ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル

☆☆☆☆☆(7点)

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ファンタジーアニメで、弁護士アニメで、ロボットアニメ。

本作品は「MEZO」「KITE」などで有名な梅津泰臣監督によるアニメ作品
2013年秋アニメでは「ガリレイドンナ」も制作されており、
梅津泰臣監督によるTVアニメ第3弾という感じだ

見だして感じるのは「カメラワーク」だろう。
1話冒頭から「梅津泰臣」という人物の作品を知っていれば、
「おぉ!!さすがだ!」と思ってしまうほどの素晴らしいカメラワーク。
逃走する犯人の走る姿の「そこ」を映すのかと思わずセンスを感じさせる冒頭の10秒間、
更に女性の口元を映すシーンに切り替えるという
「梅津泰臣」という人物を知っていれば知っているほど冒頭から期待感を煽る内容だ

更に戦闘シーン。今作は「魔法」が出てくる作品だ
2018年という少し未来の東京を舞台に魔法を使う犯罪者、
1話冒頭から「火」という定番の魔法を現代の東京、しかも電車の上を舞台に
大胆かつ激しく、ただ火を飛ばすのではなく「操っている火」というのが実感できるほど
滑らなかな描写と迫力ある戦闘シーンで一気に世界観に引き込まれる。

そして、そんな引きこまれた世界観で細かい設定を「あえて説明しない」ストーリー展開。
近未来の東京で魔法を使えるもの「ウド」が居て、そんな魔法を使って犯罪を起こす人がいる
そんな魔法を使った犯罪者を弁護する「弁魔士」という職業も有り、
そんな弁魔士に新人として入った「セシル」を主人公に話が進む。
だが、こんな説明はほとんどしない。

ストーリーの流れの中で自然に設定を理解させる内容は、
1~10まで全て説明してしまうアニメの多い中で、
「自然に設定を理解させる」というストーリー構成は素直に面白いと感じられる
更にファンタジー要素が基本であるものの同時に「弁護士」という要素も基本になっている。
アニメにおいて「弁護士」ものというのは初の試みだ。
基本的に漫画が原作でも実写ドラマになりがちな「弁護士」という設定を
あえてアニメで描写する試みは素直に評価したい。

しかしながら、素直に評価したいところだが根本的に「弁護士」ストーリーが微妙だ。
事件が起こる→犯人が捕まる→ヒロインが弁護するという毎話の最初の流れ自体はいいのだが、
事件自体のほとんど捻りがない。

犯人がそのまま犯人の場合、犯人が冤罪の場合と、
実写ドラマなら二転三転するような事件でも、こちらが推測推理する必要のない展開ばかりで
事件の決着をつける裁判シーンも魔法バトルでケリがついてしまい面白みにかけ
話が進めば進むほどつまらなくなっていく。

更にいうと基本的にヒロインの「弁護士能力」がほとんど発揮されず、
基本的に「魔法」で戦って真犯人を捕まえたり、事件の真相にたどり着いたりと
裁判を力技で成功に導く展開があまりにも多く、
作品の根幹である「魔法を使える人間の犯罪を弁護する」という部分の面白みがほとんどない。

魔法自体も基本的に攻撃魔法ばかりで、本来なら「どんな魔法を使ったのか」という
殺人事件で言えば凶器の謎を探るような展開もなく、
「火で攻撃して殺した」「金属魔法でロボット作って銀行襲う」などの
シンプルな事件が非常に多い。

魔法ファンタジーとしても基本的に弁護士としての仕事をするヒロインの活躍が
ストーリーの基板にあるため魔法バトルシーンは短い。
それ故にどっちつかずになってしまっており物足りなさを感じてしまう。
弁護士アニメとしては安直なストーリー展開と強引な裁判、
魔法ファンタジーとしては基本ストーリーが弁護士なためバトルシーンの尺が少ない。
結局「どっちをやりたいのか」がわからず、どっちつかずのままストーリーを進めており
話が進めば進むほど面白みにかけていく。

6話ではある意味、1話~5話までのヒロインの行動、この作品のダメな点を指摘するかのように
とあるキャラクターがヒロインに対してこういうセリフを投げかける
「魔術を使わなきゃ案件を処理できないのは弁護能力0」
まさにそのとおりなのだ(苦笑)
同時にそれは弁護士アニメとしての面白さに掛けることも作中で指摘してしまっているかのような
自虐的なセリフだ。

更に「キャラクター数」の多さ。
ヒロインの同じ弁魔士仲間、ライバル弁魔士事務所のキャラ、刑事と
ストーリーの中でのキャラクターの立ち位置や役割自体は少ないのだが、
その立ち位置と同じキャラクター数が多すぎる。
キャラクター数の多さで話が面白くなることもなく、各キャラクターの掘り下げも甘い

