用元:©緑川ゆき・白泉社/「蛍火の杜へ」製作委員会

彼女はどんどん成長していく。小学生から中学生になり、高校生になる。
彼女は大人になりかけても彼を思い、
祖父の住む田舎に就職をしようとすら考えている。もっと彼に会うために。

だが、彼の存在はあやふやだ。人に触れられれば消滅する、人間でも妖怪でもない。
「山神」様の力で成仏をしていないだけの存在だ。
自身の存在のあやふやさと、彼女の彼への思いの強さで「ギン」自身も揺らぐ。
彼女に抱きつかれて消えてもいいとすら想うようになるほどだ。
二人はもう夏を待てないほど互いが好きになっている。

どれだけ互いを思っても触れられない存在。
この二人の関係性の描写と二人のキャラクターの魅力が
この作品の面白さそのものになっている。

二人の最初で最後の「デート」は何とも微笑ましく、
二人の最初で最後の「キス」はもうたまらないほどのシーンだ。
触れられない二人だからこそのデートとキス、
これほど儚く胸をときめかせるキスシーンを私は見たことがない。

別れ


引用元:©緑川ゆき・白泉社/「蛍火の杜へ」製作委員会

だが、別れは突然訪れる。本当にとっさの、本当にあっけないきっかけに過ぎない。
募らせた時間と思いと全く比例しないほどの「あっけない」別れのキッカケは、
最初で最後の二人の触れ合いだ。やっと触れられる。
その時間は本当に短く、あっけない。彼女の涙に自然と見てる側の涙も誘われる。
優しい妖怪たちの言葉が胸に染み、夏の恋が終わる。

もうギンはそこには居ない。
だが、彼女は思い出に導かれるようにあの山の近くにおとなになっても訪れる。
彼女にとっては一生忘れられない恋の話、
すっきりとしたハッピーエンドではなく、バッドエンドでもない。

美しさと儚さを感じさせる余韻のあるラストで物語の幕が閉じる。

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総評:短編映画の素晴らしさ


引用元:©緑川ゆき・白泉社/「蛍火の杜へ」製作委員会

全体的に見て素晴らしい短編映画だ。
「田舎の夏」という舞台で蛍という主人公が
ギンという少年と出会うことで始まるボーイミーツガールなラブストーリー。
このシンプルな話を丁寧に描き、雰囲気を作り上げ、キャラに感情移入し、
最後にはホロリと泣かさせる。

たった45分の尺しか無い。
だが、その45分の尺の中でこの作品の世界観に没入し、
切ない物語の結末に主人公と同じ用に涙を流してしまう。
話として「すごく盛り上がる」シーンがあるわけではない。
淡々と粛々と描き、ふいに展開が切り替わり物語が終わる。

短編映画だからこその絶妙な起承転結の使い方が素晴らしく、
見終わった後に「ああ、いい作品を見たな」としみじみと
体に染み渡るような感覚を味あわせてくれる作品だ。

大人も子供も男性も女性も関係ない。
等しく同じ感覚を味わえてしまう短編映画になっている。
ぜひ、この「せつなさ」を味わっていただきたい。

個人的な感想:


引用元:©緑川ゆき・白泉社/「蛍火の杜へ」製作委員会

話としてはすごくシンプルだ、だが、私はこの作品を
もう1度見ても泣ける自信がある(笑)
それほど話の完成度が高く、キャラクターにもしっかりと魅力がある。
さすがは緑川ゆき先生、さすがは大森貴弘監督と言いたくなる

夏目友人帳の世界観や雰囲気を好きな方には是非見ていただきたい作品だ。
これほど「刺さる」作品を久しぶりに味わった。
たった45分、されど45分。

短編映画だからこそのあっというまの時間が逆に物語のせつなさを
良い意味で強めている作品だった。

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