真実はいつも1つ・・・あれ!?解決したはずじゃ!?「六花の勇者」レビュー

2016年6月29日

評価/★★★☆☆(42点)

スポンサーリンク

真実はいつも1つ・・・あれ!?解決したはずじゃ!?

原作はライトノベルな本作品。
監督は高橋丈夫、製作はパッショーネ。
そう、あのRAILWARSのパッショーネである(苦笑)

見だして感じるのは主人公の圧倒的魅力だろう。
ファンタジー世界における「主人公」は剣か魔法、もしくはその両方が常であり、
それが王道のファンタジーアニメにおける主人公の
お決まりとも言える設定の1つとも言える。

だが、この作品の場合は違う。一言で言おう「卑怯」だ(苦笑)
剣は持っているが、小さなナイフのようなものを大量に投げたり
煙幕を使って不意打ちを仕掛けたり、
持っている剣は「まきびし(毒)」を巻くための道具だったりと
RPGで言う「ローグ(盗賊)」のような戦い方をする。

そんなずる賢い戦い方をするのに「一騎当千」の強さを発揮する。
1話の冒頭できっちりと「主人公」の強さを余すこと無く描き、
同時にその卑怯さも際だたせ「地上最強」を名乗ることで
物語の主人公にきっちりと好感をもつことができ、感情移入することが出来る。
せこい感じの戦いかたから人によっては好感を持ちにくいかもしれないが、
この作品だからこその個性ある「主人公」の描写というのは面白い。

そして、作品の雰囲気。
この作品は「ファンタジー」ではあるものの、王道のファンタジー世界とは少し違う。
特に服やキャラクターデザインなど、いわゆる剣と魔法のファンタジーというよりは
「シンドバットの冒険」のような異国情緒あふれるデザインになっており、
それがきっちりとした作画で描かれることでより
作品の雰囲気をきっちりと作り上げている。
とてもじゃないが、あの「RAILWARS」を作った会社とは思えない出来栄えだ(苦笑)

更にストーリー。
この世界では何百年に1度か魔神が定期的に復活し、
それを「6人の勇者=六花の勇者」が封じてきた
主人公もそんな6人の勇者の中の一人に選ばれる。
1話の時点でのストーリーだと「なんだ王道じゃないか」と感じさせる描写だ

きちんとした世界観の設定、きちんとしたキャラクター描写
1話から2話にかけて雰囲気こそ王道ファンタジーとは違うが
勇者による魔王の討伐という王道のファンタジーストーリーを描写する
しかし、この作品は「王道」ではない
王道のストーリーを描いた後に「反則」ともいえるストーリーへと展開する事で
作品の世界観に一気に引き込まれる。

本来、6人の勇者と魔神という設定ならば
旅をする中でどんどんと仲間が増えていき、最終的にラスボスを倒すというのが
王道かつシンプルなファンタジーストーリーだ。
しかし、この作品の場合は違う。

早い段階でどんどん仲間が集まるが、同時に疑心暗鬼が強まっていく
勇者が選ばれる前に「勇者候補」を殺したのは誰なのか?
「6人の勇者」しか存在しないのに7人目の勇者が存在するのはなぜなのか?
集まった7人の勇者はミステリーにおけるクローズドサークルのように
魔神が封じられている地域の一歩手前の森に閉じ込められてしまうことで
勇者同士が「疑心暗鬼」にかられていく。

そう、この作品はファンタジーでありながら同時にミステリーだ。
本来は6人しか居ない勇者が7人いる、「裏切り者」は誰なのか
ファンタジーの世界であえてコナンもびっくりな
「ミステリー」が展開される事で一気にこの作品の世界観に引き込まれる。
しっかりと王道ファンタジーを匂わせたからこそ
ミステリーへの物語の変換が素直に面白い。

だが、同時に異様なまでにテンポが悪い。
少し調べると原作一巻の内容を1クールのアニメにしているらしい。
ライトノベルの場合、アニメ化した場合は1巻あたり2~3話が平均だ。
それを4倍の尺にしているのだから当然、話が間延びしてしまう
特に6話以降は顕著にそれを感じてしまう。

たしかにこの作品には「丁寧さ」は必要だ。
序盤のファンタジー世界の描写があるからこそ中盤からのミステリーが映えるが、
しかし、丁寧に描きすぎているせいで物語の進行が異様に遅く
勇者同士の疑心暗鬼なストーリー自体は面白いのだが、
あまりにも話が進まないため中盤辺りからもどかしさが強まっていく

これが私のように放送終了後に一気に見るパターンなら若干薄れるが
一週間ごとに1話という放送形態でこの進行の遅さは歯がゆさすら生まれる
登場人物たちの疑心暗鬼から生まれる「勇者同士のバトル」自体は
前述した主人公の「卑怯さ」も相まって独特の面白さを醸し出しているのだが
肝心の「ミステリー」部分が微妙なのだ。