それだけキャラクター数が多いのに
「なぜこの立場のキャラクターが居ないんだ」と感じる場面も多い。
特に裁判シーンで重用であり、ヒロインのライバルの立ち位置にもなるはずの
「検察」側のキャラクターがモブキャラクターしか居ない。
本来ならライバル、敵としての立ち位置として一人くらい居てもいいはずなのに、
無駄にヒロインの仲間のキャラクターしか居ない。
明らかに削っても良いキャラクターも多く、役割が同じキャラクターが多すぎる。

そして作画。
序盤は非常に高いレベルの作画でキャラクターもバトルシーンも描かれており、
ストーリー自体は微妙な部分はあったものの、「絵力」で面白さが出ている部分はあった
だが、中盤以降は明らかに「作画」のレベルががくっと落ちる。
特にキャラクターの作画に関しては1話と最終話では全く違う。

更にストーリーも中盤以降から風呂敷を広すぎている。
裁判と魔法使いという要素だけで十二分に話を作れるはずなのに
「悪魔」や「ルシフェルの召喚」だのと中二病をいきなり患ったかのごとく、
中盤以降からどんどんストーリーの風呂敷を広げていく。

その広げた風呂敷に見合う「面白さ」を感じられれば問題なのだが、
正直「ついていけない」感じの風呂敷の広げたかをしており、
もっと簡単にいうと終盤に行け行くほど「序盤に感じた面白さ」を感じなくなる。

そして最終話も「裁判」と呼べない魔法バトルでストーリーを展開してしまい、
色々な要素が「結局アレはどういうことだったんだ?」
「あれはどうなった?」と思う要素が非常に多く、
本来なら描写しなければならない、
本来ならケリをつけないといけない部分を投げ出してしまっており、
見終わった後の色々と釈然としない部分が多く出てしまっていた。

全体的に見て「1話」がすべての作品だった。
1話を見た時は非常に好印象で続きに期待のもてる要素を色々盛り込んでいるものの
その「期待」に応えられなく話が進んでいき、
中盤を超えた当たりから序盤の良さがどんどんどんどん薄れていき、
最終話ではもはや序盤の良さは一切なく、色々な要素を投げて終わってしまった

この作品を構成する要素は悪くなった。
キャラクターデザインはもちろんのこと、
独特なカメラワークや演出など梅津泰臣監督らしい要素は素晴らしく、
「魔法」と「裁判」という作品の根幹の要素は悪くなかった。
だからこそ、その要素を見せてくれる1話は期待感が強かった

だが、話が進めば進むほど強引な展開や盛り上がりに欠ける展開ばかりで
魔法アニメでありながら裁判アニメのはずなのに裁判の要素が力技で押し通すことが多く、
裁判アニメでありながら魔法アニメなのにバトルシーンがロボット対決になってしまったり、
そもそもバトルシーンが裁判アニメでもあるため短かったりと
色々な要素がどっちつかずのままで中途半端のままだ

あの1話の続きを見たいのにと2話以降ずっと感じてしまう感じだ。
なんというか最終話で「2話以降の展開は夢でした」というオチがあっても納得しそうなほど
2話以降から視聴者と制作側でこの作品に対する面白さの「ズレ」が発生していき、
そのズレが縮まることがなく、どんどんと広まっていった感じだ。
最終話は極端にいえばズレ過ぎたがゆえに見方を変えれば面白いとも言えなくはないが(苦笑)

もう一歩世界観がしっかりしてれば、もう一歩踏み込んだ設定になってれば、
もう一歩キャラクター描写がしっかりしてれば・・・と
色々な部分で「もう一歩」が足りず、いつまでたっても前に進まない感じのするアニメだ

最後まで解決しない要素もあまりにも多い。
「判決」の魔法が発動しない事が2回ほどあったが、なぜ発動しなかったかは謎。
思わせぶりにヒロインの初恋の人が写真で出てきたが、結局ストーリーには絡まない
ヒロインの母親が結局どうなったかも描写されず、
もしかしたら「2期」を想定した伏線だったのかもしれないが
そういった未解決の要素も見終わった後にモヤモヤっとする原因の1つだろう。

これで2期が期待できる売上なら期待感もあるが・・・
1巻は600枚、2巻は500枚と「爆死」だ。
原作のある作品なら原作の売り上げ次第でという展開もあるが、
アニメオリジナルなためそれも望めない。

本当になぜ「梅津泰臣」監督は1話だけ完成度が高いのだろうか(苦笑)
前作のガリレイドンナも1話の時点では非常に面白かったが、
この作品と同様に進めば進むほどズレが出てきてしまった作品だった。
梅津泰臣さん自体は才能のある方だと思うが、監督には向いていないのかもしれない・・・。

個人的には梅津OPを今作では感じられなかったのも残念だった。
前作のガリレイドンナもOPは非常によく、OPから期待感のあった作品だったが
今作はOPを見てもどうも「梅津泰臣」監督らしい良さを感じないOPだった。

「梅津泰臣」監督のTVアニメ第四弾があるかどうかは分からないが、
個人的には期待したい、今作もガリレイドンナも「1話」の期待感は素晴らしかった
あの期待感にそう作品を是非、仕上げてほしい。
「梅津泰臣」さんのファンとしてはそう願ってやまない。

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