この作品の最大の謎は「誰が偽物なのか」という謎だ
魔法による結界を発動させて魔神のもとにたどりつけず、
密室状態をつくりだした7人目の勇者は誰か
それが中盤以降の話の主軸となり、ミステリーアニメのごとく推理するのだが
この作品は「魔法」のあるファンタジーの世界であることを忘れてはいけない

トリック自体にも「魔法」が絡んできてしまい、後出しの情報が多く
多くのミステリーアニメのように「推理」することが難しい。
7人目自体はミステリー慣れしてる人にとっては
「あ、こいつだろうな」と目星をつけていればわかりやすい行動をしているので
すぐわかるが、基本的に「会話」による推理が基本となってしまっており、
それが2,3話で終わるのならまだしも4話から最終話までそれが続く。

同じような作品でファンタジーではないが「ダンガンロンパ」があるが、
あの作品の場合はどんどんと登場人物が毎話にように事件を起こし、
「犯人を探す」というミステリーの面白さがあるが、
この作品の場合は魔神を倒すまでは6人の勇者を殺すことは難しく
1クールで「一人の犯人」と「1つの事件」を追う形になってしまっており、
それを登場人物同士の絶対死なないバトルで引き延ばしている感じが強い。

更に言えば主人公は別に探偵ではない。
金田一耕助の孫でもなければ、頭脳が大人で体が子供なわけでもない
最初は自分が犯人に疑われてアワアワしちゃうわ、
流されるままに行動している感じが強く探偵役としては物足りない。

犯人を決定づけるための「物的証拠」のようなものがあるのだが、
その「物的証拠」も主人公が見つけたり匂わせたりするのではなく、
他のキャラがいきなり持ち出してくる始末だ。

全体的に見てストーリー構成を間違えている作品だ。
これで原作が1、2巻しか出ていない作品ならまだしも6巻まで出ている。
丁寧さや原作のカットは必要かもしれないが1クールで6巻詰め込むことも、
逆に2クールの尺で丁寧にやることもできたはずだ。

強引に1巻を1クールの引き伸ばしたストーリー構成にした結果、
せっかくの「ファンタジー世界でのミステリー」が間延びしまくってしまっており、
恐らく原作では気にならない部分がテンポの遅さのせいで
アニメでは「気になってしまう」部分になってしまっている。

物語の主軸も、確かに1クールの主軸は「7人目」を見つけることだが、
作品全体の主軸は「魔神を倒す」ことであり、
その終わりに一切近づかないストーリーばかりが展開しているような感覚だ
確かに丁寧にやることは大切だが、流石に1巻を1クールに構成するというのは
無理がある。

更にラストの展開。
若干ネタバレになってしまうが7人目がわかった後に、
新たにもう一人の7人目が現れる。ある意味振り出しに戻るような展開だ(苦笑)
これが原作1巻のラストならば「おぉ!2巻が気になる!」となるが、
1クールも引き伸ばされた後に「もう1度」偽物探しをやる展開の流れになると
流石に辟易してしまう。

「俺たちの戦いはこれからだ!」というラノベ原作アニメではお決まりのような
ラストではあるものの、それはファンタジーものならばいい所で区切れば
2期への期待や原作購入意欲にもなって許される部分はあるものの、
この作品の場合はミステリーという要素もある。
流石に「俺たちの犯人探しはこれからだ!」はミステリー要素のある作品では
許されない展開だろう。

これは個人的な意見になってしまうが、
原作とストーリーを変えてしまったほうが良かったのではないのだろうか。
原作通りに1巻の内容をアニメ化することももちろん大切なことだが、
1クールしか尺がないならば1クールで物語を締める
アニメオリジナルストーリーにしたほうがすっきりと楽しめたかもしれない。

原作を読んだ人はもちろん「偽物」の7人目を知っている。1クールしか尺がない。
だからこそ原作とは違う展開にし「偽物」も別のキャラにすることで
作品としての完成度を高められたはずだ。

生真面目に1巻を1クールで描写するよりも
モヤモヤした感じでは終わらなかったはずだ
もっと極端な話だが、この作品は「TVアニメ」には向かないのかもしれない。
映画やOVAなどの媒体ならば同じ内容でも印象は違っただろう。

売り上げ的には500枚以下と爆死。
原作がアニメの効果で物凄い売れたという声もあまり聞かない
2期はかなり難しいだろう。
これで2期を望めるならばもう少し一期の評価を高く出来たかもしれないが
2期を期待できない状態でこの歯切れの悪さは厳しいものがある。
色々と残念な作品だった